採用代行 / ATS(採用管理システム)の運用
ATS(採用管理システム)の運用は代行に出せるか|任せる範囲の切り分け方
「ATSを入れたが更新が止まっていて、運用ごと代行に出したい」という相談は、導入から数か月たった会社に多くあります。出せます。ただ、ATSが止まる原因は「更新する人がいない」だけでなく、「どの情報をATSに集約するか」「面接官はどこまで使うか」「スプレッドシートを残すか」が決まっていないことにあり、そこは外に出しても決まりません。運用を外に出すなら、決めることと回すことを分けて、決めることは会社が先に済ませます。結論を先に書くと、ATSの運用は、「集約先と運用ルールの決定」「ユーザーの追加と削除」「設定変更の承認」「個人情報の方針」「契約」「やめるかどうかの判断」は会社が持ち、「初期設定と運用設計の案・毎日の応募者の登録と段階の更新・面接官への判定依頼と未入力の催促・テンプレートによる連絡・集計と報告・面接官向けの手順書と同席・併用しているスプレッドシートの解消」は代行に出せます。使いこなせていないときの直し方はATSを入れたが使いこなせていないときに、渡す権限の考え方は採用代行に渡すATSの権限範囲に書いていますので、ここでは「運用を工程に分けて出す」観点に絞ります。この記事では製品の比較や機能の説明はしません。仕様は提供元の公式情報でご確認ください。
「決める」と「回す」を分ける
ATSの運用を工程に分けると、次のようになります。
一つ目は、どの情報をATSに集約し、何を残さないかを決めることです。応募者の情報、選考の段階、面接の記録、連絡の履歴。スプレッドシートやメールに残す情報があるなら、それも決める。会社が決めます。案は外の人が出せます。
二つ目は、誰がどの権限で使うかを決め、ユーザーを追加・削除することです。人事、面接官、代行。会社が決め、ユーザーの追加と削除は会社が行います。
三つ目は、初期設定です。選考の段階の名前、記録する項目、通知の設定、連絡のテンプレート。設定の案は外の人が作り、会社が承認して反映します。
四つ目は、毎日の更新です。応募者の登録、段階の移動、記録の入力、連絡の送信。外の人ができます。
五つ目は、面接官への判定の依頼と、未入力の催促です。面接の後に判定を入力してもらう依頼、入力されていなければ催促、入力しない面接官の代わりに転記。外の人ができます。
六つ目は、集計と報告です。段階ごとの人数、通過率、経路ごとの結果、止まっている候補者。外の人ができます。
七つ目は、面接官向けの手順書と、最初の数回の同席です。面接官が使う画面を一枚にまとめ、最初は隣で操作を見せる。外の人ができます。
八つ目は、個人情報の方針、契約、やめるかどうかの判断です。会社が決めます。やめる判断の材料(使っている機能、応募の件数、流れとの合い方)は外の人が出せます。
八つのうち、一、二、三の承認、八は会社が持ち、それ以外は外に出せます。
代行に出せる工程と出せない工程
| 工程 | 会社が持つ | 代行に出せる |
|---|---|---|
| 集約する情報と残さない情報 | 決める | 現状の情報の在り処の整理と、集約の案 |
| 権限とユーザー | 決める。追加と削除を行う | 業務から見た必要な権限の案 |
| 初期設定 | 承認する | 段階の名前、項目、通知、テンプレートの案と反映 |
| 毎日の更新 | ― | 登録、段階の移動、記録の入力、連絡の送信 |
| 面接官への依頼と催促 | 面接官に「入力してほしい」と伝える | 依頼、催促、入力しない場合の転記 |
| 集計と報告 | 報告を受けて判断する | 段階ごとの人数、通過率、経路別、止まっている候補者 |
| 面接官向けの手順書と同席 | ― | 一枚の手順書、最初の数回の同席 |
| 個人情報の方針・契約・やめる判断 | 決める | やめる判断の材料 |
表の要点は、「権限とユーザー」の追加と削除が会社の側にあることです。代行が自分でユーザーを増やせる形にすると、誰がATSの中の候補者情報を見られるかを会社が把握できなくなります。代行側の担当者が増えるときは、会社に依頼してもらい、会社が追加します。
