採用代行 / 採用の課題
他社と比べて自社が良いのか分からない|「良いか悪いか」ではなく、「候補者が比べる項目で、どこが上でどこが下か」を事実で並べる
候補者は、複数の会社を同時に受けて、比べている。面接で「他社と比べて、御社の良さは何ですか」と聞かれて、答えに詰まる。「アットホームです」「成長できます」と言ってみるが、どの会社も言っている。条件は負けている気がする。自社が他社と比べて、本当に良いのか悪いのか、分からない。結論を先に書くと、「自社が良いか悪いか」は、一言では決まりません。候補者は、「条件」「役割」「人」「働き方」「成長」「会社の先」の項目で比べています。項目ごとに、自社と、候補者が受けている他社を、事実で並べれば、「上の項目」と「下の項目」が見えます。上を前に出し、下を隠さず、候補者が判断できる材料にします。「良さ」は、比べて初めて言葉になります。待遇で大手に勝てない場合は待遇で大手に勝てないに、競合の調べ方は競合の採用状況をどう調べるかにまとめています。
比べられない構造
自社が他社と比べてどうかが分からないのは、次の構造で起きます。
| 構造 | 起きていること |
|---|---|
| 「良いか悪いか」の一言で考えている | 総合で「良い」「悪い」を決めようとして、決まらない |
| 候補者が比べる項目を知らない | 候補者が何で比べているかを聞いていない。条件だけだと思っている |
| 他社の情報が無い | 候補者が受けている他社の求人票を見ていない。辞退の理由に「他社」があっても、中身を聞いていない |
| 自社の事実が、言葉になっていない | 「裁量がある」と思っているが、「何を決められるか」を言えない |
| 抽象語で語っている | 「アットホーム」「風通しが良い」「成長できる」。どの会社も言えるので、比べる材料にならない |
| 下の項目を隠そうとしている | 条件で負けている事実を認めず、言葉を濁す。候補者は気づく |
| 上の項目を、当たり前だと思っている | 自社では普通のことが、他社には無い。気づいていない |
| 誰かの印象で判断している | 「うちは他社より劣る」「うちは良い会社だ」を、事実ではなく印象で |
構造の大半は、「項目に分けて、事実で並べていない」ことです。
候補者が比べる項目
候補者が、複数社を比べるときの項目です。候補者によって重さが違いますが、項目はほぼ共通です。
| 項目 | 候補者が見ていること |
|---|---|
| 条件 | 年収の幅と内訳、休日、働き方の制度、福利厚生 |
| 役割 | 何を決める役割か、どこまで任されるか、裁量の実態 |
| 人 | 一緒に働く人、上司、経営者。面接で会った人の印象 |
| 働き方の実態 | 時間、リモート、柔軟さ。制度ではなく、実際に使われているか |
| 成長 | 入社後に何ができるようになるか、次の役割、学ぶ機会 |
| 会社の先 | 事業の方向、安定か成長か、経営者の考え |
| 選考の対応 | 速さ、丁寧さ、隠さない姿勢。「入社後もこう扱われる」の推測 |
| 通勤と場所 | 場所、通勤の時間と手段 |
項目の要点は、「条件だけではない」ことです。条件で負けていても、役割と人と働き方と成長で上回れば、選ばれます。逆に、条件で勝っていても、選考の対応が雑なら、離れます。
候補者ごとに重さが違うので、面接で「何を重く見て会社を選んでいますか」と聞きます。
事実で並べる方法
項目ごとに、自社と他社を、事実で並べます。
自社の事実を、項目ごとに書く。 印象ではなく、事実。「裁量がある」ではなく、「顧客への提案の内容と価格の範囲を、担当者が決める。承認は責任者一人で、翌日には決まる」。役割の記述(ジョブディスクリプションがない)と、働き方の実態の記録から。
他社の事実を、集める。 候補者が受けている他社の求人票(公開されているもの)、辞退の理由で聞いた他社の提示、紹介会社の担当者から聞く「決まりやすい他社との違い」、面接で候補者が語る他社の様子(差し支えない範囲で)。競合の調べ方は競合の採用状況をどう調べるか。
項目ごとに、上・同じ・下を付ける。 「条件:下」「役割:上」「人:同じ(分からない)」「働き方:上」「成長:同じ」「会社の先:下」「選考の対応:上」。
分からない項目は、「分からない」と書く。 他社の情報が無い項目を、推測で埋めない。
現場と入社した人に、確認する。 人事が並べた表を、現場の責任者と、他社から入社した人に見せる。「他社と比べて、本当にこうか」。他社から来た人は、比べる材料を持っています。
候補者ごとに、重さを聞く。 「何を重く見て選んでいますか」。条件を重く見る候補者には条件の事実を、役割を重く見る候補者には役割の事実を。
並べると、「自社は条件で下、役割と働き方と選考の対応で上」のように、一言ではなく項目で見えます。
上の項目と下の項目の扱い
並べた結果の、上の項目と下の項目の扱いです。
