採用代行 / 採用の課題

競合の採用状況をどう調べるか|「調査」を外注する前に、公開の求人票・候補者・紹介会社・入社した人の四つから、自分で集める

公開 2026-09-13

同じ職種の候補者を、競合と取り合っている。競合がどんな条件を出し、どんな求人票を書き、どの経路で採っているかを知りたい。ただ、調べ方が分からない。調査会社に頼むと費用がかかり、頼んでも自社の採用に使える形で返ってくるか分からない。結論を先に書くと、競合の採用状況は、「調査」として外注する前に、四つの情報源から自分で集められます。公開されている求人票、面接と辞退で候補者が語ること、紹介会社と媒体の担当者が知っていること、競合から入社した人が知っていること。四つを、目的を絞って集め、自社の判断(条件、求人票、経路、訴求)に使います。全部を知る必要はなく、自社が変える項目に関わることだけを集めます。他社との比較の考え方は他社と比べて自社が良いのか分からないに、競合と候補者を取り合う場面は競合と候補者が取り合いになるにまとめています。

競合の採用状況が分からない構造

競合の採用状況が分からないのは、次の構造で起きます。

構造起きていること
「調査」を大きく考えている調査会社に頼む、全競合を網羅する、と考えて、着手できない
目的が無い「競合を知りたい」だけで、何のために、何を知りたいかが無い
情報源を知らない公開の求人票、候補者、紹介会社、入社した人、という身近な情報源を使っていない
候補者に聞いていない面接で「他にどこを受けていますか」を聞かず、辞退の理由で「他社」の中身を聞かない
紹介会社に聞いていない紹介会社は競合の求人も扱っている。「決まりやすい他社との違い」を聞けば答える
競合から入社した人に聞いていない社内に、競合を知っている人がいるのに、聞いていない
集めても整理していない断片の情報が、人事の頭の中に散らばっている
自社の判断に使っていない「競合はこうらしい」で終わり、自社の条件や求人票に反映していない

構造の大半は、「身近な情報源を使っていない」ことと「目的が無い」ことです。

調べる目的の絞り方

「競合を知りたい」を、「何のために、何を知りたいか」に絞ります。

目的知りたいこと使う先
条件が市場と合っているか競合の年収の幅、内訳、働き方の制度条件の見直し(提示年収が市場と合っていない
求人票で差をつけたい競合の求人票の一行目、役割の書き方、訴求求人票の書き直し
経路を見直したい競合がどの媒体、どの経路で採っているか経路の選び方(どの媒体を使えばよいか分からない
辞退を減らしたい辞退した候補者が選んだ競合と、その理由訴求と条件と速さの見直し
選考で勝ちたい競合の選考の速さ、回数、面接の印象選考の設計
訴求を作りたい競合が言っていること、言っていないこと「良さ」の言葉(他社と比べて自社が良いのか分からない

目的を一つか二つに絞れば、集める情報も絞れます。「条件が市場と合っているか」なら、競合の求人票の条件の欄と、紹介会社の見立てと、辞退の理由の「他社の条件」で足ります。

「全部を知る」は、目的ではありません。

四つの情報源

競合の採用状況を集める、四つの情報源です。

情報源何が分かるか集め方注意
一、公開の求人票条件の幅、要件、役割の書き方、訴求、経路(どの媒体に出しているか)、更新の頻度媒体で同じ職種を検索。競合の採用サイトを見る。定期的に公開情報のみ。数字を資料に載せる場合は出典を明記
二、候補者他にどこを受けているか、他社の選考の速さと印象、辞退の理由(他社の条件、役割、対応)面接で「他に受けている会社はありますか(差し支えなければ)」。辞退の連絡で「理由を伺えますか」候補者に無理に聞かない。他社の機密を聞き出さない
三、紹介会社と媒体の担当者競合の求人の条件と要件、決まりやすい他社との違い、候補者が競合をどう見ているか、市場の水準「同じ職種で、決まりやすい他社は、どこが違いますか」「この条件で該当者はいますか」担当者が答えられる範囲で。守秘の範囲は担当者の判断
四、競合から入社した人競合の実態(役割、働き方、選考、良いところ、劣るところ)、候補者から見た自社と競合の違い「前の会社と比べて、うちの良いところと劣るところは」「前の会社の採用はどうだったか」前職の機密や個人情報を聞かない。本人が話せる範囲で

四つの要点は、「全部が身近で、費用がかからない」ことです。調査会社に頼む前に、四つを集めれば、自社の判断に要る情報の大半は揃います。

四つの中で、最も具体的なのは「二、候補者」と「四、入社した人」です。公開の求人票は「書いてあること」で、候補者と入社した人は「実態」を語ります。

集めた情報の整理

集めた情報を、項目ごとに整理します。

項目自社競合A競合B情報源
年収の幅と内訳公開の求人票、紹介会社
働き方(リモート、時間、休日)公開の求人票、候補者、入社した人
役割の書き方(一行目、裁量)公開の求人票
要件(必須と歓迎)公開の求人票
経路(どの媒体、スカウト、紹介)公開の求人票、紹介会社
選考の速さと回数候補者、入社した人
面接の印象候補者、入社した人
訴求(何を前に出しているか)公開の求人票、採用サイト
辞退の理由で選ばれた点辞退した候補者
実態(良いところ、劣るところ)入社した人

