人事副業 / 単価・契約・税務
ポートフォリオの作り方|職務経歴書と違い、「成果物」と「変化」を一枚ずつ見せる
デザイナーやライターの副業ではポートフォリオが当たり前ですが、人事の副業では、何を見せればよいか分かりにくい。「作ったもの」が、文面や制度や仕組みで、見せにくいからです。結論を先に書くと、人事の副業のポートフォリオは、職務経歴書とは別に、「課題と変化」「成果物の見本」「進め方の型」を一枚ずつ見せる資料です。守秘を守って抽象化しても、依頼側は「この人の仕事の質」を判断できます。実績の示し方は実績の示し方に、副業用の職務経歴書は副業用の職務経歴書にまとめています。
職務経歴書との違い
職務経歴書とポートフォリオは、役割が違います。
| 職務経歴書 | ポートフォリオ | |
|---|---|---|
| 目的 | 経歴の全体を示す | 仕事の質を見せる |
| 中身 | いつ、どこで、何を担当したか | どんな課題に、何を作り、何が変わったか |
| 形 | 時系列の文章 | 案件ごとの一枚 |
| 依頼側の見方 | 経験の有無を確認する | 「うちの課題に、この質で対応してもらえるか」を判断する |
| 分量 | 二〜三枚 | 三〜五枚。案件ごとに一枚 |
職務経歴書は「何をしてきたか」、ポートフォリオは「どうやってきたか」です。依頼側は、職務経歴書で経験の有無を確認し、ポートフォリオで質を判断します。両方あると、依頼側の判断が速くなります。
人事の副業で、ポートフォリオが無い人は多い。あるだけで、依頼側の印象は変わります。
ポートフォリオに入れる五つの要素
ポートフォリオには、次の五つを入れます。
一.課題と変化(案件ごとに一枚)。 実績の示し方で書いた「課題・打ち手・変化」を、一つの案件につき一枚に。業種と規模、課題、打ち手、変化の前後、期間、自分の関与の範囲。
二.成果物の見本。 実際に作ったものの見本。スカウトの文面(会社名と個人を伏せて)、対象の基準の書面、面接の観点と質問の一覧、求人票、レポートの型。守秘を守って抽象化したもの。
三.進め方の型。 案件を受けたとき、どう進めるか。「最初の二週間で対象と文面を整え、三週目から送り、月に一度の定例で見直す」。依頼側は、契約後の流れを想像できます。
四.得意領域と、得意でない領域。 「スカウトの運用と面接の設計が得意。労務は専門家と連携」。得意でない領域を明示すると、信頼されます。
五.依頼側に求めること。 「成果を出すために、御社に求めること」。面談枠の確保、役割の定義、決める人。最初から示せば、契約後のずれが減ります。
五つのうち、一と二が核です。三から五は、依頼側との面談で話すことの先出しで、あれば面談が速く進みます。
守秘を守った見せ方
人事の成果物は、会社の情報と候補者の情報を含みます。守秘を守って見せる方法があります。
文面の見本は、会社名・役割の固有名詞・個人名を伏せる。 「〇〇(役割)を決める役割で、〇〇(課題)に詰まっています」の形に。文面の構造と言葉づかいは残る。
対象の基準は、業種を抽象化する。 「〇〇業界の〇〇職」を「BtoBの営業職」程度に。基準の作り方(経歴のどこを見るか)は残る。
面接の観点と質問は、そのまま見せられることが多い。 会社の固有の情報を含まなければ。
レポートの型は、数字を伏せるか、比率に。 型(項目と構成)が見せたいもので、数字は要らない。
求人票は、会社が特定される情報を伏せる。 役割の記述の書き方が見せたいもの。
依頼先の了承を得る。 副業の依頼先には、「抽象化した形で見本として使ってよいか」を聞いておく。了承があれば安心。前職の分は、秘密保持契約を確認。
自分で作った「見本用」を用意する。 実際の案件の成果物を使えない場合、架空の会社を想定して、見本を作る。「見本用に作ったもの」と明示すれば、質は伝わる。
守秘を守っても、成果物の質は見せられます。固有名詞と数字を伏せても、構造と言葉づかいと考え方は残るからです。
形式と分量
ポートフォリオの形式と分量の目安です。
形式。 PDFが扱いやすい。依頼側にメールで送れ、面談で画面に出せる。ウェブページの形もあるが、公開範囲に注意。
分量。 三〜五枚。案件ごとの「課題と変化」が二〜三枚、成果物の見本が一〜二枚、進め方・得意領域・依頼側に求めることが一枚。長いと読まれない。
一枚の構成。 上に課題、中に打ち手、下に変化。見出しと箇条書きで、一目で分かる形。文章を長く書かない。
順番。 依頼側の課題に近い案件を、最初に。全部の案件を入れず、依頼側ごとに選んで三つ程度。
見せる場面。 最初の連絡で職務経歴書と一緒に送るか、面談の前に送るか、面談で見せるか。依頼側の課題を聞いてから、合う案件を選んで送る形が、最も響く。
汎用版と、依頼側向けの版。 汎用版を一つ持ち、依頼側の課題に合わせて案件を入れ替えた版を作る。入れ替えは、順番と選択だけで、一枚ずつは使い回せる。
ポートフォリオは、一度作れば、案件ごとに順番を変えるだけで使えます。
エラベルの見解
相談で最も多い失敗は、「職務経歴書だけを送って、面談で『具体的にどんな文面を書くのか』と聞かれ、その場で説明して伝わらなかった」というものです。文面の質は、口頭では伝わりません。見本が一枚あれば、依頼側は一目で判断できました。人事の副業で、成果物を見せる習慣が無いことが、機会を逃しています。
