採用代行 / 採用の課題

採用目標人数の根拠がない|「去年と同じ」「何となく」をやめて、事業・欠員・育成の三つから積み上げる

公開 2026-09-13

「今年の採用目標は十人」。人事が経営者から言われた数字だが、なぜ十人なのか、経営者も「去年もそのくらいだった」「事業を広げるには要る」としか言わない。現場に聞くと「うちは三人欲しい」「うちは五人」で、合計すると十五人。十人の根拠も、十五人の根拠も無い。根拠が無いので、達成しても「良かった」だけ、未達でも「仕方ない」で終わり、次の年もまた「十人」。結論を先に書くと、採用目標人数は、「去年と同じ」「経営者の勘」「現場の要望の合計」では根拠になりません。「事業の計画から要る人数」「欠員と退職の見込み」「育成で内部から埋められる数」の三つから積み上げます。積み上げた目標には根拠があり、達成の意味も、未達の原因も、体制と予算の判断も、根拠に結びつきます。KPIの置き方は採用KPIに何を置くべきかに、経営者への伝え方は経営者に採用の状況が伝わらないにまとめています。

根拠が無い構造

採用目標に根拠が無いのは、次の構造で起きます。

構造起きていること
去年と同じ去年の目標を、そのまま今年に。事業も体制も変わっているのに
経営者の勘「事業を広げるには、このくらい要る」。事業の計画と人数の対応が無い
現場の要望の合計各部署が「欲しい人数」を出し、足す。部署ごとに根拠がばらばらで、多めに出る
欠員の補充だけ辞めた人の分だけ採る。事業の変化と、育成で埋められる分を見ていない
予算から逆算「採用予算がこれだけだから、この人数」。事業に要る人数と切れている
職種に分かれていない「十人」だけで、どの職種を何人かが無い。求人票も経路も決められない
時期に分かれていない「年間で十人」だけで、いつまでに何人かが無い。半年何もせず、後半に慌てる
目標を見直す仕組みが無い年の初めに決めたら、事業が変わっても変えない

根拠が無い目標は、達成しても未達でも、次に活かせません。「十人採れた」が良かったのか、「十人で足りたのか」が分からないからです。

目標を積み上げる三つの元

採用目標は、三つの元から積み上げます。

一、事業の計画から要る人数。 「今年、この事業をこの規模にする。そのために、この役割の人が何人要る」。事業の計画と、役割と、人数の対応。事業の責任者が出します。「売上をこのくらいに」なら、「そのために営業が何人、それを支える役割が何人」。

二、欠員と退職の見込み。 いまの欠員(既に足りていない役割)と、今年の退職の見込み(定年、既に決まっている退職、過去の退職率からの見込み)。人事が出します。見込みは自社の記録から。

三、育成で内部から埋められる数。 要る人数のうち、いまの社員の育成や異動で埋められる数。「営業が五人要るが、二人は内部の異動で、三人を外から」。現場の責任者と人事が出します。

積み上げ。 「事業から要る人数+欠員と退職の見込み−内部で埋められる数=外から採る人数」。これが採用目標です。

三つの元があれば、「なぜこの人数か」に答えられます。「事業の計画でこの役割がこれだけ要り、退職の見込みがこれだけで、内部で埋められるのがこれだけなので、外からこの人数」。

積み上げの手順

三つの元から、目標を積み上げる手順です。

事業の責任者に、事業の計画と役割を聞く。 「今年、事業をどうするか」「そのために、どの役割が何人要るか」。「人が欲しい」ではなく、「この役割で、これをする人が、何人」。役割の記述(ジョブディスクリプションがない)があれば、役割の単位で数えられます。

人事が、欠員と退職の見込みを出す。 いまの欠員の一覧。今年の退職の見込み(決まっているもの、過去の記録からの見込み)。数字は自社の記録から。

現場の責任者と、内部で埋められる数を確認する。 「要る役割のうち、いまの社員の育成や異動で埋められるのは」。育成には時間がかかるので、「いつまでに育つか」も。

職種ごと、時期ごとに分ける。 「営業を三人、四〜六月に一人、七〜九月に二人」。年間の合計だけでなく、職種と時期で。時期は、事業の計画(いつから要るか)と、採用にかかる期間(応募から入社まで、自社の記録で何か月か)から逆算します。

