採用代行 / 採用の課題

面接官によって評価がばらつく|「見る目」を揃えるのではなく、観点と基準と記録を揃える

公開 2026-09-13

同じ候補者を、一次のAさんは「良い」と通し、二次のBさんは「弱い」と落とす。逆に、Aさんが落とした候補者を、後で見たBさんが「なぜ落とした」と言う。面接官によって評価がばらつき、誰の判断を信じてよいか分からない。結論を先に書くと、ばらつきは面接官の「見る目」の差ではなく、「何を見るか」「どこで通すか」「どう記録するか」が揃っていないことから起きます。観点と基準と記録の型を揃えれば、ばらつきは減り、残った差は「話し合える差」になります。面接官が足りない問題は面接官が足りないに、面接の評価の設計は面接評価の設計にまとめています。

ばらつきが起きる構造

評価のばらつきは、次の構造で起きます。

構造起きていること
観点が決まっていないAさんは経歴の深さを見て、Bさんは人柄を見ている。見ているものが違えば、評価は一致しない
通す基準が言葉になっていない「良い人なら通す」。「良い」の中身が面接官ごとに違う
記録が感想「印象が良かった」「少し弱い」。後から読んでも、何を根拠にそう判断したか分からない
面接官が話し合う場が無い判定がずれても、ずれた理由を話す場が無く、ずれたまま
段階ごとの役割が混ざっている一次でも最終でも同じことを見ていて、一次の判定と最終の判定が衝突する
面接官の厳しさの差「自分より上でなければ通さない」人と、「育てれば良い」人。基準が無ければ、個人の厳しさがそのまま判定になる

構造が揃っていなければ、面接官を研修しても、ばらつきは残ります。「見る目」を揃えるのではなく、「見る対象と基準と記録」を揃えます。

観点を揃える

最初に揃えるのは、「何を見るか」です。

観点を三〜四つに絞り、書面にする。 「〇〇の経験の深さ」「役割の認識が合っているか」「実務の話を具体的に語れるか」「一緒に働く相手として問題が無いか」。多いと、面接官ごとに重みが変わります。

観点ごとに、確認する質問を用意する。 「〇〇を設計した場面で、何を、どう決めましたか」「この役割は〇〇を決める役割ですが、経験のどこが活きますか」。質問が同じなら、聞き出せる情報が揃います。

段階ごとに観点を分ける。 一次は経歴の深さと役割の認識、二次は組織との相性、最終は通すかどうかの判断と訴求。同じ観点を三回見れば、三回ぶんの判定が衝突します。

「見ない」観点も決める。 「学歴は見ない」「転職回数は見ない」「年齢は見ない」。見ないと決めていない観点は、面接官ごとに勝手に見て、ばらつきの元になります。私的な事情に関する質問は法令上の扱いがあるので、専門家に確認のうえ、面接官に共有します。

観点が書面にあれば、面接官は「自分の見方」ではなく「決められた観点」で見ます。それだけで、ばらつきの半分は消えます。

通す基準を書面にする

観点が揃っても、「どこで通すか」が揃っていなければ、判定はばらつきます。

観点ごとに、「通す状態」を文にする。 「〇〇の経験の深さ:自分で設計し、判断した場面を、具体的に語れる」「役割の認識:求人票の役割を、自分の言葉で言い直せる」。抽象語ではなく、面接で観察できる状態で書きます。

「通さない状態」も文にする。 「経験の深さ:所属した事実は語れるが、自分が何を決めたかを語れない」。通す状態だけでは、境目が分かりません。

段階ごとに、通す条件を決める。 「一次:三つの観点のうち二つ以上が通す状態なら通す」「最終:全部が通す状態で、責任者が一緒に働きたいと判断すれば通す」。条件が数で決まっていれば、面接官の厳しさの差が入りにくくなります。

「迷ったら通す」か「迷ったら落とす」かを決める。 一次は「迷ったら通す」(次の段階で見る)、最終は「迷ったら落とす」(迷いは入社後に問題になる)。決めておかないと、迷いの扱いが面接官ごとに変わります。

基準は、実際の面接で更新する。 最初の基準は仮です。「この人は通したが、基準では落ちる」という例が出たら、基準のほうを見直します。

基準が文になっていると、判定がずれたとき、「どちらが正しいか」ではなく「基準のどこで読みが違ったか」を話せます。

記録の型を揃える

記録が感想だと、後から判定の根拠をたどれません。型を揃えます。

項目書き方
観点ごとの判定通す状態/通さない状態/判断できず、の三択
根拠候補者が語った場面を一〜二行で。「〇〇の設計で、△△を自分で決めたと語った」
総合の判定通す/通さない/迷い
迷いの理由迷いの場合、何が確認できなかったかを一行
次の段階への申し送り「〇〇が確認できていないので、二次で聞いてほしい」
印象書くなら最後に、判定の根拠とは分けて

記録は、面接の直後に、五分で書ける型にします。長い評価シートは、面接官が埋めなくなり、埋めても感想になります。

根拠が「候補者が語った場面」で書かれていれば、別の面接官が読んでも、判定の妥当性を確かめられます。「印象が良かった」は確かめられません。

エラベルの見解

相談で最も多い失敗は、「面接官の評価がばらつくので、評価項目を十五個に増やし、五段階で点数をつける形にした」というものです。項目が多いほど、面接官ごとの重みづけがばらつき、五段階の「三」の意味も面接官ごとに違います。合計点で判定すると、ばらつきが足し合わさって、さらに読めない数字になります。観点を三つに絞り、通す状態を文にして、三択で判定する形に戻したら、ばらつきは目に見えて減りました。

