人事副業 / 人事の前提知識

セクハラ対応の実務|性的な言動の範囲と、求職者等への義務化への備え

公開 2026-09-22

副業で人事を受けていると、セクシュアルハラスメントの相談体制について聞かれることがあります。この領域は、相談を受けた時点で本人の負担が大きく、対応を誤ると二次的な被害を生みます。また、2026年10月からは求職者等に対する対策が義務化され、採用の現場そのものが対象になります。この記事は、セクシュアルハラスメントへの対応の前提を、厚生労働省の指針とリーフレットに沿って整理したものです。結論を先に書くと、性的な言動には「性的な内容の発言」(性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること等)と「性的な行動」(性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、わいせつな図画を配布すること等)が含まれます。男性も女性も加害者にも被害者にもなり得る問題で、異性に対するものだけでなく同性に対するものも該当し、相手の性的指向またはジェンダーアイデンティティにかかわらず該当することがあり得るとされています。2026年(令和8年)10月1日からは、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます。個別の事案の判断は弁護士や都道府県労働局にご確認ください。防止措置の全体像はハラスメント防止措置の義務に、パワハラはパワハラの判断基準にまとめています。

性的な言動の範囲と、対象になる人

厚生労働省のリーフレットでは、求職者等に対するセクシュアルハラスメントの説明の中で、性的な言動の範囲が次のように示されています。

区分例として挙げられているもの
性的な内容の発言性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること等
性的な行動性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、わいせつな図画を配布すること等

誰が対象か。リーフレットでは、男性も女性も、加害者にも被害者にもなり得る問題であり、異性に対するものだけではなく同性に対するものも該当する、と説明されています。また、相手の性的指向(恋愛または性愛がいずれの性別を対象とするか)またはジェンダーアイデンティティ(自己の性別についての認識)にかかわらず、該当することがあり得る、とされています。

措置の構造。セクシュアルハラスメントの防止措置も、他のハラスメントと同じ四つの柱で組まれています。方針の明確化と周知・啓発、相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備、事後の迅速かつ適切な対応、併せて講ずべき措置(プライバシーの保護、不利益取扱いの禁止の周知)です。詳しくはハラスメント防止措置の義務に整理しています。

プライバシーの範囲。パワーハラスメントの指針では、相談者・行為者等のプライバシーには、性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含まれると明記されています。セクシュアルハラスメントの相談では、この点が特に重くなります。誰がどこまで知るかを先に決め、担当者に手引きを渡しておきます。

相談を受けたときの実務

副業の人事は個別の事案に入らない設計が基本ですが、相談体制の設計は仕事の範囲です。窓口の担当者が動ける形を作ります。

受ける段階。ハラスメントの指針では、被害を受けた労働者が萎縮するなどして相談を躊躇する例もあること等を踏まえ、相談者の心身の状況や言動が行われた際の受け止めなどその認識にも配慮しながら、現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合や該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し適切な対応を行うようにすること、とされています。窓口の案内文を「該当する場合のみ受け付けます」にしないことが要点です。

事実確認の段階。事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認することが求められ、相談窓口の担当者、人事部門または専門の委員会等が、相談者および行為者の双方から事実関係を確認することが例として示されています。その際、相談者の心身の状況や受け止めなどその認識にも適切に配慮することとされています。担当者向けの手引きに、この配慮の具体的な形(聞き方、場所、同席者、休憩、記録の取り方)を書いておきます。

対応の段階。被害者に対する配慮のための措置、行為者に対する措置、再発防止に向けた措置が求められます。措置の内容は事案によるので、弁護士や都道府県労働局に相談しながら進める形にします。

守る段階。相談したことや事実関係の確認に協力したことを理由とする不利益な取扱いの禁止を定め、労働者に周知することが求められています。人事の実務としては、相談があった後にその人の評価、配置、昇給が変わっていないかを確認する工程を置きます。

担当者を誰にするか。求職者等に対するセクシュアルハラスメントのリーフレットには、相談窓口担当者について「人事担当者以外を相談窓口担当者とすることも考えられる」という注記が示されています。社内の相談窓口でも、この考え方は参考になります。人事が窓口だと、評価や配置に影響することを恐れて相談が来ないことがあります。

エラベルの見解

担当する側から見ると、この領域で最も差が出るのは、「相談が来る前に、担当者が動ける状態を作れているか」です。相談で見ていると、窓口はあるのに担当者が何をしてよいか分からない依頼先が多くあります。相談を受けた担当者が、その場で「それはハラスメントではない」と言ってしまう、逆に「すぐに行為者に確認します」と本人の意向を聞かずに動いてしまう。どちらも二次的な被害につながります。

担当者向けの手引きに書くのは、最初に聞くこと(何があったか、いつから、本人がどうしたいか)、その場で判断しないこと、記録の取り方、誰に共有するか、本人の意向を確認してから次に進むこと、です。指針も、相談者の心身の状況や受け止めなどその認識に配慮することを繰り返し求めています。この手引きを作り、担当者に研修を行うところまでが、副業の人事の仕事です。個別の事案の判断には入らず、担当者が動ける形を作る側に立ちます。エラベルでは、依頼側が担当者の経歴を見て選ぶ仕組みなので、相談体制の設計に関わった経験がある人は、そこを経歴に書いておくと選ばれやすくなります。