もう一つの要点は、「面接官への依頼と催促」です。ATSが止まる原因の一つは、面接官が判定を入力せず、人事が口頭で聞いて回ることです。代行が依頼と催促を持ち、入力しない面接官の代わりに転記する形にすると、記録が揃います。ただし、面接官に「入力してほしい」と伝えるのは会社の役割で、代行からの催促だけでは動かない面接官もいます。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、「ATSの運用を外に出せば、社内の人は何もしなくてよくなる」というものです。実際には、代行が毎日更新しても、面接官が判定を入力せず、人事が集約先を決めずにスプレッドシートを残していれば、ATSは「代行だけが見ている箱」になります。ある会社では、運用を外に出したものの、面接官は従来どおりメールで判定を人事に送り、人事はスプレッドシートで管理を続け、代行はATSに転記するだけになっていました。二重の管理で手間は増え、どちらが正か分からなくなりました。担当者が入り直して、集約先をATSに一本化することを会社が決め、スプレッドシートを止める日を決め、面接官には「判定を書く一つの画面」だけを一枚の手順書で渡し、最初の数回は担当者が隣で見せたところ、二重管理は消え、人事の時間は報告を見るだけになりました。運用を外に出して効くのは、会社が「集約先」と「面接官の使う範囲」を決めた後です。
代行に出したほうがよい状況
次の状況では、ATSの運用を代行に出したほうが進みます。
一つ目は、応募が多く、登録と段階の更新と連絡で人事の時間が取られているときです。毎日の更新を外に出すと、人事の時間が空きます。
二つ目は、面接官の判定がATSに入らず、人事が聞いて回っているときです。依頼と催促と転記を外に出すと、記録が揃います。
三つ目は、ATSとスプレッドシートを併用していて、どちらが正か分からなくなっているときです。集約先を会社が決めたうえで、併用の解消を外に出します。解消の手順は応募者管理がスプレッドシートのままのときにも書いています。
四つ目は、段階ごとの人数や通過率が出せず、どこで止まっているか分からないときです。集計と報告を外に出すと、止まっている段階が見えます。
五つ目は、導入時の担当者がいなくなり、設定を誰も分からないときです。設定の整理と手順書を外に出します。
代行に出さないほうがよい状況
逆に、次の状況では、ATSの運用を外に出しても進みません。
一つ目は、集約先を決めておらず、スプレッドシートを残すつもりのときです。二重管理になります。先に集約先を決めます。
二つ目は、面接官がATSを使うことに合意していないときです。代行が催促しても入力されず、転記だけが増えます。会社から面接官に「判定はこの画面に」と伝えることが先です。
三つ目は、応募が月に数件で、ATSの機能をほとんど使わないときです。運用を外に出す費用が見合いません。ATSをやめてスプレッドシートに戻す判断も含めて考えます。
四つ目は、候補者の個人情報をATSの中で外の人に見せることについて、方針と契約が無いときです。権限の範囲と、見せない情報を決め、契約に入れます。法令に関わる部分は専門家にご確認ください。
担当者の選び方
ATSの運用を任せる担当者は、次の点で選びます。
一つ目は、自社と同じか近いATSの運用経験があるかです。製品ごとに画面と設定が違うので、経験があると立ち上がりが速い。無くても、運用設計の経験があれば対応できます。対応できるかの確認の仕方は自社ATSに対応できるかの確認に書いています。
二つ目は、「毎日使う画面」を絞って手順書にできるかです。機能を全部説明する人ではなく、人事と面接官がそれぞれ使う画面を三つ程度に絞れる人。
三つ目は、面接官への依頼と催促を、面接官が嫌がらない形で回せるかです。
四つ目は、集計を「段階ごとの人数と通過率と止まっている候補者」で出し、会社の判断に使える形で報告できるかです。
五つ目は、権限の範囲を守り、自分でユーザーを増やさない姿勢があるかです。担当者の経歴の見方は担当者の経歴の見方に書いています。
出す前に用意しておくもの
