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労働条件明示義務の改正点|2024年4月から追加された三つと、書き方の実例

公開 2026-09-23

副業で人事を受けると、労働条件通知書の様式を見る機会があります。そして、数年前のまま使っている会社に出会います。結論を先に書くと、厚生労働省のリーフレットは「『労働基準法施行規則』(以下「労基則」)と『有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準』(以下「雇止めに関する基準」)の改正に伴い、労働条件の明示事項等が変更されることとなりました(2024年(令和6年)4月1日施行)」としたうえで、追加された事項を三つ挙げています。すべての労働者に対する就業場所・業務の変更の範囲、有期契約労働者に対する更新上限の有無と内容、無期転換申込権が発生する契約の更新時の無期転換申込機会と無期転換後の労働条件です。個別の判断は労働基準監督署や社会保険労務士にご確認ください。明示すべき事項の全体像は募集時の労働条件明示に、無期転換の仕組みは有期雇用と無期転換にまとめています。

追加された三つと、そのタイミング

リーフレットは、対象・タイミング・追加事項を次のように整理しています。

対象明示のタイミング追加された明示事項
すべての労働者労働契約の締結、有期労働契約の更新時1. 就業場所・業務の変更の範囲
有期契約労働者有期労働契約の締結と更新時2. 更新上限の有無と内容(通算契約期間または更新回数の上限)+更新上限を新設・短縮しようとする場合、その理由をあらかじめ説明すること
同上無期転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する契約の更新時3. 無期転換申込機会/無期転換後の労働条件+無期転換後の労働条件を決定するに当たり、他の正社員等とのバランスを考慮した事項の説明に努めること

条文の場所。リーフレットは、1を改正労基則第5条第1項第1号の3、2を改正労基則第5条第1項第1号の2および改正雇止めに関する基準第1条、3を改正労基則第5条第5項・第6項および改正雇止めに関する基準第5条と示しています。

実際の条文を見ると、労基則第5条第1項第一号の三は「就業の場所及び従事すべき業務に関する事項(就業の場所及び従事すべき業務の変更の範囲を含む。)」、第一号の二は「有期労働契約を更新する場合の基準に関する事項(通算契約期間又は有期労働契約の更新回数に上限の定めがある場合には当該上限を含む。)」となっています。

第5項は、無期転換申込みをすることができることとなる有期労働契約の締結の場合に、明示すべき労働条件として「労働契約法第十八条第一項の無期転換申込みに関する事項並びに当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件のうち第一項第一号及び第一号の三から第十一号までに掲げる事項」を加えると定めています。第6項は、書面等で明示すべき事項について、同様の追加を定めています。

募集の段階にも追加があります。リーフレットは「労働契約締結・更新時だけではなく、職業安定法上、労働者の募集を行うなどといった場合にも、求職者に対して労働条件の明示が必要となります。追加される事項は、改正労基則で追加となる、①就業場所の変更の範囲、②従事すべき業務の変更の範囲のほか、③有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間または更新回数の上限を含む)となります」とし、改正職業安定法施行規則第4条の2第3項を根拠として挙げています。求人票と労働条件通知書の両方を直す必要がある、ということです。求人側の話は求人情報の的確表示義務にまとめています。

「変更の範囲」の書き方

ここが、実務でいちばん手が止まる部分です。リーフレットの説明を押さえます。

「就業場所と業務」とは。「労働者が通常就業することが想定されている就業の場所と、労働者が通常従事することが想定されている業務のこと」。配置転換や在籍型出向が命じられた際の配置転換先や在籍型出向先の場所や業務は含まれますが、「臨時的な他部門への応援業務や出張、研修等、就業の場所や従事すべき業務が一時的に変更される際の、一時的な変更先の場所や業務は含まれません」。

「変更の範囲」とは。「今後の見込みも含め、その労働契約の期間中における就業場所や従事する業務の変更の範囲のこと」。

テレワークの扱い。「テレワークを雇入れ直後から行うことが通常想定されている場合は、『雇入れ直後』の就業場所として、また、その労働契約期間中にテレワークを行うことが通常想定される場合は、『変更の範囲』として明示してください。具体的には、労働者の自宅やサテライトオフィスなど、テレワークが可能な場所を明示するようにしましょう」。テレワーク全般の労務管理はテレワークの労務管理にまとめています。

