採用代行 / 費用・契約・法務

採用代行費用の消費税とインボイスの扱い

公開 2026-09-22

採用代行の見積書を見て、「この金額は税抜きか税込みか」「代行に払う月額と、自社で人を雇う人件費は、税金の扱いが同じなのか」「代行会社が媒体費を立て替えて請求してきたが、この請求書で控除できるのか」で止まることがあります。金額の大きい契約ほど、消費税の扱いを外すと、あとから負担が変わります。結論を先に書くと、採用代行の委託料は、国内で事業者が事業として対価を得て行う役務の提供にあたるため消費税の課税取引で、自社の社員に払う給与(不課税)とは扱いが違います。仕入税額控除を受けるには、代行会社から受け取る適格請求書(インボイス)と、一定の事項を記載した帳簿の保存が要ります。加えて、代行会社が媒体費などを立て替えている場合は立替金精算書等が、代行会社が適格請求書発行事業者でない場合は経過措置の扱いが、それぞれ別に要ります。以下は国税庁の公表資料に沿った一般的な整理で、自社の個別の判断は税理士にご確認ください。費用そのものの内訳は採用代行の費用の内訳に、契約書で見る項目は採用代行の業務委託契約書で確認する10項目に書いています。

まず、何が課税で何が不課税か

国税庁のタックスアンサーNo.6157は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡や貸付け、役務の提供が消費税の課税の対象になるとしたうえで、課税の対象とならないもの(不課税)の具体例を挙げています。採用まわりで関係するのは、次の対比です。

支払うもの消費税の扱い根拠
採用代行の委託料(月額・時間単価・成果報酬)課税取引国内で事業者が事業として対価を得て行う役務の提供
人材紹介会社の紹介手数料、求人媒体の掲載料課税取引同上
自社の社員(人事担当)に払う給与・賃金不課税雇用契約に基づく労働の対価であり、事業者が事業として行う取引ではない(No.6157(1))
国や地方公共団体からの補助金・助成金不課税一般的に対価を得て行う取引ではない(No.6157(2))

「人事を一人採るか、代行に出すか」を金額で比べるとき、この一行目と三行目の違いが効きます。給与には消費税が乗らず、委託料には乗ります。一方で、代行の委託料に含まれる消費税は、自社が課税事業者であれば、要件を満たす限り仕入税額控除の対象になります。単純に「委託料は消費税のぶん高い」とも「控除できるから同じ」とも言えないので、自社の課税売上割合や納税の状況を踏まえて税理士と見るのが確実です。比べ方の枠組みは採用代行は月額型と成果報酬型のどちらが得かに書いています。

仕入税額控除に要るもの

令和5年10月1日から、消費税の仕入税額控除の方式は適格請求書等保存方式(インボイス制度)になっています。国税庁のタックスアンサーNo.6498は、この方式の下では一定の事項が記載された帳簿および「適格請求書(インボイス)」等の保存が仕入税額控除の要件になるとしています。適格請求書は、税務署長の登録を受けた適格請求書発行事業者でなければ交付できません。

発注側で用意するもの中身
適格請求書代行会社から受け取る請求書。登録番号が記載されているか
帳簿一定の事項を記載したもの。保存が控除の要件

登録番号は、法人番号を持つ課税事業者であれば「T+法人番号」、それ以外の課税事業者であれば「T+13桁の数字」という構成だと同ページに書かれています。登録の有無と登録番号は、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで確認できます。

エラベルの見解

採用代行の発注で消費税が問題になるのは、金額が大きいからというより、請求の形が途中で変わるからです。最初は月額の委託料だけだったのが、途中から媒体費の立て替え、スカウト媒体の課金、成果報酬、交通費の実費、と項目が増えます。項目ごとに扱いが違うのに、請求書が「採用支援費用一式」の一行だと、立替分の扱いも、何が課税仕入れなのかも、後から追えません。エラベルで担当者を選ぶ企業には、契約の前に「請求書の項目は、委託料・立替金・実費で分けて出してもらえますか」を確認することをお伝えしています。分けて出してもらう約束を先にしておけば、経理の処理も、次の見積りとの比べ方もそろいます。商談で聞く項目は費用について商談で聞く質問に書いています。

代行会社が媒体費を立て替えたとき

採用代行では、代行会社が求人媒体やスカウト媒体の費用をいったん立て替え、月末に委託料と合わせて請求してくることがあります。このとき、媒体会社が発行する適格請求書の宛名は、立て替えた代行会社の名前になります。

国税庁のQ&A問94は、立替払をした会社宛に交付された適格請求書をそのまま受領しても、それをもって支払先から自社に交付された適格請求書とすることはできない、としています。そのうえで、立替払を行った会社から立替金精算書等の交付を受けるなどにより、支払先から行った課税仕入れが自社のものであることが明らかにされている場合には、その適格請求書および立替金精算書等の書類の保存をもって請求書等の保存要件を満たすと整理されています。

状態扱い
代行会社宛の適格請求書をそのまま受け取っただけそれだけでは自社への適格請求書にならない
代行会社宛の適格請求書+代行会社が作成した立替金精算書等保存により請求書等の保存要件を満たす
立替払を行った代行会社が適格請求書発行事業者でない場合支払先(媒体会社)が適格請求書発行事業者であれば控除できる(問94)