採用にかかる期間と、体制で、現実性を見る。 「三人を三か月で採るには、自社の記録では応募がこのくらい要り、人事の時間がこのくらい要る。いまの体制で可能か」。可能でなければ、時期をずらすか、体制を足すか、目標を見直すか。

一枚にする。 職種×時期の表と、三つの元の内訳と、前提(事業の計画、退職の見込み、育成の見込み)。

経営者と合意する。 一枚を経営者に見せ、「この前提で、この目標」と合意します。前提が変われば、目標も変わることを、最初に共有します。

手順の要点は、「役割の単位で数える」ことです。「人が欲しい」を「この役割で何人」に変えれば、根拠が付きます。

目標と体制と予算の対応

目標が積み上がったら、体制と予算を対応させます。

目標体制予算
職種ごとの人数と時期その職種を採るのに要る、人事の時間、面接官の時間、経路経路ごとの費用、代行や紹介の費用
年間の合計合計を回すのに要る、人事の人数(または代行の範囲)年間の採用費用
採用にかかる期間期間内に回すための、選考の速さと面接の枠
内部で埋める数育成の担当と時間育成の費用

対応の要点は、「目標が先、体制と予算が後」です。「予算がこれだけだから、この人数」は逆です。目標に対して体制と予算が足りないなら、目標を見直すか、体制と予算を足すかを、経営者が判断します。

「目標は十人だが、人事は一人で、予算は去年と同じ」は、目標と体制と予算が対応していません。対応していない目標は、達成できません。

エラベルの見解

相談で最も多い失敗は、「採用目標が『十人』と決まっていて、人事は一年かけて八人採り、経営者に『未達』と言われた。ただ、十人の根拠を誰も説明できず、八人で事業は回っていた」というものです。根拠が無い目標では、達成も未達も意味がありません。事業の計画から積み上げたら、要る人数は六人で、八人は「多く採りすぎた」でした。翌年から、三つの元で積み上げ、職種と時期に分け、経営者と前提を合意する形にしたら、目標は「達成したかどうか」ではなく「事業に要る人が揃ったか」で見られるようになりました。

見ていて差がつくのは、担当者が「目標の根拠」を聞くかどうかです。「目標は十人ですね、頑張ります」と受け取る担当者と、「十人の内訳(職種、時期、事業の計画との対応)を教えてください。無ければ、一緒に積み上げましょう」と聞く担当者がいます。後者は、根拠のある目標で動けます。

発注側にできるのは、担当者に「目標の人数」だけでなく、「三つの元の内訳」を渡すことです。無ければ、担当者と一緒に作ります。

目標を見直す運用

目標は、年の初めに決めて終わりではありません。見直す運用です。

四半期ごとに、前提を確認する。 事業の計画は変わったか、退職の見込みは変わったか、育成の見込みは変わったか。前提が変われば、目標も変えます。

進み具合を、職種と時期で見る。 「営業を四〜六月に一人」の予定が、六月末で採れていなければ、七〜九月の目標に足すか、事業の計画を見直すか。

採れすぎも、見直す。 目標より早く多く採れたら、「事業に要るか」を確認します。目標を超えて採ることが、良いとは限りません。

採用の記録で、期間と率を更新する。 「応募から入社まで何か月か」「応募が何件で内定が何件か」の自社の記録が溜まれば、次の積み上げの精度が上がります。

変えた目標と、変えた理由を記録する。 「七月に、事業の計画の変更で、営業の目標を三人から二人に」。年末の振り返りと、翌年の積み上げの材料です。

年末に、三つの元と結果を照らす。 「事業の計画どおりに要る人が揃ったか」「退職の見込みは合っていたか」「育成で埋められる見込みは合っていたか」。ずれが、翌年の精度を上げます。

見直す運用の要点は、「前提が変われば目標も変わる」を、経営者と最初に合意しておくことです。合意が無いと、「年初の目標を変えるのは逃げ」と見られます。

経営者との合意

積み上げた目標を、経営者と合意する伝え方です。

一枚で。 職種×時期の表、三つの元の内訳、前提、体制と予算の対応。

「なぜこの人数か」を、三つの元で説明する。 「事業の計画でこの役割がこれだけ、退職の見込みがこれだけ、内部で埋められるのがこれだけ。外からこの人数」。

体制と予算の対応を、先に示す。 「この目標を回すには、人事の時間がこれだけ、経路の費用がこれだけ。いまの体制と予算では、ここまで」。対応しない目標を、受け取らない。

