人事副業 / 採用・人事の実務

目標管理を設計する|「目標を書かせる」のではなく、「役割の期待から目標を起こし、途中で見て、評価と分けて振り返る」型

公開 2026-09-22

「目標管理を入れたい」という依頼で、目標のシートを作って配り、期初に書かせ、期末に見ると、目標は期初に書いたきり誰も見ておらず、期末に「達成したことにする」か「忘れていた」かのどちらかになります。目標管理は、シートではなく、「目標をどう起こし、途中でどう見て、期末に評価とどう分けて振り返るか」の設計です。結論を先に書くと、目標管理の設計は、目標の起こし方・数と粒度・途中の確認・振り返りと評価の関係の四つで組み、目標は等級の期待と部門の方針から本人が起こし、数は三つまでで結果と行動を分け、数字の目標は全部にしない、途中の確認は月次で進み・障害・変更の三つだけ、振り返りは評価の面談の材料であって評価そのものではなく、水準は担当者が決めず、運用の負担を最小にします。評価の設計は評価制度を設計するに、等級は等級制度を設計するに、三つのつながりは人事制度を設計するに書いています。ここでは、目標管理の型に絞ります。

「シートを配る」だけで形だけになる

配るだけの形何が起きるか
期初に書いて、期末まで見ない忘れられる。期末に「達成したことにする」
目標が十個全部が薄く、どれも追えない
全部を数字に数字にならない仕事(育成、調整)が無視される
目標の達成率で評価が決まる低い目標を書く。挑戦しなくなる
上司が目標を書いて渡す本人のものにならない
途中で状況が変わっても変えられない期末に「前提が変わったので無効」になる

目標管理が機能するのは、「途中で見る」と「評価と分ける」の二つが設計されているときです。この二つが無いシートは、配らないほうが負担が少ない。

設計の四つ

決めること中身
目標の起こし方等級の期待(この段階に期待すること)と部門の方針から、本人が起こす。上司は確認と修正
数と粒度三つまで。「結果の目標」と「行動の目標」を分ける。期の終わりに「できたか」が事実で分かる粒度
途中の確認月次で、目標ごとに「進み・障害・変更」の三つだけ。短く
振り返りと評価の関係期末の振り返りは、評価の面談で「事実」を語る材料。達成率を評価の点数にしない

四つを一枚にして、依頼側と合意します。シートの形は、四つが決まってから作ります。

エラベルの見解

担当する側から見ると、目標管理の設計で最も差がつくのは、「目標の達成率を、評価の点数にしない」を依頼側に通せるかです。受ける側は、依頼側の「目標管理を評価に使いたい」に応え、達成率を点数にします。すると、社員は達成できる低い目標を書き、上司は目標の水準を巡って交渉し、目標管理が「点数を決めるための駆け引き」になります。目標は「この期に何に取り組むか」を本人と上司で合わせるもので、期末の振り返りは「事実を語る材料」として評価の面談に持ち込む。評価は、等級の期待に照らした観点と行動の言葉で行う。この分け方があると、社員は挑戦する目標を書けます。エラベルで担当者を選ぶ企業には、「目標の達成率が、そのまま評価の点数になっていませんか」を、私たちから先に聞いています。受ける側がその場で使える判断としては、目標のシートに「達成率」の欄を作らないこと。「期末の事実」の欄だけを置きます。

目標の起こし方

中身誰が
部門の方針を、期初に一枚で共有。「この期に部門として何を目指すか」部門の責任者
本人の等級の期待(この段階に期待すること)を確認本人と上司
方針と期待から、本人が目標の案を三つまで書く本人
上司と確認。「期末に、できたかどうかが事実で分かるか」「等級の期待と合っているか」で修正本人と上司
確定。途中の確認の日を決める上司

目標の水準(どのくらいを目指すか)は、本人と上司が決めます。担当者は、起こし方の順と、確認の問いを作るまでで、個人の目標の水準に関わりません。部門の方針が無い会社では、方針の一枚を先に作ることを依頼側に提案します。

数と粒度:結果と行動を分ける

種類中身例の形
結果の目標期末にどうなっているか。数字になるものは数字で。一つか二つ「〇〇の案件を、〇〇の状態まで」「担当の〇〇を、〇件」
行動の目標期の中で、どう動くか。等級の期待の「行動の言葉」に対応「〇〇の場面で、自分で判断して進める」「後輩の〇〇を、週に一度確認する」

