スカウト代行 / スカウト運用
候補者にとっての魅力の言語化|「自社の魅力」ではなく「この候補者が、この役割で得るもの」を、事実の場面で一文にする
スカウトで、自社の魅力を伝えたい。ただ、書こうとすると「成長できる環境」「裁量がある」「アットホームな職場」しか出てこない。どの会社も同じことを書いていて、候補者には届かない。社内で「うちの魅力は何か」を話し合っても、抽象語が並ぶだけで終わる。結論を先に書くと、魅力が言葉にならないのは、「自社の魅力」を探しているからです。「自社の魅力」は、誰にとっての魅力かが無く、抽象語になります。代わりに、「この候補者が、この役割で、得るもの」を探します。それは、候補者の経歴と状況によって違い、事実の場面で書けます。「成長できる」ではなく、「入社三か月で〇〇を一人で担当し、半年で△△を決める側になる」。事実の場面が、候補者にとっての魅力です。自社紹介の範囲は自社紹介はどこまで書くかに、他社との比較は他社と比べて自社が良いのか分からないにまとめています。
魅力が言葉にならない構造
自社の魅力が言葉にならないのは、次の構造で起きます。
| 構造 | 起きていること |
|---|---|
| 「自社の魅力」を探している | 「誰にとって」が無い。全員向けの魅力は、抽象語になる |
| 抽象語で考えている | 「成長」「裁量」「風通し」。どの会社も言えて、候補者には比べる材料にならない |
| 社内の「良いところ」を並べている | 社員にとっての良さと、候補者にとっての魅力は違う |
| 事実の場面が無い | 「裁量がある」と言うが、「何を決められるか」の場面が出てこない |
| 候補者の側から見ていない | 候補者が、いま何に困り、何を求めているかを考えていない |
| 全員に同じ魅力を送っている | 動いていない経験者にも、若手にも、同じ「成長できる」 |
| 「魅力=良いところ」と思っている | 大変なところ、変えたいところも、候補者によっては魅力(「変える役割」を求める人) |
| 魅力を探す手順が無い | 会議で「うちの魅力は」と話しても、出てこない |
構造の大半は、「誰にとっての魅力か」が無いことです。候補者を置けば、言葉になります。
「自社の魅力」と「候補者にとっての魅力」の違い
二つは、違うものです。
| 自社の魅力 | 候補者にとっての魅力 | |
|---|---|---|
| 主語 | 会社 | この候補者 |
| 問い | 「うちの良いところは何か」 | 「この候補者は、この役割で、何を得るか」 |
| 出てくる言葉 | 抽象語(成長、裁量、風通し) | 事実の場面(三か月で〇〇を担当、△△を決める側に) |
| 誰に届くか | 誰にも(全員向けは、誰の判断の材料にもならない) | この候補者に |
| 相手で変わるか | 変わらない | 変わる。経歴と状況で、得るものが違う |
| 他社との違い | 出にくい(どの会社も同じ言葉) | 出やすい(この候補者にとって、他社では得られないもの) |
| 書く場所 | — | 一段落目の「役割との対応」、二段落目の「役割」、三段落目の「人と実態」 |
違いの要点は、「主語を候補者にする」ことです。「うちは成長できる」ではなく、「あなたは、この役割で、三か月後にこうなる」。
「自社の魅力」を探す会議は、抽象語で終わります。「この候補者(具体的な一人)が、この役割で何を得るか」を考える作業は、事実で書けます。
候補者が得るものの六つの型
候補者が役割で得るものは、六つの型に分かれます。候補者の経歴と状況で、どの型が魅力になるかが変わります。
| 型 | 中身 | 魅力になる候補者 | 事実の場面の例の形 |
|---|---|---|---|
| 一、決められる範囲が広がる | 前職より、自分で決められることが増える | 前職で裁量が小さかった人、承認の階層に疲れた人 | 「〇〇を自分で決め、承認は責任者一人で翌日に」 |
