採用代行 / 労務
労務採用を代行に出す判断基準|任せられる工程と残す工程
労務の採用を代行に出すか迷う会社は、「求人票を作って媒体に出す工程はお願いしたいが、手続きの正確さや法令の知識を外の人が見られるのか」「社労士に労務を出しているのに、社内に労務の人が要るのか」で止まります。結論を先に書くと、求人票の作成・媒体の運用・スカウト・応募者への一次対応・内定後の対応は代行に任せられ、社労士との分担・任せる範囲の決定・要件の決定・手続きの正確さの評価・合否の判断は社内に残すのが線です。ただし、労務では「社労士との分担」が決まっていないと、任せる範囲も要件も決まりません。この分担を先に決めることが、代行に出す前の要点です。他の職種と共通する分け方は人事採用を代行に出す判断基準に、人事の役割の分け方は人事担当そのものが採用できないにまとめています。
労務採用が他の職種と違う点
一つ目は、「人事」の名前で労務を募集している会社が多いことです。求人票に「人事担当募集。給与計算、社会保険、採用サポート」と書かれていて、実態は労務であることが多い。採用寄りの人事経験者はこれを見て応募し、労務の経験者は「人事」の名前を見て「採用もやらされる」と見送ります。自社が求めているのが労務なのか、採用も含む人事なのかを、先に分けます。
二つ目は、社労士事務所との分担で、社内の労務に求めるものが変わることです。手続き(社会保険、給与計算、労働保険)を社労士に出している会社と、社内で回している会社では、求める人がまったく違います。前者は「社労士との窓口と、従業員対応」、後者は「手続きの実務全部」です。分担を決めずに募集すると、要件が「全部」になります。
三つ目は、手続きの正確さと従業員対応の両方を、一人に求めがちなことです。手続きは正確さと期限、従業員対応は相談を受ける力と経営者への橋渡し。得意な人が違うことが多く、一人に両方を求めると、該当する人が減ります。
四つ目は、法令が関わるため、判断の質を社内で確かめにくいことです。労務の候補者が「この手続きはこうです」と言ったとき、それが正しいかを経営者は判断できません。社労士など、労務の分かる人が面接に入る必要があります。個別の法令の解釈は、専門家にご確認ください。
五つ目は、機微な情報を扱うことです。給与、評価、懲戒、休職、退職。労務は従業員の個人情報の中心にいて、採用の段階から、情報の扱いに慎重さが要ります。代行に出す情報の範囲も決めておきます。
この五つから、代行に出せる工程が決まります。
工程ごとの「任せられる・残す」
| 工程 | 任せられるか | 理由 |
|---|---|---|
| 労務か人事(採用含む)かの整理 | 残す | 自社が求めているのはどちらか。社内にしか分からない |
| 社労士との分担の決定 | 残す | 手続きを社労士に出すか社内で回すか。経営者が決める |
| 任せる範囲の決定 | 残す | 手続き・従業員対応・制度のどこまでを社内の労務に。経営者が決める |
| 機微な情報の扱いの設計 | 残す | 給与や評価の情報を、採用の過程でどこまで開示するか |
| 要件の決定 | 残す | 分担と範囲から。外部は整理を手伝える |
| 求人票の作成 | 任せられる(分担と範囲が決まっていれば) | 決まったものを候補者に伝わる言葉にする。機微な情報は含めない |
| 媒体の選定と運用 | 任せられる | 労務に届く媒体と経路の経験があれば |
| スカウトの検索と送信 | 任せられる | 分担に合わせた検索と、文面の個別化 |
| 応募者への一次対応 | 任せられる | 連絡、日程、流れの案内 |
| 書類の一次絞り | 条件付き | 転向元と経験の種類の分類は任せられる。手続きの正確さの妥当性は残す |
| 手続きの正確さ・法令知識の評価 | 残す | 顧問社労士など、労務の分かる人が面接で聞く |
| 従業員対応の質の評価 | 残す | 経営者が面接で、過去の対応の場面を聞く |
| 合否の判断 | 残す | 会社の判断 |
| 条件の決定と提示 | 残す | 会社の判断 |
| 内定後の対応 | 任せられる | 辞退を防ぐ連絡 |
線の要点は、「社労士との分担と、任せる範囲が、募集の前に社内で決まっているか」です。この二つが求人票とスカウトの中身になり、候補者が「自分の経験に合う範囲か」を判断する材料になります。
