年20万円以下でも申告は要るか|所得税と住民税で答えが違う

報酬・契約・税務単価・契約・税務 更新日 2026-10-15

人事の副業を小さく始めた人から、「年20万円以下なら申告しなくていいと聞きました」という話をよく聞きます。半分は正しく、半分は誤解です。結論から書くと、20万円の基準は所得税の確定申告についてのもので、しかも対象は収入ではなく所得です。そして、所得税の確定申告をしなくてよい場合でも、住民税の申告は別に必要とされています。この記事では、条文と自治体の案内に沿って、この三つの点を整理します。

以下は会社員として給与を受け取りながら副業をしている人を前提にした一般的な整理です。所得の区分や申告の要否は個別の状況で変わります。具体的な判断は税務署や税理士、お住まいの市区町村にご確認ください。

「20万円」は所得税の話

所得税法第121条第1項は、給与所得がある人が一定の条件を満たす場合に、確定申告書を提出することを要しないと定めています。副業をしている会社員に関係するのは第1号で、要点は次のとおりです。

国税庁のタックスアンサーNo.1900でも、給与を1か所から受けていて、給与所得・退職所得以外の各種の所得金額の合計額が20万円を超える人は確定申告が必要とされています。裏を返すと、条件をすべて満たし、副業などの所得が20万円以下なら、所得税の確定申告をしなくてもよいということです。

ここで注意したいのは、条件が一つでも外れると話が変わることです。たとえば、本業とは別にアルバイトでも給与を受け取っている人は、第1号ではなく第2号の条件で判断します。給与を2か所以上から受け取っている場合の条件は第1号と異なるので、国税庁の案内で確認してください。

20万円は「収入」ではなく「所得」

第121条が使っているのは「所得金額」という言葉です。所得は、収入から必要経費を差し引いたものを指します。副業で受け取った報酬の合計(収入)が20万円を超えていても、業務に使った費用を差し引いた所得が20万円以下なら、この条件には当てはまります。

人事の副業に当てはめると、次のような関係になります。

例報酬の合計(収入)業務にかかった費用所得20万円の条件
A18万円2万円16万円以下
B26万円8万円18万円以下
C26万円2万円24万円超える

BとCは報酬の合計が同じでも、差し引ける費用によって結果が分かれます。何を費用として差し引けるかは、業務との関係によって判断されます。たとえば、副業のためだけに使うツールの利用料は差し引ける可能性が高い一方、本業と私用を兼ねるPCや通信費は、業務に使った割合で考える必要があります。費用の考え方は副業の経費で整理しています。

ただし、費用を多く見積もって所得を20万円以下に収めようとするのは避けてください。説明できない費用は、後から認められないことがあります。領収書と、何の業務に使ったかの記録を残しておくことが前提です。

エラベルの見解

担当者として登録している人を見ていると、副業を始めた1年目に「20万円以下だから」と何も記録をつけず、2年目に案件が増えて慌てる人が少なくありません。2年目に確定申告が必要になると、その年の収入と費用をまとめる必要があります。1年目に記録の習慣ができていないと、2年目の申告は手探りになります。

20万円以下で申告しなくてよい年も、申告が必要になったときと同じ形で記録をつけておくことをすすめます。依頼先ごとの請求額、振込日、源泉徴収された額、業務に使った費用と領収書。この5つを月に一度まとめるだけで、翌年以降の負担がまったく違います。人事の仕事に慣れた人なら、採用の記録をつけるのと同じ感覚でできるはずです。

住民税の申告は別に必要

所得税の確定申告をしなくてよい場合でも、住民税は別の扱いになります。名古屋市の案内では、所得税には源泉徴収を行っているなどの理由から確定申告をしないことができる場合があるのに対し、市民税・県民税には所得税のような申告の省略範囲はなく、原則としてすべての所得を申告する必要があるとされています。そのうえで、給与所得者で給与所得以外の所得が20万円以下の場合にも、市民税・県民税の申告を行う必要があると案内しています。

なお、同じ案内では、所得税の確定申告をした場合は、改めて市民税・県民税の申告をする必要はないとされています。確定申告の内容が市区町村に伝わるためです。つまり、副業の所得が20万円以下の人は、所得税の確定申告をしないなら、住民税の申告を市区町村に出す、という形になります。

申告の方法や提出先、期限は市区町村によって案内が異なります。お住まいの市区町村のホームページで「住民税 申告」を確認するか、税務担当の窓口に問い合わせてください。

20万円以下でも確定申告をしたほうがよい場合

所得税の確定申告をしなくてよい人でも、自分から申告したほうがよい場合があります。国税庁のタックスアンサーNo.1900では、確定申告が必要な人の条件を示す中で、確定申告をすれば税金が還付される人は除くとしています。還付を受けるには、自分で申告することになります。

人事の副業でよくあるのは、研修講師や講演の報酬から源泉徴収されていた場合です。源泉徴収された所得税は前払いとして扱われるので、確定申告をすれば、所得の状況によっては一部が戻ってくることがあります。源泉徴収の扱いは源泉徴収の扱いで書いています。

また、医療費控除やふるさと納税などで確定申告をする場合は、副業の所得もあわせて申告書に書くことになると一般に整理されています。申告書を出すなら、20万円以下の所得も含めて記載する前提で準備してください。具体的な判断は税務署や税理士にご確認ください。

エラベルの見解

もう一つ考えてほしいのは、20万円を目安に副業の量を抑えるという考え方の是非です。申告の手間を避けたいという気持ちは分かりますが、20万円という線は税金の手続きの線であって、副業をどこまでやるかを決める線ではありません。

人事の副業で経験の幅を広げたいなら、案件を選ぶ基準は、その案件で何が学べるか、本業と両立できる時間かどうかです。申告が必要になるくらい受けられるようになったなら、それは副業が軌道に乗った合図でもあります。手続きは記録さえあれば難しくありません。線を気にして良い案件を断るより、記録を整えて受けるほうが、長い目で見て得るものは大きいはずです。

まとめ

よくある質問

副業の報酬が20万円を少し超えましたが、申告は必要ですか

報酬の合計(収入)ではなく、必要経費を差し引いた所得で判断します。業務に使った費用を差し引いて所得が20万円以下なら、所得税法第121条の条件に当てはまる可能性があります。ほかの条件も満たしているかを含めて、税務署や税理士にご確認ください。

住民税の申告をしないとどうなりますか

住民税は前年の所得をもとに計算されるため、申告しないと副業の所得が反映されないままになります。名古屋市などの案内では、給与以外の所得が20万円以下でも住民税の申告が必要とされています。申告の方法や期限は、お住まいの市区町村にご確認ください。

副業が雑所得か事業所得かで、20万円の扱いは変わりますか

所得税法第121条は、雑所得や事業所得などを合計した「給与所得及び退職所得以外の所得金額」で20万円を判断するとしています。区分によって必要経費の考え方などが異なるため、どちらに当たるかは税務署や税理士にご確認ください。

出典

本記事は 2026-10-15 時点の公開情報にもとづいて作成しています。

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