人事副業 / 単価・契約・税務
値上げを申し出るタイミング|「実績が出たとき」ではなく「契約の節目」に、根拠とともに
半年続けて、成果も出ている。最初に決めた報酬が、いまの仕事に見合っていない気がする。でも、「値上げしてほしい」とは言い出しにくい。関係が悪くなるかもしれない、断られたら気まずい。人事の副業で、報酬を上げられないまま続けている人は多くいます。結論を先に書くと、値上げは、「成果が出たから」という実績の主張ではなく、「契約の節目」に「実際の稼働と範囲の変化」を根拠として申し出るものです。節目と根拠があれば、値上げは交渉ではなく、契約の見直しになります。見積もりの型は見積もりの出し方に、範囲の広がりへの対処は安請け合いを避けるにまとめています。この記事では、金額や上げ幅の数値は扱いません。
値上げを考える四つのサイン
次のどれかがあれば、値上げを考える段階です。
一.実際の稼働が、見積もりを上回っている。 契約時に見積もった時間より、実際の時間が多い。時給に直すと、自分の下限を下回っている。
二.業務の範囲が、契約時より広がっている。 「ついでに」が積み重なり、契約に無い業務を担っている。
三.自分の経験と専門性が、契約時より上がっている。 その案件で経験を積み、他の案件でも実績ができ、同じ業務を受けるときの自分の時給が上がっている。
四.依頼側にとっての価値が、契約時より上がっている。 成果が出て、依頼側の採用が進み、自分の業務が依頼側の運用に組み込まれている。替えが利きにくい状態。
一と二は、「いまの報酬が、いまの仕事に見合っていない」というサインです。三と四は、「自分の市場での価値が上がった」というサインです。どちらも、値上げの根拠になりますが、伝え方が違います。
サインが無いのに値上げを申し出ると、「なぜ」に答えられません。サインを、まず自分で確認します。
申し出るタイミング
値上げを申し出るタイミングは、契約の節目です。節目でない時期に申し出ると、「なぜ今」となります。
契約の更新時。 最も自然なタイミングです。更新の一か月前に、「更新にあたって、報酬を見直したい」と申し出ます。更新の直前だと、依頼側の予算が決まっていて動かせません。
業務の範囲が変わるとき。 依頼側から「この業務も」と頼まれたとき。範囲が変わるなら、報酬も変わるのが自然です。「範囲を広げるなら、報酬をこう見直したい」。
成果が確定した後。 採用が決まった、面談数が目標に達した、という節目。成果の直後は、依頼側が自分の業務の価値を最も実感している時期です。ただし、「成果が出たから上げてほしい」と成果を人質にする形にはしません。「成果が出て、運用が安定したので、次の期間の報酬を見直したい」と、次の期間の話として。
立ち上げの期間が終わったとき。 最初の一件を「立ち上げの価格」で受けていた場合、立ち上げが終わった時点で、事前に伝えていた二件目の価格に移ります。これは値上げではなく、約束の実行です。
半期・年度の切り替え。 依頼側の予算の切り替えに合わせると、依頼側は予算に組みやすい。
節目を待つ間に、根拠を整えます。節目が来たときに、根拠とともに申し出ます。
根拠の作り方
値上げの根拠は、事実で作ります。感情や、他の人との比較ではなく、自分の案件の数字です。
実際の稼働の記録。 契約時の見積もりと、実際の時間。工程ごとに。「見積もりでは月〇時間でしたが、実際は〇時間です」。
範囲の変化の記録。 契約時の工程と、いま担っている工程。増えた工程と、それにかかる時間。
成果の記録。 段階ごとの数字(送信・返信・面談設定・内定)の推移。「返信率がこう改善し、面談がこれだけ組めました」。
依頼側の変化。 依頼側の運用に、自分の業務がどう組み込まれているか。「定例会の設計、文面のルール、対象の基準を作り、それが運用の土台になっています」。
市場の変化。 自分の経験が上がり、他の案件で同じ業務をどの水準で受けているか。ただし、他の案件の詳細は言わず、「同じ業務を受ける水準が上がっている」程度に。
根拠は、一枚にまとめます。「契約時→いま」の比較の形が、最も伝わります。
伝え方
根拠を整えたら、伝えます。伝え方で、値上げは交渉にも、見直しにもなります。
節目の一か月前に、書面で。 口頭で突然ではなく、「次の更新にあたって、報酬の見直しをご相談したい」と、事前に書面で。依頼側が社内で検討する時間を作ります。
根拠の一枚を添える。 契約時といまの比較。稼働、範囲、成果。依頼側の担当者が、上司に説明できる形で。
「見直し」の言葉を使う。 「値上げ」ではなく「報酬の見直し」。契約時の前提(稼働、範囲)が変わったので、それに合わせて見直す、という位置づけ。
選択肢を出す。 「報酬をこう見直す」だけでなく、「範囲を契約時に戻す」「一部の業務を御社で担う」という選択肢も。依頼側が、報酬を上げるか範囲を戻すかを選べる形にします。
依頼側への感謝と、続けたい意思を添える。 値上げは、関係を切る話ではなく、続けるための話です。「引き続き担いたいので、続けられる形にしたい」。
期限を決める。 「〇日までにお返事をいただければ」。返事が無いまま更新日を過ぎる、を防ぎます。
伝え方の要は、「依頼側が社内で通しやすい形」で出すことです。担当者が上司に「稼働がこれだけ増えて、成果がこれだけ出ているので」と説明できれば、通ります。
エラベルの見解
相談で最も多い失敗は、「成果が出た直後に、口頭で『上げてほしい』と言った」というものです。依頼側は「急に言われても、予算が決まっている」と返し、受ける側は「成果を出したのに認められない」と感じ、関係が悪くなる。根拠の一枚も無く、節目でもなく、社内で通す形にもなっていませんでした。
