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実績を公開してよいか|「依頼側の了承」「粒度」「候補者の情報」の三つで線を引く
副業で、依頼側の採用を支援し、成果が出た。この実績を、次の案件の獲得に使いたい。経歴書に書きたい、ポートフォリオに入れたい、記事や登壇で話したい。しかし、依頼側の会社名、採用の数字、候補者の情報を含む実績は、どこまで公開してよいのか。結論を先に書くと、実績の公開は、「依頼側の了承」「公開する粒度」「候補者の情報」の三つで線を引きます。了承があれば会社名まで、無ければ業種と規模まで。数字は比率に、成果物は固有名詞を伏せて。候補者の情報は、どの場合も出さない。この線を守れば、実績は公開でき、信頼も保てます。実績の示し方は実績の示し方に、ポートフォリオはポートフォリオの作り方にまとめています。契約上の守秘の範囲と、個人情報の扱いは、この記事では一般的な整理にとどめ、個別の判断は専門家にご確認ください。
公開の線を三つで引く
実績の公開は、三つの線で判断します。
一.依頼側の了承。 依頼側が、実績の公開を了承しているか。了承の範囲(会社名を出してよいか、数字を出してよいか、成果物を見せてよいか)。契約の守秘の条項と、依頼側の意向の両方。
二.公開する粒度。 会社名か、業種と規模か。実数か、比率か。成果物そのものか、抽象化したものか。粒度が細かいほど、依頼側の情報が特定されやすい。
三.候補者の情報。 候補者の氏名、経歴、辞退の理由、面談での発言。これは、依頼側の了承があっても、候補者本人の情報であり、公開しない。
三つの線を、実績ごとに確認します。線の内側なら公開でき、外側なら公開しない。迷うなら、粒度を粗くするか、公開しない。
依頼側の了承の取り方
依頼側の了承は、次の手順で取ります。
契約時に、実績の公開について聞いておく。 「契約が終わった後、実績として、業種と規模と課題と変化を、会社名を伏せて公開してよいか」。契約時に聞けば、後で聞くより通りやすい。
了承の範囲を、具体的に。 「会社名を出してよいか」「数字を出してよいか(実数か比率か)」「成果物(文面、面接の観点など)を見本として見せてよいか」「どの場(経歴書、ポートフォリオ、発信)で」。範囲を分けて聞く。
書面で残す。 メールで「〇〇の範囲で公開してよい、と伺いました」と確認。口頭の了承は、後で「言った」「言わない」になる。
公開する前に、内容を見せる。 了承があっても、公開する実績の一枚を、依頼側に見せてから公開する。「この形で公開します」。依頼側が「ここは伏せてほしい」と言えば、直す。
契約の守秘の条項を確認する。 契約に守秘の条項があれば、実績の公開がその範囲に触れないか。触れるなら、了承があっても、条項の扱いを専門家に確認。
了承が変わることを想定する。 依頼側の担当者が替わる、依頼側の状況が変わる。了承が撤回されたら、公開を止める。
了承は、依頼側との信頼の上に成り立ちます。了承なしに公開すれば、依頼側との関係が終わるだけでなく、「守秘を守らない人」として、次の依頼側からも警戒されます。
公開する粒度
了承の範囲に応じて、粒度を決めます。
| 要素 | 了承あり(会社名可) | 了承あり(会社名不可) | 了承なし |
|---|---|---|---|
| 会社 | 会社名 | 業種と規模 | 業種と規模(特定されない範囲で) |
| 課題 | 具体的に | 具体的に | 一般化して |
| 打ち手 | 具体的に | 具体的に | 一般化して |
| 変化 | 実数(了承の範囲で) | 比率、前後の変化 | 比率、または「改善した」 |
| 期間 | 実際の期間 | 実際の期間 | おおよそ |
| 成果物 | 固有名詞を伏せて見本に | 固有名詞を伏せて見本に | 見本用に作り直す |
| 自分の関与 | 正確に | 正確に | 正確に |
「了承なし」の場合も、業種と規模と課題・打ち手・変化の一般化した形なら、依頼側が特定されない範囲で公開できることが多い。ただし、業種と規模で特定される(その業種でその規模の会社が一つしか無い)なら、さらに粗く。
数字は、了承があっても、実数より比率が安全です。「面談設定が〇件から〇件に」は、会社の採用の規模を示し、特定の材料になります。「面談設定が倍に」なら、規模は示されません。
候補者の情報の扱い
候補者の情報は、依頼側の了承に関係なく、公開しません。
氏名、経歴の詳細。 出さない。「〇〇の経験を持つ候補者」程度の抽象化でも、依頼側の採用と組み合わせると特定されることがある。
辞退の理由、面談での発言。 「候補者が〇〇と言った」は、候補者本人の情報。公開しない。傾向として「条件を理由にした辞退が多かった」程度なら、個人が特定されない範囲で。
候補者とのやり取りの文面。 返信の内容、日程調整のやり取り。公開しない。
候補者の数に関わる情報。 「〇名に送って〇名が返信」は、候補者の個人情報ではないが、依頼側の採用の規模を示す。比率に。
成果物の見本に、候補者の情報が残っていないか確認。 スカウトの文面の見本に、実際の候補者の経歴の記述が残っていることがある。見本用に、架空の経歴に書き換える。
候補者の情報の扱いは、契約の守秘だけでなく、個人情報の扱いに関わります。判断に迷う場合は、専門家にご確認ください。
エラベルの見解