2026年10月からの、求職者等への義務化

厚生労働省のリーフレットでは、令和8年10月1日から、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されることが案内されています。採用に関わる人にとっては、ここが最も影響の大きい変更です。

求職者等とは。求職者(企業の求人に応募する者)のほか、求職者以外の者であって、事業主の実施する労働者の採用に資する活動に参加する者や、教育実習・看護実習その他の実習を受ける者、が挙げられています。

求職活動等とは。求職者が行う求職活動や、求職者に類する者が行う職業の選択に資する活動を指し、例として、企業の採用面接への参加、就職説明会への参加、企業の雇用する労働者への訪問、インターンシップへの参加、教育実習・看護実習等の実習の受講が示されています。SNS等のオンラインを介したものやオンライン上で行われるものも含まれる、とされています。

講ずべき措置。リーフレットでは、次が示されています。

柱措置
方針等の明確化と周知・啓発①行ってはならない旨の方針を明確化し労働者に周知・啓発 ②行った者には厳正に対処する旨の方針と対処の内容を労働者に周知・啓発 ③求職活動等に関するルールをあらかじめ明確化し、労働者および求職者等に周知・啓発
相談体制の整備④相談窓口をあらかじめ定め、求職者等に周知する ⑤相談窓口担当者が適切に対応できるようにする
事後の迅速かつ適切な対応⑥事実関係を迅速かつ正確に確認 ⑦被害者に対する配慮のための措置 ⑧行為者に対する措置を適正に行う ⑨再発防止に向けた措置
併せて講ずべき措置⑩相談者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、労働者および求職者等に周知 ⑪事実関係の確認等に協力したこと等を理由として解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発

求職活動等に関するルール。リーフレットでは、例として、面談時間および場所の指定、実施体制、やり取りに用いるSNSの種類の指定等、面談等を行う際の規則、が挙げられています。

望ましい取組。大学等のキャリアセンター等の関係者から相談に関する情報提供があった場合に連携し適切な対応を行うこと、インターンシップの際など顧客等による求職者等に対するセクシュアルハラスメントに類すると考えられる相談があった場合に必要に応じて適切な対応を行うよう努めること、が示されています。あわせて、求職者等に対するパワーハラスメントに類する行為等についても、労働者による言動に必要な注意を払うよう配慮し、方針の明確化等を行う際に同様の方針を併せて示すこと、が望ましい取組として挙げられています。

エラベルの見解

外に出してよいのは、方針と規程の案、窓口の設計と案内、担当者向けの手引きと研修、求職活動等のルールの設計、採用の運用への落とし込み、記録の様式までで、「この言動は該当するか」「この対処で足りるか」といった個別の事案の判断は、弁護士や都道府県労働局の範囲です。セクシュアルハラスメントの相談には、性的指向・性自認を含む機微な個人情報が関わることがあるので、外部から入る副業の人事が事案の内容に触れることは避けます。

担当する側から見ると、2026年10月に向けて最も価値が出るのは、採用の運用にルールを入れる作業です。社員訪問やリクルーターの面談が、担当者の個人の連絡先で、時間も場所も個人の裁量で行われている依頼先は多くあります。リーフレットが求職活動等に関するルールの例として、面談時間および場所の指定、実施体制、やり取りに用いるSNSの種類の指定を挙げているのは、まさにここです。ルールを入れることは求職者を守ると同時に、担当者自身を守ります。採用の運用を設計してきた人にしかできない仕事で、しかも期限が決まっています。エラベルでは、依頼側が担当者を選べるので、採用と制度の両方を見られる人は、この時期に強く求められます。

まとめ

よくある質問

相談を受けた担当者が、その場で何と言えばよいか分からないそうです

手引きを作ります。最初に聞くこと(何があったか、いつから、本人がどうしたいか)、その場で該当・非該当の判断をしないこと、記録の取り方、誰に共有するか、本人の意向を確認してから次に進むこと。指針は、相談者の心身の状況や言動が行われた際の受け止めなどその認識に配慮することを求めており、微妙な場合であっても広く相談に対応することとしています。担当者が「判断しなくてよい」と分かっているだけで、対応の質が変わります。手引きの内容は、弁護士や都道府県労働局に確認したうえで固めます。

インターンシップでの出来事も、会社の責任になりますか

2026年10月1日からの義務化では、「求職者等」に実習を受ける者が含まれ、「求職活動等」にインターンシップへの参加や実習の受講が例として挙げられています。オンラインを介したものも含まれるとされています。義務化に向けて、インターンシップの運営のルール(担当者、連絡の方法、場所と時間、相談窓口の案内)を整えます。個別の事案での責任の判断は、弁護士にご確認ください。採用の運用の設計は、人事の実務の範囲です。

相談窓口を求職者等に周知するとは、具体的に何をしますか

募集の案内、採用サイト、説明会の資料、インターンシップの案内に、相談窓口の連絡先と、何を相談できるかを記載する形が基本になります。求職者等は社内のイントラネットを見られないので、社外から見える場所に置く必要があります。窓口の担当者については、人事担当者以外とすることも考えられる、という注記が示されているので、誰を窓口にするかもあわせて決めます。防止措置の全体像はハラスメント防止措置の義務に整理しています。

出典