採用代行 / 費用・契約・法務

採用に使える助成金と採用代行費用の関係

公開 2026-09-22

採用代行の費用を検討していると、「助成金で代行費用をまかなえないか」という話が出ます。結論を先に書くと、採用代行の委託料そのものを補助する雇用関係助成金は、厚生労働省の令和8年度の助成金の案内の中には見当たりません。雇用関係助成金は、労働者を雇い入れたこと、賃金を上げたこと、雇用を維持したこと、雇用環境を整えたことなどに対して支給されるもので、自社が採るための代行の委託料を対象にするものではありません。ただし、助成金は採用の進め方と無関係ではありません。「ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れる」ことが要件になっている助成金があり、代行にどの経路を運用してもらうかで、受けられるかどうかが変わります。書類の整備・保管や実地調査への協力も共通の要件です。以下は厚生労働省の公表資料に沿った一般的な整理で、自社が受けられるかどうかの個別の判断は、管轄の労働局・ハローワークと社会保険労務士にご確認ください。費用の見方は採用代行の費用の内訳に書いています。

雇用関係助成金は何に対して出るものか

厚生労働省「令和8年度 雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)」の検索表は、助成の対象となる取組を次のように分けています。

区分助成の対象となる取組
A 雇用維持関係休業や教育訓練、出向を通じて労働者の雇用を維持する
B 在籍型出向支援関係在籍型出向でスキルアップを行い、出向復帰後の賃金を上昇させる
C 再就職支援関係離職を余儀なくされる労働者の再就職支援を民間職業紹介事業者に委託する
D 転職・再就職拡大支援関係雇用期間の定めのない労働者の中途採用を拡大する
E 雇入れ関係就職が困難な者などを雇い入れる、一定期間試行的に雇い入れる
F 雇用環境の整備関係等障害者の作業施設の設置、職場定着、両立支援など

この並びを見ると、助成の対象は「雇い入れたこと」「賃金を上げたこと」「雇用を維持したこと」「環境を整えたこと」に対する支給で、採用活動の委託料は入っていません。委託費が助成の対象になる例はありますが、内容が違います。同案内の早期再就職支援等助成金(Ⅰ 再就職支援コース)は、事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる労働者等に対して、再就職を実現するための支援を民間の職業紹介事業者に委託等して行う事業主(再就職が実現した場合に限る)に対して助成するもので、委託費用の一定割合が支給されます。これは送り出す側の委託で、自社が採るための代行とは別です。

採用に関係する助成金がどこに効くか

自社が人を採る場面に関係するのは、主にDとEです。令和8年度の案内には次のように書かれています。

助成金助成の対象
早期再就職支援等助成金(Ⅲ 中途採用拡大コース)中途採用者の雇用管理制度を整備し、中途採用を拡大させたうえで、雇い入れた中途採用者の賃金を雇入れ前と比較して5%以上上昇させた事業主
特定求職者雇用開発助成金(Ⅰ 特定就職困難者コース)高年齢者(60歳以上)、障害者、母子家庭の母など就職が特に困難な者を、ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れた事業主
トライアル雇用助成金(Ⅰ 一般トライアルコース)職業経験、技能、知識の不足等から安定的な就職が困難な求職者を、ハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により、一定期間試行雇用する事業主
産業雇用安定助成金(Ⅰ 産業連携人材確保等支援コース)事業活動の一時的な縮小を余儀なくされた事業主が、生産性向上に資する取組等に必要な新たな人材を雇い入れる場合

太字にした「紹介により」が、採用の進め方と助成金がつながる点です。自社の求人ページからの直接応募や、自社(または代行)が送ったスカウトから決まった場合、これらの助成金の要件にある「紹介による雇入れ」に当たらないことがあります。金額や細かい要件は年度で変わるため、対象になりそうな採用がある場合は、募集を始める前に管轄の労働局・ハローワークに確認する順番にします。

エラベルの見解

助成金の相談で最も多い行き違いは、「採ってから、この人は助成の対象になりますか」と聞かれる形です。紹介による雇入れが要件になっている助成金では、どの経路で出会ったかが後から変えられないため、採った後では間に合わないことがあります。採用代行に経路の運用を任せるときは、「助成の対象にしたい枠があるなら、その求人にはハローワークや紹介の経路を欠かさず含める」を最初に共有しておく必要があります。エラベルで担当者を選ぶ企業には、「今回の採用で、助成金を見込んでいる枠はありますか」を、私たちから先に聞いています。見込んでいるなら、経路の設計の前に、労働局への確認の順番をお伝えします。経路の組み合わせ方は媒体の組み合わせ方に書いています。