全部を数字にすると、数字にならない役割が消えます。全部を行動にすると、結果が見えません。結果を一つか二つ、行動を一つか二つ、合わせて三つまでです。粒度は「期末に、できたかどうかが事実で分かるか」で確かめます。「頑張る」「意識する」は事実で分からないので、目標になりません。

途中の確認:月次で三つだけ

確認すること中身
進み目標ごとに、いまどこか。一言
障害進まないなら、何が邪魔しているか。上司が取り除けるものか
変更前提が変わったなら、目標を変えるか。変えるなら記録に残す

月次の確認は、1on1の中で行うと、負担が増えません。1on1の型は1on1・メンタリングの副業の実務に書いています。途中で目標を変えることを認めないと、期末に「前提が変わった」で無効になります。変更は記録に残し、期末の振り返りで「なぜ変えたか」も事実として語れる形にします。

エラベルの見解

相談で最も多い思い込みは、受ける側の「目標管理は、全社員に同じシートで同時に入れるもの」というものです。実際には、部門の方針が一枚になっていて、上司が月次の確認を回せる部門から始めないと、シートだけが配られて形だけになります。一つの部門で一期回し、「途中の確認が回ったか」「期末の振り返りが評価の面談の材料になったか」を見てから、次の部門に広げる。運用が回ることが、シートの形より大事です。受ける側がその場で使える判断としては、導入の一枚に「最初に回す部門」を一つだけ書き、全社への展開は「一期回した結果を見て」と依頼側と合意しておくこと。

振り返りと評価の関係

中身関係
期末の振り返り目標ごとに、期末の事実(何がどうなったか、何をしたか)を本人が書く。変更した目標は、変更の理由も評価の面談の「本人が場面を話す」段の材料
評価の面談等級の期待に照らした観点ごとに、事実と判断振り返りの事実を、観点に照らす。達成率を点数にしない
処遇への接続評価の判断が処遇に対応目標の達成率は直接には接続しない

目標の達成率を評価の点数にすると、目標の水準の駆け引きが始まります。目標は「取り組むことを合わせる仕組み」、評価は「期待に照らして判断する仕組み」、と分けます。処遇への接続と法令上の整理は、依頼側と専門家の確認に従います。個別の判断は専門家にご確認ください。

運用の負担を最小に

負担を増やすもの減らす
目標が多い三つまで
シートの欄が多い目標・結果か行動か・期末に分かる形か・月次の三つ・期末の事実。それだけ
途中の確認が別の会議1on1の中で
全社で同時に一部門から
上司が目標を書く本人が書き、上司は確認の問いで

負担が大きい仕組みは、二期目に消えます。一枚で説明でき、月次の確認が数分で済む形にします。

よく起きる詰まりと直し方

詰まり直し方
目標が十個並ぶ三つまでに。結果と行動を分けて選ぶ
全部が数字行動の目標を一つ足す。数字にならない役割を確かめる
達成率で評価したい分ける理由(低い目標を書く構造)を伝える。判断は依頼側
途中の確認が無い1on1の中に月次の三つを置く
上司が目標を書いている本人が書き、上司は確認の問いで。問いを一枚に
部門の方針が無い方針の一枚を先に。無ければ目標は起こせない

まとめ

よくある質問

依頼側から「OKRのような仕組みを入れたい」と言われました

仕組みの名前が何であれ、設計の四つ(起こし方・数と粒度・途中の確認・振り返りと評価の関係)は同じです。名前の付いた仕組みを持ち込むと、その仕組みの型に依頼側を合わせることになり、運用で崩れます。「御社の等級の期待と部門の方針から起こし、途中で見て、評価と分ける形を作ります。名前は御社で決めてください」と、構造で答えます。名前の付いた仕組みの詳細を担当者が断定することもしません。

営業部門から「数字の目標だけでよい」と言われました

結果の目標が数字になるのは自然ですが、行動の目標を一つ足すことを勧めます。数字だけだと、数字に出ない動き(新人の同行、他部門との調整、記録の整備)が目標から消え、その動きをしている人が評価されません。「結果は数字で、行動を一つ」の形にすれば、営業部門でも等級の期待(人を通して回す、など)と目標がつながります。決めるのは部門の責任者です。

期の途中で、会社の方針が大きく変わりました

目標の変更を認め、記録に残す設計にしておけば、対応できます。部門の方針の一枚を更新し、各自の目標を月次の確認の「変更」で見直します。変更した目標は、期末の振り返りで「なぜ変えたか」と「変えた後の事実」を語る形にします。変更を認めない設計だと、期末に目標の全部が無効になり、目標管理そのものが信用されなくなります。