採用代行 / 採用の課題
面接官によって評価がばらつく|「見る目」を揃えるのではなく、観点と基準と記録を揃える
同じ候補者を、一次のAさんは「良い」と通し、二次のBさんは「弱い」と落とす。逆に、Aさんが落とした候補者を、後で見たBさんが「なぜ落とした」と言う。面接官によって評価がばらつき、誰の判断を信じてよいか分からない。結論を先に書くと、ばらつきは面接官の「見る目」の差ではなく、「何を見るか」「どこで通すか」「どう記録するか」が揃っていないことから起きます。観点と基準と記録の型を揃えれば、ばらつきは減り、残った差は「話し合える差」になります。面接官が足りない問題は面接官が足りないに、面接の評価の設計は面接評価の設計にまとめています。
ばらつきが起きる構造
評価のばらつきは、次の構造で起きます。
| 構造 | 起きていること |
|---|---|
| 観点が決まっていない | Aさんは経歴の深さを見て、Bさんは人柄を見ている。見ているものが違えば、評価は一致しない |
| 通す基準が言葉になっていない | 「良い人なら通す」。「良い」の中身が面接官ごとに違う |
| 記録が感想 | 「印象が良かった」「少し弱い」。後から読んでも、何を根拠にそう判断したか分からない |
| 面接官が話し合う場が無い | 判定がずれても、ずれた理由を話す場が無く、ずれたまま |
| 段階ごとの役割が混ざっている | 一次でも最終でも同じことを見ていて、一次の判定と最終の判定が衝突する |
| 面接官の厳しさの差 | 「自分より上でなければ通さない」人と、「育てれば良い」人。基準が無ければ、個人の厳しさがそのまま判定になる |
構造が揃っていなければ、面接官を研修しても、ばらつきは残ります。「見る目」を揃えるのではなく、「見る対象と基準と記録」を揃えます。
観点を揃える
最初に揃えるのは、「何を見るか」です。
観点を三〜四つに絞り、書面にする。 「〇〇の経験の深さ」「役割の認識が合っているか」「実務の話を具体的に語れるか」「一緒に働く相手として問題が無いか」。多いと、面接官ごとに重みが変わります。
観点ごとに、確認する質問を用意する。 「〇〇を設計した場面で、何を、どう決めましたか」「この役割は〇〇を決める役割ですが、経験のどこが活きますか」。質問が同じなら、聞き出せる情報が揃います。
段階ごとに観点を分ける。 一次は経歴の深さと役割の認識、二次は組織との相性、最終は通すかどうかの判断と訴求。同じ観点を三回見れば、三回ぶんの判定が衝突します。
「見ない」観点も決める。 「学歴は見ない」「転職回数は見ない」「年齢は見ない」。見ないと決めていない観点は、面接官ごとに勝手に見て、ばらつきの元になります。私的な事情に関する質問は法令上の扱いがあるので、専門家に確認のうえ、面接官に共有します。
観点が書面にあれば、面接官は「自分の見方」ではなく「決められた観点」で見ます。それだけで、ばらつきの半分は消えます。
通す基準を書面にする
観点が揃っても、「どこで通すか」が揃っていなければ、判定はばらつきます。
観点ごとに、「通す状態」を文にする。 「〇〇の経験の深さ:自分で設計し、判断した場面を、具体的に語れる」「役割の認識:求人票の役割を、自分の言葉で言い直せる」。抽象語ではなく、面接で観察できる状態で書きます。
「通さない状態」も文にする。 「経験の深さ:所属した事実は語れるが、自分が何を決めたかを語れない」。通す状態だけでは、境目が分かりません。
段階ごとに、通す条件を決める。 「一次:三つの観点のうち二つ以上が通す状態なら通す」「最終:全部が通す状態で、責任者が一緒に働きたいと判断すれば通す」。条件が数で決まっていれば、面接官の厳しさの差が入りにくくなります。
「迷ったら通す」か「迷ったら落とす」かを決める。 一次は「迷ったら通す」(次の段階で見る)、最終は「迷ったら落とす」(迷いは入社後に問題になる)。決めておかないと、迷いの扱いが面接官ごとに変わります。
基準は、実際の面接で更新する。 最初の基準は仮です。「この人は通したが、基準では落ちる」という例が出たら、基準のほうを見直します。
