採用代行 / 採用の課題
採用のやり方が分かる人が社内にいない|「経験者を採る」より先に、やり方を書面にして社内に残す
会社を作ってから、採用は経営者が知り合いに声をかけて済ませてきた。初めて求人を出すことになったが、求人票の書き方も、媒体の選び方も、面接で何を聞けばよいかも、社内に知っている人がいない。手探りで求人を出して、応募が来ない。来ても、通すか落とすかの基準が無い。結論を先に書くと、社内に採用のやり方が分かる人がいないなら、「分かる人を採る」より先に、「やり方を書面にして社内に残す」ことを決めます。やり方は、外部から借りられます。借りたやり方を書面にして残せば、次からは社内の誰でも回せます。外部から移管してもらう進め方はノウハウを移管してもらう進め方に、担当者の育て方は人事の育成にまとめています。
社内にノウハウが無い会社で起きていること
採用のやり方を知る人がいない会社では、次のことが起きています。
| 起きていること | 背景 |
|---|---|
| 求人票が、業務の箇条書きになっている | 「何を書けば応募が来るか」を知らない。他社の求人票を真似て、条件だけ並べる |
| 媒体を、名前を知っているものから選ぶ | 職種と媒体の相性を知らず、有名なものに出す。合わなければ応募は来ない |
| 面接で、雑談と経歴の確認だけをしている | 何を確認すれば通せるかが無く、「感じが良かった」で通す |
| 通す・落とすの基準が、その場で決まる | 面接官ごとに、候補者ごとに、基準が変わる |
| 応募への返信が遅く、文が硬い | 候補者への対応の型が無く、一件ずつ考えて書く |
| 内定を出しても、辞退される | 内定の出し方、条件の伝え方、候補者の迷いへの対応を知らない |
| 失敗しても、何が悪かったか分からない | 記録が無く、振り返る型も無い。次も同じ失敗をする |
やり方を知らないのは、恥ずかしいことではありません。知らないまま手探りで進め、失敗の理由も分からないことが、問題です。
最初に決めること
やり方を借りる前に、社内で決めることがあります。
誰を採るのか。 職種の名前ではなく、「何を決める役割か」「誰と働くか」「どこまで担うか」。これは外部には決められません。社内で、経営者と現場が決めます。
いつまでに、何人か。 期限と人数。事業の計画から逆算します。
採用に使える時間と予算。 誰が、週に何時間、採用に使えるか。予算はいくらか。ゼロならゼロと決めます。
採用の責任者は誰か。 通す・落とす、内定を出す、条件を決める。最終の判断をする人を決めます。決めていないと、判断が宙に浮きます。
やり方を残す先。 借りたやり方を、どこに書面で残すか。共有のフォルダか、一冊のノートか。場所を決めておかないと、借りたやり方は借りた人の頭にだけ残ります。
この五つは、やり方を知らなくても決められます。決めていないと、外部に頼んでも「何を採るのか」から聞かれ、進みません。
やり方を借りる先
採用のやり方は、外部から借りられます。借りる先と、借りられるものを整理します。
| 借りる先 | 借りられるもの | 注意 |
|---|---|---|
| 採用代行の担当者 | 求人票の書き方、媒体の選び方、面接の進め方、基準の作り方、候補者への対応の型を、実際の採用の中で | 書面に残す約束を、契約の前に |
| 人材紹介の担当者 | 職種の市場感、候補者が気にする点、内定の出し方 | 紹介が前提なので、紹介以外のやり方は借りにくい |
| 媒体の担当者 | その媒体での求人票の書き方、スカウトの送り方 | その媒体に閉じたやり方。他媒体には使えないことがある |
| 採用経験のある知人・顧問 | 経験に基づく型、判断の相談 | 継続して聞ける関係かどうか |
| 公開されている型(媒体の案内、書籍、記事) | 求人票の構成、面接の質問例、選考の流れ | 自社に合わせて直す必要がある。数字や相場は鵜呑みにしない |
| 同業の経営者 | 同じ職種の採用で効いたこと、効かなかったこと | 会社の規模や状況が違えば、そのまま使えない |
