人事副業 / 人事の前提知識

偽装請負にならない業務設計|37号告示の二つの柱と、現場で崩れる場所

公開 2026-09-23

副業で人事を受けていると、「業務委託で入ってもらった会社の人に、現場の指示を出してよいか」と聞かれます。また、自分自身が「知り合いを何人か連れてきて、うちの現場で動かしてほしい」と頼まれることもあります。どちらも、判断の基準は同じ一枚の告示にあります。結論を先に書くと、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(昭和61年労働省告示第37号)第二条は、請負の形式による契約により行う業務に自己の雇用する労働者を従事させる事業主であっても、「当該事業主が当該業務の処理に関し次の各号のいずれにも該当する場合を除き、労働者派遣事業を行う事業主とする」と定めています。つまり、二つの柱をどちらも満たさない限り、請負ではなく労働者派遣として扱われるという構えです。個別の判断は都道府県労働局の需給調整事業部門や弁護士にご確認ください。業務委託と雇用の線引きは業務委託と雇用の境界に、業務委託の相手方の保護はフリーランス保護法の実務影響にまとめています。

告示の構えと、二つの柱

まず条文の構造です。告示第二条は「次の各号のいずれにも該当する場合を除き、労働者派遣事業を行う事業主とする」と書いています。原則が「派遣」で、例外が「請負」という書き方です。両方の柱を満たして初めて請負として扱われます。片方だけでは足りません。

一号:自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであること。イ・ロ・ハのいずれにも該当することが求められます。

イ 業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うものであること。

ロ 労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うものであること。

ハ 企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行うものであること。

二号:請負契約により請け負つた業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであること。イ・ロ・ハのいずれにも該当することが求められます。

第三条は、逃げ道を塞いでいます。「前条各号のいずれにも該当する事業主であつても、それが法の規定に違反することを免れるため故意に偽装されたものであつて、その事業の真の目的が法第二条第一号に規定する労働者派遣を業として行うことにあるときは、労働者派遣事業を行う事業主であることを免れることができない」。

比較になる定義。労働者派遣法第2条第1号は「労働者派遣」を「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする」と定義しています。鍵は「他人の指揮命令を受けて」です。

現場のどこで崩れるか

告示の文言を、実際の現場に当てはめると、崩れやすい場所が見えてきます。

(1)朝礼と日々の指示。発注者の管理職が、受注者の従業員に対して直接「今日はこれをやってください」と伝える。これは一号イ(1)の「業務の遂行方法に関する指示その他の管理」を発注者が行っている形に見えます。指示は、受注者側の責任者に向けて行い、受注者の責任者が自社の従業員に伝える。この経路を崩さないことが基本になります。

(2)出退勤の管理。告示は、労働時間等について「これらの単なる把握を除く」と明記しています。入退館の記録を取ること自体と、始業終業の時刻を指示・管理することは、別です。ここを分けずに「時間の記録も取れない」と誤解している現場がありますが、告示の文言は「単なる把握」を除いています。問題になるのは、発注者が始業終業時刻を決める、残業や休日出勤を指示する、といった形です。

(3)残業の依頼。一号ロ(2)は、労働時間を延長する場合や休日に労働させる場合の指示その他の管理を自ら行うこと、としています。発注者が受注者の従業員に直接「今日は残ってください」と言う形は、ここに当たります。納期の相談は、受注者との間で行います。

(4)服務規律と配置。一号ハは、服務上の規律に関する事項についての指示その他の管理と、配置等の決定及び変更を自ら行うこととしています。発注者が「この人を外してほしい」「この人をこの工程に回してほしい」と言う形は、配置の決定に踏み込みます。求めるのは業務の品質や成果であって、誰をどこに置くかではない、という線です。

(5)設備と資金。二号イは資金の調達と支弁、ハ(1)は機械・設備・器材や材料・資材を自己の責任と負担で準備することを挙げています。発注者の設備を使う形がすべて否定されるわけではありませんが、二号ハは(1)と(2)のいずれかに該当すればよい形なので、設備を借りる場合は(2)の「自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて、業務を処理すること」が立つかを確かめます。

(6)「単に肉体的な労働力を提供するものでないこと」。二号ハの柱書です。人数を出すだけの契約、時間単価で人を貸す契約は、この文言から外れていきます。何を成果として請け負っているのかを、契約書に書けるかどうかが分かれ目です。

厚生労働省は疑義応答集を出しています。「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)関係疑義応答集」として、第1集・第2集・第3集が公表されています。自社の具体的な場面に近いものを探して読むと、判断がしやすくなります。

エラベルの見解

担当する側から見ると、この領域で会社が困っているのは、「やってはいけないこと」は聞いたことがあるのに、「ではどうやって仕事を進めるのか」が分からない点です。禁止だけを伝えると、現場は萎縮して、必要な情報の共有まで止めてしまいます。そうなると品質が落ち、結局こっそり直接指示が復活します。

実務で効くのは、経路の設計です。発注者と受注者の窓口をそれぞれ一人ずつ決める。日々のやりとりはその二人の間で行う。受注者側の責任者が、自社の従業員に指示を出す。緊急時の連絡ルートだけ例外として明文化しておく。これを一枚の図にして、両社の現場に配ります。図があると、現場は迷いません。

