採用代行 / 費用・契約・法務
採用代行でよくあるトラブルと予防策
採用代行で起きる問題は、種類がある程度決まっています。そして多くは、契約か運用の設計で先に潰せるものです。発生してから対処すると時間がかかりますが、締結時に一項目を決めておけば起きません。この記事では、問題を五つに分けて、それぞれの発生の仕方と予防策を整理します。
一.範囲まわり
範囲外の作業が積み上がる。採用は動き出すと隣接業務が生まれます。急な職種追加、面接官の代理対応、内定者フォロー。契約書に「範囲外は別途協議」とだけ書いてあると、毎回の協議が発生します。
予防:範囲を工程で分解して別紙に落とし、範囲外が出たときの追加ルールを先に決める。時間単価での追加ルールを置いておくと運用が楽になります。
項目名の解釈がずれる。「スカウト運用」に検索条件の設計が含まれるか、返信対応が入るか。同じ言葉でも中身が違います。
予防:見積もりの段階で工程まで分解して伝える。読み方は見積もりの読み方にまとめています。
依頼していない工程の結果で評価してしまう。母集団形成だけを頼んでいるのに、内定辞退の責任を求めてしまう。
予防:成果の置き場所を、代行が影響を与えられる範囲の一番先にする。
二.費用まわり
想定を超えた請求が届く。時間単価型で上限を決めていない、従量課金の実費が読めていない。
予防:上限を決め、上限に近づいたら連絡が来る運用にする。精算のルールは稼働時間の精算方法にまとめています。
初期費用と実費が別立てだと後から分かる。月額だけを比べて選び、総額が想定と違った。
予防:見積もりの段階で「この見積もりに含まれないものを教えてください」と聞く。
成果報酬の定義でもめる。面談設定が成果なのに、当日欠席や直前辞退の扱いが決まっていない。
予防:成果の定義に、成立の時点・確認方法・取り消し条件・重複・上限を書く。書き方は成果の定義でもめない書き方にまとめています。
エラベルの見解
ここまで挙げた問題を並べると、発生の理由がほぼ共通していることが分かります。契約の段階で決めていなかった、という一点です。
範囲外のルール、上限、成果の定義、担当交代の通知、成果物の帰属。どれも締結時なら数分で決められる項目です。ところが決めずに始めると、問題が起きるたびに交渉になります。しかも、起きてからの交渉は双方の立場が対立するので、時間がかかります。
だから、契約書のレビューに時間を使ってください。法務のレビューだけでなく、運用する人のレビューも通す。運用する人が見るのは、報告の形、連絡の経路、担当体制、範囲外が出たときの手順。この四つです。
そして、決めた内容は別紙にまとめます。契約書の本文に書くと変更のたびに覚書が要りますが、別紙なら差し替えで済みます。
締結時の半日が、契約期間中の何十時間かを節約します。これは実際にやってみると分かる種類の投資です。
三.体制まわり
担当者が知らないうちに替わっている。契約の相手は会社なので、通知の定めがなければ伝えられないことがあります。
予防:事前通知の条項を置き、稼働報告に担当者名の欄を作る。扱いは担当者が替わるときのリスクにまとめています。
提案に来た人と実務の担当が違う。商談で聞いた話と、運用が違う。
予防:契約前に担当予定者の経歴を確認し、稼働時間と同時担当社数を別紙に残す。
再委託されていることを知らなかった。実務を業務委託のパートナーが担っていた。
予防:禁止するより把握できる形にする。通知の条項と、権限の一覧の棚卸し。扱いは再委託はどこまで許容するかにまとめています。
引き継ぎで運用が落ちる。交代のたびに立ち上げからやり直しになる。
予防:引き継ぎ資料に加えて「うまくいかなかった試みの記録」を求める。引き継ぎの稼働を発注側の契約時間から消費しない建て付けにする。
四.情報まわり
候補者データが代行会社の環境にしかない。契約終了時に返還と削除の作業が発生し、確認も難しい。