相談で最も多い失敗は、「依頼側の了承を取らずに、会社名と数字を経歴書に書いた」というものです。次の依頼側との面談で、その経歴書を見せた。次の依頼側が、前の依頼側と同じ業界で、「〇〇社の採用の数字を、こんなに詳しく外に出すのか」と警戒した。前の依頼側にも伝わり、関係が終わった。了承を取り、粒度を業種と規模と比率にしていれば、実績は伝わり、信頼も保てました。
見ていて差がつくのは、受ける側が「公開の線を、契約時に依頼側と決めている」かどうかです。契約が終わってから「公開してよいか」と聞く人と、契約時に「終わった後、この範囲で公開してよいか」と合意する人がいます。後者は、実績を安心して使え、依頼側との関係も保てます。
受ける側にできるのは、契約時の合意の項目に「実績の公開の範囲」を入れることです。条件のすり合わせで決めることの八つに、九つ目として。
公開の場ごとの違い
公開の場によって、線の引き方が少し違います。
経歴書(依頼側に個別に送る)。 読む相手が限られる。了承の範囲で、会社名を出せる場合は出してもよい。ただし、次の依頼側が前の依頼側と同じ業界なら、業種と規模に。
ポートフォリオ(依頼側に個別に送る)。 経歴書と同じ。成果物の見本は、固有名詞を伏せて。
発信(記事、SNS、登壇)。 不特定多数が読む。会社名は、明示的な了承がある場合だけ。数字は比率に。成果物は見本用に作り直す。候補者の情報は一切出さない。発信は、依頼側にも候補者にも届く可能性がある前提で。
窓口への登録(案件の紹介を受けるための登録)。 窓口が依頼側に見せる範囲を確認。窓口の運営者に、公開の範囲を伝える。
口頭(面談での説明)。 記録に残らないが、聞いた側は覚えている。書面と同じ線で。
場が広いほど、粒度を粗くします。経歴書で会社名を出せても、発信では業種と規模に。
了承が得られないときの代わり
依頼側の了承が得られない、または依頼側に聞けない(契約が終わって連絡が取れない)場合の代わりです。
業種と規模と、一般化した課題・打ち手・変化で。 依頼側が特定されない範囲で。「〇〇業界の中堅企業で、スカウトの返信率が低い課題に対して、対象の基準と一段落目を変え、面談設定が改善した」。
成果物は、見本用に作り直す。 実際の成果物ではなく、架空の会社を想定して作った見本。「見本用に作成」と明示。
進め方の型で示す。 実績の詳細ではなく、「こういう課題には、こう進める」という型。型は、依頼側の情報を含まない。
本業の実績で。 本業の実績を、本業の会社の守秘の範囲で。副業の実績が使えなくても、本業の実績は別。
了承が得られる次の案件で、実績を作る。 契約時に公開の範囲を合意した案件で、公開できる実績を作る。
了承が得られない実績を、無理に公開しないことです。公開できる実績は、これから作れます。
エラベルの見解
担当する側から見ると、実績の公開で最も困るのは「候補者の情報が、実績の中に残っている」ことです。スカウトの文面の見本に、実際の候補者の経歴の記述が残っている。「〇〇の立ち上げをされた」と、候補者の経歴が読める。依頼側の了承を取っていても、候補者本人の了承は取れません。候補者が見れば、自分の情報が公開されていると分かります。
候補者の情報は、依頼側の情報とは別に、公開しない線を引きます。見本を作るときは、実際の候補者の記述を、架空の記述に書き換える。
受ける側にできるのは、公開する前に、「この中に、候補者の情報が残っていないか」を確認することです。依頼側の了承の確認と、候補者の情報の確認は、別の確認です。
まとめ
- 公開の線は依頼側の了承・公開する粒度・候補者の情報の三つ
- 了承は契約時に聞き・範囲を具体的に・書面で残し・公開前に見せ・守秘の条項を確認し・撤回を想定
- 粒度は了承の範囲で会社名/業種と規模・実数/比率・成果物は固有名詞を伏せる/見本用に作り直す。数字は比率が安全
- 候補者の情報は、了承に関係なく公開しない。氏名・経歴・辞退の理由・発言・やり取り・見本に残る記述
- 場が広いほど粒度を粗く。経歴書とポートフォリオは了承の範囲で、発信は業種と規模と比率で
- 了承が無ければ一般化した形・見本用の成果物・進め方の型・本業の実績・次の案件で作る
- 契約時の合意に実績の公開の範囲を入れる。守秘と個人情報の扱いは専門家に確認
よくある質問
依頼側の会社名を、経歴書に書いてよいですか
依頼側の明示的な了承があれば、経歴書(個別に送るもの)には書けることがあります。契約時に「会社名を出してよいか」を聞き、書面で残してください。了承が無い、または契約の守秘の条項に触れるなら、業種と規模で。次の依頼側が前の依頼側と同じ業界なら、了承があっても業種と規模にするほうが、警戒されません。
「面談設定が〇件から〇件に」と、実数で書いてよいですか
了承の範囲で実数を出せる場合もありますが、実数は依頼側の採用の規模を示し、特定の材料になります。「面談設定が倍に」「返信率が〇割改善」のように、比率や前後の変化で書くほうが安全で、規模に関係なく伝わります。発信(記事、SNS)では、比率に。
契約が終わって、依頼側に連絡が取れません。実績を公開できますか
依頼側の了承が取れないなら、業種と規模と一般化した課題・打ち手・変化の形で、依頼側が特定されない範囲で。成果物は見本用に作り直します。契約の守秘の条項があれば、その範囲に触れないかを専門家にご確認ください。今後の案件では、契約時に公開の範囲を合意しておくと、この問題は起きません。