エラベルの見解
相談で多いのは、「労務を募集しているが、採用をやりたい人ばかり来る」「来ても、手続きの経験が浅い」というご相談です。求人票を見ると、「人事担当募集。給与計算、社会保険手続き、採用サポート、その他人事業務全般」と書かれていて、労務と採用が混ざり、社労士との分担も書かれていません。採用をやりたい人が「人事」「採用サポート」を見て応募し、労務の経験者は「全般」を見て見送っています。
見ていて差がつくのは、「社労士との分担を一文で言えるか」です。「給与計算と社会保険の手続きは社労士事務所に委託していて、社内の労務には、社労士との窓口、勤怠の管理、従業員からの相談対応、入退社の社内手続きを担ってほしい。採用は別の担当が回す」。一文で分担と範囲が分かれば、採用をやりたい人は自分向けでないと分かり、社労士との窓口と従業員対応の経験がある人は自分向けだと分かります。エラベルでは、労務の案件をお受けする前に、依頼側に「社労士との分担」と「社内の労務に担ってほしい範囲」を伺い、一文にしていただいています。
代行に出す前に社内で確認すること
代行に出す前に、四つを社内で確認します。
一つ目:社労士との分担。 手続き(給与計算、社会保険、労働保険、年末調整)のどれを社労士に出していて、どれを社内で回しているか。これから出すか、社内に戻すか。分担が決まると、社内の労務に求める範囲が決まります。
二つ目:社内の労務に任せる範囲。 社労士との窓口、勤怠の管理、従業員からの相談対応、入退社の社内手続き、就業規則の運用、安全衛生、休職や復職の対応。どこまでを社内の労務に。一人目なら、範囲を絞って「最初の一年はここまで」を決めます。
三つ目:いまの労務の状態。 誰が何をしていて、何が属人化していて、何が止まっているか。総務の兼務で回している、経営者が給与計算をしている、手続きの期限が過ぎたことがある。正直に把握します。求人票に書くかは別として、代行に伝えないと、求人票が実態と離れます。
四つ目:労務の分かる人が面接に入れるか。 顧問社労士、知人の労務経験者、代行の担当者(労務の経験者なら)。手続きの正確さと法令知識を面接で確かめる人が、社内にいないなら外から呼びます。
四つのうち、一つ目と二つ目が代行に出す前提です。三つ目と四つ目は、代行と一緒に整理できます。
労務の分かる人が社内にいない会社の組み方
労務の分かる人が社内にいない会社(一人目の労務を採る会社)では、「手続きの正確さを誰が見るか」が最大の問題です。組み方は三つあります。
一つ目は、顧問社労士に面接に入ってもらうことです。手続きを委託している社労士事務所があれば、候補者と社労士が「分担して回せるか」を面接で確かめる意味もあります。社労士側にとっても、社内の窓口が誰になるかは重要です。
二つ目は、労務の経験者を担当者に持つ代行に出すことです。代行の担当者が労務の経験者なら、書類の一次絞りで「手続きの経験の深さ」を読め、面接で手続きの正確さを聞く質問を用意できます。判断は残しますが、判断の材料を作れます。担当者の経歴の見方は担当者の経歴の見方に書いています。
三つ目は、正社員の前に、副業や業務委託の労務に回してもらうことです。社労士との窓口と従業員対応を、副業の労務経験者に一時的に担ってもらいながら、自社の労務の範囲を見極め、その上で正社員を採る。副業の労務に、正社員の面接に入ってもらうこともできます。人事の副業人材への委託を参照してください。
三つのどれを選んでも、「経営者だけで手続きの正確さを判断しない」ことが要点です。
代行を選ぶときの確認項目
労務の採用を代行に出すとき、代行に確認する項目は五つです。
- 担当者に労務の経験があるか。 労務の採用を回した経験ではなく、労務そのものを担った経験。手続きの正確さを読めるかが変わる
- 社労士との分担を求人票にどう書くか、案を出せるか。 分担を聞いて、候補者に伝わる言葉にできるか
- 労務に届く媒体と経路の経験。 管理部門に強い媒体、社労士事務所からの転向層、総務からの転向層。経路ごとの経験
- 機微な情報の扱い。 給与や評価の情報を、代行の担当者にどこまで渡すか、代行側の管理の方法
- 面接に労務の分かる人を用意できるか。 社内にいない場合、担当者か、代行の紹介する人が面接に入れるか