複数社分をまとめて立て替えている場合の扱いや、立替金精算書に書く消費税額等の考え方も同じQ&Aに書かれています。実務としては、契約の段階で「媒体費は立て替えか、自社が媒体と直接契約するか」を決め、立て替えにするなら立替金精算書を毎月もらう形にしておくのが手間が少ない。引き継ぎの書類の型は引き継ぎ資料に何を残すかに書いています。

代行会社が免税事業者だった場合

個人で受けている担当者や小規模な代行会社では、適格請求書発行事業者の登録をしていないことがあります。この場合、原則として仕入税額控除ができませんが、一定期間は経過措置があります。国税庁のQ&A問113(令和8年4月改訂)は、経過措置の期間と割合を次のとおり示しています。

期間控除できる割合
令和5年10月1日から令和8年9月30日まで仕入税額相当額の80%
令和8年10月1日から令和10年9月30日まで仕入税額相当額の70%
令和10年10月1日から令和12年9月30日まで仕入税額相当額の50%
令和12年10月1日から令和13年9月30日まで仕入税額相当額の30%

令和8年(2026年)10月1日から、割合が80%から70%に下がります。免税事業者の担当者や代行会社と継続して取引している場合は、この切り替わりの時期に自社の負担が変わるため、事前に経理と共有しておきます。

経過措置の適用を受けるには、区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等の保存に加えて、帳簿に「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」の記載が必要です。Q&A問113は、個々の取引ごとに「80%控除対象」「免税事業者からの仕入れ」などと記載する方法のほか、対象の取引に「※」などの記号を付け、「※は80%控除対象」と別途表示する方法も認められるとしています。

さらに同Q&Aは、令和6年10月1日以後に開始する課税期間において、一の免税事業者等から行う経過措置の対象となる課税仕入れの額の合計額が一定の金額を超える場合は、その超えた部分について経過措置を適用できないとしています。金額は、令和6年10月1日から令和8年9月30日までの間に開始する課税期間は税込み10億円、令和8年10月1日以後に開始する課税期間は税込み1億円です。

エラベルの見解

「代行会社が免税事業者かどうか」は、選ぶときの判断材料の一つではありますが、それだけで外す理由にはしないほうがよいと考えています。個人で受けている担当者には、特定の職種や業界で長く採用を担ってきた人がいて、月額の小さい形で一工程だけを頼むのに向いています。見るべきは、登録の有無そのものより、「登録の有無を先に言ってくれるか」「請求書の形を先に決められるか」です。エラベルで担当者を選ぶ企業には、候補の担当者について登録の有無と請求の形を契約の前にお伝えしています。そのうえで、控除できない分を含めた負担を自社で比べて決める、という順番にすると、費用の話が後から揉めません。契約書で見る項目は採用代行の業務委託契約書で確認する10項目に書いています。

発注前に確認しておく項目

確認中身
見積りの税の表示税抜きか税込みか。成果報酬の計算の基礎はどちらか
登録の有無代行会社(担当者)が適格請求書発行事業者か。登録番号の記載
請求書の項目委託料・立替金・実費を分けて出せるか
媒体費の扱い立て替えか、自社が媒体と直接契約するか。立て替えなら立替金精算書を毎月もらう
交通費・実費委託料に含むか、別に実費精算か
契約が切り替わる時期令和8年10月1日以降、免税事業者との取引の控除割合が変わることを経理と共有

金額そのものは、依頼する工程と稼働時間で大きく変わるため、同じ工程で比べる軸をそろえます。相場の見方は採用代行の費用相場に書いています。

まとめ

よくある質問

成果報酬型の場合、消費税はどこにかかりますか

成果報酬も、代行会社が事業として対価を得て行う役務の提供の対価であれば課税取引です。実務で確認しておきたいのは、契約書と見積りで成果報酬の金額が税抜きで書かれているか税込みで書かれているか、そして計算の基礎(たとえば想定年収の何パーセント、といった定め方をする場合の「想定年収」の中身)です。金額の定め方そのものは契約の問題なので、採用代行の業務委託契約書で確認する10項目と合わせて見ます。個別の判断は税理士にご確認ください。

助成金を受けた場合、その分の消費税はどうなりますか

国税庁のタックスアンサーNo.6157は、国または地方公共団体からの補助金や助成金等を不課税の具体例として挙げています。一般的に対価を得て行う取引ではないためです。ただし、助成金を受けたことと、その助成の対象になった支出(賃金など)の消費税の扱いは別の話です。法人税や所得税での扱いも含めて、自社の申告に関わる判断は税理士にご確認ください。助成金と採用代行費用の関係は採用に使える助成金と採用代行費用の関係に書いています。

代行会社に登録番号を聞くのは失礼ではないですか

取引の前に登録の有無を確認するのは、買手が仕入税額控除の要件を満たすために必要な確認で、業種を問わず行われています。国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトでも登録番号から確認できます。聞き方としては、見積りを受け取った段階で「請求書に登録番号の記載はありますか」と確認するのが自然です。登録が無い場合は、経過措置の割合を踏まえて自社で負担を見ることになるので、その時点で分かっているほうが、双方にとって話が早い。

出典