採用代行 / 採用の課題

採用KPIに何を置くべきか|「採用人数」の一つ手前に、「動かせる数字」を三つ置く

公開 2026-09-13

「採用のKPIを決めよう」と言われて、「採用人数」しか出てこない。人数を置いても、期末に「達成できなかった」と分かるだけで、途中で何が悪かったのか、どこに手を打てばよかったのかが分からない。他社のKPIの例を見ても、自社に合うかどうか判断できない。結論を先に書くと、採用KPIは、「採用人数」の一つ手前に、「動かせる数字」を置きます。人数は結果で、途中で動かせません。途中で動かせるのは、応募の数、面接に進む率、内定の承諾率、各段階の日数です。この中から三つを選び、自社の記録を元に目標を置き、月に一度見て、一つ動かします。数字の取り方は採用の数字が取れていないに、代行とのKPIの合意はKPIの合意のしかたにまとめています。

KPIが決められない構造

採用KPIが決められないのは、次の構造で起きます。

構造起きていること
「採用人数」しか思いつかない結果の数字しか見ていない。途中の数字を取っていない
他社のKPIをそのまま使おうとする他社の経路・段階・規模と自社が違う。合わない
数字が取れていないKPIを置いても、実際の数字が無いので、達成したかどうか分からない
目標の数字の根拠が無い「応募を月に百件」と置いても、なぜ百件かが無い。達成しても未達でも、意味が分からない
多すぎる二十項目のKPIを置いて、どれも見ない
動かせない数字を置いている「市場の応募者数」「競合の採用数」など、自社では変えられない数字
見る場が無い置いても、月に一度見て判断する場が無い

KPIは、「置く」ことより「見て動かす」ことが目的です。動かせない数字、見ない数字は、KPIになりません。

KPIに置く数字の条件

KPIに置く数字は、四つの条件を満たすものです。

一、自社で動かせる。 求人票を直す、経路を変える、速さを上げる、面接の観点を揃える、といった自社の行動で変わる数字。市場や競合の数字は、動かせません。

二、毎月取れる。 月に一度、記録から数えられる数字。年に一度しか分からない数字は、途中で手を打てません。

三、結果(採用人数)につながる。 応募が増えれば面接が増え、面接が増えれば内定が増える。結果につながる途中の数字。

四、少ない。 三つまで。三つなら、毎月見て、一つ動かせます。十あると、見なくなります。

四つの条件で、候補は絞れます。「応募の数」「面接に進む率」「内定の承諾率」「各段階の日数」「辞退の数と理由」。この中から、自社の詰まりに合わせて三つを選びます。

最初に置く三つ

自社の詰まりに合わせて、三つを選びます。詰まりの見つけ方は採用ファネルのどこが詰まっているか分からないに書いています。

詰まり置くKPI動かす行動
応募が少ない経路ごとの応募の数求人票の一行目、経路の見直し、社員の紹介
応募はあるが面接に進まない書類から面接に進む率要件の書き方、経路の見直し
面接まで進むが辞退される応募から面接までの日数、面接前の辞退の数返信と日程の速さ、案内の中身
面接で落ちる段階ごとの通過率面接の観点と基準、書類との対応
内定を辞退される内定の承諾率、最終から内定までの日数年収のすり合わせ、内定の速さ、動機づけ
全体が遅い応募から内定までの日数各段階の期限、判定の速さ

詰まりが分からない場合の、汎用の三つは、「経路ごとの応募の数」「書類から面接に進む率」「内定の承諾率」です。この三つで、入口・中間・出口が見えます。

三つを置いたら、「採用人数」は結果として別に持ちます。人数はKPIではなく、目標です。三つが動けば、人数はついてきます。

目標の数字の決め方

KPIの目標の数字を、根拠を持って決めます。

自社の記録から、現状の数字を出す。 「先月の応募は二十件、面接に進んだのは二件、承諾率は一件中ゼロ」。現状が無いと、目標は置けません。

採用人数から、逆算する。 「三か月で一人採る」なら、「承諾率がこのくらいなら内定が何件要る、面接に進む率がこのくらいなら面接が何件要る、応募が何件要る」。自社の記録の率で逆算します。

現状と逆算の差が、動かす幅。 「応募が月に二十件で、逆算では四十件要る。応募を倍にする」または「応募は足りていて、面接に進む率を上げれば足りる」。差が、どのKPIを動かすかを決めます。