整理の要点は、「情報源を書く」ことです。「公開の求人票に書いてあること」と「候補者が語ったこと」と「入社した人が語ったこと」は、確からしさが違います。

競合は、二〜三社に絞ります。「同じ職種で、候補者が同時に受けている会社」。全競合を網羅する必要はありません。

分からない項目は、「分からない」のまま。推測で埋めません。

エラベルの見解

相談で最も多い失敗は、「競合の採用状況を知りたいと、調査会社に頼んで報告書を受け取ったが、市場の一般的な傾向が書かれているだけで、自社の求人票も条件も変わらなかった」というものです。目的が無く、自社の判断に使える形ではありませんでした。目的を「辞退を減らす」に絞り、辞退した候補者に「どの会社の、何が決め手でしたか」と聞き、紹介会社に「決まりやすい他社との違い」を聞き、競合から入社した人に「前の会社と比べて」と聞いたら、競合が「内定までの速さ」で勝っていると分かり、内定の判断を三日にしたら、辞退が減りました。報告書ではなく、身近な三つの声でした。

見ていて差がつくのは、担当者が「候補者と紹介会社と入社した人に聞く」かどうかです。「競合の調査をしましょう」と外部の調査を提案する担当者と、「まず、辞退した候補者と紹介会社と競合から入社した人に、三つの質問をしましょう。それで自社の判断に要る情報の大半が揃います」と、身近な情報源から入る担当者がいます。後者は、費用をかけずに、自社に使える情報を集めます。

発注側にできるのは、「競合を調べたい」の前に、「辞退した候補者に理由を聞いているか」を確認することです。

自社の判断への使い方

集めた情報を、自社の判断に使います。

条件。 競合の年収の幅と自社の幅を比べ、下なら、上げるか、上げずに他で補うかを判断。提示年収が市場と合っていない

求人票。 競合の一行目と役割の書き方を見て、自社の求人票が「同じに見える」なら、差をつける。競合が言っていないことで、自社にあること(役割の裁量、選考の速さ、働き方の実態)を前に出す。

