採用代行 / マーケター
マーケターの採用要件の作り方|必須と歓迎を分ける基準
マーケターの求人票の必須要件には、「デジタル広告の運用経験」「コンテンツマーケティングの経験」「ブランドやPRの経験」「特定の分析ツールと広告ツールの習熟」「月額〇〇以上の予算の運用実績」「経験五年以上」が並びがちです。全部を満たす人は市場に少なく、いても大きな予算の会社にいて、予算の小さい自社には合いません。結論を先に書くと、マーケターの採用要件は、先に課題・領域・実行か戦略か・予算を決め、必須を「入社初日に自社の課題と予算で施策が成り立つか」で三つ以内に絞り、ツール・予算の大きさ・年数は必須にせず、経験の中身(何の課題を、どの領域で、いくらの予算で、どう改善したか)で書くと、自社の予算と課題で動ける人の母集団が生まれます。領域と予算を決めずに要件を積むと、全部の領域と大きな予算の要件が混ざり、誰にも当てはまらなくなります。母集団形成はマーケターの母集団形成に、代行に出す工程の線はマーケター採用を代行に出す判断基準にまとめています。
マーケターで要件が膨らむ理由
他の職種と共通する理由(現場の希望を全部書く、前任者を基準にする、失敗を避けたい)に加えて、マーケターに特有の理由があります。
一つ目は、領域を全部求めることです。広告運用、コンテンツと検索、ブランドと広報、顧客管理、イベント。一人で全部を深く担ってきた人は少なく、全部を並べると、全部を経験した人を探すことになります。
二つ目は、予算の大きさを実績にすることです。「月額〇〇以上の広告予算の運用実績」は、大きな予算の会社にいた人を選び、予算の小さい自社では再現されません。しかも、予算が大きい会社では代理店が運用していることも多く、本人の力量とは限りません。
三つ目は、ツールを必須にすることです。分析ツール、広告のツール、顧客管理のツールは、同種のものを使っていれば数週間で移行できます。ツールを必須にすると、別のツールで同じ仕事をしてきた人を弾きます。
四つ目は、「戦略から実行まで」と、段階を全部求めることです。戦略の経験者は実行を「物足りない」と感じ、実行の経験者は戦略を「荷が重い」と感じることがあります。自社が任せる段階を決めずに両方を書くと、どちらにも合いません。
五つ目は、年数です。年数と、自社の課題を解く力は一致しません。
必須と歓迎を分ける基準
基準は「入社初日に、自社の課題と予算で施策が成り立つか」です。マーケターでは「自社の課題と予算で」を先に決めます。課題が「問い合わせが無い」で予算が無いなら、予算の無い中で問い合わせを作った経験。課題が「認知が無い」で予算があるなら、予算を使って認知を作った経験。
| 項目の例 | 必須になる場合 | 歓迎になる場合 |
|---|---|---|
| 領域の経験 | 自社の課題を解く領域の経験は必須 | 他の領域は歓迎 |
| 予算の規模の近さ | 自社と近い予算の規模で施策を回した経験 | 大きく違う規模は歓迎にとどめ、面接で確認 |
| 予算の無い中で数字を作った経験 | 自社に予算が無い場合は必須 | 予算がある場合は歓迎 |
| 施策を自分で回した経験(代理店任せでない) | 実行者を採る場合は必須 | 戦略だけを担う場合は歓迎 |
| 予算の配分と施策の設計の経験 | 戦略から任せる場合は必須 | 実行者を採る場合は歓迎 |
| 数字を見て改善した経験 | どの領域でも必須(指標で評価する前提) | — |
| 営業や事業側と連携した経験 | 見込みを営業に渡す領域なら必須 | 連携の無い領域なら歓迎 |
| 事業会社での経験 | 事業会社の働き方が初日から要る場合 | 代理店の経験でも、事業会社に移りたい動機があれば歓迎 |
| 特定のツール | — | 必須にしない。同種のツールの経験を歓迎に |
| 予算の大きさの実績 | — | 必須にしない。「自社と近い規模で」に |
| 経験年数 | — | 必須にしない |