リーフレットの記載例。限定の程度ごとに三つの型が示されています。

①就業場所・業務に限定がない場合。就業場所は「(雇入れ直後)本店及び労働者の自宅/(変更の範囲)本店及び全ての支店、営業所、労働者の自宅」「(雇入れ直後)仙台営業所/(変更の範囲)会社の定める営業所」。業務は「(雇入れ直後)広告営業/(変更の範囲)会社内での全ての業務」「(雇入れ直後)店舗における会計業務/(変更の範囲)全ての業務への配置転換あり」。リーフレットは「就業場所・業務に限定がない場合は、すべての就業場所・業務を含める必要があります。『会社の定める◯◯』と記載するほか、変更の範囲を一覧表として添付することも考えられますが、予見可能性の向上やトラブル防止のため、できる限り就業場所・業務の変更の範囲を明確にするとともに、労使間でコミュニケーションをとり、認識を共有することが重要です」としています。

②一部に限定がある場合。「(雇入れ直後)東京本社/(変更の範囲)東京本社、大阪支社及び名古屋支社」「(雇入れ直後)豊橋/(変更の範囲)愛知県内」といった書き方が示されています。業務では「(雇入れ直後)介護業務/(変更の範囲)介護業務、介護事務(介護業務とは、入所者の着替え、食事、入浴及び排泄の介助等を行うものであり、介護事務とはレセプトの作成等介護業務に関連する事務作業一切をいう。)」のように、用語の定義を括弧書きで添える例も挙げられています。

在籍出向の注意。「いわゆる在籍出向を命じることがある場合であって、出向先での就業場所や業務が出向元の会社での限定の範囲を超える場合には、その旨を明示するようにしてください」とされています。

③完全に限定(変更が想定されない場合)。雇入れ直後と変更の範囲を同じ内容で書く形です。

エラベルの見解

担当する側から見ると、この改正対応の本当の難しさは、会社が自分の人事異動の範囲を言葉にできないことにあります。「変更の範囲」を書こうとすると、どこまで異動させるつもりなのかを決めなければなりません。転勤はあるのか、ないのか。職種は変わるのか。出向はあるのか。多くの会社は、これを決めないまま運用してきました。

ここで安易に「会社の定める場所」「全ての業務」と書いてしまう会社が多いのですが、リーフレットは「予見可能性の向上やトラブル防止のため、できる限り就業場所・業務の変更の範囲を明確にする」と書いています。広く書けば安全、という話ではありません。広く書けば、応募者から見た魅力は下がります。転勤の可能性が「全国」と書かれた求人と、「東京・大阪・名古屋」と書かれた求人では、応募の集まりが変わります。

実務で勧めているのは、直近三年の異動の実績を数えることです。何人が、どこからどこへ動いたか。職種はどう変わったか。数えると、たいてい「思っていたより動いていない」ことが分かります。そこから、実態に近い範囲を書く。これは改正対応であると同時に、募集要件の見直しでもあります。転勤要件は性別による募集差別の禁止で触れた間接差別の話にもつながるので、まとめて整理すると効率的です。エラベルは依頼側が担当者の経歴を見て選ぶ仕組みなので、この往復ができる人は、採用の設計まで任されます。

有期契約に関する二つ

更新上限(労基則第5条第1項第一号の二)。有期労働契約の締結時と更新時ごとに、通算契約期間または更新回数の上限の有無と内容を明示します。

あわせて、事前の説明義務があります。雇止めに関する基準の第1条は「使用者は、有期労働契約の締結後、当該有期労働契約の変更又は更新に際して、通算契約期間…又は有期労働契約の更新回数について、上限を定め、又はこれを引き下げようとするときは、あらかじめ、その理由を労働者に説明しなければならない」と定めています。リーフレットも「更新上限を新設・短縮する場合は、その理由をあらかじめ(新設・短縮をする前のタイミングで)説明することが必要になります」としています。

無期転換申込機会と転換後の労働条件。無期転換申込権が発生する契約の更新のタイミングごとに、無期転換を申し込むことができる旨と、無期転換後の労働条件を明示します。リーフレットは、無期転換ルールについて「有期契約労働者が使用者(企業)に対して無期転換の申し込みをした場合、無期労働契約が成立します(使用者は無期転換を断ることができません)【労働契約法第18条】」と説明しています。

均衡を考慮した事項の説明(努力義務)。雇止めに関する基準の第5条を受けて、リーフレットは「無期転換後の賃金等の労働条件を決定するに当たって他の通常の労働者(正社員等のいわゆる正規型の労働者及び無期雇用フルタイム労働者)とのバランスを考慮した事項(例:業務の内容、責任の程度、異動の有無・範囲など)の説明に努めなければならないことになります」としています。

濫用的な利用についての記述。リーフレットは「無期転換ルールの適用を免れる意図をもって、無期転換申込権が発生する前の雇止めや契約期間中の解雇等を行うことは、『有期労働契約の濫用的な利用を抑制し労働者の雇用の安定を図る』という労働契約法第18条の趣旨に照らして望ましいものではありません」とも述べています。

