青色申告にする基準|控除額より先に「帳簿を続けられるか」で決める
人事の副業で収入が増えてくると、「青色申告にすると最大65万円の控除が受けられる」という話を耳にするようになります。控除の金額だけを見ると、選ばない理由はないように思えます。ただ、青色申告は誰でも選べるものではなく、選んだら毎年帳簿をつけ続けることが前提の制度です。結論から書くと、青色申告にするかどうかは、控除額の大きさより先に、副業の所得が対象になるかと、本業と並行して帳簿を続けられるかの二つで決めるのが現実的です。
以下は国税庁のタックスアンサーに沿った一般的な整理です(国税庁のページは令和8年4月1日現在の法令等に基づくとされています)。制度は改正されることがあるので、申告の前に最新の案内を確認し、具体的な判断は税務署や税理士にご相談ください。
青色申告ができる人は限られている
国税庁のタックスアンサーNo.2070は、青色申告ができるのは不動産所得、事業所得、山林所得のある人としています。人事の副業に関係するのは事業所得です。副業の所得が雑所得として扱われる場合は、青色申告の対象になりません。
会社員が業務委託で受ける人事の副業は、雑所得として扱われることも多くあります。国税庁のタックスアンサーNo.1500も、雑所得の例として副業に係る所得を挙げています。青色申告を考える前に、まず自分の副業の所得が事業所得に当たるかどうかを確かめる必要があります。この判断は開業届を出すべきかで詳しく扱っています。
控除額は三段階、要件がそれぞれ違う
国税庁のタックスアンサーNo.2072によると、青色申告特別控除には65万円、55万円、10万円の三段階があります。控除額が大きいほど、求められる記帳と提出の方法が厳しくなります。
| 控除額 | 主な要件(国税庁No.2072の要約) |
|---|---|
| 55万円 | 事業所得などを生じる事業を営んでいる/取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)で記帳している/貸借対照表と損益計算書などを確定申告書に添付し、期限内に提出する |
| 65万円 | 55万円の要件をすべて満たし、さらに仕訳帳と総勘定元帳を一定の要件で電子帳簿保存しているか、確定申告書や決算書類をe-Taxで期限内に送信している |
| 10万円 | 55万円・65万円の要件に当てはまらない青色申告者 |
この表で見落としやすいのは、期限内の提出が55万円・65万円の要件に入っていることです。国税庁の案内では、期限内に提出しないと、還付申告の場合でも55万円・65万円の控除は受けられないとされています。本業が繁忙期で申告が遅れると、控除が10万円に下がることがあります。
また、現金主義による所得計算の特例を選んでいる人は55万円の控除を受けられないとされています。65万円の控除を目指すなら、複式簿記で帳簿をつけ、e-Taxで期限内に提出する、という形が一般的です。
エラベルの見解
担当者として登録している人の相談で多いのは、「65万円控除を受けたいから青色申告にしたが、帳簿が続かなかった」という話です。複式簿記は、慣れれば会計ソフトで処理できますが、本業が忙しい時期に毎月の取引を記録し続けるのは、思った以上に負担になります。
青色申告を選ぶ前に、3か月だけ、白色申告のつもりで記録をつけてみることをすすめています。依頼先ごとの請求額、入金日、使った費用を毎月まとめる。それが苦にならずに続けば、会計ソフトを使って複式簿記に移る準備ができています。続かなければ、青色申告にしても帳簿が途中で止まり、控除の要件を満たせなくなる可能性が高いです。控除額は、帳簿を続けられた人だけが受け取れるものです。
承認申請書の期限
青色申告をするには、事前に「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出します。国税庁のタックスアンサーNo.2070とNo.2090によると、提出期限は次のとおりです。
- 原則:青色申告をしようとする年の3月15日まで
- その年の1月16日以後に新たに事業を開始した場合:事業を開始した日から2か月以内