一般の相場や他社の率を、目標にしない。 自社の経路・段階・規模と違います。自社の記録から出します。数字を資料に載せる場合は、自社の記録の数字だけを使います。

目標は、三か月で見直す。 最初の目標は仮です。三か月の記録で、現実的な数字に直します。

「上げる」だけでなく「下げる」KPIもある。 日数は下げる。辞退の数は下げる。方向を明記します。

目標の要点は、「自社の記録からの逆算」です。逆算が無い目標は、達成しても未達でも、意味が分かりません。

エラベルの見解

相談で最も多い失敗は、「他社の採用KPIの例を見て、『応募数・書類通過率・面接設定率・内定率・承諾率・採用単価・採用リードタイム・面接官満足度』と八つ置いて、半年後、一つも見ていなかった」というものです。八つは多すぎ、自社の記録が無く、目標の根拠も無かった。詰まりが「内定後の辞退」だったので、「内定の承諾率」と「最終から内定までの日数」の二つに絞り、自社の記録から目標を置いたら、毎月見て、一つ動かす運用が回り始めました。

見ていて差がつくのは、担当者が「KPIを減らす」提案をできるかどうかです。「KPIはこれだけあります」と並べる担当者と、「詰まりはここなので、KPIはこの二つに絞りましょう。他は数字として取りますが、KPIにはしません」と絞る担当者がいます。後者のKPIは、見られます。

発注側にできるのは、「KPIを決めてほしい」ではなく、「自社の詰まりに合わせて、三つに絞ってほしい」と依頼することです。

段階ごとのKPIの使い分け

採用の段階(体制の成熟度)によって、置くKPIは変わります。

段階置くKPI理由
数字を取り始めたばかり応募の数、面接に進む率、内定の承諾率の三つ入口・中間・出口が見える汎用の三つ。まず取れる状態を作る
詰まりが見えてきた詰まりの段階の率と日数詰まりに集中する。三つのうち一〜二つを詰まりに置き換える
詰まりが解消してきた次の詰まりの段階に置き換えるKPIは固定せず、詰まりが動けば動かす
複数の求人が動いている求人ごとに、詰まりに合わせた三つまとめない。求人ごとの詰まりは違う
採用代行を使っている代行と合意した三つ代行が動かせる数字に絞る。合意の仕方はKPIの合意のしかた
半年以上、数字が溜まった経路ごとの費用対効果、面接官ごとの通過率を足す分析の段階。ただし、KPIは三つのまま

使い分けの要点は、「KPIは固定しない」ことです。詰まりが動けば、KPIも動かします。半年前のKPIを見続けても、いまの詰まりは見えません。

KPIを見る場と運用

KPIは、見る場と運用が無ければ、置いても動きません。

月に一度、三十分。 責任者と人事(または担当者)で。三つのKPIの一枚を見ます。

一枚の型。 三つのKPIの、今月の数字、先月の数字、目標、差、動かした行動、来月動かすこと。一枚。

「一つ動かす」を決める。 三つのうち、目標との差が最も大きいものに、来月何をするかを一つ決めます。三つ全部を同時に動かさない。

動かした結果を、翌月見る。 「求人票の一行目を変えた→応募が増えたか」。効いたら続け、効かなければ別の行動。

三か月ごとに、KPIそのものを見直す。 詰まりが動いていれば、KPIを置き換えます。目標の数字も、記録で直します。

KPI以外の数字も、取っておく。 KPIにしない数字(段階ごとの全部の数と日数)は、記録として取り続けます。KPIを置き換えるときの材料になります。

「未達」を責めない。 KPIは、責める材料ではなく、動かす材料です。未達なら、「何を動かすか」を決めます。責めると、数字が操作されます。

運用の要点は、「月に一度、一つ動かす」です。これが回れば、KPIは機能します。

置いてはいけないKPI

KPIに置くと、採用が歪む数字があります。

採用人数だけ。 人数を追うと、「とにかく採る」になり、合わない人を採り、早期に辞めます。人数は目標として持ち、KPIは途中の数字に。

採用単価だけ。 単価を下げることを追うと、費用のかかる経路(紹介、スカウト)を避け、採れない職種が採れなくなります。単価は記録として見て、KPIにはしない、または「一人あたりの費用と期間と定着」を合わせて見ます。