前提が変われば目標も変わることを、合意する。 「事業の計画が変われば、四半期ごとに見直します」。

経営者の「もっと採れ」に、根拠で返す。 「事業の計画のどの役割が、何人足りませんか」。根拠が出れば足し、出なければ現状の目標で。

現場の要望の合計と、積み上げの差を、説明する。 「現場の合計は十五人ですが、事業の計画から積み上げると十人です。差の五人は、〇〇部の要望が事業の計画と対応していないためです」。現場の要望を否定せず、対応の有無で説明します。

合意の要点は、「人数」ではなく「前提」を合意することです。前提が合意されていれば、人数の変更は前提の変更として扱えます。

外注する場合の範囲

採用目標の根拠の問題を、採用代行に出す場合の範囲です。

出せる工程。 三つの元の聞き取りの設計と進行(事業の責任者、人事、現場の責任者)、欠員と退職の見込みの整理(自社の記録から)、内部で埋められる数の確認の進行、職種×時期の表の作成、採用にかかる期間と率の自社の記録からの整理、体制と予算の対応の案、一枚の作成、経営者との合意の場の準備、四半期ごとの見直しの材料、進み具合の報告、年末の三つの元と結果の照合。

社内に残す判断。 事業の計画の決定、役割と人数の決定、退職の見込みの判断、育成で埋めるかどうかの判断、目標の決定と変更、体制と予算の決定、経営者の合意。

外注の効きどころ。 目標の根拠が無い会社は、「積み上げる手順」と「聞き取る人」がいません。担当者が手順を持ち込み、事業の責任者・人事・現場の責任者に聞き、一枚にまとめれば、根拠のある目標ができます。担当者は複数の会社の採用の期間と率を見ているので、「この職種は応募から入社まで何か月かかることが多い」の見立てを持ち込めます。ただし、自社の目標は自社の記録で置きます。

外注しても動かない場合。 事業の責任者が計画と役割を出さない、経営者が「十人」を根拠なく譲らない、現場が要望の合計を譲らない。社内の判断で、代行を替えても直りません。

目標の根拠は、三つの元から積み上げれば付きます。外注は、積み上げる手順と聞き取りを持ち込む手段です。

エラベルの見解

担当する側から見ると、目標の相談で最も多いのは、「目標が職種と時期に分かれていない」ことです。「年間十人」だけでは、どの求人票を、どの経路で、いつ出すかが決まりません。担当者は「まず、どの職種から」を聞くことから始めることになります。

職種と時期に分けるだけで、「四〜六月に営業を一人」は、「三月に求人票を出し、この経路で、応募から入社まで三か月」と、動く形になります。「年間十人」は、動けません。

発注側にできるのは、目標を「年間の合計」ではなく「職種×時期の表」で持つことです。

まとめ

よくある質問

現場の要望を合計した人数と、積み上げた人数が違います

現場の要望は、「欲しい」の合計で、事業の計画との対応が無いことが多いです。積み上げた人数(事業の計画から要る役割の人数)と、現場の要望の差を、部署ごとに見ます。「〇〇部の要望三人のうち、事業の計画と対応しているのは一人」のように。現場の要望を否定せず、「対応していない二人は、どの計画に要るか」を現場と話します。対応が出れば足し、出なければ積み上げの人数で。判断は経営者です。

退職の見込みは、どう出せばよいですか

決まっている退職(定年、既に申し出のあるもの)と、過去の記録からの見込み(過去数年の退職の数と時期)を、自社の記録から出します。一般の離職率は使いません。見込みは仮で、四半期ごとに実際の退職と照らして直します。「退職の見込みを目標に入れる」ことに抵抗がある会社もありますが、入れないと、欠員が出てから慌てて採ることになります。

目標を途中で変えるのは、逃げに見えませんか

前提(事業の計画、退職の見込み、育成の見込み)が変われば、目標が変わるのは当然です。「年初の目標を変えるのは逃げ」と見られるのは、前提を経営者と合意していないからです。最初に「前提が変われば、四半期ごとに見直す」と合意し、変えるときは「どの前提が、どう変わったか」を示します。前提が変わっていないのに目標を下げるのは逃げですが、前提が変わったのに目標を変えないのは、計画の放棄です。