本業年収と副業単価の関係|年収を時給に割っただけでは足りない理由

報酬・契約・税務単価・契約・税務 更新日 2026-10-15

副業の単価を決めるとき、多くの人がまず本業の年収を時給に直してみます。年収を年間の労働時間で割れば、自分の1時間がいくらで買われているかが分かる、という考え方です。出発点としては悪くありません。ただ、その数字をそのまま副業の時間単価にすると、多くの場合は安すぎる単価になります。この記事では、年収から割った数字に何を足し、何を差し引いて考えるべきかを順に整理します。

なお、以下の計算は考え方を示すための例です。実際の金額は人によって大きく異なり、税金や社会保険の扱いは個別の状況で変わります。具体的な判断は税理士・社会保険労務士にご確認ください。

年収を時給に割った数字は「下限の下」

本業の年収を時給に直すには、年収を1年間に実際に働いた時間で割ります。所定労働時間で割るか、残業を含めた実際の時間で割るかで数字が変わるので、自分の実態に近いほうを使ってください。たとえば年収600万円で、年間の労働時間が2,000時間なら、1時間あたり3,000円になります。

この3,000円は、本業の会社があなたに払っている給与だけを見た数字です。会社はこのほかに、社会保険料の会社負担分、交通費、PCや業務ツールの費用、研修費、オフィスの費用を負担しています。会社から見たあなたの1時間のコストは、給与だけで割った数字よりかなり高くなります。

副業で業務委託として受ける場合、こうした費用は依頼側が負担しません。自分で用意するか、我慢するかのどちらかです。つまり、給与を時間で割った数字は、副業単価を考えるうえでの下限ですらなく、その下にある数字だと考えたほうが実態に合います。

足すもの・引くものを並べる

年収から割った時給を出発点にして、副業単価に向けて何を調整するかを並べます。金額を決めるための表ではなく、考え漏れを防ぐための表です。

調整するもの本業(雇用)副業(業務委託)単価への影響
社会保険料の会社負担会社が負担本業側で加入していれば副業分は通常発生しない本業の時給より上げる根拠になる
有給休暇・休業時の補償ありなし休んだ月は収入がゼロになるぶんを見込む
業務に使う道具会社が用意自分で用意PC・ツール代を単価に乗せる
営業・請求・経理の時間発生しない自分でやる請求できない時間を単価に乗せる
消費税関係なし課税事業者かどうかで扱いが変わる税込か税抜かを見積もりで明記する
所得税・住民税給与から天引き確定申告で自分で納める手取りで見るときに差し引く

この表のうち、副業の人がいちばん見落としやすいのは請求できない時間です。案件を探す、初回の打ち合わせに出る、見積もりを作る、月末に請求書を出す、確定申告の準備をする。どれも報酬は発生しませんが、副業を続ける限り毎月かかります。たとえば月に20時間を請求できる仕事をしていて、そのために月5時間の請求できない作業があるなら、実際に働いた時間は25時間です。請求できる20時間の単価で25時間分を賄う必要があります。

エラベルの見解

担当者として登録している人の単価の決め方を見ていると、本業の年収が高い人ほど、副業単価を本業の時給に近い数字で出す傾向があります。年収900万円の人が時給4,500円前後で出す、という具合です。本人は「本業と同じ水準なら妥当だろう」と考えています。

ところが依頼側から見ると、比べている相手は社員ではなく、外部の採用代行会社やフリーランスです。会社に頼めば、社員の給与に会社の費用と利益が乗った金額を払うことになります。その水準と比べると、本業の時給そのままの単価は安く見えます。安く見えること自体は悪くありませんが、安すぎると経験が浅い人だと受け取られることがあります。本業の時給を出発点にしつつ、上の表で挙げた費用と請求できない時間を乗せた数字を出したほうが、依頼側の比較の物差しに合います。

本業年収が高いほど、副業単価も上げてよいか

本業の年収が高いことは、単価を上げる根拠の一つになります。ただし、依頼側が払うのは年収に対してではなく、その案件で出せる成果に対してです。年収が高い理由が、管理職としてのマネジメントや社内調整にある場合、副業で頼まれる実務とは必ずしも重なりません。