上の項目は、前に出す。 求人票の一行目、スカウトの一段落目、面接の最後の五分で。「自社では当たり前」と思っていることが、他社には無いことがあります。当たり前を、言葉にします。
下の項目は、隠さない。 「条件は、同じ職種の他社より低い場合があります」。隠すと、候補者は他社の求人票で知り、「隠された」と受け取ります。認めたうえで、上の項目を添えます。
下の項目を、上げられるかを検討する。 条件なら、市場と自社の幅の見直し(提示年収が市場と合っていない)。上げられないなら、「上げない」と決めて、上の項目で届く候補者に集中します。
「同じ」の項目は、差をつけられるかを検討する。 「選考の対応」が同じなら、速さと丁寧さで上にできます。費用がかかりません。
「分からない」の項目は、情報を集める。 面接で候補者に聞く、辞退の理由を深く聞く、紹介会社に聞く。
上の項目が無い場合。 全項目で下か同じなら、「上にできる項目」を作ります。役割の設計、働き方の実態、選考の対応。費用がかからず、自社の判断で変えられる項目から。
扱いの要点は、「上を前に、下を隠さず」です。全項目で上の会社はありません。上と下の組み合わせが、自社の「良さ」の形です。
エラベルの見解
相談で最も多い失敗は、「面接で『御社の良さは』と聞かれて『アットホームです』と答え続けて、辞退の理由の大半が『他社の条件』だった」というものです。条件で下なのは事実でしたが、役割の裁量と選考の速さは上でした。ただ、それを言葉にしていませんでした。項目で並べ、「条件は低い場合があります。ただ、この役割では〇〇を自分で決められ、選考は三週間で終わります」と面接で言うようにしたら、条件を重く見ない候補者が残るようになりました。「良さ」は、比べて言葉にして、初めて伝わりました。
見ていて差がつくのは、担当者が「項目で並べる」ところから入るかどうかです。「御社の強みを教えてください」と聞いて「アットホーム」を受け取る担当者と、「候補者が比べる項目ごとに、自社の事実と他社の事実を並べましょう。役割の記述と辞退の理由と紹介会社の話から」と、並べることから入る担当者がいます。後者は、抽象語を使いません。
発注側にできるのは、「自社の強みは何か」を考えるのではなく、「項目ごとに、自社の事実は何か」を書き出すことです。
「良さ」を言葉にする手順
並べた結果から、自社の「良さ」を言葉にする手順です。
上の項目を、事実の言葉で書く。 「裁量がある」ではなく、「〇〇を担当者が決め、承認は責任者一人で翌日に決まる」。抽象語を使わない。
他社から入社した人に、聞く。 「前の会社と比べて、うちの良いところと、劣るところは」。他社を知っている人の言葉が、最も比べる材料になります。本人の同意のうえで、求人票と面接に使います。
辞退しなかった人に、聞く。 「他社と迷って、なぜうちを選んだか」。選ばれた理由が、自社の「良さ」です。
辞退した人の理由から、下の項目を確認する。 「他社の条件」「他社の知名度」。下の項目が、事実として分かります。
「合う人」と「合わない人」で書く。 「〇〇を自分で決めたい人には合い、細かい指示が欲しい人には合わない」。「良さ」は、全員にとっての良さではなく、「合う人にとっての良さ」です。
一枚にする。 項目ごとの上・下、上の項目の事実の言葉、合う人・合わない人、下の項目の認め方。面接官全員に渡します。
三か月ごとに見直す。 辞退の理由、入社した人の話、他社の求人票の変化で、上・下は動きます。
言葉にする要点は、「事実の言葉」と「合う人・合わない人」です。抽象語と、全員向けの良さは、比べる材料になりません。
求人票と面接への反映
言葉にした「良さ」を、求人票と面接に反映します。
| 場面 | 反映 |
|---|---|
| 求人票の一行目 | 上の項目を、事実の言葉で。「〇〇を自分で決めて進める役割」 |
| 求人票の本文 | 上の項目を具体的な場面で。下の項目は隠さず正確に。「合う人・合わない人」を書く |
| スカウトの一段落目 | 上の項目で、相手に合わせて。知名度のない会社のスカウト |
| 面接の最後の五分 | 見極めで分かった候補者に合わせて、上の項目を。「あなたの〇〇は、この役割の△△で活きる」 |
| 「他社と比べて」と聞かれたら | 「条件では届かない場合があります。そのうえで、この役割にはこれがあります」と、下を認めてから上を。項目で答える |
| 内定の場 | 候補者が重く見る項目で、自社の事実を改めて。他社と迷っているなら、比べる材料を渡す |
| 面接官向けの一枚 | 項目ごとの上・下、事実の言葉、合う人・合わない人。面接官全員が同じことを語れる状態に |
| 採用サイトとSNS | 上の項目の事実を、社員の話と場面で。採用SNSで何を発信すればよいか |
反映の要点は、「面接官全員が、同じ項目で、同じ事実を語れる」ことです。一人の面接官が「アットホームです」と言えば、他の面接官が事実で語った信用が消えます。
外注する場合の範囲
