人事副業 / 採用・人事の実務
離職の分析|「離職率を出す」のではなく、「時期・段階・理由の分類」で並べて、直す場所を一つに絞る型
「離職率が高い。分析してほしい」という依頼で、離職率を年度ごとに出し、「業界の平均と比べて高い」と報告しても、依頼側は「で、何を直せば」と止まります。離職率は一つの数字で、辞めた時期も、採用のどの段階のずれかも、理由も含んでいません。分析は、率を出すことではなく、「いつ・どこで・なぜ」を並べて、直す場所を一つに絞ることです。結論を先に書くと、離職の分析は、辞めた時期・採用のどの段階のずれか・理由の分類の三つで並べ、時期は入社後の節目で分けて早期とそれ以降を別に読み、段階は要件・求人票・面接・内定後・受け入れ・その後の六つに分け、理由は退職面談の記録から傾向として分類して個人を特定せず、件数のまま並べて割合と外部の平均で断定せず、直す場所を一つに絞って依頼側が決める形で行います。段階の分け方は定着まで見ると早期離職が続くのは採用のどの段階の問題かに、退職面談は退職面談を設計するに書いています。ここでは、分析の型に絞ります。
離職率の一つの数字では直せない
| 率だけの報告 | 何が起きるか |
|---|---|
| 「今年の離職率は〇%」 | 高いか低いかの印象で終わる |
| 「業界の平均より高い」 | 依頼側の条件と違う比較。根拠を問われる |
| 年度ごとの推移 | 増えた減ったは分かるが、どこを直すかは分からない |
| 部門ごとの率 | 部門の責任者を責める材料になる |
| 「本人の事情」で片付く | 採用と受け入れの側に戻る材料が無い |
率は「結果」で、直す場所は「時期・段階・理由」の中にあります。率を出すなら、三つを並べた後の参考です。
並べる三つ
| 軸 | 分け方 | 見えること |
|---|---|---|
| 辞めた時期 | 入社後の節目(三か月以内・半年以内・一年以内・それ以降) | 早期は採用と受け入れ、それ以降は仕事と上司と見通し |
| 採用のどの段階のずれか | 要件・求人票・面接・内定後・受け入れ・その後 | 直す場所 |
| 理由の分類 | 仕事の中身・上司との関係・見通し(役割、処遇)・働き方・私的な事情・その他 | どの箇所か。「その後」の中の内訳 |
一人一行で、三つの軸を並べます。氏名は書かず、番号で。個人の事情の詳細は書かず、分類だけです。
エラベルの見解
担当する側から見ると、離職の分析で最も差がつくのは、「早期」と「それ以降」を分けて読めるかです。受ける側は、全部の離職を一つに集計し、「上司との関係が多い」と結論します。ただ、入社三か月以内の離職の多くは、要件・求人票・面接・内定後・受け入れのずれで、上司との関係が理由に見えても、原因は「聞いていた仕事と違った」にあります。一年以降の離職は、仕事の中身と見通しが原因のことが多く、直す場所は等級と評価と役割です。二つを混ぜると、直す場所が両方に散り、どちらも動きません。エラベルで担当者を選ぶ企業には、「離職を、入社後の時期で分けて見ていますか」を、私たちから先に聞いています。受ける側がその場で使える判断としては、一行目に「時期」の列を置き、まず「早期」だけで三つの軸を読み、次に「それ以降」を読むこと。
早期の離職:段階で読む
| 段階 | 見分ける問い | 直す場所 |
|---|---|---|
| 要件 | 面接では全観点「通す」だったのに、仕事が回らなかった | 採用要件を引き出すヒアリングの型 |
| 求人票 | 「聞いていた仕事と違った」。任せる仕事や一緒に働く人の記述と実態の差 | 求人原稿を書き直す手順 |
| 面接 | 「迷う」が引き継がれずに通った。基準に無い理由で通した | 面接の設計 |
| 内定後 | 入社前に迷いが残っていた。接点が無かった | 内定辞退を減らす |
| 受け入れ | 到達点と担当が無く放置された | オンボーディングを設計する |
早期の離職の記録は、採用の記録(評価シート、オンボーディングの接点)に戻って読みます。記録が無ければ、「今後の採用から記録する」を提案し、推測で段階を決めません。
それ以降の離職:理由の分類で読む
| 分類 | 中身 | 直す場所 |
|---|---|---|
| 仕事の中身 | 役割が固定、幅が広がらない、期待が不明 | 等級の期待、目標管理 |
| 上司との関係 | 接点が無い、評価に納得していない | 1on1、評価制度 |
| 見通し | 次の役割が見えない、処遇の上がり方が見えない | 等級と給与テーブルの上がり方 |
| 働き方 | 勤務の形、負荷 | 依頼側の制度と労務。専門家の領域を含む |
| 私的な事情 | 家族、転居、健康など | 直す場所は無い。記録は分類だけ |
| その他 | 上に当たらないもの | 分類を見直す材料 |
理由は退職面談の記録から拾い、傾向として分類します。「私的な事情」に片付けるのは、上の分類を確かめた後です。分類の元になる面談の型は退職面談を設計するに書いています。
件数のまま並べ、断定しない
| 断定する書き方 | 置き換え |
|---|---|
| 「離職率が〇%で高い」 | 「今年の離職は〇件。うち早期が〇件、それ以降が〇件」 |