| 二、担う範囲が広がる | 一つの職種に閉じず、隣の領域も担える | 分業に閉じていた人、幅を広げたい人 | 「△△に加えて、□□の企画も担う」 |
| 三、経験が新しい場面で活きる | いまの経験を、別の段階・別の事業で使える | 同じことの繰り返しに飽きた人、経験を試したい人 | 「〇〇のご経験を、立ち上げの段階で」 |
| 四、次の役割が見える | 一〜三年後に、どの役割に進めるか | 頭打ちを感じている人、次を探している人 | 「一年後に〇〇の責任者、その先に△△」 |
| 五、働き方が変わる | 時間、場所、柔軟さの実態が、いまより合う | 働き方に困っている人 | 「リモート中心で、週に一度の出社」 |
| 六、人と環境が変わる | 誰と働くか、どういう空気か、経営者との距離 | 人間関係に疲れた人、経営者と近くで働きたい人 | 「事業責任者の〇〇と直接。経営者と週に一度話す」 |
六つの型の要点は、「候補者の経歴と状況で、どれが刺さるかが違う」ことです。前職で裁量が小さかった人には一が、分業に閉じていた人には二が、働き方に困っている人には五が。
六つを全部書くと、長くなり、どれも薄くなります。候補者ごとに、一つか二つを選びます。
事実の場面で書く方法
選んだ型を、抽象語ではなく、事実の場面で書きます。
| 抽象語 | 事実の場面 |
|---|---|
| 成長できる | 「入社三か月で〇〇を一人で担当し、半年で△△を決める側になります」 |
| 裁量がある | 「提案の内容と価格を担当者が決め、承認は責任者一人で翌日に下ります」 |
| 幅広い経験ができる | 「営業に加えて、〇〇の企画から実行まで担います」 |
| キャリアアップできる | 「一年後に〇〇の責任者を、その先に△△の立ち上げを任せる予定です」 |
| 働きやすい | 「リモート中心で、週に一度の出社。〇〇の制度を実際に使っている人が△名」(数字は自社の記録) |
| アットホーム、風通しが良い | 「事業責任者の〇〇と直接やり取りし、経営者とは週に一度話します」 |
| やりがいがある | 「〇〇の顧客の△△の課題を、自分の提案で解決する場面が、月に数回あります」 |
| 安定している | 「〇〇の事業を△年続けていて、この役割はその中心です」(年数は自社の事実) |
書き方の要点は、「場面・時期・人・数」で書くことです。「三か月で」「〇〇を」「責任者一人で」「週に一度」。数字は自社の記録から、出典を明記できるものだけ。
事実の場面は、「入社した人の実際」から取ります。「入社して三か月で〇〇を担当した人がいる」という事実があれば、書けます。無ければ、書きません。良く見せた場面は、面談か入社後に「違う」と分かり、離れます。
エラベルの見解
相談で最も多い失敗は、「スカウトの文面に『成長できる環境』『裁量がある』『風通しが良い』を書き続けて、返信が来なかった。社内で『うちの魅力は』を三回会議したが、同じ言葉しか出なかった」というものです。主語が会社で、抽象語でした。「入社三か月の〇〇さんが、いま何を担当しているか」を聞き、「三か月で△△を一人で担当し、半年で□□を決める側になった」と事実の場面で書いたら、同じ会社、同じ役割で、返信が来ました。魅力は、会議で探すものではなく、入社した人の実際にありました。
見ていて差がつくのは、担当者が「入社した人の実際」を聞くかどうかです。「御社の魅力は何ですか」と経営者に聞いて抽象語を受け取る担当者と、「入社して三か月の方は、いま何を担当していますか。一年の方は」と、実際の場面を聞く担当者がいます。後者の文面は、事実で書かれ、候補者に届きます。
発注側にできるのは、「うちの魅力は」の会議をやめて、担当者に「入社した人の三か月、半年、一年の実際」を渡すことです。
候補者ごとに変える部分
魅力は、候補者ごとに変えます。変え方です。
経歴から、「いま何に困っていそうか」を読む。 大きな会社で長い→裁量と承認の遅さ。同じ職種で長い→幅と次の役割。転職が数回→人と環境、働き方。経歴は、困りごとの手がかりです。ただし、推測を断定しない。
