人材開発・研修担当の副業単価の目安と案件の見つけ方|登壇の時間だけでなく、設計・教材・振り返りまで含めて値付けする
人材開発や研修の担当として研修をつくり、運営してきた人は、受講者に何を身につけてほしいかを決め、教材をつくり、講師として話し、終わった後に効果を確かめてきた経験を持っています。研修の担当者がいない会社や、研修をやっているが効果が見えない会社にとって、この経験は役に立ちます。ところが、研修の副業の単価は「一回の登壇でいくら」と考えられがちで、準備にかかる時間が見えなくなります。結論から書くと、人材開発・研修担当の副業単価は、登壇の時間だけでなく、研修の設計・教材づくり・振り返りまで含めて値付けすると、無理のない金額になります。
人事の副業の単価には公的な統計がなく、案件の範囲や依頼先で大きく変わるため、この記事では金額の相場は書きません。自分の単価を組み立てる手順と、案件の見つけ方を書きます。人材開発・研修担当の経験の何が売れるかは人材開発・研修担当が副業でできることで詳しく書いています。
登壇の時間だけで値付けしない
研修の仕事は、登壇している時間よりも、その前後にかかる時間のほうが長いことがほとんどです。次のように分けて考えます。
| 段階 | やること | 時間が増える条件 |
|---|---|---|
| 設計 | 依頼先の課題を聞き、受講者に何を身につけてほしいかを決める | 課題があいまい、関係者が多い |
| 教材づくり | 資料、演習、ワークシートをつくる | 新しくつくる部分が多い、依頼先に合わせる部分が多い |
| 登壇 | 研修を進め、受講者の質問に答える | 回数が多い、拠点が多い |
| 振り返り | 受講者の声と、職場での変化を確かめ、次に生かす | 効果を確かめる方法を新しくつくる |
登壇の時間だけで単価を決めると、設計や教材づくりにかかった時間が報酬に入りません。とくに、依頼先に合わせて新しく教材をつくる場合は、登壇の何倍もの時間がかかることがあります。講師として登壇する場合の単価の考え方は研修講師の副業単価でも書いています。
段階ごとに単価を組み立てる
単価は、段階ごとに時間を見積もって組み立てます。
- 設計を見積もる:聞き取りの回数と時間、目標をまとめる時間を出す
- 教材づくりを見積もる:手持ちの教材を直して使う部分と、新しくつくる部分に分けて時間を出す
- 登壇を見積もる:一回あたりの時間と回数、移動の時間を出す
- 振り返りを見積もる:受講者の声を集めてまとめる時間、職場での変化を確かめる時間を出す
- 合計して提示する:段階ごとの時間 × 時間単価 を合計し、段階ごとに分けて示す
時間単価の考え方は本業の年収と副業単価の関係で書いています。同じ研修を何回も行う場合は、二回目以降は設計と教材づくりの時間が減るため、回数に応じて単価を見直すことができます。
エラベルの見解
人材開発・研修担当の副業でよくある失敗は、本業でつくった研修の教材を、そのまま副業で使うことです。本業の会社の教材は、その会社の資料であり、秘密保持や著作権の点で問題になることがあります。そのうえ、依頼先の課題に合っていない研修は、受講者に響きません。
担当する側から見ると、価値があるのは、依頼先の課題を聞き取り、その課題に合わせて研修を組み立て直せることです。自分の経験から一般的な型として組み直した教材を土台に、依頼先に合わせる部分を足していく。この組み立て直しを成果物として見積もれる人は、依頼先から頼られます。
講師料の源泉徴収と、受けるときの条件
研修の講師として報酬を受け取るときは、税金の扱いも知っておく必要があります。所得税法第204条は、居住者に対し国内において講演料などの報酬や料金の支払をする者は、その支払の際に所得税を徴収し、徴収の日の属する月の翌月十日までに国に納付しなければならないと定めています。このため、依頼先から講師料を受け取るときに、所得税が差し引かれていることがあります。受け取る額と、差し引かれた額を確かめ、確定申告のときに使えるよう記録しておいてください。設計や教材づくりなど、講演料にあたるかどうかの区分は、依頼先や税理士に確かめてください。