ATSの運用を代行に出す前に、次を用意しておくと、最初の一週間が速くなります。
一つ目は、集約する情報と残さない情報の決定です。ATSに一本化するのか、何かを別に残すのか。
二つ目は、代行に渡す権限の範囲と、見せない情報です。候補者の連絡先、評価コメント、年収など、どこまで見せるか。権限の考え方は採用代行に渡すATSの権限範囲に書いています。
三つ目は、面接官がATSを使うことの合意です。「判定はこの画面に、面接の翌日までに」を会社から面接官に伝えます。
四つ目は、個人情報の方針と、代行との契約です。閲覧の範囲、記録の扱い、契約終了時の権限の削除。法令に関わる部分は専門家にご確認ください。
五つ目は、ATSの提供元の規約で、外部の利用者を追加することに制限が無いかの確認です。仕様は提供元の公式情報でご確認ください。
六つ目は、いまの設定と、併用しているスプレッドシートやメールの一覧です。あれば、担当者は最初に「どこに何があるか」を読めます。
エラベルの見解
担当する側から見ると、ATSの運用で最も効くのは、「面接官が使う画面を一つに絞って一枚の手順書にする」ことと、「毎日の更新の時刻を決める」ことの二つです。前者で面接官の入力が揃い、後者で「ATSを見れば今日の状態が分かる」状態になります。毎朝決まった時刻に応募者を登録し、段階を更新し、止まっている候補者を確認して、人事に一行で報告する。この繰り返しがあると、人事はATSを開かなくても状態が分かります。エラベルでは、ATSの運用を任せる案件で担当者を紹介するとき、最初の一週間で集約先と権限の範囲を会社と確認し、面接官の合意を会社から取ってもらい、設定の案を作って承認を受け、面接官向けの一枚を作り、毎日の更新の型を決めるところまでをお願いしています。ユーザーの追加と削除、設定の承認、個人情報の方針は会社の役割であり、担当者はそれを求める立場にとどめています。
まとめ
- ATSの運用は「決める」と「回す」に分かれる。集約先と運用ルール・権限とユーザーの追加削除・設定の承認・個人情報の方針・契約・やめる判断は会社。設定の案・毎日の更新・面接官への依頼と催促・集計と報告・手順書と同席・併用の解消は代行に出せる
- 運用を外に出して効くのは、会社が集約先と面接官の使う範囲を決めた後
- ユーザーの追加と削除は会社が持つ。代行が自分で増やせる形にしない
- 出したほうがよいのは更新で時間が取られる・面接官の判定が入らない・併用で正が分からない・集計が出ない・設定を誰も分からないとき
- 出さないほうがよいのは集約先を決めていない・面接官が合意していない・応募が月に数件・個人情報の方針と契約が無いとき
- 担当者は同じか近いATSの経験・画面を絞って手順書にできる・面接官への依頼の回し方・判断に使える集計・権限を守る姿勢で選ぶ
よくある質問
代行にATSの管理者権限を渡してよいですか
管理者権限は、ユーザーの追加と削除、設定の変更、全情報の閲覧ができる権限で、会社が持つものです。代行には、業務に必要な範囲(登録、段階の更新、記録の入力、連絡の送信、集計の閲覧)の権限を渡し、設定の変更は案を出してもらって会社が反映するか、会社の承認のもとで代行が反映する形にします。権限の範囲は採用代行に渡すATSの権限範囲に書いています。
面接官が「ATSは面倒だからメールで判定を送る」と言います
面接官に使ってもらう画面を一つに絞り、リンクと書く内容を一枚にして渡し、最初の数回は代行が隣で見せると、多くの面接官は使うようになります。それでも使わない面接官がいる場合は、メールで受けた判定を代行が転記する形にして、記録が揃う状態を優先します。全員が使うことより、記録がATSに揃うことが目的です。
ATSをやめてスプレッドシートに戻すべきか迷っています
応募が月に数件で、使っている機能が段階の管理だけなら、スプレッドシートで足りることがあります。判断の材料は、「使っている機能」「応募の件数」「選考の流れとATSの段階が合っているか」の三つで、代行が整理して出せます。やめるなら、記録を出力し、契約を確認し、戻す先の運用を決めてから止めます。判断は会社が持ちます。