人事副業 / 外国人雇用の労務
外国人雇用の労務の副業の実務|1案件の流れ
外国人雇用の労務を副業で初めて受けるとき、見えにくいのは「在留に関わる判断と手続きに一切触れずに、どうやって会社の役に立つか」と「一般の労務より重い個人情報をどう扱うか」です。募集文には「外国人材の労務サポート」とだけあり、実際には、判断を求める質問が毎週来て、在留の情報が手元に流れてきます。線を契約前に引いていないと、受けられない範囲に踏み込みます。結論を先に書くと、1案件は「契約前→第1週→一覧と確認の型の作成→受け入れの型→運用の伴走→引き継ぎと終了」の六つの段階で進み、契約前に受けられる範囲と受けられない範囲を書面にし専門家の有無と契約と在留に関わる個人情報の扱いと本人への回答の担当と翻訳と通訳の扱いと緊急時の流れと終わりの定義を決め、第1週はいまの流れと詰まりと落としかけた期日と伝わっていなかったことと専門家との往復を整理し、入社前から退職までの一覧を作って確認が要る点に印を付け期日と要件は専門家の確認後に記入し質問の型と回答の記録の型を整え、伝わったつもりを防ぐ受け入れの型を作り、入社ごとに運用を伴走して更新や変更の時期の把握と記録を整え、担当者が回せる状態で引き継いで個人情報を残さずに終えます。受けられる範囲と案件の型は外国人雇用の労務の副業案件に、労務の一般の流れは労務実務の副業の実務に書いていますので、ここでは「外国人雇用の1案件の流れ」に絞ります。個別の判断は専門家にご確認ください。
契約前:決めておくこと
外国人雇用の労務は、契約前の線が全部です。決めていないことは、判断への踏み込みと、在留の情報の事故になって返ってきます。
| 決めること | 確かめる中身 | 決めていないと起きること |
|---|---|---|
| 受けられる範囲と受けられない範囲 | 一覧、確認の型、受け入れの型、記録は受ける。在留の判断、申請書類の作成と提出、法令の判断、本人への回答、数字の確定は受けない。書面に | 「この人は働けるか」が流れてくる |
| 専門家の有無と契約 | 在留に関わる判断と手続きを行う専門家(行政書士など)と、労働と社会保険の専門家(社会保険労務士など)がいるか。いないなら契約を勧める | 判断と手続きが自分に来る |
| 在留に関わる個人情報の扱いと見る範囲 | 在留の種類、期限、番号、国籍などは、会社の管理する場所でだけ、見る範囲を絞って。記録に写さない。扱いの決まりを契約に | 情報が自分の端末に残る。専門家にご確認ください |
| 本人への回答は会社と専門家 | 本人からの在留、条件、生活の相談は、事実の整理までで、回答は会社と専門家 | 自分が答える |
| 翻訳と通訳は別の項目 | 自分が行うなら別の項目で、内容の正確さの責任は会社と専門家。判断を含む場面の通訳は専門家か会社が用意 | 契約の翻訳の責任を負う |
| 緊急時の流れ | 期日が迫っている、本人の在留に関わる事情が急に出た、などのときに、誰に当日連絡するか | 自分が判断して動く |
| 終わりの定義 | 一覧と型の納品か、担当者が入社ごとに回せる状態か | 納品で終わり、回らない |
| 評価 | 抜けと遅れの減り方、伝わっていなかったことの減り方、担当者が回せているか。手続きの完了数ではない | 手続きで評価される |
止まりやすいのは、「来月入社する人がいるので、その手続きを」で始めるときです。手続きは受けられない範囲で、来月の入社は、一覧と受け入れの型を作る最初の一人にします。範囲の決め方は業務範囲の決め方に、労務の線は労務実務の副業案件に書いています。
第1週:いまの流れと詰まりの整理
第1週は、一覧を作らず、判断もしません。いまの流れと詰まりを整理します。
| やること | 依頼側に持ってもらうこと | 落とし穴 |
|---|---|---|
| いまの流れ(内定後、入社、在籍中、退職で、誰が何をいつ確認し、どこに出しているか) | 担当者の時間。過去の記録(在留の情報は見る範囲を絞る) | 在留の詳細を読む |
