単価交渉の切り出し方|最初の見積もりで「金額の話」を始める順番

報酬・契約・税務単価・契約・税務 更新日 2026-10-15

人事の副業で単価の話がこじれるのは、多くの場合、交渉そのものではなく切り出す順番でつまずいたときです。業務の中身が決まらないうちに「いくらでやってもらえますか」と聞かれ、その場で数字を言ってしまう。あとから範囲が広がっても、最初の数字が基準として残り続けます。この記事では、すでに契約している相手との値上げではなく、初めての依頼先と最初に金額を決めるまでの切り出し方を扱います。結論は、金額は範囲と稼働が言葉になってから出す、そして書いた形で出す、の二つです。

値上げや更新時の見直しは、値上げを申し出るタイミングと更新時の条件見直しで別に整理しています。

最初の打ち合わせで金額を言わない理由

初回の打ち合わせで依頼側が知りたいのは、たいてい「この人に任せて大丈夫か」と「予算に収まるか」の二つです。後者を早く確かめたい気持ちは自然なので、30分の面談の終わりに「ちなみに費用感はどのくらいですか」と聞かれることはよくあります。ここで数字を答えると、その数字は業務の範囲が決まる前の数字なのに、依頼側の中では予算の上限として扱われ始めます。

もう一つの理由は、依頼側自身がまだ頼みたいことを分けられていない場合が多いことです。「スカウトを手伝ってほしい」という依頼の中に、検索条件の設計、文面づくり、送信、返信対応、面談日程の調整が混ざっていて、どこまでを外に出したいのかは話しているうちに決まっていきます。範囲が動いている途中で出した金額は、どの範囲に対する金額だったのかを後から説明できません。

とはいえ、聞かれたことに答えないのは不誠実に見えます。そこで初回は、金額ではなく決め方を答えます。「月に何時間かかるかで決めています。今日伺った内容で作業を分けて、時間の見込みと一緒に金額をお出しします」と言えば、はぐらかした印象は残りません。依頼側にとっても、後で出てくる見積もりが何を根拠にしているかが先に分かるので、社内に説明しやすくなります。

切り出すまでに揃えておく三つのこと

金額の話を始める前に、依頼側との間で次の三つが言葉になっているかを確かめます。どれか一つでも曖昧なまま金額を出すと、後で「その作業も含まれていると思っていた」という食い違いが起きます。

揃えること確かめる質問の例曖昧なままだと起きること
範囲「文面は御社で確認されますか、こちらで送信まで進めてよいですか」確認待ちで止まる時間が誰の負担か決まらない
稼働の量「月に何名の採用を目指していますか、送信は月何通を想定していますか」作業量が読めず、月額の根拠が作れない
期間と区切り「まず3か月で様子を見る形でよいですか」見直しの機会がなく、最初の条件が固定される

この三つは、依頼側から答えが出てこないこともあります。その場合は自分から仮置きします。「送信は月100通、返信対応まで、文面は初回だけ御社確認、という前提で出します。違っていたら直します」と前提を書いて出せば、金額への反応ではなく前提への反応が返ってくるので、話が具体的になります。

金額を出すときの形

金額は、口頭ではなく文書で出します。メールの本文でも構いません。大事なのは、金額と一緒に前提と内訳が同じ紙に載っていることです。

出し方の順番は次のとおりです。

  1. 前提(範囲・月の想定量・期間)を箇条書きで書く
  2. 作業ごとの時間の見込みを書く(初月と2か月目以降を分ける)
  3. 月額または時間単価を書く
  4. 前提が変わったときの扱い(上限を超えたら翌月に回すか、精算するか)を書く

この形で出すと、依頼側が「もう少し安くならないか」と言ってきたときに、話が自然に範囲の調整に向かいます。「返信対応を御社でやっていただければ、月の時間が4時間減ります」と返せるからです。金額だけを出していると、交渉は単価を削るか削らないかの二択になり、どちらに転んでも関係が少しずつ悪くなります。作業の分け方は人事の副業単価の相場、見積書の体裁は見積もりの出し方で詳しく書いています。

