人事副業 / 採用・人事の実務
等級制度を設計する|「段階の数を決める」のではなく、「いまうまくやっている人の段階」から、期待の言葉で段を起こす型
「等級制度を作りたい。何段階がよいか」と聞かれて、「一般に五段階」と答えると、段階の名前と番号だけができ、「一等級と二等級は何が違うのか」に誰も答えられない制度になります。等級は、段階の数ではなく、「役割の段階ごとに、何を期待するか」の言葉です。結論を先に書くと、等級制度は、いまうまくやっている人の仕事を段階に分け、各段の期待を一文に起こし、段の境目を「一人で回せるか」「人を通して回せるか」で引き、段の数は依頼側の役割の実態で最小にし、職種が違っても段の考え方を揃え、等級の定義を評価の観点と給与の幅の元にして、格付けは依頼側が決め、移行の扱いは専門家に置く形で設計します。三つのつながりは人事制度を設計するに、評価は評価制度を設計するに、給与テーブルは給与テーブルを作るに書いています。ここでは、等級の起こし方に絞ります。
段階の数から決めると名前だけになる
| 数から決める形 | 何が起きるか |
|---|---|
| 「五段階にしよう」 | 段の違いが言葉になっておらず、格付けが年次順になる |
| 他社の等級の定義を写す | 依頼側の役割と合わず、評価の観点と結びつかない |
| 職種ごとに別の段階の数 | 職種をまたぐ比較ができず、給与の幅が揃わない |
| 上の段ほど抽象的な定義(「経営的視点」) | 上の段の期待が測れない |
| 段の境目が曖昧 | 「いつ上がるか」が説明できない |
等級は、評価の観点(この段階で何を期待するか)と給与の幅(この段階の処遇)の元です。言葉が無ければ、両方が根拠を失います。
等級は「役割の段階ごとの期待」
| 段階の考え方 | 期待の形 |
|---|---|
| 教わりながら担う | 決まった仕事を、指示と確認のもとで進める |
| 一人で回す | 決まった範囲の仕事を、一人で最後まで進める。判断が要る場面で相談先を選べる |
| 範囲を広げて回す | 決まっていない仕事を、自分で決めて進める。周りを動かす |
| 人を通して回す | 他の人の仕事を設計し、任せ、育てる |
| 組織を動かす | 部門の方針を決め、複数のチームを動かす |
これは考え方の型で、依頼側の役割の実態に合わせて段の数と言葉を変えます。「一般にこの五段」と持ち込まず、依頼側のいまの人の仕事から起こします。
エラベルの見解
担当する側から見ると、等級の設計で最も差がつくのは、「いまうまくやっている人の仕事から段を起こす」ができるかです。受ける側は、教科書の段階の型を先に置き、依頼側の人を当てはめます。すると、「この人は二等級と三等級の間」のような、型に合わない人が続出し、格付けで揉めます。「いま、この会社で、うまくやっている人は何をしているか」を、役割ごとに聞き、「教わりながら」「一人で」「人を通して」のどこにいるかを並べる。並べると、依頼側の役割の段階が見え、段の数はそこから決まります。エラベルで担当者を選ぶ企業には、「等級の定義は、御社でいまうまくやっている方の仕事から作られていますか」を、私たちから先に聞いています。受ける側がその場で使える判断としては、段階の型を持ち込む前に、役割ごとに「いまの人の仕事」を三つの段(教わりながら・一人で・人を通して)で並べた一枚を作ること。個人の名前は書かず、役割と段だけです。
起こし方の順
| 順 | 中身 | 出どころ |
|---|---|---|
| 一 | 役割ごとに、いまの人の仕事を「教わりながら・一人で・範囲を広げて・人を通して・組織を動かす」のどこかに並べる | 現場の責任者への聞き取り |
| 二 | 並べた結果から、依頼側に実際にある段を数える。無い段は作らない | 一の一枚 |
| 三 | 各段の期待を一文に。「この段の人には、〇〇を〇〇の形で担うことを期待する」 | 現場の責任者と経営者 |
| 四 | 段の境目を、「一人で回せるか」「人を通して回せるか」のように、行動で引く | 三の一文 |
| 五 | 職種が違っても、段の考え方(一人で/人を通して)を揃える。言葉は職種ごとに変えてよい | 依頼側 |
| 六 | 各段の定義を、評価の観点と給与の幅の元として一枚に | 依頼側が確認 |
聞き取りの型は採用要件を引き出すヒアリングの型の「いまうまくやっている人に聞く」と同じです。聞くのは仕事の中身で、個人の評価ではありません。
段の数は最小に
| 依頼側の状態 | 段の数の考え方 |
|---|---|
| 数人〜十数人、役割が少ない | 三段(教わりながら・一人で・人を通して)で足りることが多い |
| 役割が複数あり、管理する人がいる | 四〜五段 |
| 上の段に人がいない | 作らない。人が出てきたときに足す |
| 職種で段の実態が違う | 段の考え方は揃え、言葉を職種ごとに |
段が多いほど、境目が曖昧になり、格付けで揉め、評価の観点も給与の幅も細かくなって運用できません。「いま実際にある段」だけを作り、無い段は作りません。
等級の定義は評価と給与の元
| 等級の定義 | 評価への展開 | 給与への展開 |
|---|---|---|
