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雇用保険の適用範囲|被保険者になる要件と、マルチジョブホルダー制度

公開 2026-09-22

副業で人事を受けていると、依頼先から「このアルバイトは雇用保険に入れるのか」「短時間の人が複数いるが、どこまで手続が要るのか」と相談されることがあります。社会保険と雇用保険は要件も提出先も期限も違うので、まとめて「社保」と呼んでいる依頼先では、判定と手続が混ざります。この記事は、雇用保険の適用範囲を、厚生労働省の案内に沿って整理したものです。結論を先に書くと、厚生労働省の案内では、1週間の所定労働時間が20時間未満である方や、同一の事業主に継続して31日以上雇用されることが見込まれない方は、雇用保険の適用除外になるとされています。届出は事業所を管轄するハローワークに提出し、資格取得届は被保険者となった日の属する月の翌月10日まで、資格喪失届と離職証明書は被保険者でなくなった事実があった日の翌日から起算して10日以内です。あわせて、複数の事業所で働く65歳以上の方を対象に、令和4年1月1日から「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が新設されています。副業の人事が持つのは、判定の材料づくりと運用の設計までで、該当性の個別の判断はハローワークや社会保険労務士にご確認ください。社会保険は社会保険の適用範囲に、入退社の手続は入退社手続きの流れにまとめています。

被保険者になる要件と、適用除外

厚生労働省の「事業主の行う雇用保険の手続き」では、1週間の所定労働時間が20時間未満である方や、同一の事業主に継続して31日以上雇用されることが見込まれない方は雇用保険の適用除外になる、と説明されています。裏を返せば、この二つに当たらない方が被保険者の要件に当たることになります。

観点内容
所定労働時間1週間の所定労働時間が20時間未満の方は適用除外
雇用の見込み同一の事業主に継続して31日以上雇用されることが見込まれない方は適用除外
提出先事業所を管轄するハローワーク

社会保険との違い。社会保険(健康保険・厚生年金保険)は、通常の労働者の4分の3以上という基準や、特定適用事業所等での週20時間以上・所定内賃金が月額8.8万円以上・学生でない、という要件で判定します。雇用保険には賃金の額の要件がなく、学生かどうかの扱いも制度が違います。「週20時間」という数字が両方に出てくるので混同しやすいのですが、別の制度の別の要件です。依頼先には、判定の表を二つ並べて渡します。

その他の届出。手続き一覧表には、雇用保険被保険者転勤届が「事実のあった日の翌日から10日以内」、雇用保険被保険者氏名変更届が「被保険者が氏名を変更したその都度」、育児休業給付関係書類が「育児休業を開始した日の翌日から10日以内」、介護休業給付金支給申請書が「介護休業を開始した日の翌日から10日以内」、高年齢雇用継続給付支給申請書が「(初回)支給対象月の初日から起算して4か月以内」と示されています。事業所に関する手続として、雇用保険適用事業所設置届が「保険関係が成立した日の翌日から10日以内」、廃止届が「事業所を廃止したときはその翌日から10日以内」、事業主事業所各種変更届が「名称・所在地等変更のあった日の翌日から10日以内」とされています。

雇用保険マルチジョブホルダー制度

厚生労働省の案内では、複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者について、次の要件をすべて満たす場合に、本人からハローワークに申出を行うことで、申出を行った日から特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる制度が、令和4年1月1日から新設された、と説明されています。

要件内容
年齢と就業複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
労働時間2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して、1週間の所定労働時間が20時間以上であること
雇用の見込み2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること

本人が申し出る仕組み。通常の雇用保険の加入は事業主が手続をしますが、この制度は本人からハローワークに申出を行う形です。事業主は、本人からの求めに応じて必要な証明や手続に協力することになります。

依頼先で確かめること。65歳以上の短時間の方が複数の勤務先で働いているかどうかは、会社からは見えません。本人が申し出て初めて動く仕組みなので、依頼先の人事が「この制度がある」ことを本人に案内できるようにしておきます。具体的な手続や、該当するかどうかの判断は、ハローワークにご確認ください。

エラベルの見解

担当する側から見ると、この領域で価値が出るのは、要件を説明することではなく「社会保険と雇用保険の判定を、一枚に並べて渡す」ことです。相談で見ていると、依頼先の担当者は二つの制度を「社保」とひとまとめにしていて、週20時間という数字だけが頭に残っています。その結果、雇用保険には賃金の要件がないのに「月8.8万円に届かないから入らない」と判断したり、社会保険の4分の3基準を見落としたりします。判定の表を二つ並べ、それぞれの提出先(ハローワークと年金事務所)と期限(翌月10日まで/5日以内)を書いた一枚があるだけで、間違いはかなり減ります。