借りる先は一つでなくてよいです。担当者に実際の採用を回してもらいながら、媒体の担当者にその媒体の書き方を聞き、知人に判断を相談する。組み合わせます。
借りるときに要点になるのは、「やり方を見せてもらう」ことです。結果だけ受け取ると、やり方は社内に残りません。
借りたやり方を社内に残す
借りたやり方は、書面にしなければ残りません。残し方を型にします。
求人票の型。 「役割・誰と働くか・どこまで担うか・この会社で働く理由・条件・応募の方法」の構成と、各項目の書き方の例。次の求人票は、この型に沿って社内で書けます。
媒体の選び方の記録。 「この職種は、この媒体で、応募が何件、面接に進んだのが何件」。効いた媒体、効かなかった媒体を、職種ごとに記録します。数字は自社の記録だけを使います。
面接の観点と質問と基準。 「確認する観点三つ、観点ごとの質問、通す状態と通さない状態」。面接官向けの一枚の形で。
候補者への連絡の文の型。 応募の受付、書類の結果、面接の案内、内定の連絡、お断り。文を型にして、次から使い回します。
選考の流れと、各段階の担当と期限。 「応募→当日返信→三日以内に書類の判断→一週間以内に一次面接→…」。流れと期限が書面にあれば、誰が担当しても同じ速さで進みます。
振り返りの記録。 「この採用で、効いたこと、効かなかったこと、次に変えること」。採用が終わるごとに、一枚。
書面は、六種類で足ります。分厚い手順書は、読まれません。一枚ずつ、使うときに手に取れる形にします。
エラベルの見解
相談で最も多い失敗は、「採用のやり方が分からないので、採用代行に全部任せた。半年後、契約を終えたら、社内には何も残っていなかった」というものです。担当者は求人票を書き、媒体を選び、面接に同席し、内定まで進めた。採れました。ただ、やり方は担当者の頭の中にあり、書面には何も無い。次の採用で、また一から外部に頼むしかない。最初に「やり方を書面で残す」を約束していれば、半年で社内に型ができていました。
見ていて差がつくのは、担当者が「やり方を見せながら進める」かどうかです。「求人票を書きました、これで出します」と結果だけ渡す担当者と、「求人票はこの構成で書きました。役割の項目は、現場の〇〇さんの話からこう書きました。次はこの型で社内で書けます」と、やり方を添えて渡す担当者がいます。後者は、契約が終わっても、社内に型が残ります。
発注側にできるのは、契約の前に「やり方を書面で残してほしい。結果だけでなく」と伝えることです。後から言っても、担当者は結果を出すことに集中していて、書面は残りません。
外部に頼りきりにならない線引き
やり方を借りる間も、社内に残す判断があります。
「誰を採るか」は、社内で決める。 役割と条件の決定は、外部に任せません。外部は案を出せますが、決めるのは社内です。
通す・落とす・内定は、社内が判断する。 外部が「この人は良いです」と言っても、判断は社内。判断を外部に任せると、社内に判断の経験が残りません。
面接には、社内の人が出る。 外部の担当者が同席しても、面接官は社内の人。面接の経験は、出た人にしか残りません。
候補者との最後の接点は、社内の人。 内定の連絡、条件の話、迷いへの対応。候補者は「この会社の人」を見て決めます。外部の担当者だけと話して入社を決める形は、入社後にずれが出ます。
記録は、社内の場所に。 外部の担当者が作った記録も、社内の共有の場所に置きます。担当者の手元にだけある記録は、契約が終わると消えます。
線引きの基準は、「その工程を外部に任せると、社内に何が残らなくなるか」です。判断・面接・候補者との接点・記録は、残らなくなると次の採用ができません。
経験者を採る判断
「採用のやり方が分かる人を採用する」という選択肢もあります。判断の材料です。
採用が常に動く会社なら、経験者を置く価値がある。 年に何人も採る、複数の職種が同時に動く。経験者が社内にいれば、外部に頼る範囲は減ります。
年に数件なら、経験者を置くより、やり方を借りて残すほうが合う。 経験者一人の人件費と、年に数件の採用の量が釣り合いません。
経験者を採るにも、採用のやり方が要る。 人事経験者の求人票を書き、面接で見極める。やり方が無いまま経験者を採ろうとすると、「人事経験あり」の肩書だけで採り、合わないことがあります。
