経営者・役員の副業単価の目安と案件の見つけ方|採用の判断を経営の目線で支える相談役として値付けし、取締役の競業の決まりを確かめる
経営者や役員として会社を率いてきた人は、事業の計画から必要な人を決め、幹部を自ら口説き、採用の失敗も含めて人の判断を重ねてきた経験を持っています。人事の専門家とは違う、経営の責任を負ってきた立場からの助言は、同じように採用で悩む経営者にとって大きな支えになります。結論から書くと、経営者・役員の人事の副業単価は、採用の判断を経営の目線で支える相談役として値付けし、取締役としての競業の決まりや本業との線引きを確かめて受けることが前提になります。
人事の副業の単価には公的な統計がなく、案件の範囲や依頼先で大きく変わるため、この記事では金額の相場は書きません。自分の単価を組み立てる手順と、案件の見つけ方を書きます。経営者・役員の経験の何が売れるかは経営者・役員が副業でできることで詳しく書いています。
値付けにつながる作業
経営者・役員の経験は、次のような作業に置き換えると、人事の副業として値付けしやすくなります。
| 経営者・役員としての経験 | 人事の副業で切り出せる作業 | 時間が増える条件 |
|---|---|---|
| 事業の計画から必要な人を決めてきた | 経営者と一緒に、事業の計画から次に採る人を決める | 事業の計画が固まっていない |
| 幹部を自ら口説いてきた | 経営者が候補者と会うときの伝え方の準備と、面談への同席 | 幹部の採用が多い |
| 採用の失敗も含めて判断してきた | 採るかどうか迷う場面での判断の相談 | 判断の数が多い |
| 組織の形を決めてきた | 人が増えたときの役割の分け方と、管理職の置き方の整理 | 急に人が増える |
依頼先は、創業者や二代目の経営者など、採用の判断を一人で抱えている経営者が多くあります。人事の手続きや実務より、経営者の立場を分かったうえで相談に乗ってくれる相手を求めています。
相談役として月の伴走で組み立てる
経営者・役員の人事の副業は、相談役として月の伴走で受ける形が合います。
- 最初の整理を一括で見積もる:事業の計画と人の状況の聞き取り、次の一年に採る人の整理
- 月の相談の時間を決める:定例の相談の場の回数と時間、準備と振り返りの時間
- 面談への同席を分けて見積もる:幹部の候補者との面談に同席する場合は、回数で別に見積もる
- 相談の範囲を決める:急ぎの相談の受け方と、月の時間を超えたときの扱いを決める
時間単価の考え方は本業の年収と副業単価の関係で書いています。経営者の相談は、急に入ることが多くあります。定例の相談と急ぎの相談を分け、急ぎの相談は翌営業日までに返す、などと決めておくと、双方が落ち着いて動けます。
エラベルの見解
経営者・役員の人事の副業でよくある失敗は、自分の会社でうまくいったやり方を、そのまま相手の経営者に勧めることです。業種も規模も、経営者の考え方も違う会社に、自分の成功の型を当てはめても、うまくいくとは限りません。相手の経営者は「それはあなたの会社だからできたことだ」と感じ、相談が続きません。
担当する側から見ると、価値があるのは、自分の経験を答えとしてではなく、相手の経営者が自分で判断するための材料として示せることです。「私の会社ではこうだったが、御社の場合はここが違う」と、違いを踏まえて選択肢を並べる。経営者の孤独を分かったうえで、判断に付き合える人が頼られます。
取締役の競業の決まりと、本業との線引き
自分の会社の取締役を務めながら副業をする場合は、会社法の決まりを確かめる必要があります。会社法第356条は、取締役が自己または第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするときなどは、株主総会において、その取引について重要な事実を開示し、その承認を受けなければならないと定めています(取締役会設置会社では取締役会の承認となる場合があります)。自分の会社と同じ事業を営む会社の相談役を引き受ける場合などは、この決まりにあたらないかを確かめてください。
