人事副業 / オンボーディング設計
オンボーディング設計の副業案件|求められる経験と進め方
オンボーディング設計は、採用はできているのに入社後に辞める会社から出る副業案件です。入社した人が三か月で辞めた、初日に机と端末が無かった、誰に聞けばよいか分からず抱えていた、上司が忙しくて面談が後回し。その状態で「オンボーディングを作ってほしい」と外に出されます。ただ、「研修を作る仕事」「新しい人に教える仕事」と思って受けると、きれいな研修の資料ができて、上司と同僚が教える時間は変わらず、辞める人は減りません。結論を先に書くと、オンボーディング設計の副業案件は、「計画の設計と教える内容の表」「初日の準備と面談の日程と窓口の運用」「つまずきと定着の記録と見直し」「型作りと引き継ぎ」の四つの型に分かれ、求められるのは、立ち上がりを設計した経験、上司と同僚が教える内容を表にできること、新しい人が話しやすい窓口になれること、辞める前の兆しを読めることの四つです。進め方は、なぜ辞めたかと教える人と上司の時間を会社が決める→入社前から三か月までの計画→教える内容と担当と時期の表→初日の準備の一覧→面談の日程と質問の窓口→つまずきと兆しの記録→定着の記録と見直しの提案、の順で、教えること・面談で話すこと・配属と役割・評価・対応の判断は会社、自分は教えず、評価せず、新しい人の相談を抱えず、上司の代わりにならず、情報を手元に残さない線を先に引いておきます。会社側の考え方はオンボーディングの代行に、労務の手続きの側は労務実務の副業案件に、副業全体の始め方は人事の副業の始め方に書いています。ここでは、オンボーディングの案件に絞ります。
オンボーディング設計の案件の四つの型
募集文は「オンボーディングの構築」「入社後フォローの設計」「研修の企画」と書かれていることが多いですが、任される範囲は四つに分かれます。受ける前に、どの型かを確かめます。
| 型 | 任される範囲 | 依頼側が持つこと | 受ける側の稼働の性質 |
|---|---|---|---|
| 計画の設計と教える内容の表 | 入社前から三か月までの計画、上司と同僚が教える内容と担当と時期の表、初日の準備の一覧、面談の時期の設計 | 教える内容の決定、教える人の時間、配属と役割 | 作る工程。数週間で区切れる。教えない |
| 初日の準備と面談の日程と窓口の運用 | 入社ごとに、初日の準備の段取り、面談の日程の調整、新しい人の質問の窓口と取り次ぎ、記録 | 教えること、面談で話すこと、質問への回答 | 入社のたびに稼働。平日の日中の窓口が要る |
| つまずきと定着の記録と見直し | 面談と窓口の記録から、つまずきと辞める前の兆しを拾い、会社に渡し、定着の記録から計画を見直す | 対応の判断、計画の変更の決定 | 月次。記録の分析が中心 |
| 型作りと引き継ぎ | 計画の型、教える内容の表の型、初日の一覧、面談の型、記録の型を作り、社内で回せるようにする | 以後の運用 | 期間が決まっている。終わったら手を離す |
止まりやすいのは、「計画の設計」で受けたのに、「新しい人に教えるところもお願い」と、教える側に回されるときです。教えるのは上司と同僚で、外の人が教えた新しい人は、社内に関係ができません。教える人がいない会社では、オンボーディングの前に、教える時間を会社に決めてもらいます。
求められる経験を棚卸しする
依頼側が見ているのは、「研修を作れるか」ではなく、「新しい人が三か月で回り始め、辞めない状態を作れるか」です。社内でオンボーディングに関わった経験を、四つに分けて棚卸しします。
| 経験 | 依頼側にとっての意味 | 棚卸しの書き方 |
|---|---|---|
| 立ち上がりを設計した | 入社前から三か月までに、いつ何が起きれば回り始めるかを知っている | どういう計画で、何週目に何ができる状態にしたか |
| 教える内容を表にできる | 上司と同僚の頭の中にある「教えること」を、担当と時期の表にできる | 誰から何を聞き出し、どう表にしたか |
| 話しやすい窓口になれる | 新しい人が上司に聞けないことを、外の人として拾える | 窓口でどんな質問が来て、どう取り次いだか |
