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職業安定法の押さえどころ|副業の人事が関わる条文を、募集の流れに沿って並べる

公開 2026-09-23

副業で人事を受ける人にとって、職業安定法は「人材紹介会社の法律」という印象があるかもしれません。でも、条文を開くと、義務を負う主体として求人者や労働者の募集を行う者が何度も出てきます。自社で採用している会社も、しっかり対象です。この記事は、副業の人事が関わる条文を、募集の流れに沿って並べたものです。結論を先に書くと、押さえるのは、第3条(均等待遇)、第5条の3(労働条件等の明示)、第5条の4(求人等に関する情報の的確な表示)、第5条の5(求職者等の個人情報の取扱い)の四つで、これに求人を出す先の話として第5条の6(求人の申込み)、自社で募集するときの禁止事項として第39条・第40条、外部の人材を使うときの線として第44条が続きます。個別の判断はハローワークや都道府県労働局にご確認ください。

前提になる二条

第2条(職業選択の自由)。「何人も、公共の福祉に反しない限り、職業を自由に選択することができる」。短い条文ですが、この法律が何を守っているかを示しています。採用の場面で会社がやりがちなこと、たとえば内定と引き替えに他社の選考を辞退させるといった行為が問題になる根っこは、ここにあります。

第3条(均等待遇)。「何人も、人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であること等を理由として、職業紹介、職業指導等について、差別的取扱を受けることがない。但し、労働組合法の規定によつて、雇用主と労働組合との間に締結された労働協約に別段の定のある場合は、この限りでない」。

列挙されている項目を覚えておくと役に立ちます。人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であること。これは、第5条の5の指針が収集してはならないとしている個人情報の項目や、公正採用選考で配慮すべきとされている事項と、大きく重なります。聞かない・使わない項目の根っこが、ここにあります。

第4条(定義)。第1項は「この法律において『職業紹介』とは、求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあつせんすることをいう」と定義しています。第2項は無料の職業紹介、第3項は有料の職業紹介を定義しています。

定義は、自分の立ち位置を確かめるために使います。副業で採用の支援をするとき、自分がやっているのは「募集」の代行なのか、「職業紹介」なのか。求人と求職の両方の申込みを受けて間をあっせんする形になると、職業紹介事業の許可の話が視野に入ります。線引きの判断はハローワークや都道府県労働局にご確認ください。

募集の流れに沿った四条

第5条の3(労働条件等の明示)。第1項は、労働者の募集を行う者等に対し、従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならないと定めています。第3項は、労働契約を締結しようとする場合に第1項の明示内容を変更する場合等の変更明示を定めています。明示すべき事項は施行規則第4条の2第3項に九項目あり、業務の内容の変更の範囲、就業の場所の変更の範囲、試みの使用期間、受動喫煙を防止するための措置が含まれます。詳しくは募集時の労働条件明示に整理しています。

第5条の4(求人等に関する情報の的確な表示)。第1項は、広告等により求人や労働者の募集に関する情報を提供するときは「当該情報について虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならない」、第2項は、労働者の募集を行う者及び募集受託者に対し、募集に関する情報を「正確かつ最新の内容に保たなければならない」と定めています。詳しくは求人情報の的確表示義務に整理しています。

第5条の5(求職者等の個人情報の取扱い)。第1項は、公共職業安定所、特定地方公共団体、職業紹介事業者及び求人者等に対し、「その業務の目的の達成に必要な範囲内で、厚生労働省令で定めるところにより、当該目的を明らかにして求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない」と定めています。ただし書きとして「本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない」が付き、第2項は「求職者等の個人情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければならない」と定めています。指針が定める収集禁止事項や同意の要件はリファレンスチェックの法的注意に、保管の期間は候補者情報の保有期間にまとめています。

第5条の6(求人の申込み)。第1項は「公共職業安定所、特定地方公共団体及び職業紹介事業者は、求人の申込みは全て受理しなければならない」としたうえで、ただし書きで受理しないことができる場合を挙げています。

四号が実務に直結します。求人者が求人の申込みに当たって労働条件を明示しない場合、その申込みは受理されないことがある、という組み立てです。ハローワークに求人を出すときの手戻りの原因は、たいていここです。

エラベルの見解

担当する側から見ると、職業安定法を「知っている」ことより、自社が条文のどの主語に当たるかを言えることのほうが、はるかに実務で効きます。第5条の4と第5条の5は、主語の並びが違います。的確表示の第2項は「労働者の募集を行う者及び募集受託者」で、個人情報の第5条の5は「職業紹介事業者及び求人者」等です。自社が直接募集をかけているのか、媒体経由なのか、紹介会社を使っているのかで、かかる条文が変わります。

実務では、案件に入ったら最初に、会社の採用経路を全部書き出してもらいます。自社サイト、求人媒体、人材紹介、リファラル、スカウト代行、SNS。それぞれについて、自社がどの立場になるかを一枚にします。この作業をやると、副業の人事自身の立ち位置もはっきりします。募集業務の受託なのか、あっせんに当たる行為なのか。自分の足元を確かめずに進めるのは、この分野では危ないです。エラベルは依頼側が担当者の経歴を見て選ぶ仕組みなので、こういう整理を最初にできる人は、制度まわりの案件で信頼を得やすいです。