| 「業界平均より高い」 | 外部の数値を持ち込まない。依頼側の前年と比べる |
| 「〇部門の離職率が高い」 | 「〇部門で、それ以降の離職が〇件、理由は見通しが多い」。順位にしない |
| 「上司が原因」 | 「上司との関係が理由の分類に〇件。接点の有無を確かめる」 |
件数が少ないほど、割合は揺れます。件数のまま並べ、前年と比べ、傾向として読みます。数字の伝え方は数字で語るに、分析の問いの立て方は採用データを分析するに書いています。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、受ける側の「離職の分析は、辞めた人の問題を見つけるもの」というものです。実際には、辞めた人の問題を見つけても、その人はもういません。分析が役に立つのは、「いまいる人が同じ場所で辞めないように、直す場所を一つ決める」ときです。早期の離職が要件のずれなら、要件の一枚を直す。それ以降の離職が見通しなら、等級の上がり方を直す。直す場所は一つに絞り、決めるのは依頼側です。受ける側がその場で使える判断としては、分析の一枚の最後に「直す場所:一つ」と「その根拠:三つの軸のどこか」を書き、二つ以上書きたくなったら、件数の多いほうを先にすること。
依頼側に渡す一枚
| 欄 | 中身 |
|---|---|
| 期間と件数 | いつからいつまで、離職が何件。前年の件数 |
| 時期の内訳 | 早期・それ以降の件数 |
| 早期の段階の内訳 | 六つの段階の件数。記録が無く分からない件は「不明」 |
| それ以降の理由の内訳 | 分類ごとの件数 |
| 直す場所 | 一つ。根拠 |
| 次に見ること | 直した後、次の期間の同じ一枚で何が変わるか |
| 記録の欠け | 退職面談の記録、採用の記録が無い件数 |
部門ごとの内訳を出す場合は、順位にせず、件数と理由の分類だけにします。部門の責任者を責める材料にならない形で、依頼側の決まりに従って共有の範囲を決めます。
離職の情報の扱い
| 決めること | 中身 |
|---|---|
| 一枚に書かないもの | 氏名、退職の個別の事情、健康や家族の詳細、上司の名前 |
| 退職面談の記録 | 依頼側の人事が扱う。担当者は分類の結果だけを受け取る |
| 共有の範囲 | 経営者と人事。部門の責任者には自部門の傾向だけ、依頼側の決まりで |
| 担当者の手元 | 一枚(件数と分類)だけ。個人の記録を置かない。終了時に消す |
退職者の情報は、個人情報の中でも扱いに注意が要るものです。扱いは個人情報の扱いに書いています。退職や解雇の場面そのものへの関わりの線は退職や解雇の場面への関わり方に書いています。
よく起きる詰まりと直し方
| 詰まり | 直し方 |
|---|---|
| 依頼側が離職率だけを求める | 率は参考の一行に。三つの軸の一枚を主に |
| 退職面談の記録が無い | 「今後の退職から記録する」。過去は分類「不明」 |
| 早期とそれ以降が混ざっている | 時期の列を先頭に。別々に読む |
| 「本人の事情」が多い | 上の分類を確かめてから。面談の型を見直す |
| 部門の順位が出て責任者が責められる | 順位にしない。件数と分類だけ |
| 直す場所が複数 | 件数の多いほうを先に一つ。残りは次の期間 |
まとめ
- 離職率の一つの数字では直す場所が分からない
- 並べるのは時期・段階・理由の分類の三つ。一人一行、氏名は書かない
- 早期とそれ以降は原因が違う。別々に読む
- 早期は要件・求人票・面接・内定後・受け入れの段階で、採用の記録に戻って読む
- それ以降は理由の分類で。「私的な事情」は最後
- 件数のまま並べ、割合と外部の平均で断定しない。順位にしない
- 直す場所は一つ。決めるのは依頼側
- 個人の記録を担当者の手元に置かない
よくある質問
依頼側から「離職率を業界と比べてどうか教えてほしい」と言われました
外部の数値は、依頼側の職種・規模・雇用の形と条件が違い、比較の根拠になりません。「御社の前年と比べ、時期と段階と理由で読むほうが、直す場所が分かります」と、比較の対象を依頼側の中に変えます。外部の数値を担当者が持ち込むと、根拠を問われて答えられず、「高い・低い」の印象で議論が止まります。
離職が年に数件しか無く、傾向が読めません
数件でも、一件ずつ「時期・段階・理由」で並べれば、直す場所は見えます。「三件のうち二件が早期で、どちらも求人票と実態の差」なら、求人票を直す根拠になります。傾向を待たず、一件ずつの事実で読みます。件数が少ないことは、割合で語れないことを意味するだけで、分析できないことではありません。
分析の結果、特定の上司の部下が多く辞めていると分かりました
上司の名前を一枚に書かず、「〇部門で、それ以降の離職が〇件、理由は上司との関係と見通し」と、部門と分類で示します。直す場所は「その上司」ではなく、「1on1の型」「評価の面談の型」「等級の期待の伝え方」など、上司が回せる仕組みの側に置きます。上司個人への対応(配置、指導)は依頼側の人事の判断で、担当者は仕組みの案を出すまでです。仕組みの型は1on1を設計するに書いています。