経路。 競合が出している媒体に、自社も出すべきか(同じ候補者がいる)、出さないべきか(競合が多く埋もれる)を、記録で判断。

選考の速さ。 競合が「三週間で内定」なら、自社が「五週間」では負ける。速さを合わせるか、上回る。

訴求。 競合が「成長」を前に出しているなら、自社は「裁量」や「人」で差をつける。同じ訴求で並ぶと、知名度で負ける。

辞退の対策。 辞退の理由で競合が選ばれた点(条件、速さ、知名度、役割)を、直せるものから直す。

面接での答え。 「他社と比べて」と聞かれたとき、競合の事実を知っていれば、「〇〇では届かないが、△△ではこうです」と項目で答えられる。

使い方の要点は、「競合を真似る」ではなく、「競合と同じに見えないようにする」ことです。同じ条件、同じ訴求、同じ経路で並べば、知名度の大きい競合が勝ちます。

やってはいけないこと

競合の採用状況を調べるときに、やってはいけないことがあります。

競合の機密を、聞き出す。 候補者や入社した人に、前職の機密(顧客、売上、内部の情報)を聞かない。採用の状況(条件、選考の流れ、求人票)の範囲で。

候補者に、無理に聞く。 「他にどこを受けているか」は、「差し支えなければ」で。答えたくない候補者には、聞かない。

入社した人に、前職を悪く言わせる。 「前の会社と比べて」は、良いところと劣るところの両方を。前職を否定させる形は、本人の信用と自社の品位を損なう。

競合の求人票を、写す。 公開の求人票を見て、文面を写すことは、著作権の問題と、候補者からの「同じに見える」の両方で問題。参考にし、自社の言葉で書く。

競合の社員に、不正な方法で接触する。 競合の社員から情報を得るために、偽って接触する、社員を引き抜く目的で調査する、などは、法令上と倫理上の問題。専門家に確認。

競合の情報を、社外に出す。 集めた情報は、自社の採用の判断のためだけに。社外や候補者に「競合はこうだ」と言わない。

競合の悪口を、候補者に言う。 「他社は〇〇が悪い」は、候補者からの信用を失う。自社の事実だけを語る。

推測を、事実として扱う。 「競合はたぶんこうだろう」を、条件や求人票の判断の根拠にしない。

やってはいけないことの要点は、「公開の範囲と、本人が話せる範囲で、自社の判断のためだけに」です。

続ける運用

競合の採用状況は、変わります。続けて集める運用です。

三か月に一度、公開の求人票を見る。 同じ職種で検索し、競合の条件、要件、訴求、経路の変化を見る。

面接で、「他に受けている会社」を聞く型を持つ。 面接官向けの一枚に、「差し支えなければ、他に受けている会社は」を入れる。答えを記録。

辞退の理由を、「どの会社の、何が決め手か」まで聞く。 「他社」で終わらせない。記録。

紹介会社との月次の連絡で、「市場の変化」を聞く。 「最近、決まりやすい会社の傾向は」「条件の水準は変わったか」。

競合から入社した人に、入社一か月で聞く。 「前の会社と比べて」。本人の同意のうえで、記録。

整理の表を、三か月ごとに更新する。 項目ごとに、変化を記録。

自社の判断に、反映する。 「競合が内定までの速さを上げた→自社も」「競合が条件を上げた→自社の条件を見直すか、他で補うか」。

集める担当を、決める。 人事か、採用代行の担当者。「誰かが集める」では、集まらない。

運用の要点は、「候補者と紹介会社と入社した人から、定例で聞く」ことです。定例の型があれば、競合の状況は自然に溜まります。

外注する場合の範囲

競合の採用状況を調べる問題を、採用代行に出す場合の範囲です。

出せる工程。 調べる目的の絞り込み、四つの情報源からの収集の設計、公開の求人票の定期の確認と整理、面接で聞く型の面接官への共有、辞退の理由の深掘りの聞き取り、紹介会社と媒体の担当者への聞き取り、競合から入社した人への聞き取り(同意のうえで)、整理の表の作成と三か月ごとの更新、自社の判断への落とし込みの案(条件、求人票、経路、速さ、訴求)、やってはいけないことの一覧の共有。

社内に残す判断。 目的の決定、条件と求人票と経路の変更の決定、公開の範囲、入社した人への聞き取りの可否、競合の社員への接触に関する方針(法令上と倫理上の扱いは専門家に確認)。

外注の効きどころ。 競合の採用状況は、「身近な情報源から、定例で集める」ことで溜まりますが、社内では「調査」として大きく捉えて着手できないことが多い領域です。担当者が四つの情報源からの収集を定例にし、整理し、自社の判断に落とせば、費用をかけずに、自社に使える情報が溜まります。担当者は複数の会社の採用を見ているので、「この職種で、決まりやすい会社の傾向」の見立てを持ち込めます。ただし、他社の情報は、担当者も公開の範囲と本人が話せる範囲で扱います。

外注しても動かない場合。 目的を「全部知りたい」から絞らない、集めた情報を条件や求人票に反映しない、面接官が「他に受けている会社」を聞かない。社内の判断で、代行を替えても直りません。

競合の採用状況は、身近な四つの情報源から、目的を絞って集めれば、自社の判断に使えます。外注は、収集を定例にし、判断に落とす手段です。

エラベルの見解

担当する側から見ると、競合の相談で最も多いのは、「辞退の理由を『他社』で終わらせている」ことです。「他社に決まりました」と言われて、「そうですか」で終わる。「どの会社の、何が決め手でしたか」と一段聞けば、競合の条件、速さ、訴求が、候補者の言葉で分かります。

辞退した候補者は、競合と自社の両方を実際に受けた、最も確かな情報源です。調査会社の報告書より、辞退した候補者の一言のほうが、自社の判断に使えます。

発注側にできるのは、辞退の連絡を受ける担当者に、「どの会社の、何が決め手か」を聞く型を渡すことです。

まとめ

よくある質問

競合の採用状況を、調査会社に頼むべきですか

頼む前に、四つの身近な情報源(公開の求人票、面接と辞退で候補者が語ること、紹介会社と媒体の担当者、競合から入社した人)から集めます。費用がかからず、自社の判断に直接使える情報が集まります。調査会社の報告書は、市場の一般的な傾向が中心で、「自社の求人票の一行目をどう変えるか」には使いにくいことがあります。四つを集めたうえで、それでも足りない情報(市場全体の水準など)があれば、その部分だけを外部に頼みます。

候補者に「他にどこを受けていますか」と聞くのは、失礼ではないですか

「差し支えなければ」を添えて聞けば、失礼にはなりません。答えたくない候補者には、聞きません。候補者が複数社を受けているのは当然で、聞くこと自体が「候補者の状況を理解しようとしている」と受け取られることもあります。聞いた情報は、自社の採用の判断(速さ、訴求、条件)に使うためだけで、候補者に「他社はこうだ」と言ったり、他社の悪口を言ったりはしません。

競合の求人票が良くできているので、参考にしたいです

参考にするのは構いませんが、文面を写すことは、著作権の問題と、候補者からの「同じに見える」の両方で問題です。競合の求人票を見て、「何を前に出しているか」「何を言っていないか」を整理し、競合が言っていないことで自社にあること(役割の裁量、選考の速さ、働き方の実態、一緒に働く人)を、自社の言葉で前に出します。同じ訴求で並ぶと、知名度の大きい競合が勝ちます。差をつけるのが目的で、真似るのが目的ではありません。