| 「この段の人には、〇〇を一人で回すことを期待する」 | 観点:一人で回した場面。行動の言葉:期待どおり/超える/届かない | この段の幅。段の中の位置は評価で |
| 「人を通して回す」 | 観点:任せた仕事の設計と育成の場面 | 上の幅 |
等級の定義が一文で書けていれば、評価の観点はそこから三〜五つに分けられ、給与の幅は段ごとに置けます。定義が曖昧だと、評価も給与も根拠を失います。順番は、等級→評価→給与です。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、受ける側の「等級を作ったら、誰をどの等級にするかも担当者が決める」というものです。格付けは、個人の処遇を決めることで、依頼側の判断です。担当者が「この人は二等級」と言えば、社員から見て「外の人が決めた」となり、依頼側の説明ができなくなります。担当者がやるのは、「各段の定義」と「格付けの手順(誰が、何を根拠に、どう決めるか)」と「格付けの結果の分布(何人ずつか)の読み方」までです。受ける側がその場で使える判断としては、格付けの場に同席を求められても、「定義と手順を作りました。当てはめは御社で」と、個人の名前が出る場から距離を置くこと。分布は依頼側から件数で受け取り、「上の段に人がいない」「一つの段に集中している」を読んで、定義の見直しの材料にします。
格付けと移行
| 決めること | 誰が | 担当者の関わり |
|---|---|---|
| 誰をどの等級に | 依頼側(経営者と現場の責任者) | 手順と根拠の形を作る。個人の当てはめには関わらない |
| いまの処遇と等級の幅が合わない人 | 依頼側と専門家 | 「合わない人がいる構造」を件数で示す。扱いは専門家 |
| 社員への説明 | 依頼側 | 説明の資料(等級の定義、上がり方)を作る |
| 異議が出たとき | 依頼側 | 手順の中に「異議の受け方」を置く |
格付けや移行で処遇が変わることには、法令上の整理があると一般に整理されています。不利益になる変更の扱い、規程の変更と手続きは、専門家(社労士等)の確認に従います。個別の判断は専門家にご確認ください。線の詳細は副業で法令違反をしないためにに書いています。
聞いた事情の扱い
等級の設計で、担当者は個人の仕事の内容と、依頼側の中の評判を耳にします。一枚には、役割と段の定義だけを書き、個人の名前と評価を書きません。格付けの結果は件数で受け取り、個人の一覧を手元に置きません。扱いは個人情報の扱いに書いています。
よく起きる詰まりと直し方
| 詰まり | 直し方 |
|---|---|
| 依頼側が「何段階がよいか」から聞く | いまの人の仕事を三段で並べた一枚を先に。段の数はそこから |
| 他社の定義を写したい | 構造(一人で/人を通して)は参考に、言葉は依頼側の仕事から |
| 上の段の定義が抽象的 | 「その段の人が、実際にしていること」を現場の責任者に聞き、行動で |
| 職種ごとに段の数が違う | 段の考え方を揃え、言葉を職種ごとに |
| 格付けを担当者に求められる | 定義と手順まで。当てはめは依頼側 |
| 移行で処遇が合わない人が出る | 構造を件数で示し、扱いは専門家 |
まとめ
- 段階の数から決めると名前だけの等級になる。等級は役割の段階ごとの期待の言葉
- 起こし方はいまうまくやっている人の仕事を段に並べる→期待を一文に→境目を行動で引く
- 段の数は依頼側の実態で最小に。無い段は作らない
- 職種が違っても段の考え方(一人で/人を通して)は揃え、言葉は変える
- 等級の定義は評価の観点と給与の幅の元。順番は等級→評価→給与
- 格付けは依頼側。担当者は定義と手順と分布の読み方まで。個人の当てはめに関わらない
- 移行の扱いは専門家。個別の判断は専門家にご確認ください
- 個人の名前と評価を一枚に書かない
よくある質問
依頼側が「専門職(技術者)と管理職で、別の等級の系統を作りたい」と言います
段の考え方を揃えたうえで、言葉を系統ごとに変える形で作れます。「人を通して回す」の段を、管理職の系統では「他の人の仕事を設計し任せる」、専門職の系統では「他の人が使う仕組みや基準を作る」のように、行動の言葉を変えます。系統を分けるかどうかは、依頼側の役割の実態(専門職で上の段の人が実際にいるか)で決めます。実態に無い系統を先に作ると、名前だけになります。
等級を作ったが、社員から「自分は上の等級のはずだ」と異議が出ました
異議は、格付けの手順の中で受ける形にしておきます。「等級の定義に照らして、どの場面が上の段の期待に当たるか」を本人と現場の責任者が事実で確認し、判断は依頼側が行います。異議が多い段は、定義の境目が曖昧な可能性があるので、定義の見直しの材料にします。担当者は、異議の件数と、どの段の境目で起きているかを読み、定義を直す案を出すまでで、個別の異議には関わりません。
等級と役職(部長、課長)の関係はどう整理しますか
等級は「役割の段階の期待」で、役職は「組織上の位置」です。同じ等級で役職が違うことも、同じ役職で等級が違うこともあり得ます。混ぜると、役職に就けない人が上の等級に上がれず、専門性で貢献する人の段が無くなります。「等級は期待、役職は配置」と分け、役職に付く手当は給与テーブルの「手当の位置づけ」で扱います。分け方は依頼側の判断で、担当者は分けた場合と混ぜた場合の影響を並べます。