| 落としかけた期日と詰まり(更新の時期の把握、届出、条件の伝達、生活の面) | 担当者と上司の記憶 | 詰まりを担当者の責任にする |
| 伝わっていなかったこと(条件、決まり、仕事の中身、生活の面で、本人と会社の間でずれたこと) | 上司と担当者の記憶 | 本人に直接聞く |
| 専門家との往復の実態(何を誰に聞いていて、何を聞いていないか) | 専門家とのやり取りの記録 | 専門家がいない |
| 個人情報の置き場(在留の情報がどこにあり、誰が見られるか) | 置き場の確認 | 自分が全部見られる権限をもらう |
| 課題の一覧と優先(期日の把握、専門家との往復、伝わったつもり、記録、のうち最初の一つ) | 優先の決定 | 全部を直そうとする |
止まりやすいのは、詰まりを聞く中で「それはこうすればよい」と在留の判断を口にすることです。在留については、一般論も含めて、「確認が要る点」とだけ書きます。聞き方はヒアリングの技能に書いています。
エラベルの見解
担当する側から見ると、この仕事は「第1週に、在留について一言も判断を言わずに終えられるか」で、その後の線が決まります。外国人雇用の経験がある人は、詰まりを聞いた瞬間に「それは資格の範囲外では」「更新が要るのでは」と分かってしまい、言いたくなります。言った瞬間に、依頼側は「この人に聞けば分かる」と受け取り、以後、判断が全部自分に来ます。第1週に「確認が要る点」の印を付けるだけで終えた担当者は、「この人は線を守る人だ」と受け取られ、判断は専門家に、仕組みは自分に、と役割が分かれます。エラベルで担当者を選ぶ企業には、「担当者は在留について判断しません。確認が要る点を整理して、専門家に聞く形を整えます」と、私たちから先に伝えています。受ける側がその場で使える判断としては、第1週の記録に「在留に関わる確認が要る点」の欄を作り、中身に触れずに「専門家に確認」とだけ書くことです。
一覧と確認の型の作成:入社前から退職まで、確認が要る点、期日は専門家の確認後
| 作るもの | 中身 | 落とし穴 |
|---|---|---|
| 入社前から退職までの一覧 | 内定後(確認が要る点)、入社(届出、条件の伝達、生活の面)、在籍中(更新や変更の時期の把握、役割の変更時の確認)、退職(届出、確認が要る点)を、いつ・誰が・何を・どこに、で一行ずつ | 期日と要件を自分の記憶で書く |
| 確認が要る点の印 | 在留に関わる箇所と、労働と社会保険に関わる箇所に、それぞれ印。中身は書かない | 自分の見解を書く |
| 期日と要件 | 空欄のまま専門家に渡し、確認を経て記入。「〇〇の確認後」と明記 | 空欄を埋めてから渡す |
| 更新や変更の時期の把握の仕組み | 在留の期限や変更の時期を、会社の管理する場所で、担当者が把握して専門家に確認する流れ(自分は期限の数字を扱わない) | 自分が期限を管理する |
| 質問の型 | 事実(本人の状況、仕事の中身、時期)・会社の意向・聞きたいこと、の三つの欄。在留の判断を含まない | 質問に見解を混ぜる |
| 回答の記録の型 | 専門家と窓口の回答を、次に参照できる形で。在留の詳細は写さない | 回答を自分の言葉で書き換える |
止まりやすいのは、在留の期限の管理を自分が引き受けることです。期限の把握は担当者が会社の管理する場所で行い、自分は「把握する仕組み」を作るまでにします。
受け入れの型:伝わったつもりを防ぐ
外国人雇用で、手続きの次に詰まるのが「伝えたつもりが伝わっていない」です。受け入れの型で防ぎます。伝えるのは会社の人です。
| 作るもの | 中身 | 落とし穴 |
|---|---|---|
| 条件と決まりの伝え方の型 | 書面と口頭の両方で、本人の言葉で言い直してもらう。分からない点を聞ける形。翻訳が要れば会社が手配 | 「説明したから伝わった」 |
| 仕事の中身の伝え方 | 最初の三か月で何をするか、誰に聞くか、を型で。オンボーディングの型と共通 | 仕事の中身が口頭だけ |