五つのうち、一つ目が最も大きい。労務の経験の無い担当者は、「人事の採用」として回し、労務と採用が混ざった求人票を作ります。
代行に出したあとに起きること
代行に出したあと、労務の採用で起きやすいことを三つ挙げます。
一つ目は、代行の担当者から「社労士との分担が曖昧」と指摘されることです。代行が求人票を作ろうとして、「この手続きは社労士ですか、社内ですか」と聞かれ、答えられない。これは代行に出したから起きる問題ではなく、出す前から曖昧だったものが表に出ただけです。ここで分担を決めます。
二つ目は、応募者の転向元が分かれることです。社労士事務所出身、事業会社の労務、総務からの転向、大きな会社の人事部の労務担当。それぞれ持っているものが違い、面接で確かめることも違います。代行の担当者に転向元の分類をしてもらい、面接の質問を変えます。
三つ目は、面接で「手続きの正確さ」と「従業員対応」の両方が高い人が少ないと分かることです。手続きは正確だが従業員対応は苦手、その逆。ここで、社内の労務に最初に求めるのはどちらかを決め直します。社労士に手続きを出しているなら従業員対応を重く、社内で手続きを回すなら正確さを重く。決め直しは経営者の判断で、代行はその材料を出します。
エラベルの見解
担当する側から見ると、労務の採用で最も効くのは、「社労士との分担を先に決め、求人票に書く」ことです。分担が書かれた求人票は、労務の経験者に「この会社は労務を分かっている」と読まれ、分担が無い求人票は「全部を一人に押し付ける会社」と読まれます。分担を決めるだけで、応募者の顔ぶれが変わります。
エラベルでは、労務の案件で担当者を紹介するとき、最初の一週間で経営者と社労士との分担を確認し、社内の労務に担ってほしい範囲を一文にするところまでをお願いしています。手続きの正確さや法令の知識の評価は担当者ではなく、顧問社労士や労務の分かる人が面接で行い、個別の法令の解釈は専門家にご確認いただくようお伝えしています。
まとめ
- 労務採用が他と違うのは「人事」の名前で労務を募集している・社労士との分担で求める人が変わる・正確さと従業員対応を一人に求めがち・判断の質を社内で確かめにくい・機微な情報を扱うの五つ
- 求人票・媒体・スカウト・一次対応・内定後は任せられ、社労士との分担・任せる範囲・要件・正確さの評価・合否は残す
- 代行に出す前に社労士との分担・任せる範囲・いまの労務の状態・面接に入る労務の分かる人を確認する
- 労務の分かる人がいない会社は顧問社労士が面接に入る・労務経験者が担当者の代行・副業の労務に先に回すのどれか
- 代行を選ぶときは担当者の労務経験・分担の書き方・経路の経験・機微な情報の扱い・面接に入る人を確認する
- 出したあとは分担の曖昧さが表に出る・転向元が分かれる・正確さと対応の両方が高い人は少ない。決め直しは経営者、材料は代行
よくある質問
労務を社労士に全部出しているので、社内に労務の人は要らないのではないですか
手続きを社労士に出していても、社内に「社労士との窓口」「勤怠の管理」「従業員からの相談を受けて社労士につなげる」「入退社の社内手続き」を担う人は要ります。この範囲を経営者や総務の兼務で回せる規模なら、社内の労務は要りません。回らなくなってきたなら、社内の労務の一人目を採る時期です。その場合の要件は「手続きの実務全部」ではなく、「社労士との窓口と従業員対応」で足ります。社労士に出している範囲を求人票に書くと、この層に届きます。
給与や評価の情報を、代行の担当者に渡してよいのですか
採用の工程で、代行の担当者に給与や評価の個人情報を渡す必要は、ほとんどありません。求人票に書くのは分担と範囲で、個人の給与や評価は不要です。候補者に伝える条件は、会社が決めて会社が提示します。代行に渡す情報の範囲を最初に決め、契約で扱いを定めます。個人情報の扱いに関わる判断は、専門家にご確認ください。
手続きの正確さを、経営者の私が面接で確かめられますか
経営者だけでは難しい。候補者が「この手続きはこうです」と言ったとき、正しいかを判断できないからです。顧問社労士に面接に入ってもらう、労務経験者が担当者の代行に質問を作ってもらう、副業の労務経験者に面接に入ってもらう、のどれかで、労務の分かる人を用意します。経営者が確かめるのは「従業員対応の質」と「経営者に言うべきことを言えるか」で、これは過去の具体的な場面を聞けば分かります。役割を分けて面接します。