基準の要点は、「予算の大きさを実績にせず、自社と近い予算の規模で数字を作った経験を必須にする」ことです。予算の無い自社に、大きな予算の運用実績は要りません。要るのは、予算の無い中で工夫して数字を作った経験です。
エラベルの見解
相談で多いのは、「大きな予算の運用実績があって、広告もコンテンツもブランドも分かって、最新のツールを使える人」というご要望です。自社の予算は無く、課題は「問い合わせが月に数件」。この要件で来る人は、大きな予算の会社で代理店と一緒に運用していた人で、予算の無い自社では動けません。要件が、自社の予算と課題に合っていません。
見ていて差がつくのは、「自社の課題と予算から、必須を逆算しているか」です。「問い合わせが無い、予算は無い」なら、必須は「予算の無い中でコンテンツか検索で問い合わせを作った経験」「施策を自分で回した経験」「数字を見て改善した経験」の三つ。予算の大きさもツールも全部の領域も、歓迎か不要です。エラベルでは、マーケターの要件を整理するとき、依頼側に課題と予算を先に決めていただき、そこから必須を逆算しています。
必須を三つに絞る手順
マーケター向けに、絞る手順を番号付きで整理します。
- 課題を一つに決める。 問い合わせが無い、認知が無い、継続率が低い、など。最も困っていること。
- 課題を解く領域を決める。 広告運用、コンテンツと検索、ブランドと広報、顧客管理、イベントのどれか。
- 予算の規模を決める。 広告、外注、ツール。無いなら無いと。
- 実行か戦略かを決める。 経営が何を委ねるか。
- 現場(経営、営業、事業側、マーケティングの分かる人がいればその人)の希望を全部書き出す。 ここでは絞らない。
- 一つずつ、「初日に自社の課題と予算で施策が成り立つか」を問う。 成り立たないものだけ残す。
- 残ったものが三つを超えたら、「入社後に覚えられるか」「外注や別の担当が持てるか」を問う。 ツール、他の領域、戦略(経営が持つなら)は歓迎へ。
- ツール・予算の大きさ・年数を、経験の中身に書き換える。 「月額〇〇の運用実績」ではなく「予算の無い中で検索の流入を記事で増やした経験」。
- 歓迎に回したものを、優先順位を付けて三〜五つ書く。 面接で見る点になる。
- 指標と評価を、要件と一緒に確認する。 要件に合う人が、自社の指標(動かせるもの)で評価されて続けられるか。
- 経営・営業か事業側・マーケティングの分かる人(外部でも)・人事で確認する。 「この三つがあれば、他は入社後に補える」と言えるか。
手順の要点は、「一から四を先にやる」ことです。課題・領域・予算・段階が決まれば、必須はそこから逆算できます。
経歴で確かめられる要件と、面接でしか分からない要件
マーケターでは、経歴の実績が予算と環境で決まるので、確かめ方の区別が重要です。
| 確かめる方法 | 要件の例 | 見方 |
|---|---|---|
| 経歴で確かめられる | 担当した領域、扱った予算の規模、施策を自分で回したか代理店任せか、改善した数字の種類、事業会社か代理店か | 書類の一次絞りで。「マーケティング全般」ではなく、「何の課題を、どの領域で、いくらの予算で、どう改善したか」の記述があるかを見る |
| 経歴では分からない | 課題の立て方、数字を見てどう判断したか、予算が無いときの工夫、営業や事業側との調整、経営への説明の仕方 | 面接で、マーケティングの分かる人と決める人が聞く。「一番数字を動かした施策を、課題の把握から結果まで順に」。構造化面接 |
| 経歴でも面接でも分かりにくい | 実際の施策の質、自社の課題への適用力 | 自社の課題を題材にした短い課題(負担の小さい範囲で)や、業務委託での試行 |
分け方の要点は、「面接で、一つの施策を課題の把握から結果まで話してもらう」ことです。実績の数字の裏に、誰が課題を立てたか、予算はいくらだったか、代理店が回したか自分が回したか、数字を見てどう直したかが、一つの施策の話で見えます。
