人事副業 / 採用・人事の実務
1on1を設計する|「上司に任せる」でも「担当者が話す」でもなく、「目的・頻度・型・記録・戻し方」を上司が回せる形にする型
「1on1を全社で始めたい」という依頼で、「月に一度、上司と部下で三十分」と決めて始めると、最初の月は行われ、二か月目から「忙しくて」と飛び、三か月目には上司が進捗の確認をする場に変わり、部下は「呼び出し」と感じます。1on1は、始めるのは簡単で、続けて機能させるには設計が要ります。結論を先に書くと、1on1の設計は、目的(本人の話したいことを聞く場)・頻度(続けられる間隔)・型(近況→本人が話したいこと→問いで整理→本人が決める次の一歩)・記録(本人が決めたことだけ)・戻し方(傾向を人事に)の五つを上司が回せる形にし、評価や指示の場にせず、上司の練習は最初の数回の振り返りで行い、話の中身は上司と本人の間に置いて担当者は聞かず、目標管理の月次の確認と接続します。案件として受ける形は1on1・メンタリングの副業の実務に、目標管理は目標管理を設計するに書いています。ここでは、上司が回す1on1の設計の型に絞ります。
「やりましょう」だけで形骸化する
| 形 | 何が起きるか |
|---|---|
| 目的が無い | 上司が進捗の確認をする。部下は「呼び出し」と感じる |
| 頻度が高すぎる | 「忙しくて」で飛ぶ。飛ぶと「やらなくてよい」になる |
| 型が無い | 上司が話し続ける。部下は聞くだけ |
| 記録が評価に使われる | 部下が本音を話さなくなる |
| 上司に丸投げ | 上司ごとに中身が違い、良い1on1と悪い1on1が並ぶ |
| 担当者が部下と直接話す | 上司と部下の関係が育たず、担当者が抜けると止まる |
1on1は「上司と部下の関係の場」で、担当者はその場を設計し、上司が回せるようにするまでです。
設計の五つ
| 決めること | 中身 |
|---|---|
| 目的 | 本人(部下)が話したいことを聞き、本人が次の一歩を決める場。進捗の確認・評価・指示の場ではない |
| 頻度 | 続けられる間隔。隔週か月一。短い時間(三十分以内)で |
| 型 | 近況(短く)→本人が話したいこと→上司は問いで整理→本人が次の一歩を決める→終わり |
| 記録 | 本人が決めた次の一歩だけ。話の中身は書かない。記録は本人と上司の間に |
| 戻し方 | 上司が「テーマの傾向」(仕事の進め方、人間関係、キャリア、など)だけを月次で人事に。個人の中身は戻さない |
五つを一枚にして、上司に渡します。一枚が上司の手元にあれば、上司ごとの差が小さくなります。
エラベルの見解
担当する側から見ると、1on1の設計で最も差がつくのは、「進捗の確認の場と分ける」を上司に通せるかです。受ける側は、1on1の中で目標の進捗も見ればよい、と一緒にします。すると、上司は進捗を聞き、部下は報告し、「本人が話したいこと」の時間が無くなります。進捗の確認は目標管理の月次の三つ(進み・障害・変更)で数分、その後に「今日、話したいことは」と切り替える。この切り替えを型に入れておけば、同じ時間の中で両方が成り立ちます。エラベルで担当者を選ぶ企業には、「1on1で、上司が話す時間と部下が話す時間は、どちらが長いですか」を、私たちから先に聞いています。受ける側がその場で使える判断としては、型の一枚に「上司が話すのは問いだけ」と書き、上司に「自分が話した時間が長かったら、次回は問いを一つ減らす」と伝えること。
型の中身
| 段 | 中身 | 上司がやること |
|---|---|---|
| 近況 | 「最近どうですか」。短く | 聞く。深掘りしない |
| 本人が話したいこと | 「今日、話したいことはありますか」。無ければ「気になっていることは」 | 待つ。埋めない |
| 問いで整理 | 「それは、どういう状況ですか」「何が一番引っかかっていますか」「どうなるとよいですか」 | 問う。答えを出さない。助言は求められたら |
| 本人が決める次の一歩 | 「次までに、何をしてみますか」 | 本人の言葉で。上司が決めない |
| 終わり | 「次は〇日に」 | 記録に「本人が決めたこと」だけ |
問いで整理する段は、ヒアリング力の磨き方の「事実と解釈を分ける」と同じです。上司が助言したくなるところを、問いに変えるのが型の要です。
評価や指示の場にしない
| やらないこと | 理由 |
|---|---|
| 1on1の記録を評価に使う | 部下が本音を話さなくなる。評価は評価の面談で |
| 1on1で指示を出す | 指示は別の場で。1on1は本人が決める場 |
| 1on1で注意や叱責 | 場が「呼び出し」になる |
| 部下の話を他の人に | 上司と本人の間に置く。傾向だけを人事に |
| 担当者が部下と直接1on1 | 上司と部下の関係が育たない。契約でメンタリングとして受ける場合は別の設計 |
評価と分ける線は、評価制度を設計するの「面談は事実を確認する場」とは別の場であることを、上司と部下の両方に最初に伝えます。
上司の練習は最初の数回の振り返り
| やりがちなこと | 代わりに |
|---|---|
| 1on1の研修を一時間 | 型の一枚を五分で読み合わせ、始める |
| 模擬の1on1 | 実際の1on1の後に、上司が自分で「自分が話した時間」「問いの数」「本人が決めたか」を振り返る一枚 |