もう一つ、実際にやるべきなのは、受注者側の責任者が現場にいる時間を確保することです。責任者が不在がちだと、発注者が直接動かさざるを得なくなります。告示の要件は書類で満たすものではなく、日々の運用で満たすものです。ここに人を配置する費用を見積もりに入れているかを、契約の段階で確かめます。エラベルは依頼側が担当者の経歴を見て選ぶ仕組みなので、外部人材の運用まで設計した経験は、経歴に書いておくと効きます。

会社に渡す点検表と、副業で入る自分の線

副業の人事が作るのは、次の形です。個別の適否の判断は都道府県労働局の需給調整事業部門や弁護士にご確認ください。

点検する項目見るところ
指示の経路発注者から受注者の従業員へ直接指示していないか。窓口が決まっているか
評価受注者の従業員の業務の遂行に関する評価を、発注者が行っていないか
始業終業時刻を発注者が指示していないか。入退館の「単なる把握」と区別できているか
残業・休日発注者が直接依頼していないか。納期の相談は受注者との間で行っているか
服務規律発注者の就業規則や服務規律を、受注者の従業員に適用していないか
配置誰をどの工程に置くかを、発注者が決めていないか
資金業務の処理に要する資金を受注者が自ら調達・支弁しているか
責任民法・商法その他の法律上の事業主としての責任を受注者が負う契約か
設備・材料誰が準備しているか。借りるなら、企画や専門的技術・経験で立つか
契約の中身何を成果として請け負っているか。人数と時間だけの契約になっていないか
責任者の常駐受注者の責任者が現場にいる体制になっているか。見積りに入っているか
緊急時の扱い例外的に直接連絡する場面を、あらかじめ明文にしているか

副業で入る自分自身の線。採用支援をしていると、「知り合いを何人か連れてきて、うちの指揮命令で働かせてほしい」という依頼が来ることがあります。この形は、職業安定法第44条が「何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない」と定めている射程に入り得ます。また、自分が雇用している人を他社の指揮命令の下で働かせるなら、労働者派遣法第2条第1号の定義に当たる形になります。受ける前に、契約と実態の両方を確かめます。判断は弁護士や都道府県労働局にご確認ください。職業安定法の全体像は職業安定法の押さえどころにまとめています。

エラベルの見解

外に出してよいのは、指示の経路の図、点検表、契約書の項目立て、責任者の体制の設計、緊急時の例外の明文化までで、「この運用が偽装請負に当たるか」「この契約が労働者派遣に該当するか」といった個別の判断は、都道府県労働局の需給調整事業部門や弁護士の範囲です。副業の人事が持つのは、手続と材料と設計であって、法的な結論ではありません。

担当する側から見ると、この領域の価値は、会社に「断る力」を渡すことにあります。現場の管理職は、悪意なく直接指示を出します。目の前に人がいて、急ぎの仕事があるからです。ここで「告示違反です」と言っても止まりません。止まるのは、代わりの手順があるときだけです。受注者の責任者に五分で連絡がつく体制、緊急時の例外が明文になっていること、納期の変更を協議する窓口があること。これらが揃うと、現場は直接指示をしなくて済みます。禁止ではなく、代わりの経路を渡す。この考え方は、公正な採用選考でも個人情報でも同じで、制度まわりの仕事に共通する型です。エラベルでは、依頼側が担当者を選べるので、現場が実際に守る運用に落とせる人は、制度の案件で指名されます。

まとめ

よくある質問

業務委託で来ている人の勤怠を記録するのも、偽装請負になりますか

告示第二条第一号ロは、労働者の始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理について「(これらの単なる把握を除く。)」と明記しています。時刻を指示し管理することと、単に把握することは、文言上分けられています。入退館の記録や、成果の報告として稼働の報告を受けることと、始業終業の時刻を発注者が決めることは別です。自社の運用がどちらに当たるかの個別の判断は、都道府県労働局の需給調整事業部門や弁護士にご確認ください。

現場で直接やりとりしないと、仕事が進みません

告示は、発注者が受注者の従業員に直接指示を出すことを問題にしていますが、両社の間で必要なやりとりを行うこと自体を否定するものではありません。実務では、発注者と受注者それぞれの窓口を決め、日々のやりとりをその経路に載せます。そのうえで、受注者の責任者が現場にいる時間を確保し、緊急時の連絡の扱いを事前に明文にします。厚生労働省は「37号告示関係疑義応答集」を第1集から第3集まで公表しているので、自社の場面に近いものを確かめるのが実務です。

発注先の担当者を替えてほしいと言ってもよいですか

告示第二条第一号ハ(2)は「労働者の配置等の決定及び変更を自ら行うこと」を、受注者側が満たすべき要件として挙げています。発注者が誰をどの工程に置くかを決める形は、この要件と逆を向きます。実務では、個人を指定するのではなく、成果や品質の水準、必要な技能の程度を契約と仕様で示し、その達成を求める形にします。体制の変更が必要なら、受注者と協議して受注者が決める、という経路になります。個別の判断は、都道府県労働局の需給調整事業部門や弁護士にご確認ください。

出典