経験者が来ても、やり方は書面に残す。 経験者の頭の中にあるやり方は、その人が辞めると消えます。経験者にも、型を書面にしてもらいます。
経験者を採るまでの間、採用は止めない。 経験者の採用には時間がかかります。その間、やり方を借りて進めます。
経験者を採ることと、やり方を書面に残すことは、両立します。どちらか一方ではなく、順番の問題です。
外注する場合の範囲
社内に採用のやり方が無い問題を、採用代行に出す場合の範囲です。
出せる工程。 求人票の案の作成(型を添えて)、媒体の選び方の提案と記録、面接の観点と質問と基準の案、候補者への連絡の文の型、選考の流れと期限の設計、記録の型、振り返りの一枚、面接への同席と助言、社内の担当者への型の説明。
社内に残す判断。 誰を採るか、通す・落とす・内定、面接官、候補者との最後の接点、記録の保管。
外注の効きどころ。 採用のやり方が無い会社では、担当者が「やり方を持ち込んで、書面にして残す」役になります。最初の一回の採用を担当者と一緒に回せば、六種類の書面が社内にでき、次からは社内で回せます。
外注しても残らない場合。 発注側が「結果だけ出してほしい」と言い、書面を求めない。社内の人が面接に出ず、判断もしない。契約が終わったとき、何も残りません。
やり方が無い問題は、外注で解決できる問題です。ただし、「残す」ことを最初に決めていれば、です。
エラベルの見解
担当する側から見ると、やり方が無い会社の相談で最も多いのは、「担当者に任せて、社内の人が何も見ていない」ことです。担当者が求人票を書き、媒体に出し、面接の日程を組み、社内の人は面接に出るだけ。面接の後も、「担当者が良いと言うなら」で通す。半年で採れますが、社内には何も残りません。
担当者の側も、「残す」を求められなければ、結果を出すことに集中します。書面を作る時間は、契約の範囲に入っていないことが多いです。最初に「型を書面で残す」を契約の範囲に入れれば、担当者はそのつもりで進めます。
発注側にできるのは、契約の前に「やり方を残すことを、契約の範囲に入れてほしい」と伝えることです。契約の後では、遅いです。
まとめ
- やり方が無い会社では求人票が箇条書き・媒体を名前で選ぶ・面接が雑談・基準がその場で決まる・返信が遅い・辞退される・失敗の理由が分からない
- 借りる前に誰を採るか・いつまでに何人か・時間と予算・採用の責任者・残す場所を社内で決める
- やり方は代行の担当者・紹介の担当者・媒体の担当者・知人や顧問・公開の型・同業から借りる。結果でなく「やり方を見せてもらう」
- 残すのは求人票の型・媒体の記録・面接の観点と質問と基準・連絡の文の型・流れと期限・振り返りの六種類、一枚ずつ
- 誰を採るか・判断・面接・最後の接点・記録は社内に残す。任せると次の採用ができなくなる
- 経験者は採用が常に動くなら価値がある。年に数件なら借りて残すほうが合う。経験者が来ても書面に残す
- 外注できるのは型を添えた案・設計・同席と助言・型の説明。「残す」を契約の前に決める
よくある質問
採用のやり方を知らないまま、外部に頼んでも大丈夫ですか
大丈夫です。ただし、「誰を採るか」は社内で決めてから頼みます。役割と条件が決まっていないと、外部は動けません。頼むときに「やり方を書面で残してほしい」と伝え、面接には社内の人が出て、判断は社内でします。この三つを守れば、外部に頼みながら、社内にやり方が残ります。
やり方を書面にしても、誰も読まないのではないですか
分厚い手順書は読まれません。一枚ずつ、使う場面で手に取る形にします。求人票を書くときに求人票の型を、面接の前日に面接官向けの一枚を、応募が来たときに連絡の文の型を。「読む」のではなく「使う」書面にします。使う場面に置いてあれば、読まれます。
経験者を一人採れば、外部は要らなくなりますか
経験者が来ても、その人一人で全部の工程を回す形になれば、人事が一人で回らない状態になります。経験者には判断と型の作成を任せ、作業は道具や外部に出す形が、経験者を活かします。経験者が来るまでの間は、やり方を借りて採用を進め、経験者が来たら、借りた型を経験者に引き継ぎます。