採用代行 / 採用の課題
副業人材から本採用につなげる|「良い人だから誘う」ではなく、最初から本採用の可能性を置いて設計する
副業で週に数時間、関わってもらっている人がいる。仕事の質が良く、社内の評判も良い。「この人に、社員として来てほしい」と思う。ただ、本人には本業があり、副業の条件と本採用の条件は違う。どう切り出せばよいか、断られたら副業の関係も壊れないか、と迷う。結論を先に書くと、副業から本採用につなげるのは、「良い人だから後から誘う」のではなく、最初から「本採用の可能性がある関わり方」として設計しておくことで、自然になります。副業は、お互いを見る期間です。見た結果を、役割と条件と時期で組み直して、切り出します。副業人材に採用業務を委託する実務は副業人材に採用業務を委託するときの実務に、業務委託から採用する形は業務委託で入ってもらってから採用するにまとめています。
副業から本採用で起きていること
副業の人材を本採用につなげようとする会社では、次のことが起きています。
| 起きていること | 背景 |
|---|---|
| 「良い人」と分かってから、急に誘う | 副業の契約に、本採用の可能性を置いていなかった。本人は想定していない |
| 副業の役割のまま、本採用の条件を出す | 副業で任せていた範囲と、社員として任せる範囲が違う。役割を組み直していない |
| 条件が、副業の報酬と本採用の給与で釣り合わない | 副業の時間単価と、社員の年収の換算が合わず、本人が「下がる」と感じる |
| 本人の本業の事情を、聞いていない | 本業を辞められるのか、辞めたいのか、いつなら動けるのか。聞かずに誘う |
| 断られたら、副業の関係が気まずくなる | 誘い方が「本採用でなければ困る」に聞こえ、副業を続けにくくなる |
| 社内の同意が無い | 現場は本採用を望んでいるが、責任者や経営者は「副業のままでよい」。誘ってから社内で揉める |
| 副業の人と社員の間の、扱いの違いが曖昧 | 副業の人に、社員と同じ責任を期待している。線が引かれていない |
副業から本採用は、うまく設計すれば、最も外れの少ない採用の経路です。お互いを見た上で決めるからです。設計しなければ、気まずさと条件のずれで終わります。
最初から可能性を置く設計
副業で関わってもらう最初の段階で、本採用の可能性を置きます。
副業の契約の段階で、「将来、本採用の話をする可能性がある」と伝える。 「副業で関わっていただく中で、お互いに合えば、社員としてのご相談をすることがあります。その場合も、副業のままを選んでいただいて構いません」。最初に言えば、後の切り出しが自然になります。
副業の役割を、「本採用の役割の一部」として切り出す。 副業で任せる範囲を、社員として任せたい役割の一部にします。副業の中で、本採用の役割への適性が見えます。
副業の期間を、区切る。 「まず三か月」「半年」。区切りが、本採用の話をする自然な時期になります。
副業の中で、お互いが見るものを決めておく。 会社が見るもの(仕事の質、社内との相性、役割の適性)、本人が見るもの(会社の実態、一緒に働く人、事業の中身)。「見る期間」であることを、お互いに認識します。
副業の人の扱いを、社員と分ける。 責任の範囲、決められること、会議への参加、社内の情報へのアクセス。副業は副業の範囲で。社員と同じ責任を副業に求めない。契約の形と法令上の扱いは専門家に確認します。
社内の責任者と、本採用の可能性を共有しておく。 「この副業の方は、本採用の候補として関わってもらっている」。現場だけが望んで、責任者が知らない状態を避けます。
最初に置いておけば、「良い人だから急に誘う」ではなく、「最初から話していた可能性を、時期が来たので相談する」になります。
本採用を切り出す時期と伝え方
切り出す時期と、伝え方です。
| 項目 | 型 |
|---|---|
| 時期 | 副業の区切り(三か月、半年)の少し前。区切りの振り返りの場で |
| 誰が | 副業の人と最も接している責任者。人事だけが切り出すと、「事務的」に見える |
| 場 | 一対一で、時間を取って。立ち話や、メールだけで切り出さない |
| 最初の一言 | 「最初にお伝えした、社員としてのご相談をさせてください。断っていただいても、副業は続けていただけます」 |
| 伝える内容 | なぜ来てほしいか(副業で見えた具体的な働き)、どんな役割か、条件の幅、時期の希望 |
| 聞く内容 | 本業の状況、本人の希望(本採用に興味があるか、時期、条件、働き方)、迷う点 |
| 決めない | その場で答えを求めない。「考えていただいて、〇日までにお返事を」 |
| 断りやすさ | 「副業のまま」が選べることを、繰り返し伝える。断ったことで関係が変わらないことを示す |
伝え方の要点は、「断っても副業は続く」を先に言うことです。これが無いと、本人は「断ると副業も終わる」と感じ、断りにくくなり、断った後に気まずくなります。
