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フリーランス保護法の実務影響|明示・60日以内の支払・募集の的確表示・30日前の予告

公開 2026-09-23

副業で人事を受ける人にとって、フリーランス保護法は二重の意味を持ちます。依頼側の会社に助言する立場でもあり、自分自身が保護される側でもあるからです。業務委託で人事を受けているなら、たいていは条文の言う「特定受託事業者」に当たります。結論を先に書くと、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)は、第3条で取引条件の明示、第4条で報酬の支払期日、第5条で禁止行為、第12条で募集情報の的確な表示、第13条で育児介護等への配慮、第14条でハラスメント対策、第16条で契約の解除等の予告を定めています。施行令(令和六年政令第二百号)は、法の施行の日を令和6年11月1日としています。個別の判断は弁護士や公正取引委員会・厚生労働省の相談窓口にご確認ください。求人側の表示義務との関係は求人情報の的確表示義務に、職業安定法の全体像は職業安定法の押さえどころにまとめています。

誰が「特定受託事業者」で、誰が義務を負うか

条文の言葉が独特なので、まず定義を押さえます。第2条です。

特定受託事業者(第1項)。「業務委託の相手方である事業者であって、次の各号のいずれかに該当するもの」。一号は「個人であって、従業員を使用しないもの」、二号は「法人であって、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しないもの」。屋号があるかどうか、開業届を出しているかどうかは関係ありません。従業員を使っていない一人の事業者であれば入ります。副業で人事を業務委託で受けている人は、ここに当たるのが通常です。

特定受託業務従事者(第2項)。特定受託事業者である個人、および特定受託事業者である一人法人の代表者を指します。ハラスメント対策の条文(第14条)は、この「特定受託業務従事者」を守る形で書かれています。

業務委託(第3項)。「事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造(加工を含む。)又は情報成果物の作成を委託すること」および「事業者がその事業のために他の事業者に役務の提供を委託すること(他の事業者をして自らに役務の提供をさせることを含む。)」。採用支援や人事の実務は「役務の提供」に当たります。

業務委託事業者(第5項)と特定業務委託事業者(第6項)。前者は特定受託事業者に業務委託をする事業者すべて。後者は、そのうち「個人であって、従業員を使用するもの」または「法人であって、二以上の役員があり、又は従業員を使用するもの」です。義務の重さが変わります。第3条(明示)は業務委託事業者すべてに、第4条(支払期日)・第5条(禁止行為)・第12条以降は特定業務委託事業者にかかる形です。従業員のいる会社に業務委託で入るなら、相手はほぼ特定業務委託事業者です。

取引の適正化(第3条〜第5条)

第3条(明示)。「業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならない」。ただし書きで、内容が定められないことにつき正当な理由がある事項は明示を要しないとしつつ、「当該事項の内容が定められた後直ちに」明示しなければならないとしています。第2項は、電磁的方法で明示した場合に特定受託事業者から書面の交付を求められたときは、遅滞なくこれを交付しなければならないと定めています。

第4条(報酬の支払期日)。第1項は、報酬の支払期日について「当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日…から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない」と定めています。検査をするかどうかを問わない、とも書かれています。第2項は、支払期日が定められなかったときは受領した日が、違反して定められたときは受領日から60日を経過する日が、それぞれ支払期日と定められたものとみなす、としています。

再委託の場合(第3項)。元委託者から業務委託を受けた特定業務委託事業者が再委託をした場合は、再委託である旨、元委託者の氏名又は名称、元委託支払期日その他の事項を明示した場合に限り、報酬の支払期日は「元委託支払期日から起算して三十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない」とされています。第6項は、元委託者から前払金の支払を受けたときの、再委託先への前払金の支払について適切な配慮をしなければならないと定めています。

第5条(禁止行為)。第1項は、政令で定める期間以上の期間行う業務委託(契約の更新により継続することとなるものを含む)について、次の行為を禁じています。施行令第1条は、この期間を「一月」と定めています。

第2項は、期間の長短にかかわらず、次の行為によって特定受託事業者の利益を不当に害してはならないとしています。自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること、特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに給付の内容を変更させ、又は給付を受領した後に給付をやり直させること。

エラベルの見解

担当する側から見ると、この法律で真っ先に効くのは第3条と第4条です。副業で人事を受けていると、契約書がないまま口頭で始まる案件が一定数あります。報酬の額は決まっているが、支払期日が曖昧。検収が終わらないと払わない、と言われる。第4条第1項は「検査をするかどうかを問わず」受領した日から起算して60日の期間内と書いているので、ここは交渉の材料になります。しかも第2項は、支払期日が定められなかったときは受領日が支払期日とみなされる、という形です。

実務で勧めているのは、案件を受けるときに第3条の明示をこちらから求めることです。「フリーランス法の第3条で明示事項が決まっているので、この形で一枚いただけますか」と言えば、たいていの会社は用意します。これは相手を責める行為ではなく、相手の義務履行を助ける行為です。そして、この一枚があると、後から業務範囲が膨らんだときに「当初の給付の内容はこれでした」と示せます。副業で長く続いている人ほど、最初の書類にこだわっています。エラベルでは、依頼側と担当者の間の条件を先に確かめる形にしていますが、それとは別に、自分で条文を持っておくと判断が速くなります。

就業環境の整備(第12条〜第16条)