見ていて差がつくのは、受ける側が「見本を一枚持っている」かどうかです。持っている人は、面談で「こういう文面を書きます」と見せ、依頼側は質を判断できます。持っていない人は、「こういう感じで」と口頭で説明し、依頼側は判断を保留します。
受ける側にできるのは、成果物の見本を一枚、守秘を守った形で作っておくことです。実際の案件の成果物を使えないなら、見本用に作る。一枚あるだけで、面談の進み方が変わります。
更新の周期
ポートフォリオは、案件が終わるたびに更新します。
案件が終わったら、一枚足す。 課題・打ち手・変化を、終わった時点でまとめる。時間が経つと、変化の数字も、打ち手の理由も、思い出せなくなる。
古い案件は、下に回すか外す。 直近の案件を上に。数年前の案件は、依頼側の課題に合う場合だけ残す。
成果物の見本は、最も良いものに入れ替える。 文面の型が改善したら、新しい見本に。
得意領域は、実績に合わせて更新する。 案件を重ねて、得意が変わったら、書き換える。
四半期に一度、全体を見直す。 依頼側の課題の傾向が変わっていれば、順番と選択を変える。
更新の手間は、案件ごとに一枚を足すだけです。溜まった一枚が、次の案件の材料になります。
ポートフォリオが無くても始められる形
副業を始めたばかりで、ポートフォリオに入れる案件が無い。その場合の始め方です。
本業の実績を、一枚にする。 本業で担った課題・打ち手・変化を、守秘を守って一枚に。副業か本業かは、依頼側にとって関係ない。
見本用の成果物を作る。 架空の会社を想定して、スカウトの文面、対象の基準、面接の観点を作る。「見本用に作成」と明示。質は伝わる。
進め方の型と、得意領域と、依頼側に求めることを、一枚に。 案件が無くても、これは書ける。「こう進めます、これが得意です、これをお願いします」。考えの具体性が、実績の代わりになる。
最初の案件を、ポートフォリオを作る案件として受ける。 小さく、範囲を絞って、変化を出せる案件を。終わったときに、一枚目ができる。
依頼側に、率直に伝える。 「副業としての実績はまだ無いが、本業でこういう課題を解いた。御社の課題なら、こう進める」。実績の無さを隠すより、考えの具体性で。
ポートフォリオは、あれば有利ですが、無いと始められないものではありません。見本と考えで始めて、一件目で一枚目を作ります。
エラベルの見解
担当する側から見ると、ポートフォリオで最も困るのは「成果物の見本が、守秘を破っている」ことです。前職の会社名が残っている文面、候補者の氏名が読める記録、依頼先の数字がそのまま。見せられた側は、「この人は、うちの情報も次の依頼側に見せるのでは」と感じます。ポートフォリオの質より、守秘の意識が疑われます。
守秘を守った見本は、固有名詞と数字を伏せても、質は伝わります。伏せる手間を惜しんで、そのまま見せることは、信頼を失います。
受ける側にできるのは、見本を作るときに「この見本を、前の依頼先に見せても問題ないか」を自分に問うことです。問題があるなら、伏せるか、見本用に作り直す。それが、依頼側に「守秘を守る人」と見られる条件です。
まとめ
- 職務経歴書は何をしてきたか、ポートフォリオはどうやってきたか。両方あると依頼側の判断が速い
- 入れるのは課題と変化(案件ごとに一枚)・成果物の見本・進め方の型・得意領域と得意でない領域・依頼側に求めること
- 守秘は固有名詞と個人名を伏せ・業種を抽象化し・数字は比率に・了承を得て・使えなければ見本用に作る
- 形式はPDF、三〜五枚、一枚は課題・打ち手・変化、依頼側の課題に近い順、汎用版と依頼側向けの版
- 更新は案件が終わるたびに一枚足し・古いものは下か外し・見本を入れ替え・得意を更新し・四半期に全体を見直す
- 無くても本業の一枚・見本用の成果物・進め方と得意と求めること・一件目で一枚目を作る・率直に伝えるで始められる
- 見本は「前の依頼先に見せても問題ないか」を問う
よくある質問
人事の副業で、ポートフォリオは本当に要りますか
無くても始められますが、あると依頼側の判断が速くなります。特に、成果物の見本(スカウトの文面、面接の観点など)は、口頭では伝わらない質を、一枚で伝えます。職務経歴書だけでは、「経験はある」までしか伝わらず、「質はどうか」を面談で確かめられることになります。
成果物を見せたいのですが、守秘が心配です
会社名・役割の固有名詞・個人名を伏せ、数字は比率に、業種は抽象化してください。文面の構造と言葉づかい、基準の作り方、面接の観点は、伏せても残ります。依頼先の了承が得られるなら得ておきます。使えなければ、架空の会社を想定した見本用を作り、「見本用に作成」と明示します。
ポートフォリオを、いつ依頼側に見せればよいですか
依頼側の課題を聞いてから、合う案件を選んで送る形が、最も響きます。最初の連絡で職務経歴書と一緒に汎用版を送り、面談の前に依頼側の課題に合わせた版を送り直す、という二段階も一つの形です。面談で画面に出して、成果物の見本を見せながら話すと、質が伝わります。