人事副業 / 採用・人事の実務

1on1を設計する|「上司に任せる」でも「担当者が話す」でもなく、「目的・頻度・型・記録・戻し方」を上司が回せる形にする型

公開 2026-09-22

「1on1を全社で始めたい」という依頼で、「月に一度、上司と部下で三十分」と決めて始めると、最初の月は行われ、二か月目から「忙しくて」と飛び、三か月目には上司が進捗の確認をする場に変わり、部下は「呼び出し」と感じます。1on1は、始めるのは簡単で、続けて機能させるには設計が要ります。結論を先に書くと、1on1の設計は、目的(本人の話したいことを聞く場)・頻度(続けられる間隔)・型(近況→本人が話したいこと→問いで整理→本人が決める次の一歩)・記録(本人が決めたことだけ)・戻し方(傾向を人事に)の五つを上司が回せる形にし、評価や指示の場にせず、上司の練習は最初の数回の振り返りで行い、話の中身は上司と本人の間に置いて担当者は聞かず、目標管理の月次の確認と接続します。案件として受ける形は1on1・メンタリングの副業の実務に、目標管理は目標管理を設計するに書いています。ここでは、上司が回す1on1の設計の型に絞ります。

「やりましょう」だけで形骸化する

何が起きるか
目的が無い上司が進捗の確認をする。部下は「呼び出し」と感じる
頻度が高すぎる「忙しくて」で飛ぶ。飛ぶと「やらなくてよい」になる
型が無い上司が話し続ける。部下は聞くだけ
記録が評価に使われる部下が本音を話さなくなる
上司に丸投げ上司ごとに中身が違い、良い1on1と悪い1on1が並ぶ
担当者が部下と直接話す上司と部下の関係が育たず、担当者が抜けると止まる

1on1は「上司と部下の関係の場」で、担当者はその場を設計し、上司が回せるようにするまでです。

設計の五つ

決めること中身
目的本人(部下)が話したいことを聞き、本人が次の一歩を決める場。進捗の確認・評価・指示の場ではない
頻度続けられる間隔。隔週か月一。短い時間(三十分以内)で
近況(短く)→本人が話したいこと→上司は問いで整理→本人が次の一歩を決める→終わり
記録本人が決めた次の一歩だけ。話の中身は書かない。記録は本人と上司の間に
戻し方上司が「テーマの傾向」(仕事の進め方、人間関係、キャリア、など)だけを月次で人事に。個人の中身は戻さない

五つを一枚にして、上司に渡します。一枚が上司の手元にあれば、上司ごとの差が小さくなります。

エラベルの見解

担当する側から見ると、1on1の設計で最も差がつくのは、「進捗の確認の場と分ける」を上司に通せるかです。受ける側は、1on1の中で目標の進捗も見ればよい、と一緒にします。すると、上司は進捗を聞き、部下は報告し、「本人が話したいこと」の時間が無くなります。進捗の確認は目標管理の月次の三つ(進み・障害・変更)で数分、その後に「今日、話したいことは」と切り替える。この切り替えを型に入れておけば、同じ時間の中で両方が成り立ちます。エラベルで担当者を選ぶ企業には、「1on1で、上司が話す時間と部下が話す時間は、どちらが長いですか」を、私たちから先に聞いています。受ける側がその場で使える判断としては、型の一枚に「上司が話すのは問いだけ」と書き、上司に「自分が話した時間が長かったら、次回は問いを一つ減らす」と伝えること。

型の中身

中身上司がやること
近況「最近どうですか」。短く聞く。深掘りしない
本人が話したいこと「今日、話したいことはありますか」。無ければ「気になっていることは」待つ。埋めない
問いで整理「それは、どういう状況ですか」「何が一番引っかかっていますか」「どうなるとよいですか」問う。答えを出さない。助言は求められたら
本人が決める次の一歩「次までに、何をしてみますか」本人の言葉で。上司が決めない
終わり「次は〇日に」記録に「本人が決めたこと」だけ

問いで整理する段は、ヒアリング力の磨き方の「事実と解釈を分ける」と同じです。上司が助言したくなるところを、問いに変えるのが型の要です。

評価や指示の場にしない

やらないこと理由
1on1の記録を評価に使う部下が本音を話さなくなる。評価は評価の面談で
1on1で指示を出す指示は別の場で。1on1は本人が決める場
1on1で注意や叱責場が「呼び出し」になる
部下の話を他の人に上司と本人の間に置く。傾向だけを人事に
担当者が部下と直接1on1上司と部下の関係が育たない。契約でメンタリングとして受ける場合は別の設計