予防:自社の採用管理システムに集約し、アクセス権を渡す。設計は情報漏えいを防ぐ設計にまとめています。
成果物を受け取れない。求人原稿や検索条件の権利が代行会社に残る契約だった。
予防:成果物の帰属と、編集できる形式での引き渡しを契約に書く。扱いは代行が作ったマニュアルの権利は誰のものかにまとめています。
権限が残ったまま。契約が終わったのに、媒体やチャットのアカウントが残っている。
予防:権限の一覧を作り、四半期に一度棚卸しする。削除は書き出し・確認・削除の順。
媒体の名義が代行会社。終了とともにデータへアクセスできなくなる。
予防:継続的に採用するなら自社契約にする。扱いは媒体費と代行費を分けて見るべき理由にまとめています。
五.候補者対応まわり
過去に不採用にした候補者にスカウトが届く。記録が共有されていない。
予防:採用管理システムの記録を、送信対象の判定に使うルールにする。
連絡をくれた人と面談に出る人が違う。候補者に違和感が残る。
予防:署名を部署名にするか、案内で当日の担当を伝える。
質問に答えが返らない。委託の範囲外の質問で止まる。
予防:答えられる範囲を広げ、自社に戻す線と回答の期限を決める。
放置される候補者が出る。応募や返信への対応が漏れる。
予防:一次連絡までの時間を決め、守れているかを月に一度確認する。
エラベルの見解
トラブルの一覧を見ると、そのほとんどが「起きてから対処するには重いが、先に決めるなら軽い」種類だと分かります。
たとえば、成果物の帰属。契約時なら一項目を足すだけです。契約が終わる段階で交渉すると、相手の協力を得にくく、時間もかかります。
権限の棚卸しも同じです。四半期に一度、一覧と実際を突き合わせる作業は短時間で終わります。ところが、何年も棚卸しをしていない状態から始めると、誰がいつ発行したアカウントかを追う作業になります。
だから、契約の締結時と、四半期ごとの確認。この二つの機会に集約してください。日々の運用の中で気にし続ける必要はありません。
そして、この二つを回していれば、五つの分野のほとんどは防げます。防ぐための作業量は、実際にはそれほど多くありません。決まった時期に、決まった項目を確認する。それだけです。
問題が起きてから対処する会社と、この二つを回している会社の差は、期間が長くなるほど開きます。
まとめ
- 問題は範囲・費用・体制・情報・候補者対応の五つに分かれる
- 発生の理由はほぼ共通で、契約の段階で決めていなかったこと
- 範囲は工程で分解し、範囲外のルールを先に決める
- 費用は上限と、成果報酬なら定義の六要素を決める
- 体制は、事前通知と稼働報告の担当者名の欄
- 情報は、自社に集約し、成果物の帰属を契約に書く
- 候補者対応は、重複判定・署名の設計・回答の線引き・一次連絡の時間
- 集約する機会は締結時と四半期ごとの確認の二つで足りる
よくある質問
すでに運用が始まっていますが、今から決められますか
決められます。報告の様式や運用のルールは、相談すればその月から変えられることもあります。契約に関わる部分は、更新のタイミングで覚書を交わす形が自然です。優先度としては、権限の棚卸しと成果物の帰属から手をつけると効果が早く出ます。
トラブルが起きたとき、まず何をすればよいですか
事実を工程で確認してください。どの工程で、いつから、何が起きているか。原因が代行側か自社側かを切り分けてから、対処を決めます。切り分けずに契約の話に入ると、原因が残ったまま相手だけが替わることになります。手順はKPI未達のときに契約をどう扱うかにまとめています。
契約書のレビューは誰がすべきですか
法務と、運用する人の二本で通すことをおすすめします。法務が見るのは責任と権利の配分、運用する人が見るのは報告の形・連絡の経路・担当体制・範囲外の手順です。両方を通した契約書は、締結後に読み返す回数が減ります。