| 辞める前の兆しを読める | 質問が減る、面談で話さなくなる、の兆しを記録から拾い、会社に渡した | どういう兆しを、どう渡し、何が変わったか |
いちばん差がつくのは二つ目です。オンボーディングで足りないのは研修ではなく、上司と同僚が教える時間と、それを段取りする人です。「教えること」を担当と時期の表にできる人は、上司の時間を確保する材料を作れます。
エラベルの見解
担当する側から見ると、オンボーディングの案件は、「上司が面談と教える時間を取ると会社が決めているか」で難易度が変わります。決めている会社では、担当者は計画と段取りと窓口と記録に集中でき、新しい人は上司との関係の中で立ち上がります。決めていない会社では、担当者が教える側に回され、新しい人は担当者にだけ話すようになり、担当者が離れた月に辞めます。エラベルで担当者を選ぶ企業に、私たちがまず聞くのは「新しい人の上司は、最初の三か月、週にどれだけの時間を新しい人に使えますか」です。答えが無い会社には、オンボーディングの設計の前に、上司の時間を決めてもらいます。受ける側がその場で使える判断としては、受ける前に「教えるのは誰で、面談は誰がしますか」と聞くこと。答えが「あなた」なら、範囲を「設計と段取りと窓口」に直して提案します。
進め方の順番
| 順 | やること | ここで決めておくこと |
|---|---|---|
| 一 | なぜ辞めたか(過去の退職の理由、時期)、教える人、上司の時間を会社が決める | 上司の時間が無いなら、設計の前に決める |
| 二 | 入社前から三か月までの計画(入社前の連絡、初日、一週目、一か月、三か月で、何ができる状態か) | 計画の承認。役割と配属は会社 |
| 三 | 教える内容と担当と時期の表(上司と同僚の頭の中を聞き出し、誰が、いつ、何を教えるか) | 教える人の合意 |
| 四 | 初日の準備の一覧(机、端末、アカウント、書面、挨拶の順、初日の予定。労務の手続きは担当者と専門家) | 準備の担当 |
| 五 | 面談の日程と質問の窓口(上司との面談の時期を先に押さえる。新しい人の質問を受けて取り次ぐ窓口) | 面談は上司。回答は会社 |
| 六 | つまずきと兆しの記録(面談の記録、質問の傾向、質問が減る・話さなくなるの兆し。評価は書かない) | 記録の置き場。共有の相手 |
| 七 | 定着の記録と見直しの提案(三か月と一年の定着、辞めた場合の時期と理由、計画の直す箇所) | 見直しの決定は会社 |
止まりやすいのは、二を「研修の内容」から作るときです。計画は「何週目に何ができる状態か」から作り、研修は手段の一つです。
外部の立場で踏み込まない線
オンボーディングは、新しい人と上司の関係の中で起きるものです。外の人が入りすぎると、関係が作られません。線を先に引いておきます。
- 教えない。 仕事の内容、会社の決まり、人の関係は、上司と同僚が教える。担当者は段取りと表まで。新しい人が「この人に聞けばいい」と担当者を頼る形にしない
- 評価しない。 新しい人の立ち上がりを、担当者が評価しない。記録は事実(質問の数、面談の実施、できるようになったこと)で、所感を書かない
- 新しい人の相談を抱えない。 窓口で受けた質問や不安は、当日に上司か会社に取り次ぐ。自分が答えたり、抱えたりしない。上司への不満を聞いたら、事実を整理して会社に渡す(本人の同意を確かめて)
- 上司の代わりにならない。 面談は上司が行う。上司が時間を取らないなら、会社に決めてもらう。担当者が面談をすると、上司との関係が作られない
- 配属と役割と評価と対応の判断に入らない。 兆しを拾って渡すまで。辞めそうな人にどう対応するかは会社
- 情報を手元に残さない。 新しい人の面談の記録、質問、私的な事情は会社の管理する場所でだけ扱う。労務の手続きの情報は見ない
- 入社前の連絡で条件や約束をしない。 入社前の連絡は会社の名義で、承認された文面で。条件や配属の質問は会社に渡す