エラベルの見解

担当する側から見ていて、最初の交渉でいちばん損をしているのは、相手の予算を先に聞き出そうとする人です。「ご予算はいくらですか」と聞くのは営業の定石に見えますが、副業の人事案件では逆効果になることが多くあります。依頼側の多くは、外部の人事に払う相場を知りません。予算を聞かれると、社内の誰かがなんとなく決めた数字か、以前頼んだ別の会社の金額を答えます。その数字に合わせて範囲を削ると、成果が出にくい形で受けることになります。

先に自分から、前提と内訳つきの金額を出してください。依頼側は初めて「この作業にはこれだけ時間がかかる」と知ることになり、予算の考え方そのものが変わります。予算が合わなければ、削るのは範囲です。単価は削りません。この順番を最初に作れた人は、その後の値上げの話もしやすくなります。

条件が書いた形で出てこないとき

依頼側から、業務の範囲や報酬、支払日がメールや書面で示されないまま「来週からお願いします」と言われることがあります。小さな会社や、外部に業務を頼むのが初めての会社ではめずらしくありません。

2024年11月に施行された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(いわゆるフリーランス法)では、事業者が個人などに業務を委託したときは、給付の内容・報酬の額・支払期日などを書面または電磁的方法(メールなど)で直ちに明示しなければならないとされています(第3条)。また、従業員を使用している発注事業者には、報酬の支払期日を給付を受けた日から60日以内のできる限り短い期間で定めることが求められています(第4条)。

ただし、これを交渉の場で持ち出す必要はありません。条文を示されて気分のよい依頼側はいないからです。実務では、自分から条件をまとめたメールを送り、「この内容で相違なければご返信ください」と書くだけで十分です。依頼側が返信すれば、それが書いた形の条件になります。返信がない、あるいは条件をはっきりさせることを嫌がる場合は、その案件自体を見直す理由になります。法令の適用や個別の判断が必要な場面では、弁護士などの専門家にご確認ください。

本業との関係で先に確かめること

単価の話とは別に、切り出す前に自分の側で確かめておくことがあります。本業の会社の副業に関する規程です。厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、副業・兼業を認める方向が示されていますが、実際にどこまで認めるか、届出が必要か、競業する会社の仕事を禁じているかは会社ごとに異なります。

人事の副業は、本業と同じ業界の会社から声がかかることが多く、競業の扱いに当たる可能性があります。単価がまとまってから「本業の規程で受けられない」と分かると、依頼側の時間を無駄にします。打ち合わせの前に規程を読み、必要なら届出を済ませておくと、金額の話に集中できます。

エラベルの見解

もう一つ、最初の交渉で見落とされがちなのが稼働できる曜日と時間帯です。副業の人事は、平日の日中に動けないことが多いです。ところが採用の仕事は、候補者との面談や社内の面接官との調整など、平日の日中に発生するものが少なくありません。

金額を出す前に、「平日日中の対応は週◯回まで」「返信は当日夜か翌朝」と書いておいてください。これを書かずに受けると、依頼側は日中の即時対応を前提に動き、あなたは本業の合間に無理をして応えることになります。時間帯の制約は単価には表れませんが、続けられるかどうかを決めます。制約を正直に出したうえで成り立つ金額が、その案件の本当の単価です。

まとめ

よくある質問

相手から先に金額を提示されたときはどうしますか

その金額がどの範囲と作業量を想定したものかを、まず聞いてください。想定が自分の見込みと合っていれば受けてよいですし、作業量が多ければ「この範囲だと月◯時間かかるので、範囲を絞るか金額を見直すかを相談させてください」と返します。提示額そのものを否定する言い方は避けたほうが話が進みます。

時間単価と月額のどちらで出すべきですか

継続して回す業務なら、月の上限時間を付けた月額のほうが依頼側は予算を組みやすくなります。作業量が読めない業務や単発の相談なら、時間単価のほうが無理がありません。迷ったら、時間単価を示したうえで「月◯時間までなら月額◯円」と両方書く形もあります。

交渉が苦手で、言われた金額で受けてしまいがちです

交渉の場で粘る必要はありません。前提と内訳を書いた見積もりを先に出す習慣をつけるだけで、相手の提示に合わせる場面が減ります。それでも合わない案件は、無理に受けずに見送るのも一つの判断です。案件を一つに絞らず、複数の候補を持っておくと判断しやすくなります。

出典

本記事は 2026-10-15 時点の公開情報にもとづいて作成しています。

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