たとえば、本業では採用部門の責任者として予算と人員を管理している人が、副業でスカウトの送信と返信対応を受けるとします。依頼側が期待するのは送信の質と量で、部門運営の経験は直接は使われません。この場合、本業の年収から割った時給を根拠に単価を上げようとしても、依頼側は納得しにくくなります。逆に、同じ人が採用計画の立て方や面接設計の見直しを受けるなら、本業の経験がそのまま成果に効くので、年収に見合った単価を出しやすくなります。

本業年収と副業単価の関係は、どの業務を受けるかで強くも弱くもなる、と整理しておくと判断を誤りにくくなります。業務ごとの単価の考え方は人事の副業単価の相場、時間単価の決め方は時給型の相場と決め方でも扱っています。

自分の数字で計算する手順

ここまでの考え方を、自分の数字に当てはめる手順にします。順番に埋めていけば、本業の年収から副業の時間単価の目安が出ます。

  1. 本業の時給を出す。 年収を、1年間に実際に働いた時間で割る
  2. 会社が負担していた費用を足す。 正確な金額が分からなければ、給与明細の社会保険料の欄を見て、同程度を会社も払っていると考える
  3. 道具代を足す。 副業で使うPC・ツール・通信費を月額に直し、月の請求時間で割る
  4. 請求できない時間を足す。 月の請求時間に対して、営業・請求・経理にかかる時間の割合を見積もり、その割合だけ単価を上げる
  5. 受ける業務との重なりを確かめる。 本業の経験がそのまま効く業務なら、ここまでの数字を出してよい。重ならない業務なら、経験の浅い領域として控えめに置く

この手順で出した数字は、あくまで自分の側の下限です。依頼側の予算や、同じ業務を外部に頼んだときの金額と照らして、最終的な提示額を決めます。提示の仕方は単価交渉の切り出し方で書いています。

手取りで比べるときの注意

本業の時給と副業の単価を比べるときは、最後に手取りで見直します。給与は税金や社会保険料が天引きされた後の金額が振り込まれますが、業務委託の報酬は、源泉徴収の対象になる場合を除き、税金が引かれずに振り込まれます。振込額だけを見ると副業のほうが割がよく見えますが、翌年の確定申告で所得税を、その後に住民税を納めることになります。

もう一つ、本業の会社に副業を届け出る必要があるかどうかも確認してください。厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では副業・兼業を認める方向が示されていますが、届出の要否や認める範囲は会社ごとに就業規則で決まっています。単価の計算より前に、受けてよい状態になっているかを確かめておくほうが先です。

エラベルの見解

本業年収との比較で、もう一つ考えておいてほしいのが副業の時間が本業の時間を削っていないかです。副業の単価を本業の時給より高く設定できたとしても、そのために本業の評価が下がれば、翌年の年収に響きます。年収600万円の人の評価が一段階下がって昇給が見送られれば、副業で稼いだ額を上回る損になることもあります。

担当する側から見て、長く続いている人は、副業に使う時間を先に決めて、その中で受けられる案件だけを受けています。「月20時間まで」と決めたら、それを超える案件は単価が高くても断ります。単価を上げる理由は、時間を増やさずに収入を増やすためです。本業との比較で単価を考えるときは、時間の上限もセットで決めてください。

まとめ

よくある質問

年収が低めでも、副業単価を高く設定してよいですか

本業の年収は出発点の一つにすぎず、依頼側が払うのは案件で出せる成果に対してです。本業の年収が控えめでも、受ける業務で実績を示せるなら、それに見合った単価を出して構いません。根拠は年収ではなく、その業務で何をしてきたかで示してください。

社会保険料は副業でも払う必要がありますか

本業で会社員として社会保険に加入している場合、業務委託で受ける副業の報酬について、別に健康保険や厚生年金に入る必要は通常ありません。ただし、副業を雇用契約で受ける場合や、働き方によっては扱いが変わることがあります。個別の判断は社会保険労務士や年金事務所にご確認ください。

時給で出すと低く見られませんか

時給そのものより、時給の根拠が示されているかで見られ方が変わります。「時給◯円」だけでなく、作業ごとの時間と合わせて出すと、依頼側はその金額で何が手に入るのかを判断できます。月の上限時間を付けた月額で出す方法もあります。

出典

本記事は 2026-10-15 時点の公開情報にもとづいて作成しています。

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