勤め先の役員として働いている場合は、勤め先のルールも確かめます。厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は、労働者は副業・兼業を希望する場合にも、まず自身が勤めている企業の副業・兼業に関するルールを確認する必要があるとし、秘密保持義務や競業避止義務を意識することが必要であるとしています。経営者や役員は、会社の経営の情報に深く触れています。不正競争防止法第2条第6項は、営業秘密を、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上または営業上の情報であって、公然と知られていないものと定めています。自分の会社の情報を副業で使わないでください。個別の判断は弁護士にご確認ください。
案件の見つけ方と、受けるときの条件
経営者・役員の経験を活かせる人事の案件は、次のような場所で見つけやすくなります。
- 経営者のつながり:経営者の集まりや、取引先の経営者から相談を受ける
- 事業を承継した経営者:二代目の経営者が、幹部の採用や組織の見直しで相談相手を探している
- 人事の副業の仲介サービス:経営の経験と、採用の判断の相談に乗れることを登録しておく
業務委託で受ける場合は、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)第3条が、業務委託事業者に、給付の内容、報酬の額、支払期日などを書面または電磁的方法で直ちに明示することを求めています。月の時間と相談の範囲、面談への同席の扱いを、書面で確かめてください。20万円を超える副収入がある場合は、確定申告が必要です。個別の判断は弁護士・税理士にご確認ください。
エラベルの見解
もう一つ見てほしいのは、経営者・役員の経験は、幹部の採用の見極めで価値が伝わりやすいということです。幹部の採用は、経営者にとって最も難しく、失敗したときの影響が大きい判断です。経歴は立派でも、自社の規模や文化に合わない人を採ってしまうことがあります。
経営の責任を負ってきた人は、幹部の候補者が「この会社の規模で、この経営者と一緒に、何ができるか」を見極める目を持っています。候補者との面談に同席し、経営者と一緒に見極める役割は、経営者・役員の経験ならではの成果物です。
まとめ
- 経営者・役員の人事の副業単価は、採用の判断を経営の目線で支える相談役として値付けする
- 最初の整理は一括、相談は月額、面談への同席は回数で分けて見積もる
- 自分の成功の型を答えにせず、相手の経営者が判断するための材料として示す
- 取締役の競業取引の決まりと、勤め先のルールを確かめてから受ける
- 幹部の採用の見極めに同席し、経営の目線での判断を支える
よくある質問
経営者・役員の人事の副業単価の相場はいくらですか
案件の範囲や依頼先によって大きく異なり、公的な統計もないため、一律の相場はお伝えできません。最初の整理と月の相談の時間を見積もり、自分の時間単価を掛けて単価の根拠をつくってください。
自分の会社の取締役のまま、ほかの会社の相談役を受けてもよいですか
自分の会社と同じ事業の部類に属する取引にあたる場合は、株主総会などの承認が必要になることがあります。相手の会社の事業と自分の会社の事業の関係を確かめ、判断に迷う場合は弁護士にご相談ください。
人事の実務の経験がなくても、人事の副業ができますか
採用の判断の相談や、幹部の見極めは、経営の経験を生かして受けられます。求人の作成や日程調整などの実務は、実務に詳しい担当者と組む形もあります。経験のある範囲とない範囲を、依頼先に伝えてください。
- e-Gov法令検索「会社法」(第356条)
- e-Gov法令検索「不正競争防止法」(第2条第6項)
- e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(第3条)
- 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月改定)
本記事は 2026-10-16 時点の公開情報にもとづいて作成しています。
この記事のタグ
関連記事