転向層を母集団に入れる要件の書き方
マーケターは、領域ごとに経験者が分かれ、自社の領域の経験者だけを待つと母集団が狭くなります。転向層を入れる書き方を整理します。
| 転向元 | 持っているもの | 要件の書き方 | 面接で確認すること |
|---|---|---|---|
| 代理店・制作会社のマーケター | 複数の顧客の施策を回した経験、手法の幅 | 「〇〇の領域で施策を自分で回し、数字を改善した経験」 | 事業会社の働き方(一つの事業を長く、自ら課題を見つける)を望んでいるか |
| 隣接する領域のマーケター | 数字を見て改善する力、マーケティングの基礎 | 「〇〇(自社の領域)に近い領域で数字を改善した経験」。自社の領域は入社後に | 領域を変える動機 |
| 営業や事業側の担当 | 顧客の理解、営業との連携 | 「顧客の課題を把握し、集客や継続の施策に関わった経験」。手法は歓迎に | 数字を見て施策を考えることに向くか |
| 広報・編集・ライター | 伝える力、コンテンツを作る力 | 「コンテンツを企画・制作し、反応を見て改善した経験」。数字で見ることは歓迎に | 数字で成果を見ることに慣れているか |
| 分析やデータの担当 | 数字を見る力 | 「データを見て施策の改善を提案した経験」。施策の実行は歓迎に | 自分で施策を回す意欲があるか |
| マーケターの経験者 | 領域による | 上の書き方で、経験者も当然に入る |
書き方の要点は、「自社の領域に近い経験と、数字を見て改善した経験があれば、領域が違っても転向層に入れる」ことです。マーケティングの手法は領域ごとに違いますが、数字を見て改善する力は共通で、領域は入社後に覚えられることが多い。
要件が決まらないときの原因
| 原因 | 起きていること | 直し方 |
|---|---|---|
| 課題が一つに決まっていない | 「マーケティングを強化したい」 | 最も困っていることを一つに |
| 領域が決まっていない | 「全般」 | 課題を解く領域を一つに |
| 予算が決まっていない | 「成果が出れば」「相談しながら」 | 無いなら無いと決める。あるなら規模を |
| 実行か戦略かが決まっていない | 「戦略から実行まで」 | 経営が委ねる範囲を決める |
| 予算の大きさとツールで書いている | 書きやすい | 経験の中身に書き換える |
| 前任者を基準にしている | 「前の人はこうだった」 | 前任者が入社時に持っていたものと、社内で身に付けたものを分ける。前任者が離れた理由も見る |
| マーケティングの分かる人が要件の議論にいない | 経営と人事だけで決めている | 外部のマーケティングの分かる人を要件の整理に入れる |
| 市場の実態を知らない | 「この要件で普通にいるはず」 | 代行や媒体に、その要件での人数を聞く |
原因の要点は、「課題と予算が決まっていない」ことが最も多い点です。この二つが決まれば、領域と段階が決まり、必須は逆算できます。
代行に出せる工程
| 工程 | 社内で持つ | 代行に出せる |
|---|---|---|
| 課題・領域・予算・段階の決定 | 判断 | 決める打ち合わせの進行 |
| 必須と歓迎の分離 | 「初日に成り立つか」の判断は社内 | 問いを立て、一つずつ確認する進行 |
| ツール・予算の大きさ・年数の書き換え | 中身は社内が出す | 経験の中身の言葉に直す |
| 転向層を入れる要件の設計 | 判断 | 転向元ごとの書き方と確認の提案 |
| 指標と評価の確認 | 経営が決める | 要件との整合の確認。動かせる指標の提案 |
| 市場の実態の確認 | 判断 | その要件での人数を示す。転向層を含めて |
| 求人票への反映 | 確認 | 書く |
| 書類の一次絞り | 施策の質の妥当性 | 領域と段階と予算の規模の分類。「何の課題を、どの領域で、いくらの予算で、どう改善したか」の記述の有無 |
