開業届を出すべきか|人事の副業が「事業」に当たるかで決まる
人事の副業を始めると、「開業届を出したほうがいいのか」で迷う人が多くいます。開業届を出すと何かが変わるのか、出さないと問題があるのか、周りに聞いても答えがばらばらなことがよくあります。結論から書くと、開業届は事業所得などを生じる「事業」を始めたときに出すもので、出すべきかどうかは、副業がその「事業」に当たるかどうかで決まります。会社員が業務委託で少しずつ受ける人事の副業は、事業ではなく雑所得として扱われることも多く、その場合は届出の対象にならないと考えられます。
以下は条文と国税庁の案内に沿った一般的な整理です。副業の所得が事業所得と雑所得のどちらに当たるかは、個別の実態で判断されます。具体的な判断は税務署や税理士にご確認ください。
開業届は何のための届出か
所得税法第229条は、国内で新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始した場合などに、その旨を記載した届出書を、その事実があった日の属する年分の確定申告期限までに税務署長に提出しなければならないと定めています。これがいわゆる開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)です。
国税庁のタックスアンサーNo.2090でも、個人事業の開業・廃業等届出書は、新たに事業を開始したときなどの手続で、提出期限は事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までと案内されています。
ここで大事なのは、条文が対象にしているのが「事業所得を生ずべき事業」だという点です。副業の収入があるだけで、開業届が要るとは限りません。副業の所得が事業所得に当たるかどうかが、最初の分かれ目になります。
副業の所得は事業所得か雑所得か
国税庁のタックスアンサーNo.1500は、雑所得の例として副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)を挙げています。そして、業務に係るものとは、副業に係る収入のうち営利を目的とした継続的なものをいう、と注記しています。会社員が本業の合間に業務委託で受ける副業は、継続して報酬を得ていても、雑所得として扱われることがあるということです。
一方で、副業の規模が大きくなり、独立した事業として営んでいると言える実態があれば、事業所得に当たることもあります。人事の副業に当てはめると、判断の材料になりそうなのは次のような点です。
| 見られる点 | 雑所得寄り | 事業所得寄り |
|---|---|---|
| 収入の規模 | 本業の給与に比べて小さい | 生計を支える規模になっている |
| 時間の使い方 | 本業の合間に受けている | 副業に多くの時間を割いている |
| 帳簿 | 簡単な記録だけ | 取引を帳簿に記録し、書類を保存している |
| 営業の仕方 | 声がかかった案件を受ける | 自分で案件を探し、継続的に取引先を増やしている |
この表は判断の目安を並べたもので、どれか一つで決まるものではありません。国税庁は事業所得と雑所得の区分について細かな考え方を示していますが、最終的には個別の実態で判断されます。どちらに当たるか迷う場合は、確定申告の前に税務署や税理士に相談してください。所得の区分によって、必要経費の考え方や申告の方法も変わります。
エラベルの見解
担当者として登録している人の中には、副業を始めた初月に開業届を出す人もいれば、数年たっても出していない人もいます。どちらが正しいかは、その人の副業の実態によって変わります。ただ、担当する側から見て一つ言えるのは、開業届を出したからといって、副業がうまくいくわけではないということです。
開業届は、事業を始めたという事実を税務署に知らせる届出です。案件が増えるわけでも、単価が上がるわけでもありません。開業届を出す前に考えてほしいのは、副業をどの規模で続けたいかです。月に数件を本業の合間に受けるのか、いずれ独立を視野に事業として育てたいのか。その答えによって、事業所得として扱うべきかどうか、開業届を出すかどうかの判断が変わります。
開業届と青色申告の関係
開業届を出すかどうかを考えるときに、あわせて出てくるのが青色申告です。国税庁のタックスアンサーNo.2070は、青色申告ができるのは不動産所得、事業所得、山林所得のある人としています。つまり、副業の所得が雑所得なら、青色申告の対象にはなりません。
青色申告を選ぶには、青色申告承認申請書を提出します。国税庁の案内では、提出期限は原則として青色申告をしようとする年の3月15日まで、その年の1月16日以後に新たに事業を開始した場合は、事業開始の日から2か月以内とされています。開業届と同時に出す人が多いのはこのためです。青色申告の判断は青色申告にする基準で詳しく書いています。
出す前に確かめること
開業届を出すかどうかを決める前に、次の点を確かめてください。
- 副業の所得が事業所得に当たりそうか。 規模、時間、帳簿、営業の仕方から考え、迷うなら税務署や税理士に相談する
- 本業の会社の規程。 副業の届出や許可の扱い、競業の制限を就業規則で確認する
- 青色申告をするか。 事業所得として青色申告をするなら、承認申請書の期限を逃さない
- 帳簿をつけられるか。 事業所得として申告するなら、取引の記録と書類の保存が前提になる
国税庁の案内では、届出の提出先は所轄の税務署とされています。都道府県の税事務所などへの届出が必要になる場合もあるとされているので、各行政機関の案内もあわせて確認してください。確定申告の全体の流れは確定申告の進め方にまとめています。
エラベルの見解
開業届を出すと、屋号を名乗れるようになり、仕事用の銀行口座を屋号付きで作れる場合があります。副業でも「事業として受けている」という形が見えるので、依頼側に安心感を与えることがあります。ただし、これも副業の実態が事業と言えることが前提です。
逆に、副業の収入が小さいうちに形だけ整えても、帳簿と申告の手間が増えるだけになることがあります。担当する側から見ておすすめしているのは、最初の1年は記録をつけながら様子を見ることです。依頼先、請求額、かかった費用を毎月まとめておけば、1年後に事業として育てるかどうかの判断材料になります。その時点で事業所得として申告するのが妥当だと判断できれば、開業届を出せばよいのです。
まとめ
- 開業届は、事業所得などを生ずべき事業を始めたときに出す届出(所得税法第229条)
- 提出期限は、事業を始めた年分の確定申告期限まで(国税庁No.2090)
- 会社員の副業の所得は、雑所得として扱われることも多い。その場合は届出の対象にならないと考えられる
- 青色申告は事業所得などがある人が対象。承認申請書には別の期限がある
- 迷うなら、記録をつけながら様子を見て、税務署や税理士に相談してから決める
よくある質問
開業届を出さないと罰則はありますか
開業届は、事業所得などを生ずべき事業を始めた場合に提出が求められる届出です。副業の所得が雑所得なら対象にならないと考えられます。事業所得に当たるかどうか迷う場合は、税務署や税理士に確認してください。いずれにしても、所得の申告は別に必要です。
開業届を出すと本業の会社に知られますか
開業届は税務署に出す届出です。本業の会社への届け出は、税務の届出とは別に、会社の就業規則に従って行う必要があります。副業の扱いは会社の規程を確認し、必要な届け出を済ませてから始めることをおすすめします。
開業届を出したら、副業をやめるときはどうしますか
事業を廃止したときは、同じ個人事業の開業・廃業等届出書で廃業の届出を行います。国税庁の案内でも、事業を廃止したときの手続として同じ届出書が挙げられています。青色申告をしていた場合は、取りやめの手続もあわせて確認してください。
- e-Gov法令検索「所得税法」(第229条)
- 国税庁 タックスアンサー No.2090 新たに事業を始めたときの届出など
- 国税庁 タックスアンサー No.1500 雑所得
- 国税庁 タックスアンサー No.2070 青色申告制度
本記事は 2026-10-16 時点の公開情報にもとづいて作成しています。
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