源泉徴収の扱い|人事の副業で報酬から引かれるとき・引かれないとき

報酬・契約・税務単価・契約・税務 更新日 2026-10-15

人事の副業で初めて報酬を受け取ったとき、請求した金額より少ない額が振り込まれていて驚く人がいます。差し引かれていたのは源泉徴収された所得税です。一方で、同じように業務委託で受けた別の案件では、請求額がそのまま振り込まれることもあります。結論から書くと、源泉徴収されるかどうかは報酬の中身が所得税法で決められた種類に当たるかどうかと、支払う側が誰かで決まります。人事の副業では、研修や講演、経営の指導にあたる仕事は対象になりやすく、採用の実務を代わりに行う仕事は対象にならないことが多い、と整理できます。

以下は条文と国税庁の案内に沿った一般的な整理です。個別の報酬が源泉徴収の対象になるかどうかは、契約の内容や業務の実態で判断されます。具体的な判断は税理士や税務署にご確認ください。

源泉徴収の対象は法律で列挙されている

源泉徴収の対象になる報酬は、所得税法第204条第1項に列挙されています。個人に報酬を支払う人は、その報酬が列挙されたものに当たる場合に、支払いの際に所得税を差し引いて国に納めることになっています。人事の副業に関係しそうなものを抜き出すと、次のとおりです。

条文の区分主な中身人事の副業で当たりうる仕事
第1号原稿・デザインの報酬、講演料、これらに類するもので政令で定めるもの記事の執筆、講演、研修講師
第2号弁護士・税理士・社会保険労務士などの業務に関する報酬、政令で定める者の報酬社会保険労務士としての業務、企業経営の改善・向上の指導
その他外交員、芸能、ホステスなど人事の副業ではほとんど関係しない

第1号の「政令で定めるもの」について、所得税法施行令第320条第1項は、翻訳、通訳、脚本などのほか、知識の教授の報酬・料金などを挙げています。また第2号について、同条第2項は、計理士などのほか、企業診断員(企業経営の改善及び向上のための指導を行う者を含む。)を挙げています。

この二つは人事の副業にとって重要です。社員研修の講師や、採用のやり方を教える講座は「知識の教授」に当たる可能性があります。人事制度の見直しを経営者に助言する仕事は、内容によっては「企業経営の改善及び向上のための指導」に当たる可能性があります。どちらに当たるかは業務の実態で判断されるため、受ける前に依頼側の経理担当と確認しておくと、振込額の食い違いを防げます。

採用実務の代行は対象になりにくい

スカウトの送信、応募者への連絡、面接日程の調整、求人票の作成といった採用実務を代わりに行う仕事は、第204条第1項に列挙された報酬のどれにも、そのままは当てはまらないことが多いです。この場合、依頼側は源泉徴収をせず、請求額をそのまま支払います。

ただし、一つの契約の中に複数の仕事が混ざっていると、扱いが分かれることがあります。たとえば、毎月のスカウト運用の契約に、面接官向けの研修を2回含めるといった場合です。研修の部分が「知識の教授」に当たると判断されれば、その部分だけ源泉徴収の対象になることがあります。仕事の種類ごとに請求書の項目を分けておくと、依頼側も判断しやすくなります。

エラベルの見解

担当者として登録している人の契約を見ていると、源泉徴収の扱いで依頼側ともめるのは、ほとんどが契約の時点で決めていなかったケースです。依頼側の経理が後から気づいて源泉徴収を始めたり、逆に必要なのに引いていなかったことが分かったりすると、過去の分の精算が発生します。

契約のときに一行だけ確認してください。「この報酬は源泉徴収の対象になりますか、なる場合は請求書に源泉徴収税額を記載します」と。依頼側の経理担当に判断してもらえば、請求書の書き方もそろいます。研修や講演を含む案件では、特にこの確認が効きます。採用実務だけの案件なら対象外になることが多いので、確認の結果「対象外です」と返ってくれば、それはそれで安心材料になります。

支払う側によっても変わる

源泉徴収をする義務があるのは、報酬を支払う側です。所得税法第204条第2項は、第1項第1号から第5号などの報酬のうち、給与について源泉徴収をする義務がある個人以外の個人から支払われるものには、第1項を適用しないとしています。