基準が文になっていると、判定がずれたとき、「どちらが正しいか」ではなく「基準のどこで読みが違ったか」を話せます。
記録の型を揃える
記録が感想だと、後から判定の根拠をたどれません。型を揃えます。
| 項目 | 書き方 |
|---|---|
| 観点ごとの判定 | 通す状態/通さない状態/判断できず、の三択 |
| 根拠 | 候補者が語った場面を一〜二行で。「〇〇の設計で、△△を自分で決めたと語った」 |
| 総合の判定 | 通す/通さない/迷い |
| 迷いの理由 | 迷いの場合、何が確認できなかったかを一行 |
| 次の段階への申し送り | 「〇〇が確認できていないので、二次で聞いてほしい」 |
| 印象 | 書くなら最後に、判定の根拠とは分けて |
記録は、面接の直後に、五分で書ける型にします。長い評価シートは、面接官が埋めなくなり、埋めても感想になります。
根拠が「候補者が語った場面」で書かれていれば、別の面接官が読んでも、判定の妥当性を確かめられます。「印象が良かった」は確かめられません。
エラベルの見解
相談で最も多い失敗は、「面接官の評価がばらつくので、評価項目を十五個に増やし、五段階で点数をつける形にした」というものです。項目が多いほど、面接官ごとの重みづけがばらつき、五段階の「三」の意味も面接官ごとに違います。合計点で判定すると、ばらつきが足し合わさって、さらに読めない数字になります。観点を三つに絞り、通す状態を文にして、三択で判定する形に戻したら、ばらつきは目に見えて減りました。
見ていて差がつくのは、担当者が「基準の文」を書けるかどうかです。「経験の深さを見る」と書く担当者と、「自分で設計し、判断した場面を具体的に語れれば通す状態」と書く担当者がいます。後者の文があれば、面接官は同じ物差しで見られます。
発注側にできるのは、「面接官の見る目を揃えたい」ではなく、「観点と通す状態を文にしたい」と依頼することです。見る目は揃いませんが、文は揃います。
面接官同士のすり合わせ
観点・基準・記録を揃えても、面接官同士で読みが違う場面は残ります。すり合わせの場を作ります。
同じ候補者を二人で見る回を、定期的に入れる。 新しい面接官の最初の数回と、そのあとも月に一度程度。二人の判定を比べ、ずれていれば、基準のどこで読みが違ったかを話します。
ずれた判定を、集めて振り返る。 一次が通して最終が落とした、一次が落としたが後で見直して通した。ずれた例を月に一度集め、面接官全員で「基準のどこがずれたか」を見ます。
「通した人がその後どうなったか」を戻す。 入社した人が活躍しているか、早く辞めたか。面接の判定と、入社後の結果を照らし合わせれば、基準のどこが効いていて、どこが効いていないかが分かります。ただし、入社後の評価は人事情報なので、扱いは社内の規程に沿います。
面接官の「癖」を本人に伝える。 「Aさんは経歴の深さを厳しく見る傾向がある」「Bさんは人柄で通しがち」。癖は悪ではなく、知っていれば補正できます。
責任者が「自分の判定が正しい」と言い切らない。 責任者の判定を正解にすると、他の面接官は責任者に合わせるだけになり、基準は育ちません。責任者も、基準に沿って判定します。
すり合わせは、月に一度、三十分で足ります。場が無いことが、ばらつきを固定します。
ばらつきを見える化する運用
ばらつきは、見えていないから放置されます。見える化します。
| 見るもの | 見方 |
|---|---|
| 面接官ごとの通過率 | 誰が通しやすく、誰が厳しいか。極端な差があれば、基準の読みを確認する |
| 段階間の判定の一致 | 一次で通した人が、二次でどれだけ通るか。極端に低ければ、一次と二次の観点がずれている |
| 観点ごとの「判断できず」の数 | 特定の観点で「判断できず」が多ければ、質問が悪いか、観点が面接で確認しにくい |
| 迷いの判定の数 | 迷いが多い面接官は、基準の読みに自信が無い。同席の回を増やす |