- 経営者・役員が副業でできること|経験の棚卸しと売り方|経営者・役員の経験は「採用を経営の判断として組み立てる」工程で売れる。採用の優先順位と予算の設計、経営者への助言、役員や幹部の採用の見極め、採用の仕組みの設計の四つ。「経営の経験を活かす」ではなく、「依頼側の経営者が判断できる形に整える」と売る 経営者・役員の経験で人事の副業を始める人向けに、売れる経験の棚卸し(経営の判断としての採用・経営者への助言・幹部の採用・仕組みの設計)、売りにくい点(上から目線の警戒・実務の手を動かすか・本業との利益相反)とその扱い、入りやすい案件の探し方、単価の考え方、順番を整理しました。 人事副業経営者・役員
- 人材紹介のキャリアアドバイザーの副業単価の目安と案件の見つけ方|候補者と向き合ってきた経験を企業側の採用の作業に置き換え、紹介にあたる仕事とは線を引く 人材紹介会社でキャリアアドバイザーとして求職者と向き合ってきた人が副業を始めるとき、単価をどう決め、案件をどう見つけるか。面談や意向の見極めの経験を企業側の採用の作業に置き換える方法、作業ごとの単価の組み立て方、案件の見つけ方、有料職業紹介の許可が要る仕事との線引き、本業との競業と求職者の情報の扱いを整理しました。 人事副業人材紹介のキャリアアドバイザー
- 人材紹介のリクルーティングアドバイザーの副業単価の目安と案件の見つけ方|企業の要件を引き出す力を採用設計の成果物にし、紹介にあたる仕事とは線を引く 人材紹介会社でリクルーティングアドバイザーとして企業の採用を支えてきた人が副業を始めるとき、単価をどう決め、案件をどう見つけるか。求人の要件を引き出し、条件を調整してきた経験を採用設計の成果物にする方法、単価の組み立て方、案件の見つけ方、有料職業紹介の許可が要る仕事との線引き、紹介手数料の仕組みの説明、本業との競業の注意点を整理しました。 人事副業人材紹介のリクルーティングアドバイザー
- 人事責任者・CHROの副業単価の目安と案件の見つけ方|経営の場での人の判断を「顧問」の月額で受け、関わり方の範囲と立場を先に決める 人事責任者やCHROとして経営の場で人と組織の判断をしてきた人が副業を始めるとき、単価をどう決め、案件をどう見つけるか。顧問として月の時間で受ける単価の組み立て方、人事の仕組み全体の見立てを成果物にする方法、案件の見つけ方、関わり方の範囲と立場の決め方、本業での秘密保持・競業避止と、業務委託で受けるときの条件を整理しました。 人事副業人事責任者・CHRO
「経歴別の人事副業」の他の記事
- 建設業の人事が副業でできること|経験の棚卸しと売り方|建設業の人事の経験は「現場に出る職種を、資格と経験年数と現場の相性で見て、協力会社と自社の線を引きながら、採り続けてきた」型で売れる。売れるのは、現場職の要件を『できる仕事』で書く型、応募が来にくい職種の母集団の作り方、現場の所長を採用に巻き込む型、外注と雇用の線の整理の四つ。「建設の人事でした」ではなく、「応募が来にくい現場の職種を、現場と一緒に採る形を作る」と売る建設業の人事
- 建設業の人事の副業単価の目安と案件の見つけ方|資格と現場の配置から逆算する採用設計を成果物にし、現場の訪問を分けて見積もる建設業の人事
- 採用マネージャーが副業でできること|経験の棚卸しと売り方|採用マネージャーの経験は「複数の募集を同時に回し、担当者と媒体と外注先を束ね、採用の数字に責任を持ってきた」型で売れる。売れるのは、採用の体制の設計、担当者の育成と指示の型、媒体と外注先の使い分けの判断、採用の数字の管理の四つ。「採用の責任者でした」ではなく、「採用が回る体制を作り、担当者が動ける形にする」と売る採用マネージャー
- 採用マネージャーの副業単価の目安と案件の見つけ方|採用の計画・数字・体制づくりを成果物にし、人を束ねる場合は発注者の決まりも確かめる採用マネージャー
- 採用代行の経験者が副業でできること|経験の棚卸しと売り方|採用代行の会社で複数の企業の採用を回してきた経験は「工程を切り出して、型で回し、報告する」形で、そのまま副業に売れる。ただし副業は一人で受けるので、会社の体制と型と看板が無い前提に組み替える。「代行会社にいました」ではなく、「この工程を、この型で、一人で回します」と売る採用代行の経験者
- 採用代行の経験者の副業単価の目安と案件の見つけ方|複数の会社の採用を回してきた型を作業ごとに値付けし、募集と情報の決まりを確かめる採用代行の経験者