もう一つは、マルチジョブホルダー制度の案内です。この制度は本人が申し出ないと始まらないので、会社が知らせなければ本人が知る機会がありません。65歳以上の短時間の方を雇っている依頼先では、採用時や契約更新時の案内に「複数の勤務先で働いている場合、こういう制度があります」の一文を入れるだけで、本人にとっての選択肢が増えます。制度の適用の可否は本人とハローワークの間の話なので、会社は案内までにとどめます。エラベルでは、依頼側が担当者の経歴を見て選ぶ仕組みなので、この案内まで設計できる人は、シニアや短時間の採用が多い依頼先に効きます。

副業する側から見た注意点

この記事を読んでいる方自身が、本業と副業の両方で働いている場合の話も整理しておきます。

雇用での副業の場合。雇用保険は、原則として主たる賃金を受ける一つの事業所で被保険者となる扱いが基本です(65歳以上のマルチジョブホルダー制度は、その例外として設けられたものです)。副業先でも雇用される形をとる場合、どちらで被保険者になるのかは、勤務の形によって変わります。判断はハローワークにご確認ください。

業務委託での副業の場合。業務委託や請負で副業をしている場合、その働き方は雇用ではないので、雇用保険の被保険者にはなりません。人事の副業は業務委託の形が多いので、この場合は本業の会社でのみ被保険者という形になります。

依頼先に伝えるとき。副業の人事として依頼先に入るとき、「私は業務委託なので、貴社で雇用保険の手続は発生しません」と最初に伝えておくと、依頼先の手続の担当者が迷いません。契約の形(雇用か業務委託か)を契約書で明確にしておくことも、あわせて確かめます。契約の形と実態が違うと、後から問題になるので、実際の働き方が業務委託として成り立つかも見ておきます。この線引きは採用代行が偽装請負になる境界線の考え方が参考になります。

労働時間の通算との違い。副業・兼業の労働時間の通算は労働基準法の話で、雇用保険の適用とは別の制度です。どちらも「副業」という言葉で語られるので混ざりやすいところです。労働時間の通算は企業側から見た副業許可制度に整理しています。

エラベルの見解

外に出してよいのは、判定の材料の整理、社会保険と雇用保険を並べた一枚、募集の条件との突き合わせ、届出の期限の一覧、マルチジョブホルダー制度の案内の文面、契約更新時の見直しの工程までで、「この人は被保険者に当たるか」「この雇用見込みは31日以上と言えるか」「どちらの勤務先で被保険者になるか」といった個別の判断は、ハローワークや社会保険労務士の範囲です。特に「31日以上の雇用見込み」は、契約期間や更新の実態に当てはめる判断なので、副業の人事が決め切る場所ではありません。

担当する側から見ると、この領域で信頼されるのは、「制度を知っている」ことより「依頼先の担当者が迷わない一枚を残す」ことです。制度は二つ、提出先は二つ、期限は二つ。これを並べた紙が担当者の手元にあるかどうかで、手続の正確さが変わります。加えて、契約更新やシフト変更のときに判定をやり直す工程を年間の流れに埋め込めば、依頼先は自分で回せるようになります。エラベルでは、依頼側が担当者を選べるので、「残る一枚を作る人」は他の人事の整備の案件でも選ばれています。

まとめ

よくある質問

依頼先が「社保も雇用保険も、週20時間で同じ」と思っています

数字は同じでも別の制度です。雇用保険は、週20時間未満または31日以上の雇用見込みがない場合に適用除外で、賃金の額の要件はありません。社会保険は、通常の労働者の4分の3以上という基準に加え、特定適用事業所等では週20時間以上・所定内賃金が月額8.8万円以上・学生でない、の3要件をすべて満たす場合に被保険者となります。提出先も期限も違うので、判定の表と期限の一覧を二つ並べて渡します。社会保険の要件は社会保険の適用範囲に整理しています。

65歳以上のパートの方に、マルチジョブホルダー制度を案内すべきですか

制度があることを知らせるのは、会社としてできる範囲です。適用されるかどうかは本人の他の勤務先の状況によるので、会社が判定することはできません。採用時や契約更新時の案内に「複数の勤務先で働いている場合、65歳以上の方を対象にした制度があります」という一文を入れ、詳しくはハローワークに相談するよう案内する形が無難です。本人が申し出た場合の会社としての協力の範囲も、ハローワークにご確認ください。

副業の人事として入るとき、依頼先で雇用保険の手続は要りますか

業務委託の形で受けているなら、雇用ではないので依頼先での雇用保険の手続は発生しません。契約の前に「業務委託なので貴社での社会保険・雇用保険の手続は発生しません」と伝えておくと、依頼先の担当者が迷いません。ただし、契約の形と実態が食い違っていると、後から問題になります。指揮命令の受け方や稼働の管理の仕方が雇用に近くなっていないかは、受ける側としても見ておきます。契約の形の考え方は人事の副業の始め方に、線引きは採用代行が偽装請負になる境界線に整理しています。

出典