応募数だけ。 応募を増やすことを追うと、求人票を広く薄くし、要件に合わない応募が増え、対応の手間だけ増えます。応募は「面接に進む率」と合わせて見ます。

面接の実施数だけ。 面接の数を追うと、書類の判断を甘くし、面接官の時間を消費します。

動かせない数字。 市場の応募者数、競合の採用数、口コミの点数。自社の行動で変わらないものは、KPIにしません。

面接官の「満足度」のような、測り方が曖昧な数字。 測り方が決まっていない数字は、動かしようがありません。

入社後の定着を、採用のKPIから外す。 定着はKPIにしにくいですが、記録として「入社三か月・半年・一年の在籍」は取ります。採用の質の最終の確認です。

置いてはいけないKPIの共通点は、「単独で追うと歪む」ことです。組み合わせで見るか、記録にとどめます。

外注する場合の範囲

採用KPIの設定を、採用代行に出す場合の範囲です。

出せる工程。 自社の記録からの現状の数字の整理、詰まりの特定、KPIの三つの案、採用人数からの逆算と目標の数字の案、一枚の型の作成、月に一度の一枚の作成、動かす行動の案、翌月の確認、三か月ごとのKPIの見直しの材料、KPI以外の数字の記録、代行と発注側のKPIの合意の整理。

社内に残す判断。 KPIの三つの決定、目標の数字の承認、動かす行動の決定(要件・条件・経路の変更など)、KPIの見直しの決定、責任者が見る場の設定。

外注の効きどころ。 KPIが決められない会社は、「記録が無い」か「絞れない」かのどちらかです。担当者が記録を整え、詰まりを特定し、三つに絞り、目標を逆算し、月に一度の一枚を出せば、KPIは「見て動かす」ものになります。担当者は複数の会社の詰まりを見ているので、「この詰まりならこのKPI」の型を持ち込めます。ただし、他社の率を自社の目標にはしません。

外注しても動かない場合。 責任者が月に一度の場に出ない、KPIを二十項目に戻す、未達を責めて数字が操作される。社内の判断で、代行を替えても直りません。

KPIは、三つに絞って月に一度動かせば、機能します。外注は、絞る材料と運用を持ち込む手段です。

エラベルの見解

担当する側から見ると、KPIの相談で最も多いのは、「KPIを置いたが、動かす行動が無い」ことです。「応募を月に四十件」と置いて、四十件に届かなかった。「では、来月は何をするか」が無く、翌月も届かず、「KPIは意味が無い」になる。

KPIは、数字を置くことではなく、「差を見て、一つ動かす」ことです。「応募が二十件で目標が四十件、差が二十件。来月は求人票の一行目を変える」。行動が無いKPIは、ただの数字です。

発注側にできるのは、月に一度の場で、「今月は何を一つ動かすか」を毎回決めることです。決めない月は、KPIを見ていないのと同じです。

まとめ

よくある質問

採用人数をKPIにしてはいけないのですか

採用人数は「目標」として持ちます。KPIにすると、期末に「達成できなかった」と分かるだけで、途中で動かせません。人数の一つ手前の「動かせる数字」(応募の数、面接に進む率、承諾率、日数)をKPIに置き、月に一度見て動かせば、人数はついてきます。人数だけを追うと、「とにかく採る」になり、合わない人を採って早期に辞めることもあります。

他社の採用KPIの例を、参考にしてもよいですか

「どんな数字があるか」の参考にはなりますが、他社の目標の数字(率や件数)を自社の目標にはしません。経路・段階・規模・職種が違えば、率も件数も違います。自社の記録から現状を出し、採用人数から逆算して、自社の目標を置きます。他社の率と比べて「低い」と焦る必要も、「高い」と安心する必要もありません。自社の先月と比べます。

KPIを置いても、達成できませんでした

未達は、「何を動かすか」を決める材料です。責める材料にすると、数字が操作されます。目標との差を見て、来月一つ動かす行動を決めます。三か月続けて未達なら、目標の数字が自社の記録と合っていない(高すぎる)か、KPIが詰まりと合っていない(別の段階が詰まっている)かです。目標を記録で直すか、KPIを置き換えます。KPIは固定するものではなく、詰まりに合わせて動かすものです。