「なぜ来てほしいか」は、具体的に。「副業で〇〇を進めていただいたとき、△△の判断が的確でした。社員として、この役割を担っていただきたい」。「良い人だから」では、伝わりません。
役割と条件の組み直し
副業の役割と条件を、本採用の役割と条件に組み直します。
役割は、副業の範囲より広くなる。 副業で任せていた範囲に加えて、社員として任せる範囲。「何を決める役割か」「誰と働くか」「どこまで担うか」を、改めて書面にします。
条件は、副業の報酬から換算しない。 副業の時間単価を年収に換算すると、社員の給与と合わないことが多いです。自社の役割の幅で提示し、副業の報酬との違いを説明します。「副業の報酬は時間あたりで、社員の給与は役割と責任に対して」。
副業で見えた適性を、条件に反映する。 副業で実績が見えている分、幅の中で高めの位置に置けることがあります。「副業で〇〇が確認できたので、この位置で」。
既存社員との整合を、先に見る。 副業の人を本採用にするとき、同じ役割の既存社員の水準と整合させます。
働き方を、聞く。 本業を辞めて専念するのか、当面は本業と並行するのか。並行するなら、社員としての働き方(時間、日数)をどう設計するか。制度と法令上の扱いは専門家に確認します。
時期を、本人の本業の事情に合わせる。 本業の退職には、時間がかかります。「いつでも」ではなく、「本業の区切りに合わせて、〇か月後から」。
副業から社員への切り替えの手続きを、整理する。 副業の契約の終了と、雇用契約の開始。契約の形が変わるので、手続きと法令上の扱いは専門家に確認します。
組み直しは、副業の延長ではなく、新しい採用として行います。求人票に相当する役割の書面と、条件の提示と、内定の流れを踏みます。
エラベルの見解
相談で最も多い失敗は、「副業の人が良かったので、現場が『社員になりませんか』と立ち話で誘い、本人は『考えます』と言ったまま、副業も気まずくなって離れた」というものです。最初に可能性を置いておらず、役割も条件も無く、責任者も知らず、断りやすさも示していませんでした。副業の契約の段階で「お互いに合えば、社員としてのご相談をすることがあります」と伝え、半年の区切りで責任者が一対一で切り出していれば、本人は考える材料を持てました。
見ていて差がつくのは、担当者が「副業を、見る期間として設計する」かどうかです。「副業の人を紹介します」で終わる担当者と、「副業の役割を、本採用の役割の一部として切り出し、三か月の区切りで、お互いが見るものを決めましょう。本採用の可能性は契約の段階で伝えます」と、最初から設計する担当者がいます。後者は、副業を採用の経路にします。
発注側にできるのは、副業の人に関わってもらう前に、「本採用の可能性があるか」を決めて、あるなら最初に伝えることです。
本人の本業との関係
副業の人には、本業があります。本業との関係を、丁寧に扱います。
本業の就業規則を、本人が確認しているか。 副業が本業で認められているか、本採用の話をすることに問題が無いか。本人の確認事項ですが、会社としても配慮します。法令上の扱いは専門家に確認します。
本業を辞める判断は、本人のもの。 「辞めて来てください」と迫らない。「本業の状況を教えてください」と聞き、本人の判断を待ちます。
本業の退職の時期に、合わせる。 引き継ぎ、退職の予告期間。本人の本業に迷惑がかからない時期で。
本業と並行する期間を、設けられるか。 本業を辞める前に、副業の時間を増やす、段階的に移る、といった形が取れるか。制度と法令上の扱いは専門家に確認します。
本業の会社との関係に、配慮する。 本人が本業の会社と円満に離れられるよう、急がせない。本人の評判は、本人の資産です。
本業を続ける選択を、尊重する。 「本業は辞めない、副業のままで」という答えも、尊重します。その場合、副業の関係を続ける設計に戻ります。
本業との関係を雑に扱うと、本人の信頼を失い、本採用も副業も終わります。
断られた場合の関係の続け方
本採用を断られることは、あります。関係を続ける設計です。
断られたら、理由を聞いて、受け入れる。 「本業を続けたい」「条件が合わない」「時期が合わない」。理由を聞き、無理に翻意させない。
副業の関係を、そのまま続ける。 「断られたので副業も終わり」にしない。最初に「断っても副業は続く」と伝えた約束を守ります。
理由が「時期」なら、時期を改めて話す。 「いまは本業を辞められないが、一年後なら」という答えなら、一年後に改めて。それまでは副業で。
理由が「条件」なら、条件を見直せるかを社内で判断する。 見直せるなら、改めて提示。見直せないなら、副業のまま。
理由が「働き方」なら、働き方の設計を見直せるか。 週に三日の社員、リモート中心、といった形が取れるなら、提示。制度と法令上の扱いは専門家に確認します。
断られた事実を、社内で共有する。 現場が「なぜ来てくれないのか」と本人に直接聞く状態を避けます。責任者から現場に、「本人の判断で、副業を続けてもらう」と伝えます。