六つの型から、一つか二つを選ぶ。 読んだ困りごとに対応する型。「裁量が小さそう」なら一、「幅を広げたそう」なら二。
選んだ型を、一段落目の「役割との対応」に入れる。 「〇〇のご経験が、当社の□□を決める役割で活きる。承認は責任者一人で翌日に」。魅力は、一段落目の対応の中に。
二段落目の役割の記述で、選んだ型の場面を厚くする。 型が一(決められる範囲)なら、「何を決めるか」を具体的に。型が四(次の役割)なら、「なぜ今」と「一年後」を。
三段落目の人と実態で、型を裏付ける。 型が六(人と環境)なら、一緒に働く人を厚く。型が五(働き方)なら、実態を。
返信が来たら、二通目で確認する。 「〇〇に困っていらっしゃると想像しましたが、いかがですか」。推測を確認し、ずれていれば直す。
推測が外れても、失礼にならない書き方。 「〇〇のご経験から、△△を求めていらっしゃるのではと考えました。違っていたら、ぜひ教えてください」。断定せず、仮説として。
変える部分の要点は、「経歴から困りごとを読み、六つから選び、一段落目の対応に入れる」ことです。全文を変えるのではなく、選ぶ型と、その場面だけを変えます。
魅力を探す聞き取り
「候補者にとっての魅力」の材料は、社内の会議ではなく、聞き取りで集めます。
| 聞く相手 | 聞くこと | 得られるもの |
|---|---|---|
| 入社して三か月・半年・一年の人 | 「いま何を担当していますか」「入社時と比べて、何ができるようになりましたか」「前の会社と比べて、違うところは」 | 事実の場面(型一〜四)。他社との違い |
| 他社から入社した人 | 「前の会社に無くて、ここにあるものは」「前の会社にあって、ここに無いものは」 | 候補者にとっての魅力と、隠さない大変さ |
| 辞退しなかった人 | 「他社と迷って、なぜここを選びましたか」 | 決め手になった型 |
| 辞退した人(差し支えなければ) | 「決め手は何でしたか」 | 自社に足りない型、または伝えられていなかった型 |
| 現場の責任者 | 「この役割で、自分で決められることは何ですか」「入社した人は、何か月で何を任せられますか」 | 型一と四の事実 |
| 経営者 | 「この役割の人と、どのくらい話しますか」「なぜこの役割が要りますか」 | 型六と、役割の位置 |
| 面接で候補者 | 「何を重く見て会社を選んでいますか」 | 候補者の層ごとに、刺さる型の傾向 |
聞き取りの要点は、「入社した人と、辞退しなかった人」です。この二つが、最も確かな「候補者にとっての魅力」の源です。社内の会議で出る「うちの魅力」より、「他社から来て、ここにあると感じたもの」のほうが、候補者に届きます。
聞き取った内容は、本人の同意のうえで、文面と採用サイトに使います。
外注する場合の範囲
魅力の言語化を、スカウト代行に出す場合の範囲です。
出せる工程。 現状の文面の抽象語の点検、「自社の魅力」から「候補者にとっての魅力」への置き換えの整理、聞き取りの設計と実行(入社した人、他社から来た人、辞退しなかった人、現場の責任者、経営者)、六つの型ごとの事実の場面の整理(役割ごと)、抽象語を事実の場面に書き換える作業、候補者ごとの型の選び方の基準(経歴から困りごとを読む型)、一段落目の対応への入れ方の型、二通目での確認の文面、面接での「何を重く見るか」の記録と層ごとの傾向の蓄積、採用サイトへの反映。
社内に残す判断。 公開してよい事実の範囲(入社した人の話の公開は本人の同意)、事実の場面の正確さの確認(良く見せない)、聞き取りに応じる社員の指名、型の承認。
外注の効きどころ。 魅力の言語化は、社内では「うちの魅力は」の会議で抽象語に終わりやすい領域です。担当者が「候補者にとって」に置き換え、入社した人に聞き、事実の場面に書き換えれば、言葉になります。担当者は複数の会社のスカウトを見ているので、「この抽象語は、この事実の場面で書ける」「この層には、この型が刺さる」の型を持ち込めます。ただし、事実の場面は自社の実際からで、担当者が作ることはできません。