線の詳細は候補者の個人情報の扱いと副業で法令違反をしないためにに書いています。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、依頼側の「研修を整えれば定着する」と、受ける側の「新しい人に寄り添えば辞めない」の両方です。実際には、新しい人が辞めるのは研修が足りないからではなく、上司と同僚との関係ができず、聞けないことを抱えるからで、外の人が寄り添うほど、社内の関係は作られません。同じ料金で同じ範囲を任されても、結果が分かれるのは、担当者が「自分が支える」か「上司が支える段取りをする」かです。新しい人の質問に全部答え、毎週話を聞いた担当者は、新しい人に頼られ、上司は「担当者がいるから」と時間を取らず、担当者が離れた月に辞めます。質問を上司に取り次ぎ、上司の面談の日程を先に押さえ、上司が教える内容を表にして渡した担当者は、新しい人と上司の関係が作られ、担当者が離れても回ります。受ける側がその場で使える判断としては、窓口に来た質問を、自分が答えず「誰に取り次いだか」を記録すること。取り次ぎの記録が、自分が支えていないことの証明になります。
向く人と向かない人
| 向く | 向かない |
|---|---|
| 自分が教えるより、上司と同僚が教える段取りを作るのが好き | 新しい人に教えたい、寄り添いたい |
| 上司と同僚の頭の中を聞き出して表にできる | 研修の資料を作りたい |
| 質問を受けて、答えずに取り次げる | 聞かれたら答えたくなる |
| 記録から「質問が減った」「話さなくなった」の兆しを読める | 記録より会話を大事にしたい |
| 平日の日中に、窓口と日程の調整を短時間でも回せる | 週末にまとめて対応したい |
「新しい人に教えたい、寄り添いたい」人は、良い人ですが、この仕事では新しい人を社内から切り離してしまいます。
まとめ
- オンボーディングの案件は計画の設計と教える内容の表・初日の準備と面談の日程と窓口の運用・つまずきと定着の記録と見直し・型作りと引き継ぎの四つの型。受ける前に型と、教える人と上司の時間を確かめる
- 求められるのは立ち上がりの設計経験・教える内容を表にできる・話しやすい窓口・兆しを読めるの四つ。研修を作る力ではない
- 進め方はなぜ辞めたかと教える人と上司の時間→三か月までの計画→教える内容と担当と時期の表→初日の準備の一覧→面談の日程と窓口→つまずきと兆しの記録→定着の記録と見直し。研修の内容から作らない
- 線は教えない・評価しない・相談を抱えない・上司の代わりにならない・配属と役割と評価と対応に入らない・情報を手元に残さない・入社前に条件や約束をしない
- 足りないのは研修ではなく上司と同僚が教える時間と、それを段取りする人。窓口に来た質問は答えずに取り次ぎ、取り次いだ先を記録する
- 「教えるのもあなた」という案件は、範囲を「設計と段取りと窓口」に直して提案する
よくある質問
新しい人から「上司に聞きにくいので、あなたに聞きたい」と言われました
その場で答えず、「上司の〇〇さんに聞きやすい形を作りましょう」と、聞き方を一緒に整えます。「この三つを、次の面談で聞いてみてください」と、質問を面談の議題にする形にすれば、上司との関係が作られます。上司に聞けない理由(忙しそう、怒られそう)が続くなら、それは上司の時間と接し方の問題で、事実を整理して会社に渡します。自分が答え続けると、新しい人は上司と話さなくなり、自分が離れた月に辞めます。
上司が「忙しいので面談は担当者がやってほしい」と言います
受けません。面談は、上司と新しい人の関係を作る場で、外の人が代わると関係が作られません。「面談は〇〇さんが。日程の調整と、話す項目の型と、記録は私が整えます。三十分で構いません」と、上司の負担を減らす形で上司に残します。それでも取れないなら、会社に「上司の時間を取れないなら、オンボーディングは回りません」と事実で返し、上司の時間を会社に決めてもらいます。上司の時間の無いオンボーディングは、担当者では埋められません。
オンボーディング設計の単価はどう決めればよいですか
「作る工程(計画、教える内容の表、初日の一覧、面談の型、記録の型)」は成果物で、「回す工程(入社ごとの段取り、窓口、記録、月次の見直し)」は入社の人数と月数で、分けて見積もります。窓口を含むと、平日の日中の確認が固定で乗ります。相場は範囲と入社の人数で幅が大きく、公開されている案件でも一律ではありません。単価の考え方は単価の相場と考え方に、始め方はオンボーディング設計で副業を始めるにはに書いています。