自社で募集するときの禁止と、外部を使うときの線

第39条(報酬受領の禁止)。「労働者の募集を行う者及び第三十六条第一項又は第三項の規定により労働者の募集に従事する者(以下「募集受託者」という。)は、募集に応じた労働者から、その募集に関し、いかなる名義でも、報酬を受けてはならない」。応募者からお金を取らないという原則です。

第40条(報酬の供与の禁止)。労働者の募集を行う者が、その被用者で労働者の募集に従事する者等に報酬を与える場合の制限を定めています。社内のリファラル採用のインセンティブ設計に関わる条文なので、制度を作るときは条文と施行規則を確かめます。個別の設計の適否はハローワークや都道府県労働局にご確認ください。

第44条(労働者供給事業の禁止)。「何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない」。第45条は、労働組合等が厚生労働大臣の許可を受けた場合の無料の労働者供給事業を定めています。

ここは副業の人事が当事者になり得る場所です。採用支援の案件で、「知り合いのエンジニアを何人か連れてきて、うちの指揮命令で働かせてほしい」と頼まれることがあります。形によっては、この条文の射程に入ります。業務委託なのか、労働者派遣なのか、労働者供給なのか。判断は弁護士やハローワーク・都道府県労働局にご確認ください。

副業の人事が最初に作るのは、次の形です。

作るもの中身
採用経路の一覧自社サイト、媒体、紹介、リファラル、スカウト代行、SNS。経路ごとに自社の立場を書く
条文の対応表経路ごとに、第5条の3・第5条の4・第5条の5のどれがどう当たるか
明示の書式施行規則第4条の2第3項の九項目が漏れない欄立て
表示の点検表虚偽・誤解を生じさせる表示の四つの留意事項
個人情報の運用収集しない項目、同意の取り方、保管と消去、アクセス権限
ハローワーク求人の準備第5条の6の不受理事由に当たらないかの確認(特に明示)
リファラルの設計第40条を踏まえた報酬の扱い。個別の適否は労働局に確認する
外部人材の使い方業務委託・派遣・供給の区別。指揮命令の所在を書き出す
自分の立場の確認募集の受託か、あっせんに当たるか。契約書にどう書くか

第3条の項目が全体を貫いています。人種、国籍、信条、性別、社会的身分、門地、従前の職業、労働組合の組合員であること。この並びは、第5条の5の指針の収集禁止事項、公正な採用選考の配慮すべき事項、そして面接の質問設計にまでつながります。面接官への説明は、ここから始めると筋が通ります。詳しくは面接で聞いてはいけないことにまとめています。

エラベルの見解

外に出してよいのは、採用経路の一覧、条文の対応表、明示と表示の書式、個人情報の運用設計、ハローワーク求人の準備、外部人材の使い方の整理までで、「この形が職業紹介に当たるか」「この報酬設計が第40条に抵触しないか」「この契約が労働者供給に当たるか」といった個別の判断は、ハローワークや都道府県労働局、弁護士の範囲です。副業の人事が持つのは、手続と材料と設計であって、法的な結論ではありません。

担当する側から見ると、職業安定法の知識は、案件を取るためではなく、案件を断るために効きます。採用支援をしていると、線の際どい依頼が来ます。知り合いを紹介して手数料をもらえないか、応募者から研修費を取れないか、業務委託の形で現場に人を入れられないか。どれも、条文を読んでいれば「その形は受けられません」と言えます。そして、断れる人は信用されます。受けたいものだけ受けて、受けられないものははっきり断る。これは、会社員の人事では身につきにくい感覚ですが、副業で外部の立場に立つと、自分を守るために必要になります。エラベルでは、依頼側が担当者を選び、担当者も条件が合うときだけ受ける形にしているので、こうした線を持っている人ほど長く続いています。

まとめ

よくある質問

自社で採用しているだけでも、職業安定法は関係ありますか

関係します。第5条の3第1項は「労働者の募集を行う者」を、第5条の4第1項・第2項も「労働者の募集を行う者及び募集受託者」を義務の主体に挙げています。第5条の5第1項は「職業紹介事業者及び求人者」等を挙げており、自社で直接採用する会社が明文で入っています。したがって、明示、表示、個人情報の三つは、人材紹介を使っていない会社にもかかります。自社の募集形態がどの条文にどう当たるかの個別の判断は、ハローワークや都道府県労働局にご確認ください。

知り合いを紹介して、紹介料をもらってもよいですか

第4条第1項は「職業紹介」を「求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間における雇用関係の成立をあつせんすること」と定義し、第3項は無料の職業紹介以外の職業紹介を有料の職業紹介としています。手数料や報酬を受けて雇用関係の成立をあっせんする形は、有料職業紹介事業の枠組みの話になります。副業で採用支援をしている人が、この形に足を踏み入れるかどうかは、契約の書き方と実態で決まります。個別の判断は、ハローワークや都道府県労働局、弁護士にご確認ください。

ハローワークに求人を出したら受理されませんでした

第5条の6第1項は「求人の申込みは全て受理しなければならない」としたうえで、ただし書きで受理しないことができる場合を挙げています。内容が法令に違反する求人、労働条件が通常の労働条件と比べて著しく不適当と認められる求人、労働関係法令違反で処分等が講じられた者からの求人、第5条の3第2項の規定による明示が行われない求人、暴力団員等からの求人です。実務では、まず明示の項目が揃っているかを確かめます。理由と対応については、申込み先のハローワークにご確認ください。

出典