外注しても動かない場合。 社内が抽象語を譲らない、入社した人への聞き取りを認めない、事実より良く見せることを求める。社内の判断で、代行を替えても直りません。
魅力は、候補者を主語にし、事実の場面で書けば、言葉になります。外注は、置き換えと聞き取りと書き換えを担う手段です。
エラベルの見解
担当する側から見ると、魅力の相談で最も多いのは、「大変なところを隠そうとする」ことです。「うちは忙しい」「まだ仕組みが無い」を、魅力の反対だと思って書かない。ただ、「仕組みが無いから、自分で作れる」「忙しいが、三か月で任される」は、変える役割や早い成長を求める候補者にとっては、魅力です。
大変なところを隠すと、面談か入社後に分かり、離れます。「仕組みがまだ無く、作る側に回っていただきます」と書けば、それを求める候補者が来て、続きます。魅力は、良いところだけではありません。
発注側にできるのは、「大変なところ」も、「それを求める候補者にとっての魅力」として、事実で書くことを許すことです。
まとめ
- 言葉にならないのは自社の魅力を探す・抽象語・社員の良いところ・場面が無い・候補者の側から見ない・全員に同じ・良いところだけ・手順が無い構造
- 「自社の魅力」(主語が会社、抽象語、全員向け、他社と同じ)と「候補者にとっての魅力」(主語が候補者、事実の場面、相手で変わる、他社との違いが出る)は違う。主語を候補者に
- 六つの型は決められる範囲・担う範囲・経験が新しい場面で活きる・次の役割・働き方・人と環境。候補者の経歴と状況で刺さる型が違う。一つか二つを選ぶ
- 事実の場面は場面・時期・人・数で。「成長できる」→「三か月で〇〇を担当、半年で△△を決める側に」。入社した人の実際から。良く見せない
- 候補者ごとに経歴から困りごとを読み・六つから選び・一段落目の対応に入れ・二段落目と三段落目で裏付け・二通目で確認・仮説として書く
- 聞き取りは入社した人・他社から来た人・辞退しなかった人・辞退した人・現場の責任者・経営者・面接の候補者。入社した人と辞退しなかった人が最も確か
- 外注できるのは点検・置き換え・聞き取り・型ごとの事実の整理・書き換え・選び方の基準・入れ方の型・確認の文面・傾向の蓄積・サイトへの反映。社内に残るのは公開の範囲・正確さの確認・社員の指名・型の承認
よくある質問
「成長できる」「裁量がある」以外に、本当に魅力がありません
「自社の魅力」を探しているから、抽象語しか出ません。「入社して三か月の〇〇さんは、いま何を担当していますか」「他社から来た△△さんが、前の会社に無くてここにあると感じたものは」と、入社した人の実際を聞きます。「三か月で〇〇を一人で担当」「承認が翌日に下りる」「経営者と週に一度話す」のような事実の場面が、ほぼ例外なく出てきます。それが、候補者にとっての魅力です。会議で探すのではなく、入社した人に聞きます。
候補者ごとに魅力を変えると、会社の一貫性が無くなりませんか
会社の事実は一つで、変えません。変えるのは、「六つの型のうち、この候補者にどれを前に出すか」です。裁量が小さかった人には「決められる範囲」を、働き方に困っている人には「働き方の実態」を、同じ会社の事実の中から選んで前に出します。全部の型を全員に書くと、長くなり、どれも薄くなります。一貫性は事実にあり、前に出す型は候補者で変えます。
大変なところは、書かないほうがよいですか
隠すと、面談か入社後に分かり、離れます。「仕組みがまだ無く、作る側に回っていただきます」「立ち上げの段階で、忙しい時期があります」は、変える役割や早い成長を求める候補者にとっては魅力で、それを求めない候補者には、応募の前に判断してもらえる材料です。大変なところを事実で書き、「それを求める人」に届けます。良いところだけを書いた文面は、合わない人を集め、合う人に届きません。