副業の人事が作るのは、次の形です。個別の適否の判断は労働基準監督署や社会保険労務士にご確認ください。

やること中身
様式の点検労働条件通知書に、就業場所・業務の変更の範囲の欄があるか
異動実績の集計直近三年の異動・出向・職種変更を数える。書く範囲の根拠にする
記載の決定限定なし/一部限定/完全に限定のどれか。用語の定義を添えるか
テレワークの扱い就業規則の定めと整合しているか。自宅・サテライトオフィスを含めるか
在籍出向出向先の場所・業務が限定の範囲を超える場合の記載
有期の欄更新上限の有無と内容。通算契約期間か更新回数か
上限の新設・短縮あらかじめ理由を説明する段取りと記録
無期転換の判定誰が、いつ申込権を得るか。台帳で管理する
無期転換の明示申込機会と転換後の労働条件。第5項・第6項の事項
均衡の説明業務の内容、責任の程度、異動の有無・範囲などを説明する準備
求人票職業安定法施行規則第4条の2第3項の追加事項が入っているか
就業規則記載と食い違っていないか。就業規則の作成義務を参照

モデル様式があります。厚生労働省は、リーフレットの巻末にモデル労働条件通知書を収録しています。自社の様式を一から直すより、モデルと突き合わせて欠けている欄を足すほうが早いです。

エラベルの見解

外に出してよいのは、様式の点検、異動実績の集計、記載案、無期転換の管理台帳、説明の段取り、求人票との突き合わせまでで、「この記載で明示として足りるか」「この更新上限の理由で説明として足りるか」といった個別の判断は、労働基準監督署や社会保険労務士、弁護士の範囲です。

担当する側から見ると、この案件は入口として使いやすいのが利点です。改正への対応という明確な理由があるので、会社は着手を決めやすい。そして、様式を直す作業に入ると、自然に隣の話に広がります。異動の範囲を決めるには人事制度の議論が要り、無期転換の台帳を作ると有期契約者の管理の粗さが見え、求人票を直すと募集要件の話になります。一枚の書類から会社の人事全体が見える、という意味で、副業で入るときの最初の仕事に向いています。

もう一つ、この作業は「終わりが見える」ことも大きい。制度設計の案件は成果が見えにくく、依頼側も不安になりがちですが、様式の改定は完成が分かります。最初の案件で信用を作り、そこから広げる。この順番で動ける人は、継続の率が高いです。エラベルでは、依頼側が担当者を選べるので、短い案件でも最後まで仕上げた実績は、次につながります。

まとめ

よくある質問

「会社の定める場所」と書いておけば足りますか

厚生労働省のリーフレットは、就業場所・業務に限定がない場合は、すべての就業場所・業務を含める必要があるとしたうえで、「『会社の定める◯◯』と記載するほか、変更の範囲を一覧表として添付することも考えられますが、予見可能性の向上やトラブル防止のため、できる限り就業場所・業務の変更の範囲を明確にするとともに、労使間でコミュニケーションをとり、認識を共有することが重要です」と述べています。形式的には成り立つ書き方でも、後の紛争を防ぐという目的からは、実態に即して明確にするほうが勧められている形です。個別の記載の適否は、労働基準監督署にご確認ください。

出張や応援も「変更の範囲」に書く必要がありますか

リーフレットは、「就業場所と業務」について、労働者が通常就業することが想定されている就業の場所と通常従事することが想定されている業務を指すとしたうえで、「配置転換や在籍型出向が命じられた際の配置転換先や在籍型出向先の場所や業務は含まれますが、臨時的な他部門への応援業務や出張、研修等、就業の場所や従事すべき業務が一時的に変更される際の、一時的な変更先の場所や業務は含まれません」と説明しています。なお、在籍出向を命じることがある場合で、出向先での就業場所や業務が出向元での限定の範囲を超えるときは、その旨を明示するよう求められています。

更新上限を新しく設けたい場合、どうすればよいですか

雇止めに関する基準の第1条は、有期労働契約の締結後、変更又は更新に際して通算契約期間又は更新回数について上限を定め、又はこれを引き下げようとするときは、あらかじめ、その理由を労働者に説明しなければならないと定めています。リーフレットも、新設・短縮をする前のタイミングで説明することが必要になる、としています。実務では、説明の内容と日付を記録に残します。あわせて、無期転換ルールの適用を免れる意図をもって申込権が発生する前に雇止めを行うことは労働契約法第18条の趣旨に照らして望ましくない、ともリーフレットは述べています。個別の判断は弁護士や労働基準監督署にご確認ください。

出典