人事の副業に当てはめると、依頼側が会社(法人)であれば、対象の報酬について源泉徴収をする義務があります。一方、依頼側が従業員を雇っていない個人の事業主であれば、同じ中身の報酬でも源泉徴収されないことがあります。同じ研修講師の仕事でも、依頼側によって振込額が違うことがあるのはこのためです。

税率と、引かれた分の精算

源泉徴収される金額について、所得税法第205条は、第204条第1項第1号・第2号などの報酬について、支払金額の10%(同じ人に1回に支払う金額が100万円を超える部分は20%)としています。国税庁のタックスアンサーNo.2795では、復興特別所得税を含めて、100万円以下の部分は10.21%、100万円を超える部分は20.42% として計算する方法が示されています。

たとえば、研修講師として10万円の報酬を受け取る場合、10万円×10.21%=10,210円が差し引かれ、89,790円が振り込まれることになります。差し引かれた分は、あなたが前もって払った所得税として扱われます。

源泉徴収された所得税は、確定申告で精算します。副業の所得をすべて計算して、その年の所得税額を出し、源泉徴収された分を差し引きます。経費が多かった年は、源泉徴収された分の一部が戻ってくることもあります。そのためにも、依頼側から支払調書や源泉徴収の内訳を受け取ったら保存しておいてください。確定申告の流れは確定申告の進め方、経費の考え方は副業の経費で書いています。

請求書と単価で気をつけること

源泉徴収の対象になる仕事では、請求書と単価の決め方に気をつけることが二つあります。

一つは、請求書に源泉徴収税額を書くかどうかです。対象になる報酬なら、請求額、源泉徴収税額、差引の振込額を並べて書くと、依頼側の経理が処理しやすくなります。対象かどうか分からないまま書くと、かえって混乱するので、契約時に確認した結果に合わせてください。

もう一つは、単価を手取りで考えることです。源泉徴収された分は確定申告で精算されるとはいえ、振り込まれる時点では10%余りが少なくなります。毎月の資金繰りを考えるなら、振込額で見ておくほうが安全です。単価の組み立て方は人事の副業単価の相場で扱っています。

エラベルの見解

源泉徴収の対象になる仕事は、人事の副業の中では単価が高めに設定されやすい仕事でもあります。研修の講師や、経営者への人事制度の助言は、採用実務の代行より時間あたりの報酬が高くなる傾向があります。知識や判断そのものに値段が付く仕事だからです。

そのため、源泉徴収されることを嫌って、こうした仕事を避ける必要はありません。引かれた分は確定申告で精算されます。むしろ、採用実務で経験を積んだ人が、次の段階として研修や助言の仕事に広げていくのは自然な流れです。そのときに、源泉徴収の扱いと請求書の書き方を知っていれば、依頼側の経理とのやりとりで戸惑わずに済みます。

まとめ

よくある質問

源泉徴収されていれば確定申告は不要ですか

不要とは限りません。源泉徴収は前払いの仕組みで、その年の所得税額は確定申告で確定します。給与所得者で副業の所得が20万円以下の場合などは所得税の確定申告をしなくてよい場合がありますが、源泉徴収された分を取り戻すには申告が必要です。判断は税務署や税理士にご確認ください。

依頼側が源泉徴収をしてくれない場合はどうなりますか

源泉徴収をして納める義務は支払う側にあります。対象の報酬なのに源泉徴収されていない場合は、依頼側に確認してください。いずれにしても、副業の所得は確定申告などで自分で申告する必要があるので、受け取った報酬の記録は残しておいてください。

採用実務の契約に研修が含まれる場合はどうすればよいですか

研修の部分が源泉徴収の対象になるかどうかを、依頼側の経理担当と確認してください。対象になる場合は、請求書の項目を採用実務と研修に分けておくと、源泉徴収税額の計算がはっきりします。判断が難しい場合は、税務署や税理士にご相談ください。

出典

本記事は 2026-10-15 時点の公開情報にもとづいて作成しています。

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