| 生活の面の確認の項目 | 住まい、通勤、緊急時の連絡先、相談先、など。会社が確認する項目の一覧。本人の私生活に踏み込まない範囲で | 私生活に踏み込む |
| 上司との面談の型 | 一週目、一か月、三か月。伝わっているかを確かめる項目 | 面談が無い |
| 質問の窓口の取り次ぎ | 本人の質問を、会社の担当者と専門家に取り次ぐ流れ。自分が答えない | 自分が答える |
| 翻訳と通訳の手配 | 判断を含む場面(条件、契約、在留)は専門家か会社が用意。日常の場面は会社が決める | 自分が契約の翻訳をする |
止まりやすいのは、「言葉が分かるから」と自分が条件や契約の翻訳を引き受けることです。内容の正確さの責任を負う形になります。翻訳と通訳は別の項目にし、判断を含む場面は専門家か会社が用意します。受け入れの型はオンボーディング設計の副業案件と、外国人採用の面接の型は外国人採用担当が副業でできることに書いています。
エラベルの見解
同じ料金・同じ範囲でも、結果が分かれるのは、「伝わったかを、本人の言葉で確かめる型を作れるか」です。条件と決まりを書面で渡し、口頭で説明し、「分かりましたか」と聞いて「はい」で終えた会社では、三か月後に「聞いていない」「そういう意味だと思わなかった」が起きます。「では、いま説明した休みの決まりを、ご自身の言葉で言ってみてください」と本人に言い直してもらう型を入れた会社では、ずれがその場で分かり、直せます。この型は、外国人雇用に限らず効きますが、言葉の壁がある場面で最も差が出ます。エラベルで長く続いている担当者は、受け入れの型の各項目に「本人の言葉での言い直し」の欄を持っています。受ける側がその場で使える形としては、条件と決まりの一覧の横に「本人が言い直した内容」の欄を作り、会社の人がそこを埋めてから次に進む形にすることです。
運用の伴走:入社ごと、更新や変更の時期の把握、記録
一覧と型ができたら、入社ごとに、担当者が回せるまで伴走します。判断と手続きは担当者と専門家です。
| やること | 頻度の目安 | 落とし穴 |
|---|---|---|
| 入社ごとの確認(一覧に沿って回ったか、確認が要る点が専門家に渡ったか、受け入れの型が使われたか) | 入社ごと | 自分が手続きをやる |
| 更新や変更の時期の把握の確認(担当者が把握して専門家に確認する流れが回っているか。自分は期限の数字を扱わない) | 月に一度 | 自分が期限を管理して催促する |
| 本人からの相談の一次整理(事実を整理して会社に渡す。答えない) | 出るたび | 自分が答える |
| 伝わっていなかったことの検出(面談の記録から。本人の言葉での言い直しの欄が空いていないか) | 月に一度 | 本人に直接確かめる |
| 記録の整備(何をいつ誰が確認したか、専門家に何を聞き何が返ったか。在留の詳細は写さない) | 月に一度 | 在留の情報を記録に写す |
| 報告(抜けと遅れ、専門家に渡した点の数、担当者が一人でできた工程、次に直すこと一つ) | 月に一度 | 手続きの完了数だけ |
止まりやすいのは、更新の時期が近い人がいて、「私が期限を見ておきます」と引き受けることです。期限の把握は担当者が会社の管理する場所で行い、自分は仕組みの確認までです。
引き継ぎと終了:担当者が回せる状態、個人情報を残さない
終わりは、担当者が一覧と型で回せる状態です。
- 残すもの。 入社前から退職までの一覧(専門家の確認済み、更新の日付付き)、確認が要る点の印の付け方、質問の型と回答の記録(会社の管理する場所に)、受け入れの型、更新や変更の時期の把握の仕組み、記録の型
- 返すもの。 在留と個人情報を見る権限(会社が削除)、共有された書面。本人の在留と生活の情報を自分の手元に一切残さず、残していないことを確かめて伝える
- 次の提案。 一覧の更新の時期(法令や手続きの枠組みが変わったとき、専門家の確認を経て)、担当者が変わったときの引き継ぎの型
引き継ぎの型は引き継ぎの仕方に書いています。
在留に関わる個人情報の扱い