見ていて差がつくのは、担当者が「基準の文」を書けるかどうかです。「経験の深さを見る」と書く担当者と、「自分で設計し、判断した場面を具体的に語れれば通す状態」と書く担当者がいます。後者の文があれば、面接官は同じ物差しで見られます。

発注側にできるのは、「面接官の見る目を揃えたい」ではなく、「観点と通す状態を文にしたい」と依頼することです。見る目は揃いませんが、文は揃います。

面接官同士のすり合わせ

観点・基準・記録を揃えても、面接官同士で読みが違う場面は残ります。すり合わせの場を作ります。

同じ候補者を二人で見る回を、定期的に入れる。 新しい面接官の最初の数回と、そのあとも月に一度程度。二人の判定を比べ、ずれていれば、基準のどこで読みが違ったかを話します。

ずれた判定を、集めて振り返る。 一次が通して最終が落とした、一次が落としたが後で見直して通した。ずれた例を月に一度集め、面接官全員で「基準のどこがずれたか」を見ます。

「通した人がその後どうなったか」を戻す。 入社した人が活躍しているか、早く辞めたか。面接の判定と、入社後の結果を照らし合わせれば、基準のどこが効いていて、どこが効いていないかが分かります。ただし、入社後の評価は人事情報なので、扱いは社内の規程に沿います。

面接官の「癖」を本人に伝える。 「Aさんは経歴の深さを厳しく見る傾向がある」「Bさんは人柄で通しがち」。癖は悪ではなく、知っていれば補正できます。

責任者が「自分の判定が正しい」と言い切らない。 責任者の判定を正解にすると、他の面接官は責任者に合わせるだけになり、基準は育ちません。責任者も、基準に沿って判定します。

すり合わせは、月に一度、三十分で足ります。場が無いことが、ばらつきを固定します。

ばらつきを見える化する運用

ばらつきは、見えていないから放置されます。見える化します。

見るもの見方
面接官ごとの通過率誰が通しやすく、誰が厳しいか。極端な差があれば、基準の読みを確認する
段階間の判定の一致一次で通した人が、二次でどれだけ通るか。極端に低ければ、一次と二次の観点がずれている
観点ごとの「判断できず」の数特定の観点で「判断できず」が多ければ、質問が悪いか、観点が面接で確認しにくい
迷いの判定の数迷いが多い面接官は、基準の読みに自信が無い。同席の回を増やす
記録の根拠の有無根拠が場面で書かれているか、感想か。感想が多い面接官は、記録の型を再確認する

数字は月に一度、面接官全員で見ます。個人を責めるためではなく、基準と質問を直すための材料として使います。数字を責める材料にすると、面接官は記録を書かなくなります。

外注する場合の範囲

評価のばらつきの問題を、採用代行に出す場合の範囲です。

出せる工程。 観点と質問の案の作成、通す状態と通さない状態の文の案の作成、記録の型の作成、面接官ごとの判定の集計、段階間の一致の集計、すり合わせの場の準備と進行、面接官向けの一枚の作成。

社内に残す判断。 観点と基準の決定、通す・通さないの判定、面接官の指名、入社後の結果との照合。

外注の効きどころ。 観点と基準の文の案は、担当者が数日で作れます。判定の集計とずれの抽出は、担当者が毎月まとめられます。すり合わせの場は、社内の人が進行すると上下関係が入りやすいので、外部の担当者が進行するほうが、面接官が話しやすい面があります。

外注しても動かない場合。 責任者が「自分の判定が正解」を変えない、面接官が記録を書かない、すり合わせの場に出ない。社内の判断で、代行を替えても直りません。

ばらつきの問題は、設計と運用の問題です。外注できるのは、設計の案と、集計と、場の進行までです。

エラベルの見解

担当する側から見ると、ばらつきの相談で最も多いのは「一次の面接官が通した候補者を、最終で責任者が全部落とす」形です。一次の面接官は「何を見れば通るのか分からない」と言い、責任者は「一次が甘い」と言う。基準が文になっていないので、どちらも正しく、どちらも直せません。

責任者に「最終で落とした理由」を、観点ごとに文にしてもらうと、一次の観点に無い基準で落としていることが多いです。その基準を一次の観点に足すか、責任者に「一次はその観点を見ない」と納得してもらうか。どちらかを決めれば、ずれは減ります。

発注側にできるのは、責任者を含めた全員が「基準の文」に従う形にすることです。責任者の判定が例外なら、基準は機能しません。

まとめ

よくある質問

面接官の研修をすれば、ばらつきは減りますか

研修だけでは減りにくいです。研修で「見る目」を揃えようとしても、観点と基準が文になっていなければ、面接官は研修の後も自分の見方に戻ります。先に観点・基準・記録の型を揃え、そのうえで研修は「基準の文の読み合わせ」と「同席しての実地」にするほうが効きます。

責任者の判定を基準にすればよいのではないですか

責任者の判定を正解にすると、他の面接官は「責任者ならどう見るか」を推測して判定するようになり、基準は育ちません。責任者が交代すると、全部がやり直しになります。責任者の判定を文にして基準に落とし、責任者自身もその文に沿って判定する形にすれば、責任者の見方を組織の基準にできます。

点数をつける評価シートは、やめたほうがよいですか

項目が多く、五段階の点数を合計する形は、ばらつきが足し合わさるので勧めません。観点を三〜四つに絞り、観点ごとに「通す状態/通さない状態/判断できず」の三択で判定し、根拠を場面で書く形のほうが、判定の妥当性を後から確かめられます。点数は、どうしても使うなら、観点ごとに残し、合計しない形にします。