| 面接で見る点の整理 | 面接官が使う | 歓迎の要件と、「一つの施策を課題の把握から結果まで」の質問の案 |
分け方の要点は、「課題・領域・予算・段階は、社内でしか決められない」ことです。代行は、決める打ち合わせの進行と、決まったものの言語化、転向層の設計を担えます。
エラベルの見解
担当する側から見ると、マーケターの要件で最も時間がかかるのは、依頼側が「予算の大きさの実績」を手放すことです。大きな予算の運用実績が、予算の無い自社での再現を示さない、しかも代理店が回していた可能性がある、と分かるまでに時間がかかります。課題と予算から逆算すると、必須は「自社と近い予算で、自社の課題に近い課題を、自分で施策を回して改善した経験」に落ち着き、転向層が母集団に入ります。
エラベルでは、マーケターの案件で要件が整理されていない場合、担当者の最初の仕事を「課題と予算を決める打ち合わせの進行」にすることをお勧めしています。課題と予算が決まると、領域と段階が決まり、求人票の冒頭が書け、自社の予算で動ける人の母集団が生まれます。飛ばして「マーケティング全般で大きな予算の実績」を待つと、数か月が過ぎるか、来ても動けない人を採ることになります。
まとめ
- マーケターの必須要件は、先に課題・領域・実行か戦略か・予算を決め、「入社初日に自社の課題と予算で施策が成り立つか」で三つ以内に
- 要件が膨らむ理由は領域を全部求める・予算の大きさを実績にする・ツールを必須にする・段階を全部求める・年数で書く
- ツール・予算の大きさ・年数は必須にしない。経験の中身(何の課題を、どの領域で、いくらの予算で、どう改善したか)で書く
- 自社と近い予算の規模で数字を作った経験を必須に。予算の無い自社に大きな予算の実績は要らない
- 絞る手順は課題→領域→予算→段階→全部書き出す→初日に成り立つか→覚えられるか・外注が持てるか→中身に書き換え→歓迎に優先順位→指標と評価を確認→四者で確認
- 面接では一つの施策を課題の把握から結果まで話してもらう。予算と、代理店任せか自分で回したかが見える
- 数字を見て改善した経験があれば、領域が違っても転向層に入れる
よくある質問
大きな予算の運用実績がある人のほうが、安心して任せられませんか
大きな予算の実績は、大きな予算の会社にいたことの証明で、予算の無い自社での再現を示しません。しかも、大きな予算の会社では代理店が運用していることが多く、本人が施策を回した経験とは限りません。自社に予算が無いなら、予算の無い中で工夫して数字を作った経験のある人のほうが、自社で動けます。安心の根拠を予算の大きさに求めず、「自社と近い予算で、自分で施策を回して数字を改善した経験」に求めます。面接で「その施策の予算はいくらで、誰が回したか」を聞けば、実績の裏が見えます。
広告もコンテンツもブランドも一人でやってほしいのですが
全部を高い水準でこなす人は市場に少なく、いても条件が高い。「全部」で募集すると、全部の領域の人が応募し、どの領域も中途半端な人か、一つの領域が強く他は弱い人が来ます。自社の課題を解く領域を一つ決め、その領域を必須に、他は歓迎にします。一人目で一つの領域を採り、他の領域は外注や二人目で補う形のほうが、現実的です。「全部」を求めるなら、それぞれの領域の水準をどこまで求めるかを決め、面接でそれぞれの施策の経験を見ます。
自社で使っているツールの経験を必須にしてよいですか
歓迎にとどめます。分析ツールも広告のツールも顧客管理のツールも、同種のものを使っていれば数週間で移行できます。必須にすると、別のツールで同じ仕事をしてきた人を弾き、市場が狭くなります。「同種のツールの経験」と種類で書き、自社のツールは「使用しているのは〇〇」と情報として求人票に書きます。候補者は、自分の経験で移行できるかを判断できます。ツールの習熟より、数字を見て施策を改善できるかのほうが、自社で動けるかを決めます。