他社と比べて自社が良いのか分からない問題を、採用代行に出す場合の範囲です。
出せる工程。 候補者が比べる項目の整理、自社の事実の書き出しの進行(役割の記述、働き方の実態の記録、現場の責任者への聞き取り)、他社の事実の収集(公開の求人票、辞退の理由の深掘り、紹介会社への聞き取り)、項目ごとの上・下の整理、他社から入社した人と辞退しなかった人への聞き取り、「良さ」の事実の言葉への書き換え、合う人・合わない人の整理、一枚の作成、求人票とスカウトと面接への反映、面接官向けの一枚、三か月ごとの見直し。
社内に残す判断。 下の項目を上げるかどうか(条件の見直しなど)、「上げない」と決める判断、公開する事実の範囲、経営者の言葉、面接官の指名。
外注の効きどころ。 自社の「良さ」は、社内の人には見えにくいものです。「自社では当たり前」が他社には無いことに、社内は気づきません。外部の担当者は、複数の会社を見ているので、「これは他社に無い」「これは他社も同じ」を、項目ごとに見立てられます。他社の事実の収集(紹介会社への聞き取り、辞退の理由の深掘り)も、担当者が回せます。
外注しても動かない場合。 社内が「アットホーム」を譲らない、下の項目を隠すことを求める、現場が事実の書き出しに応じない。社内の判断で、代行を替えても直りません。
自社の「良さ」は、比べて、事実で、言葉にすれば見えます。外注は、比べる材料を集め、言葉にする手段です。
エラベルの見解
担当する側から見ると、この相談で最も多いのは、「自社では当たり前のことに、価値があると気づいていない」ことです。「承認が翌日に下りる」「経営者と直接話せる」「残業が少ない」を、「普通のこと」と思っている。他社では、承認に二週間、経営者には会えない、残業が多い。当たり前が、上の項目でした。
他社から入社した人に「前の会社と比べて」と聞くと、当たり前の価値が言葉になります。「前は承認に二週間かかっていた。ここは翌日で驚いた」。その言葉が、求人票の一行目になります。
発注側にできるのは、他社から入社した人に、「うちの当たり前で、前の会社に無かったことは」と聞くことです。
まとめ
- 比べられないのは一言で考える・項目を知らない・他社の情報が無い・事実が言葉になっていない・抽象語・下を隠す・上を当たり前と思う・印象で判断の構造
- 候補者が比べる項目は条件・役割・人・働き方の実態・成長・会社の先・選考の対応・通勤と場所。条件だけではない。重さは候補者に聞く
- 並べるのは自社の事実を項目ごとに・他社の事実を集め・上同じ下を付け・分からないは分からないと・現場と入社した人に確認・候補者ごとの重さ
- 上は前に出す。下は隠さず、上げられるか検討し、上げないなら上の項目で届く候補者に。同じは差をつけ、分からないは集め、上が無ければ作る
- 言葉にするのは事実の言葉・他社から入社した人・辞退しなかった人・辞退した人の理由・合う人と合わない人・一枚・三か月ごと
- 反映は求人票の一行目と本文・スカウトの一段落目・面接の最後の五分・「他社と比べて」への答え・内定の場・面接官向けの一枚・サイトとSNS。面接官全員が同じ事実を
- 外注できるのは項目の整理・事実の書き出し・他社の収集・上下の整理・聞き取り・言葉への書き換え・一枚・反映・見直し。社内に残るのは上げるかどうか・上げない判断・公開の範囲・経営者の言葉・面接官
よくある質問
面接で「御社の良さは」と聞かれて、答えられません
「良さ」を一言で答えようとするから、詰まります。候補者が比べる項目(条件、役割、人、働き方、成長、会社の先、選考の対応)ごとに、自社の事実を書き出し、他社と比べて上の項目を事実の言葉で答えます。「条件では届かない場合があります。そのうえで、この役割では〇〇を自分で決められ、承認は翌日に下り、選考は三週間で終わります」。下を認めてから、上を。「アットホーム」「成長できる」は、どの会社も言えるので、比べる材料になりません。
全部の項目で、他社に負けている気がします
「気がする」を、項目ごとに事実で確認します。他社から入社した人に「前の会社と比べて」と聞くと、自社では当たり前で他社に無いこと(承認の速さ、経営者との距離、残業の実態)が出てきます。全項目で本当に下なら、費用がかからず自社の判断で変えられる項目(選考の対応の速さと丁寧さ、役割の裁量の設計、働き方の実態)から、上にできる項目を作ります。全項目で上の会社は無く、上と下の組み合わせが自社の形です。
条件で負けていることを、候補者に言うべきですか
隠すと、候補者は他社の求人票で知り、「隠された」と受け取ります。「条件は、同じ職種の他社より低い場合があります」と認め、そのうえで上の項目(役割、働き方、選考の対応、成長)を事実で添えます。条件を重く見る候補者は離れますが、それは隠しても同じです。条件以外を重く見る候補者には、正直に認めた会社のほうが信用されます。条件を上げられるかの検討は別に行い、上げないと決めたなら、上の項目で届く候補者に集中します。