共通の要件と、受給できない事業主

令和8年度の案内には、すべての雇用関係助成金に共通する受給対象の要件が書かれています。

共通の要件中身
雇用保険適用事業所の事業主支給申請日および支給決定日の時点で雇用保険被保険者が存在する事業所の事業主であること
期間内に申請を行う原則、各助成金の支給要領に定める日の翌日から起算して2か月以内。郵送の場合は期間内に到達していることが必要
支給のための審査に協力する審査に必要な書類を整備・保管する、提出を求められたら応じる、実地調査に応じる

受給できない場合として挙げられているのは、次のようなものです(案内には12項目が並びます)。

不正受給は、代表者のほか、役員、従業員または事業主の代理人等、支給申請・書類作成に関わった者が偽りその他不正の行為により本来受けることのできない助成金を受けようとすることを指すと案内に書かれています。従業員や社会保険労務士が不正行為を行った場合であっても不正受給に該当するとされている点は、外部に書類作成を頼むときに押さえておく必要があります。

代行に出すときに壊してはいけないもの

採用代行に一次対応や書類の整理を任せる場合、助成金の側から見て守るべきものは「経路」と「記録」です。

守るもの具体的に
経路紹介による雇入れが要件の助成金を見込む枠は、ハローワークや紹介の経路を欠かさず含める。どの経路から応募したかを記録に残す
書類の整備・保管審査に必要な書類を整備・保管する(共通の要件)。代行が作った記録も自社で保管できる形にする
保存期間支給申請書、添付資料の写しなどの保存。代行との契約終了時に自社へ渡す取り決めを先に作る
申請の期限原則、支給要領に定める日の翌日から2か月以内。誰が期限を管理するかを決める
書類の正確さ事実と異なる記載・証明は不支給要件。代行が作成した書類も、自社が内容を確認してから出す

代行との契約で決めておくのは、記録の持ち出しと引き継ぎです。契約が終わったときに応募と選考の記録が代行側にしか無いと、後から審査で求められた書類を出せません。引き継ぎ資料の型は引き継ぎ資料に何を残すかに、契約で見る項目は採用代行の業務委託契約書で確認する10項目に書いています。

エラベルの見解

助成金を採用の判断の中心に置くと、採用そのものが歪みます。「この助成金が使えるから、この層を採る」という順番になると、要件に合う人を探すことが目的になり、入社後に配置できず離れる、ということが起きます。順番は逆で、要件と経路を先に決め、そのうえで対象になりそうな枠があれば労働局に確認するのが自然です。助成金は、採用の費用を回収する手段ではなく、雇い入れた後の条件や環境を整える判断を後押しするものと見たほうが、結果として使える場面が増えます。エラベルで担当者を選ぶ企業には、「助成金ありきで要件を動かしていませんか」を、私たちから先に確かめています。要件の作り方は採用要件の定義の進め方に書いています。

助成金と税の扱い

国税庁のタックスアンサーNo.6157は、国または地方公共団体からの補助金や助成金等を、消費税の課税の対象とならないもの(不課税)の具体例として挙げています。一般的に対価を得て行う取引ではないためです。一方、法人税や所得税での扱いは別の話なので、自社の申告に関わる判断は税理士にご確認ください。採用代行の委託料の消費税の扱いは採用代行費用の消費税とインボイスの扱いに書いています。

まとめ

よくある質問

自治体の補助金なら、採用代行の費用が対象になりませんか

この記事で整理したのは、厚生労働省の雇用関係助成金です。自治体が独自に行う補助金には、人材確保や外部人材の活用を対象にするものがあり、制度も年度も自治体ごとに違います。対象になるかどうかは、事業を行う自治体の窓口に直接確認してください。金額や要件を先に見積りに織り込むのは、交付が決まってからにします。

助成金の申請書類の作成も代行に頼めますか

雇用関係助成金の申請手続の代理・代行は、社会保険労務士の業務に関わります。誰が作成できるかの判断は、管轄の労働局と社会保険労務士にご確認ください。採用代行に頼めるのは、申請に必要な採用の側の記録(どの経路から応募し、いつ面接し、いつ雇い入れたか)を整えて自社に渡すところまで、と分けておくのが安全です。厚生労働省の案内は、従業員や社会保険労務士が不正行為を行った場合であっても不正受給に該当するとしているため、誰が作り、誰が内容を確認して出すかを、先に決めておきます。

中途採用拡大コースは、採用代行を使っていても対象になりますか

対象になるかどうかは、代行を使ったかどうかではなく、助成金の要件(雇用管理制度の整備、中途採用の拡大、雇い入れた中途採用者の賃金が雇入れ前と比較して5%以上上昇していること、など)を満たすかどうかで決まります。要件の詳細と手続は支給要領に定められており、年度で変わります。見込む場合は、募集を始める前に管轄の労働局に確認し、代行には「この枠は記録を細かく残す」と先に共有しておきます。

出典