業務委託で受ける場合は、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法)第3条が、業務委託事業者に、給付の内容、報酬の額、支払期日などを書面または電磁的方法で直ちに明示することを求めています。段階ごとの作業の範囲と報酬、教材の扱い(依頼先に渡すのか、自分が持ち続けるのか)も、書面で確かめてください。
本業に勤めながら副業をする場合は、厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が示すとおり、まず勤め先の副業・兼業に関するルールを確認し、秘密保持義務や競業避止義務を意識してください。20万円を超える副収入がある場合は、確定申告が必要です。個別の判断は弁護士・税理士にご確認ください。
案件の見つけ方
人材開発・研修担当の経験を活かせる案件は、次のような場所で見つけやすくなります。
- 研修の担当者がいない会社:新人研修や管理職研修を一から組み立ててほしい会社
- 研修会社の講師として:研修会社の案件を講師として受ける
- 人事の副業の仲介サービス:研修の設計や登壇の経験、得意なテーマを登録しておく
最初の案件では、自分が得意なテーマに絞り、設計から振り返りまで一通り受けると、成果を示しやすくなります。新人の受け入れの研修など、採用とつながるテーマは、依頼先にとっても効果が見えやすい題材です。
エラベルの見解
もう一つ見てほしいのは、研修の副業は、振り返りまで受けると次の依頼につながりやすいということです。研修をやって終わりにすると、依頼先には「よかった」という感想しか残らず、次も頼むかどうかの判断材料がありません。
研修の後に、受講者の職場での変化を上司に聞き、まとめて報告してください。何が変わり、何が変わらなかったかを示せば、次に何をすればよいかを依頼先と一緒に考えられます。振り返りを成果物に入れて見積もることが、継続の相談につながります。
まとめ
- 人材開発・研修担当の副業単価は、登壇だけでなく、設計・教材づくり・振り返りまで含めて値付けする
- 段階ごとに時間を見積もり、二回目以降は設計と教材の時間が減る分を見直す
- 本業の教材は使わず、自分の経験から組み直した型を土台にする
- 講師料は源泉徴収されることがあるため、受け取る額と差し引かれた額を記録する
- 振り返りまで受けて、職場での変化を報告すると次の依頼につながる
よくある質問
人材開発・研修担当の副業単価の相場はいくらですか
案件の範囲や依頼先によって大きく異なり、公的な統計もないため、一律の相場はお伝えできません。設計・教材づくり・登壇・振り返りの段階ごとに時間を見積もり、自分の時間単価を掛けて単価の根拠をつくってください。
登壇だけを頼まれたらどうすればよいですか
登壇だけでも、依頼先の受講者に合わせるための準備の時間はかかります。準備の時間を含めて見積もってください。教材を依頼先が用意する場合でも、内容を理解して話すための時間は必要です。
つくった教材は誰のものになりますか
契約の決め方によります。依頼先に渡すのか、自分が持ち続けて他の案件でも使えるのかを、契約のときに決めてください。判断に迷う場合は、弁護士にご相談ください。
本記事は 2026-10-16 時点の公開情報にもとづいて作成しています。
この記事のタグ
関連記事
- 人材開発・研修担当が副業でできること|経験の棚卸しと売り方|研修担当の経験は「人が何をできるようになるべきかを分解し、教える順番を設計し、できたかを確かめてきた」型で売れる。売れるのは、面接官の育成、受け入れ研修の設計、要件を「できること」で書き直す作業、採用担当者の立ち上げの四つ。「研修をしていました」ではなく、「採用に関わる人が判断できるようになる仕組みを作る」と売る 人材開発・研修担当の経験で人事の副業を始める人向けに、売れる経験の棚卸し(面接官の育成・受け入れ研修の設計・要件の分解・採用担当者の立ち上げ)、売りにくい点(採用の実務が薄い・研修の言葉が通じない・成果が遅い)とその扱い、入りやすい案件の探し方、単価の考え方、始める順番を整理しました。 人事副業人材開発・研修担当