| 全上司を集める | 上司ごとに、最初の三回の振り返りを担当者と短く |
| 上手い上司を手本にする | 上司ごとの違いは残してよい。揃えるのは五つの設計だけ |
振り返りの一枚は、「自分が話した時間の割合」「問いの数」「本人が次の一歩を決めたか」「次回に変えること」の四つで足ります。担当者は、振り返りに同席するか、一枚を受け取って一言返すまでです。部下の話の中身は聞きません。面接官の揃え方(面接官トレーニングを行う)と同じ考え方です。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、受ける側の「1on1の中身を担当者が把握したほうが、組織の課題が見える」というものです。実際には、担当者が中身を把握しようとすると、上司は記録を詳しく書き、部下はそれを知って本音を話さなくなり、1on1は機能しません。担当者が受け取るのは、「テーマの傾向」(今月は仕事の進め方の話が多かった、人間関係の話が増えた、など)だけで、個人の話の中身は上司と本人の間に置きます。傾向だけでも、組織の課題(ある部門で人間関係の話が増えている)は見えます。受ける側がその場で使える判断としては、戻し方の一枚を「テーマの分類(五つ程度)と件数」だけの形にし、自由記述の欄を作らないこと。欄があれば中身が書かれます。
目標管理との接続
| 場 | 中身 | 時間の目安 |
|---|---|---|
| 目標の月次の確認 | 目標ごとに進み・障害・変更の三つ | 短く。冒頭の数分 |
| 切り替え | 「では、今日話したいことは」 | 一言 |
| 1on1の型 | 本人が話したいこと→問い→次の一歩 | 残りの時間 |
同じ時間の中で、進捗の確認と1on1を分けて置く形にすると、上司の負担が増えず、両方が成り立ちます。目標管理の設計は目標管理を設計するに書いています。
話の中身の扱い
| 決めること | 中身 |
|---|---|
| 記録 | 本人が決めた次の一歩だけ。上司と本人が見る |
| 人事に戻すもの | テーマの傾向と件数。個人の中身は戻さない |
| 担当者 | 中身を聞かない。傾向だけを受け取る |
| 深刻な話(健康、ハラスメントなど)が出たとき | 1on1の中で扱わず、依頼側の窓口(人事、相談の窓口)につなぐ手順を、型の一枚に書く。判断は依頼側と専門家 |
健康や安全に関わる話が出たときの手順は、依頼側の決まりと専門家の確認に従います。担当者が「1on1で対応する」設計にしません。個別の判断は専門家にご確認ください。扱いは個人情報の扱いに書いています。
よく起きる詰まりと直し方
| 詰まり | 直し方 |
|---|---|
| 上司が進捗の確認をする | 目標の月次の三つを冒頭に置き、切り替えの一言を型に |
| 上司が話し続ける | 振り返りの一枚で「自分が話した時間」を見る。問いを減らす |
| 部下が「話すことが無い」と言う | 「気になっていること」「最近、うまくいったこと」の問いを型に足す |
| 飛ぶ | 頻度を下げる。隔週が無理なら月一。飛んだら翌週に短く |
| 記録が評価に使われている | 記録を本人が決めたことだけに戻し、評価とは別と両方に伝える |
| 担当者が中身を聞いてしまった | 傾向だけの戻し方に戻す。聞いた中身は記録しない |
まとめ
- 「やりましょう」だけで形骸化する。目的・頻度・型・記録・戻し方の五つを上司が回せる形に
- 目的は本人が話したいことを聞き、本人が次の一歩を決める場。進捗・評価・指示の場にしない
- 型は近況→本人が話したいこと→問いで整理→本人が決める。上司が話すのは問いだけ
- 記録は本人が決めたことだけ。人事に戻すのはテーマの傾向と件数。自由記述の欄を作らない
- 上司の練習は研修ではなく最初の数回の振り返り
- 目標管理の月次の確認と同じ時間で、切り替えて置く
- 深刻な話は依頼側の窓口につなぐ手順を型に。個別の判断は専門家にご確認ください
- 担当者は部下と直接話さず、中身を聞かない
よくある質問
上司が「部下と話すことに慣れていない」と言います
型の一枚があれば、慣れていなくても回せます。近況を一言、「今日話したいことは」と聞き、あとは「それは、どういう状況ですか」「どうなるとよいですか」の二つの問いを繰り返すだけで、部下は話します。最初の三回の振り返りで、「自分が話した時間」を見るだけで、上司は自分で調整します。慣れるまでの間は、頻度を月一にして、負担を小さくします。
部下から「1on1は意味が無い」と言われたと上司から相談されました
「意味が無い」の多くは、進捗の確認や上司の話で終わっていて、部下が話す時間が無い場合です。型の一枚に戻り、「本人が話したいこと」から始めているかを上司と確かめます。それでも部下が話すことが無いなら、頻度を下げるか、本人と上司で「続けるか」を決める形にします。全員に同じ頻度で強いるより、本人が「要る」と言う形のほうが続きます。
担当者がメンターとして社員と直接話す契約も頼まれています
上司の1on1の設計と、担当者が社員と直接話すメンタリングは、別の設計です。メンタリングは、本人の同意と会社の案内が前提で、上司の1on1との関係(重ならない、中身を上司に伝えない)を先に決めます。両方を担う場合、担当者が上司の1on1の中身を知る立場にならないように、戻し方を傾向だけに保ちます。メンタリングの型は1on1・メンタリングの副業の実務に書いています。