評価と分ける線は、評価制度を設計するの「面談は事実を確認する場」とは別の場であることを、上司と部下の両方に最初に伝えます。

上司の練習は最初の数回の振り返り

やりがちなこと代わりに
1on1の研修を一時間型の一枚を五分で読み合わせ、始める
模擬の1on1実際の1on1の後に、上司が自分で「自分が話した時間」「問いの数」「本人が決めたか」を振り返る一枚
全上司を集める上司ごとに、最初の三回の振り返りを担当者と短く
上手い上司を手本にする上司ごとの違いは残してよい。揃えるのは五つの設計だけ

振り返りの一枚は、「自分が話した時間の割合」「問いの数」「本人が次の一歩を決めたか」「次回に変えること」の四つで足ります。担当者は、振り返りに同席するか、一枚を受け取って一言返すまでです。部下の話の中身は聞きません。面接官の揃え方(面接官トレーニングを行う)と同じ考え方です。

エラベルの見解

相談で最も多い思い込みは、受ける側の「1on1の中身を担当者が把握したほうが、組織の課題が見える」というものです。実際には、担当者が中身を把握しようとすると、上司は記録を詳しく書き、部下はそれを知って本音を話さなくなり、1on1は機能しません。担当者が受け取るのは、「テーマの傾向」(今月は仕事の進め方の話が多かった、人間関係の話が増えた、など)だけで、個人の話の中身は上司と本人の間に置きます。傾向だけでも、組織の課題(ある部門で人間関係の話が増えている)は見えます。受ける側がその場で使える判断としては、戻し方の一枚を「テーマの分類(五つ程度)と件数」だけの形にし、自由記述の欄を作らないこと。欄があれば中身が書かれます。

目標管理との接続

中身時間の目安
目標の月次の確認目標ごとに進み・障害・変更の三つ短く。冒頭の数分
切り替え「では、今日話したいことは」一言
1on1の型本人が話したいこと→問い→次の一歩残りの時間

同じ時間の中で、進捗の確認と1on1を分けて置く形にすると、上司の負担が増えず、両方が成り立ちます。目標管理の設計は目標管理を設計するに書いています。

話の中身の扱い

決めること中身
記録本人が決めた次の一歩だけ。上司と本人が見る
人事に戻すものテーマの傾向と件数。個人の中身は戻さない
担当者中身を聞かない。傾向だけを受け取る
深刻な話(健康、ハラスメントなど)が出たとき1on1の中で扱わず、依頼側の窓口(人事、相談の窓口)につなぐ手順を、型の一枚に書く。判断は依頼側と専門家

健康や安全に関わる話が出たときの手順は、依頼側の決まりと専門家の確認に従います。担当者が「1on1で対応する」設計にしません。個別の判断は専門家にご確認ください。扱いは個人情報の扱いに書いています。

よく起きる詰まりと直し方

詰まり直し方
上司が進捗の確認をする目標の月次の三つを冒頭に置き、切り替えの一言を型に
上司が話し続ける振り返りの一枚で「自分が話した時間」を見る。問いを減らす
部下が「話すことが無い」と言う「気になっていること」「最近、うまくいったこと」の問いを型に足す
飛ぶ頻度を下げる。隔週が無理なら月一。飛んだら翌週に短く
記録が評価に使われている記録を本人が決めたことだけに戻し、評価とは別と両方に伝える
担当者が中身を聞いてしまった傾向だけの戻し方に戻す。聞いた中身は記録しない

まとめ

よくある質問

上司が「部下と話すことに慣れていない」と言います

型の一枚があれば、慣れていなくても回せます。近況を一言、「今日話したいことは」と聞き、あとは「それは、どういう状況ですか」「どうなるとよいですか」の二つの問いを繰り返すだけで、部下は話します。最初の三回の振り返りで、「自分が話した時間」を見るだけで、上司は自分で調整します。慣れるまでの間は、頻度を月一にして、負担を小さくします。

部下から「1on1は意味が無い」と言われたと上司から相談されました

「意味が無い」の多くは、進捗の確認や上司の話で終わっていて、部下が話す時間が無い場合です。型の一枚に戻り、「本人が話したいこと」から始めているかを上司と確かめます。それでも部下が話すことが無いなら、頻度を下げるか、本人と上司で「続けるか」を決める形にします。全員に同じ頻度で強いるより、本人が「要る」と言う形のほうが続きます。

担当者がメンターとして社員と直接話す契約も頼まれています

上司の1on1の設計と、担当者が社員と直接話すメンタリングは、別の設計です。メンタリングは、本人の同意と会社の案内が前提で、上司の1on1との関係(重ならない、中身を上司に伝えない)を先に決めます。両方を担う場合、担当者が上司の1on1の中身を知る立場にならないように、戻し方を傾向だけに保ちます。メンタリングの型は1on1・メンタリングの副業の実務に書いています。