- 人材紹介のキャリアアドバイザーの副業単価の目安と案件の見つけ方|候補者と向き合ってきた経験を企業側の採用の作業に置き換え、紹介にあたる仕事とは線を引く 人材紹介会社でキャリアアドバイザーとして求職者と向き合ってきた人が副業を始めるとき、単価をどう決め、案件をどう見つけるか。面談や意向の見極めの経験を企業側の採用の作業に置き換える方法、作業ごとの単価の組み立て方、案件の見つけ方、有料職業紹介の許可が要る仕事との線引き、本業との競業と求職者の情報の扱いを整理しました。 人事副業人材紹介のキャリアアドバイザー
- 人材紹介のリクルーティングアドバイザーの副業単価の目安と案件の見つけ方|企業の要件を引き出す力を採用設計の成果物にし、紹介にあたる仕事とは線を引く 人材紹介会社でリクルーティングアドバイザーとして企業の採用を支えてきた人が副業を始めるとき、単価をどう決め、案件をどう見つけるか。求人の要件を引き出し、条件を調整してきた経験を採用設計の成果物にする方法、単価の組み立て方、案件の見つけ方、有料職業紹介の許可が要る仕事との線引き、紹介手数料の仕組みの説明、本業との競業の注意点を整理しました。 人事副業人材紹介のリクルーティングアドバイザー
- 人事責任者・CHROの副業単価の目安と案件の見つけ方|経営の場での人の判断を「顧問」の月額で受け、関わり方の範囲と立場を先に決める 人事責任者やCHROとして経営の場で人と組織の判断をしてきた人が副業を始めるとき、単価をどう決め、案件をどう見つけるか。顧問として月の時間で受ける単価の組み立て方、人事の仕組み全体の見立てを成果物にする方法、案件の見つけ方、関わり方の範囲と立場の決め方、本業での秘密保持・競業避止と、業務委託で受けるときの条件を整理しました。 人事副業人事責任者・CHRO
「経歴別の人事副業」の他の記事
- 人材紹介のキャリアアドバイザーが副業でできること|経験の棚卸しと売り方|CAの経験は「候補者と向き合い、転職の理由を聞き、企業と合わせ、辞退の本音を知っている」型で売れる。候補者との面談の設計と実施、辞退の理由の聞き取り、候補者の目線での求人票と面接の改善、内定から入社までの繋ぎの四つ。「候補者の側にいました」ではなく、「候補者が何で決め、何で離れるかを、企業側で使う」と売る人材紹介のキャリアアドバイザー
- 人材紹介のリクルーティングアドバイザーが副業でできること|経験の棚卸しと売り方|RAの経験は「企業の要件を聞き、求人を作り、決まらない理由を企業側に返す」型で売れる。要件の言語化と求人の設計、決まらない理由の切り分け、面接と条件の設計への助言、複数の企業を見た型の四つ。「紹介会社にいました」ではなく、「企業側の担当者として、決まらない理由を直す」と売る人材紹介のリクルーティングアドバイザー
- 人材派遣のコーディネーターが副業でできること|経験の棚卸しと売り方|派遣のコーディネーターの経験は「要件の聞き取りと、人と仕事の合わせ方と、就業後の面談」で売れる。依頼側の要件の言語化、候補者と業務の適性の合わせ方、入社後の定着の面談、多数の候補者の同時進行の四つ。派遣の形は持ち込まず、「要件を聞き、合わせ、定着させる型」を直接採用に転用して売る人材派遣のコーディネーター
- 人材派遣のコーディネーターの副業単価の目安と案件の見つけ方|短い期間で人と仕事を合わせてきた経験を採用の作業にし、派遣にあたる仕事とは線を引く人材派遣のコーディネーター
- 人事コンサルタントが副業でできること|経験の棚卸しと売り方|人事コンサルタントの経験は「採用の課題を構造化し、打ち手を設計する」工程で売れる。ただし副業の依頼側が求めるのは提案書ではなく「手が動くところまで」。設計と実行を分けず、「設計し、最初の一巡を一緒に回す」形で売る。コンサルの型をそのまま持ち込むと、費用と工数で合わない人事コンサルタント
- 人事コンサルタントの副業単価の目安と案件の見つけ方|大きな案件の型を小さい会社の規模に直し、成果物の範囲を細かく区切って値付けする人事コンサルタント