副業を事業として始めた年に青色申告にしたい場合は、開業届と同じタイミングで承認申請書を出すのが一般的です。期限を過ぎると、その年は白色申告になり、青色申告は翌年からになります。
控除以外の特典と、続けるために要ること
国税庁のタックスアンサーNo.2070は、青色申告の特典として、青色申告特別控除のほかに、青色事業専従者給与、貸倒引当金、純損失の繰越しと繰戻しなどを挙げています。人事の副業に関係しやすいのは、純損失の繰越しです。事業所得が赤字になった年の損失を、翌年以後3年間繰り越せるとされています。立ち上げの年に費用が先行した場合などに意味があります。
一方、青色申告を続けるには、帳簿の保存も求められます。国税庁の案内では、帳簿書類は原則として7年間保存することとされ、請求書・見積書・納品書などは5年間の保存でよい書類として挙げられています。副業の書類を本業の書類と混ぜず、年ごとにまとめて保存する仕組みを最初に作っておくと、後で困りません。
副業の規模ごとの考え方を整理すると、次のようになります。
- 副業の所得が雑所得として扱われる規模:青色申告の対象外。記録をつけて確定申告や住民税の申告に備える
- 事業所得に当たるが、帳簿に自信がない:10万円控除の青色申告か白色申告で始め、記帳に慣れてから上の段階を目指す
- 事業所得に当たり、会計ソフトで複式簿記を続けられる:65万円控除を目指し、e-Taxで期限内に提出する
エラベルの見解
もう一つ伝えたいのは、税金の手続きにかける時間も、副業の稼働時間に含めて考えることです。青色申告の帳簿づけは、月に数時間かかることもあります。その時間は依頼側に請求できません。単価を決めるときに、こうした請求できない時間を見込んでおかないと、時間あたりの手取りは思ったより低くなります。
控除で税金が減る額と、帳簿にかける時間を比べてみてください。副業の所得が大きくなるほど、控除の効果は大きくなり、帳簿にかける時間の価値も上がります。単価の考え方は本業年収と副業単価の関係で書いています。数字で比べてから決めれば、制度に振り回されずに済みます。
まとめ
- 青色申告ができるのは不動産所得・事業所得・山林所得のある人。副業が雑所得なら対象外
- 控除は65万円・55万円・10万円の三段階。65万円は複式簿記と電子帳簿保存またはe-Taxが要件
- 55万円・65万円は期限内の提出が要件。遅れると控除が下がる
- 承認申請書は原則3月15日まで、1月16日以後に事業を始めたら2か月以内
- 控除額より先に、帳簿を続けられるかを3か月の記録で試してから決める
よくある質問
副業でも65万円の控除を受けられますか
副業の所得が事業所得に当たり、65万円控除の要件を満たせば、副業であることだけを理由に受けられなくなるわけではありません。ただし、会社員の副業は雑所得として扱われることも多く、その場合は青色申告の対象になりません。どちらに当たるかは税務署や税理士にご確認ください。
青色申告をやめることはできますか
青色申告をやめる手続きはあります。やめる場合の届出の期限などは国税庁の案内で確認してください。副業の規模が小さくなった場合など、帳簿の負担に見合わなくなったときに検討することになります。具体的な判断は税理士にご相談ください。
会計ソフトは使わないといけませんか
使わなければならない決まりはありませんが、65万円や55万円の控除の要件である複式簿記を手作業で続けるのは負担が大きいため、会計ソフトを使う人が多いです。e-Taxでの提出も会計ソフトから行えるものがあります。使う前に、本業と副業の取引を混ぜない口座の分け方も決めておくと記帳が楽になります。
- 国税庁 タックスアンサー No.2070 青色申告制度
- 国税庁 タックスアンサー No.2072 青色申告特別控除
- 国税庁 タックスアンサー No.1500 雑所得
- 国税庁 タックスアンサー No.2090 新たに事業を始めたときの届出など
本記事は 2026-10-16 時点の公開情報にもとづいて作成しています。
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