外国人雇用の労務で触れる情報は、氏名、住所、家族に加えて、国籍、在留の種類、期限、番号など、一般の労務より重いものです。見る範囲を、一覧と型を作るために要る項目に絞り、会社の管理する場所でだけ扱い、自分の端末やクラウドに残さず、記録に写さず、期限の数字を自分が管理しません。本人からの相談は事実の整理までで、自分の記憶にも残さないように会社の管理する場所に記録して手元に持ちません。国籍や文化を理由にした扱いの違いを設計せず、処遇に関わる判断は会社と専門家に委ねます。本業や他の依頼側の外国人社員の事例を持ち込みません。扱いの決まりを契約に書き、個別の判断は専門家にご確認ください。扱いの詳細は候補者の個人情報の扱いとセキュリティの基本に書いています。
稼働時間は何で決まるか
全体の時間は、「第1週の整理」「一覧と確認の型の作成(専門家の確認の往復を含む)」「受け入れの型の作成」「運用の伴走(入社の人数×受け入れの型の運用、月次の確認)」「引き継ぎ」の合計で決まります。判断と手続きと翻訳と通訳を含まないので、その分の稼働は乗りません(翻訳と通訳を別の項目で受けるなら、その分は別に見込みます)。伴走は、担当者が回せるようになるにつれて短くなる形にします。数値は案件ごとに違うので、第1週の終わりに以後の工程を見直します。稼働の管理は稼働時間の管理に書いています。
まとめ
- 1案件は契約前→第1週→一覧と確認の型の作成→受け入れの型→運用の伴走→引き継ぎと終了の六つの段階
- 契約前に受けられる範囲と受けられない範囲を書面に・専門家の有無と契約・在留に関わる個人情報の扱い・本人への回答は会社と専門家・翻訳と通訳は別・緊急時の流れ・終わりの定義・評価を決める。「来月入社する人の手続きを」では始めない
- 第1週は流れと詰まりを整理し、在留については一般論も言わず、「確認が要る点」の印だけ
- 一覧は入社前から退職まで、確認が要る点に印、期日と要件は専門家の確認後に記入、更新や変更の時期の把握は担当者の仕組みに。自分が期限を管理しない
- 受け入れの型は書面と口頭・本人の言葉での言い直し・生活の面の確認・上司との面談・窓口の取り次ぎ。伝えるのは会社の人。翻訳と通訳は別の項目で、判断を含む場面は専門家か会社
- 伴走は入社ごとの確認・時期の把握の仕組みの確認・相談の一次整理・伝わっていなかったことの検出・記録。手続きも期限の管理も引き受けない
- 終了は担当者が回せる状態。権限を削除してもらい、在留と生活の情報を一切残さない
よくある質問
担当者が「更新の時期が近い人がいるので、期限を見ておいてほしい」と言います
引き受けません。「期限の把握は、御社の担当者の方が会社の管理する場所で行い、専門家に確認する流れにしてください。私は、その流れが回っているかを月に一度確認します」と返します。在留の期限は本人の在留に直結する重い情報で、外の副業の人が管理する形は、情報の扱いの上でも、責任の上でも、危険です。把握の仕組み(会社の管理する場所での一覧、通知、専門家への確認の流れ)を作るのが自分の役です。
本人が「家族を呼びたいが、どうすればよいか」と相談してきました
答えません。事実(本人の状況、聞かれたこと、時期)を整理して会社の担当者に渡し、担当者が専門家と公的な窓口に確認して答える形にします。「その点は会社と専門家から回答します」と返し、自分の見解は言いません。本人にとって生活に関わる話なので、放置せず当日に会社に渡します。家族に関わる情報は、本人の私生活で、記録にも残しません。個別の判断は専門家にご確認ください。
会社から「日本語が分かるので、契約書を本人の言語に訳してほしい」と言われました
契約や条件の翻訳は、内容の正確さが本人の権利に直結し、判断を含みます。「契約や条件の翻訳は、専門家か会社が用意する翻訳を使ってください。私が日常の場面の通訳や、受け入れの型の一部の翻訳を行うなら、別の項目として契約し、内容の正確さの責任は会社と専門家に置く形にします」と返します。「言葉が分かる」ことと、「内容の正確さの責任を負える」ことは別です。