| 記録の根拠の有無 | 根拠が場面で書かれているか、感想か。感想が多い面接官は、記録の型を再確認する |
数字は月に一度、面接官全員で見ます。個人を責めるためではなく、基準と質問を直すための材料として使います。数字を責める材料にすると、面接官は記録を書かなくなります。
外注する場合の範囲
評価のばらつきの問題を、採用代行に出す場合の範囲です。
出せる工程。 観点と質問の案の作成、通す状態と通さない状態の文の案の作成、記録の型の作成、面接官ごとの判定の集計、段階間の一致の集計、すり合わせの場の準備と進行、面接官向けの一枚の作成。
社内に残す判断。 観点と基準の決定、通す・通さないの判定、面接官の指名、入社後の結果との照合。
外注の効きどころ。 観点と基準の文の案は、担当者が数日で作れます。判定の集計とずれの抽出は、担当者が毎月まとめられます。すり合わせの場は、社内の人が進行すると上下関係が入りやすいので、外部の担当者が進行するほうが、面接官が話しやすい面があります。
外注しても動かない場合。 責任者が「自分の判定が正解」を変えない、面接官が記録を書かない、すり合わせの場に出ない。社内の判断で、代行を替えても直りません。
ばらつきの問題は、設計と運用の問題です。外注できるのは、設計の案と、集計と、場の進行までです。
エラベルの見解
担当する側から見ると、ばらつきの相談で最も多いのは「一次の面接官が通した候補者を、最終で責任者が全部落とす」形です。一次の面接官は「何を見れば通るのか分からない」と言い、責任者は「一次が甘い」と言う。基準が文になっていないので、どちらも正しく、どちらも直せません。
責任者に「最終で落とした理由」を、観点ごとに文にしてもらうと、一次の観点に無い基準で落としていることが多いです。その基準を一次の観点に足すか、責任者に「一次はその観点を見ない」と納得してもらうか。どちらかを決めれば、ずれは減ります。
発注側にできるのは、責任者を含めた全員が「基準の文」に従う形にすることです。責任者の判定が例外なら、基準は機能しません。
まとめ
- ばらつきは観点が決まっていない・基準が言葉になっていない・記録が感想・話し合う場が無い・段階の役割が混ざっている・厳しさの差の構造から起きる
- 観点を三〜四つに絞り、質問を用意し、段階ごとに分け、「見ない観点」も決める
- 通す状態と通さない状態を、観察できる文にする。段階ごとの通す条件と、迷ったときの扱いを決める
- 記録は観点ごとの三択・場面で書く根拠・総合判定・迷いの理由・申し送りの型で、五分で書ける形に
- 二人で見る回・ずれた判定の振り返り・入社後の結果との照合・癖の共有ですり合わせ、責任者も基準に従う
- 面接官ごとの通過率・段階間の一致・判断できずの数を月に一度見て、基準と質問を直す材料にする
- 外注できるのは観点と基準の文の案・記録の型・集計・場の進行。社内に残るのは決定・判定・面接官の指名
よくある質問
面接官の研修をすれば、ばらつきは減りますか
研修だけでは減りにくいです。研修で「見る目」を揃えようとしても、観点と基準が文になっていなければ、面接官は研修の後も自分の見方に戻ります。先に観点・基準・記録の型を揃え、そのうえで研修は「基準の文の読み合わせ」と「同席しての実地」にするほうが効きます。
責任者の判定を基準にすればよいのではないですか
責任者の判定を正解にすると、他の面接官は「責任者ならどう見るか」を推測して判定するようになり、基準は育ちません。責任者が交代すると、全部がやり直しになります。責任者の判定を文にして基準に落とし、責任者自身もその文に沿って判定する形にすれば、責任者の見方を組織の基準にできます。
点数をつける評価シートは、やめたほうがよいですか
項目が多く、五段階の点数を合計する形は、ばらつきが足し合わさるので勧めません。観点を三〜四つに絞り、観点ごとに「通す状態/通さない状態/判断できず」の三択で判定し、根拠を場面で書く形のほうが、判定の妥当性を後から確かめられます。点数は、どうしても使うなら、観点ごとに残し、合計しない形にします。