第12条(募集情報の的確な表示)。「特定業務委託事業者は、新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、文書の掲出又は頒布その他厚生労働省令で定める方法…により、その行う業務委託に係る特定受託事業者の募集に関する情報…を提供するときは、当該情報について虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならない」。第2項は「正確かつ最新の内容に保たなければならない」。

施行令第2条は、この対象となる事項として、業務の内容/業務に従事する場所、期間又は時間に関する事項/報酬に関する事項/契約の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む)に関する事項/特定受託事業者の募集を行う者に関する事項の五つを定めています。

職業安定法第5条の4と同じ構えです。雇用の募集について的確表示が求められるのと同様に、業務委託の募集についても同じ枠がかかる形になっています。会社が採用と業務委託の両方で人を集めているなら、募集情報の点検は両方まとめてやるのが効率的です。

第13条(妊娠、出産若しくは育児又は介護に対する配慮)。第1項は、継続的業務委託の相手方である特定受託事業者からの申出に応じて、育児介護等と両立しつつ業務に従事することができるよう、その者の状況に応じた必要な配慮をしなければならないと定めています。第2項は、継続的業務委託以外については努力義務です。施行令第3条は、第13条第1項の政令で定める期間を「六月」としています。

第14条(ハラスメント対策)。特定業務委託事業者は、特定受託業務従事者に対し業務委託に関して行われる次の言動により当該状況に至ることのないよう、相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならない、としています。

第2項は、相談を行ったことや相談への対応に協力して事実を述べたことを理由とする契約の解除その他の不利益な取扱いを禁止しています。雇用の側のハラスメント防止措置はハラスメント防止措置の義務に、三要素の読み方はパワハラの判断基準にまとめています。

第16条(解除等の予告)。「特定業務委託事業者は、継続的業務委託に係る契約の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む)をしようとする場合には、当該契約の相手方である特定受託事業者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、少なくとも三十日前までに、その予告をしなければならない」。ただし書きで、災害その他やむを得ない事由により予告することが困難な場合等を除いています。第2項は、予告された日から契約が満了する日までの間に解除の理由の開示を請求された場合は、遅滞なくこれを開示しなければならないと定めています(第三者の利益を害するおそれがある場合等を除く)。

執行の枠組み。第17条は厚生労働大臣への申出、第18条は勧告、第19条は命令および公表を定めています。第24条は、第9条第1項または第19条第1項の命令に違反した場合等について五十万円以下の罰金を定めています。

エラベルの見解

外に出してよいのは、明示事項の書式、支払期日の設計、募集情報の点検表、ハラスメント相談体制の設計、解除の予告の運用までで、「この行為が第5条の禁止行為に当たるか」「この契約解除が予告の対象か」といった個別の判断は、弁護士や公正取引委員会・厚生労働省の相談窓口の範囲です。

担当する側から見ると、この法律は依頼側に説明するときの入口としても使えます。人事の副業を入れようとしている会社は、業務委託の扱いに慣れていないことが多い。そこに「フリーランス法で明示の義務があります」と伝えると、会社は自社の契約書を見直します。そして、その過程で、業務範囲、報酬、支払期日、契約期間、解除の条件が言語化される。これは会社にとっても副業側にとっても得です。自分の契約を整えることと、会社の制度を整えることが同じ作業になる、珍しい領域です。

もう一つ、第14条のハラスメント対策は、外部人材を入れる会社が見落としやすいところです。雇用のハラスメント防止措置は整えていても、業務委託で入っている人が相談窓口の対象になっているかは、たいてい決まっていません。副業の人事が入るとき、自分自身が対象になるかを確かめておくと、後で困りません。エラベルは依頼側が担当者の経歴を見て選ぶ仕組みなので、この手の整理を提案できる人は、外部人材の活用そのものの設計まで任されることがあります。

まとめ

よくある質問

業務委託で人事の副業をしている自分も、対象になりますか

第2条第1項は、特定受託事業者を「業務委託の相手方である事業者であって、個人であって、従業員を使用しないもの」または「法人であって、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しないもの」と定義しています。従業員を使っていない一人の事業者として業務委託を受けているなら、文言上は当たります。委託する側が「個人であって、従業員を使用するもの」または「法人であって、二以上の役員があり、又は従業員を使用するもの」であれば、相手は特定業務委託事業者になり、支払期日や禁止行為、募集表示、ハラスメント対策、解除の予告の規定がかかる形です。自分の契約が該当するかの個別の判断は、弁護士や厚生労働省の相談窓口にご確認ください。

「検収が終わってから支払う」と言われました

第4条第1項は、報酬の支払期日について「当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付の内容について検査をするかどうかを問わず、当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日…から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない」と定めています。また第2項は、支払期日が定められなかったときは受領した日が支払期日と定められたものとみなす、としています。実務では、契約の段階で支払期日を明示してもらうのが確実です。個別の事案の判断は、弁護士や公正取引委員会の相談窓口にご確認ください。

契約を更新しないと急に言われました

第16条第1項は、継続的業務委託に係る契約の解除について「契約期間の満了後に更新しない場合を含む」としたうえで、「少なくとも三十日前までに、その予告をしなければならない」と定めています(災害その他やむを得ない事由により予告することが困難な場合等を除く)。第2項は、予告がされた日から契約が満了する日までの間に解除の理由の開示を請求した場合、遅滞なくこれを開示しなければならないとしています。継続的業務委託の期間は施行令第3条により六月とされています。自分の契約が該当するか、どう申し出るかについては、弁護士や厚生労働省の相談窓口にご確認ください。

出典