見ていて差がつくのは、受ける側が「更新の一か月前に、根拠の一枚を添えて、書面で」と、手順を踏めるかどうかです。感情で切り出す人と、契約の見直しとして手順を踏む人がいます。後者は、依頼側から「筋を通す人」と見られ、値上げが通りやすく、通らなくても関係は保たれます。
受ける側にできるのは、値上げを「頼みごと」ではなく「契約の見直し」として扱うことです。見直しなら、節目と根拠があれば、申し出るのは当然のことです。
断られたときの対応
値上げが断られることはあります。断られたときの対応で、その後が決まります。
理由を聞く。 予算が無いのか、成果が足りないと見ているのか、他の人と比べているのか。理由によって、次の対応が変わります。
範囲を戻す提案をする。 報酬を上げられないなら、範囲を契約時に戻す。「いまの報酬なら、この工程まで」。報酬が同じで範囲が広いままは、受け入れません。
時期をずらす提案をする。 「今期は予算が無い」なら、「次の期の予算に組んでいただけますか」。時期を決めて、再度申し出ます。
一部だけ上げる提案をする。 全部の工程ではなく、増えた工程の分だけ、追加の報酬を。
続けるか、やめるかを決める。 上げられず、範囲も戻せず、時期もずらせないなら、いまの報酬で続けるか、やめるか。時給が自分の下限を下回ったまま続けることは、消耗です。やめる判断も、選択肢に入れます。
やめるなら、丁寧に。 引き継ぎの期間を取り、記録を渡し、理由を率直に伝えます。「報酬と範囲が合わなくなったので」。関係を切らずにやめれば、次の縁が残ります。
断られたからといって、いまの条件で黙って続けることは、避けます。範囲を戻すか、時期をずらすか、やめるか。何かを決めます。
値上げを避けるべき場合
値上げを申し出るべきでない場合もあります。
契約から間が無い。 三か月未満で値上げを申し出ると、「見積もりが甘かった」と見られます。最初の見積もりの精度の問題で、値上げではなく、次の契約で直します。
成果が出ていない。 稼働が増えていても、成果(面談設定、内定)が出ていないなら、依頼側は値上げに応じにくい。先に成果を出すか、範囲を戻す提案をします。
依頼側の体制が原因で稼働が増えている。 依頼側の承認が遅い、面談枠が無い、で待ち時間が増えている場合。値上げより、依頼側の体制の改善を先に求めます。
自分の稼働の管理が甘い。 実際の稼働が増えているのが、自分の非効率によるものなら、値上げの根拠になりません。工程を見直します。
関係が浅い。 契約の更新を一度も経ていない、依頼側との信頼がまだ無い。最初の更新までは、いまの条件で実績を作ります。
値上げは、根拠と節目とタイミングが揃ったときに、申し出るものです。揃っていないときに申し出ると、通らず、関係も削ります。
エラベルの見解
担当する側から見ると、値上げで最も困るのは「言い出せないまま、不満だけが溜まって、突然やめる」ことです。依頼側は、受ける側が不満を持っていたことを知らず、「なぜ急に」となる。受ける側は、「言っても無駄だと思った」と言う。言えば通ったかもしれない値上げが、言わないまま関係が終わります。
値上げを申し出ることは、依頼側にとっても、「続けてもらうために何が要るか」を知る機会です。申し出が無ければ、依頼側は「いまの条件で満足している」と思い続けます。
受ける側にできるのは、節目に、根拠とともに、書面で申し出ることです。通っても通らなくても、申し出たことで、依頼側は受ける側の状況を知ります。それが、長く続く関係の土台です。
まとめ
- 値上げのサインは稼働が見積もりを上回る・範囲が広がった・自分の専門性が上がった・依頼側にとっての価値が上がった
- タイミングは契約の更新・範囲の変更・成果の確定後・立ち上げの終了・予算の切り替えの節目。更新の一か月前に
- 根拠は実際の稼働・範囲の変化・成果・依頼側の変化・市場の変化を、契約時といまの比較で一枚に
- 伝え方は書面で・根拠を添え・「見直し」の言葉で・選択肢を出し・続けたい意思を添え・期限を決める
- 断られたら理由を聞き・範囲を戻す・時期をずらす・一部だけ上げる・続けるかやめるかを決める。黙って続けない
- 避けるべきは契約から間が無い・成果が無い・依頼側の体制が原因・自分の管理が甘い・関係が浅いとき
- 値上げは頼みごとではなく契約の見直し
よくある質問
値上げを言い出すと、関係が悪くなりませんか
節目に、根拠とともに、書面で、「見直し」として申し出れば、関係は悪くなりません。むしろ、「筋を通す人」と見られます。悪くなるのは、突然、口頭で、感情で、「上げてほしい」と言ったときです。手順を踏めば、通らなくても関係は保たれます。
成果が出た直後に言うのは、良いタイミングではないのですか
成果の直後は、依頼側が価値を実感している時期なので、悪くはありません。ただし、「成果が出たから上げてほしい」と成果を人質にする形は避けます。「成果が出て運用が安定したので、次の期間の報酬を見直したい」と、次の期間の話として、契約の節目に合わせて申し出てください。
断られて、いまの条件で続けるしかないと思っています
いまの条件で範囲が広いままなら、範囲を契約時に戻す提案をしてください。報酬を上げられないなら、範囲を戻すのが筋です。それも通らないなら、時期をずらすか、やめるかを決めます。時給が自分の下限を下回ったまま黙って続けることは、消耗するだけで、依頼側にも受ける側にも良い結果になりません。