断られても、副業の人が続けてくれるなら、会社にとっては損失ではありません。断り方と、断られ方が、関係を決めます。
外注する場合の範囲
副業から本採用につなげる設計を、採用代行に出す場合の範囲です。
出せる工程。 副業の契約の段階での可能性の伝え方の文面、副業の役割の切り出し(本採用の役割の一部として)、お互いが見るものの整理、区切りの設計、本採用の役割の書面化、条件の幅の案(既存社員との整合の整理)、切り出しの場の準備(責任者向けの話す型)、本人の希望の聞き取りの型、本業との関係の整理の支援、切り替えの手続きの整理(専門家の確認を経て)、断られた場合の関係の続け方の設計。
社内に残す判断。 本採用の可能性を置くかどうかの決定、役割と条件の決定、切り出す時期と誰が切り出すか、既存社員との整合、契約の形の決定、断られた場合の条件の見直しの判断。
外注の効きどころ。 副業から本採用は、「最初の設計」と「切り出しの型」で決まります。担当者が契約の段階から設計に入り、区切りごとの振り返りを回し、切り出しの型を責任者に渡せば、社内は判断と対話に集中できます。契約の形の切り替えは、担当者も専門家に確認のうえで進めます。
外注しても動かない場合。 責任者が「副業のままでよい」と「本採用にしたい」の間で決めない、現場が勝手に誘う、条件を副業の報酬から換算することを譲らない。社内の判断で、代行を替えても直りません。
副業から本採用は、設計すれば、最も外れの少ない採用です。外注は、設計を最初から入れる手段です。
エラベルの見解
担当する側から見ると、副業から本採用の相談で最も多いのは、「副業の人に、社員と同じ責任を期待している」ことです。副業は週に数時間で、責任の範囲も限られます。「もっと関わってほしい」「もっと責任を持ってほしい」と感じ始めたら、それは本採用の話をする時期です。副業のまま責任を増やすと、本人は「割に合わない」と感じ、離れます。
「副業の範囲を超えて期待し始めた」を、本採用を切り出す合図にします。副業のまま期待を膨らませない。
発注側にできるのは、副業の人への期待が副業の範囲を超えていないかを、区切りごとに確認することです。超えていれば、切り出す時期です。
まとめ
- 起きているのは急に誘う・副業の役割のまま・条件が釣り合わない・本業の事情を聞かない・断ると気まずい・社内の同意が無い・扱いの違いが曖昧
- 最初に本採用の可能性を伝え・副業の役割を本採用の一部として切り出し・期間を区切り・お互いが見るものを決め・扱いを社員と分け・責任者と共有
- 切り出しは区切りの少し前・最も接している責任者が・一対一で・断っても副業は続くと先に・なぜ来てほしいかを具体的に・本人の希望を聞き・その場で決めない
- 組み直しは役割を広く・副業の報酬から換算しない・副業で見えた適性を反映・既存社員との整合・働き方・時期を本業に合わせる・切り替えの手続き。法令上の扱いは専門家に確認
- 本業との関係は就業規則の確認・辞める判断は本人・退職の時期に合わせる・並行の期間・本業の会社への配慮・続ける選択を尊重
- 断られたら理由を聞いて受け入れ・副業を続け・時期なら改めて・条件なら見直せるか・働き方なら設計を見直せるか・社内で共有
- 外注できるのは契約の段階の文面・役割の切り出し・区切りの設計・役割と条件の案・切り出しの型・聞き取りの型・手続きの整理・続け方の設計。社内に残るのは可能性の決定・役割と条件・時期と誰が・整合・契約の形・見直しの判断
よくある質問
副業の契約の段階で、本採用の話をするのは早すぎませんか
早すぎません。「お互いに合えば、社員としてのご相談をすることがあります。その場合も、副業のままを選んでいただけます」と伝えるだけです。約束ではなく、可能性の共有です。最初に伝えておけば、後の切り出しが「最初に話していたこと」になり、本人も想定できます。伝えていないと、後の切り出しが「急な話」になり、本人は驚き、断りにくさと気まずさが生まれます。
副業の報酬より、社員の給与のほうが低くなります
副業の時間単価を年収に換算すると、社員の給与と合わないことは多いです。副業の報酬は「時間あたりの成果に対して」、社員の給与は「役割と責任と継続に対して」で、性質が違います。換算せず、自社の役割の幅で提示し、違いを説明します。副業で見えた適性を、幅の中で高めの位置に反映できることもあります。それでも本人が「下がる」と感じて断るなら、副業のままを尊重します。
現場が、副業の人に直接「社員になりませんか」と言ってしまいました
責任者が、改めて一対一で話す場を持ちます。「現場からお話があったと思いますが、改めて、会社としてご相談させてください。断っていただいても、副業は続けていただけます」。現場の発言を否定せず、会社としての話に置き直します。役割と条件を書面で用意し、本人の希望を聞き、その場で答えを求めません。今後、現場が直接誘わないよう、責任者から現場に伝えます。