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マタハラ・ケアハラ対応|防止措置義務の五つと、実務に落とす形

公開 2026-09-22

副業で人事を受けていると、依頼先から「産休に入る人に上司が言った一言が問題になっている」「時短勤務の人への評価をどうするか」と相談されることがあります。ハラスメントの防止は、起きてからの対応より、起きない形を作ることに重心があります。しかも、この領域には事業主が講ずべき措置が定められており、「知らなかった」では済みません。この記事は、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントの防止を、厚生労働省の案内に沿って整理したものです。結論を先に書くと、根拠は男女雇用機会均等法第11条の3と育児・介護休業法第25条で、類型は「産前休業、育児休業などの制度や措置の利用に関する言動により就業環境が害されるもの」と「女性労働者が妊娠したこと、出産したことなどに関する言動により就業環境が害されるもの」の二つです。事業主が講ずべき措置は、方針の明確化と周知・啓発、相談体制の整備、事後の迅速かつ正確な確認と適正な対処と再発防止、プライバシーの保護と不利益取扱いの禁止の周知、原因や背景となる要因を解消するための措置、の五つです。副業の人事が持つのは、この五つを依頼先の運用に落とすところまでで、個別の事案の判断は弁護士や都道府県労働局にご確認ください。内部通報の窓口は内部通報制度に、育児休業の公表は育児休業取得率の公表義務にまとめています。

根拠と、二つの類型

厚生労働省の「職場におけるハラスメントの防止のために」のページでは、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントについて、男女雇用機会均等法と育児・介護休業法で定義される二つの類型が示されています。

類型内容
制度等の利用への言動産前休業、育児休業などの制度や措置の利用に関する言動により就業環境が害されるもの
状態への言動女性労働者が妊娠したこと、出産したことなどに関する言動により就業環境が害されるもの

根拠となる法令として、男女雇用機会均等法第11条の3と育児・介護休業法第25条が挙げられています。実務では前者を「マタハラ」、後者の介護に関するものを「ケアハラ」と呼ぶことがありますが、法令上は制度等の利用と状態に関する言動として整理されています。

二つの類型を分ける意味。「制度の利用」に対する言動は、育児休業や介護休業、時短勤務、子の看護休暇といった制度を使おうとする人、使っている人に向けられます。「状態」に対する言動は、妊娠や出産という事実そのものに向けられます。依頼先で研修をするとき、この二つを分けて例を示すと、管理職が自分の言動を照らしやすくなります。

介護も対象。育児だけでなく、家族の介護を行う労働者に関する制度の利用も対象です。介護は、育児と違って予告なく始まり、期間も読めません。依頼先の管理職が「介護は個人の事情」と考えていることがあるので、制度の利用に関する言動が対象になることを伝えます。

事業主が講ずべき五つの措置

厚生労働省のページでは、事業主が講ずべき措置として次の五つが示されています。

一、方針の明確化と周知・啓発。事業主の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に対してその方針を周知・啓発すること。

二、相談体制の整備。相談、苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備すること。

三、事後の迅速かつ適切な対応。相談があった場合、事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害者および行為者に対して適正に対処するとともに、再発防止に向けた措置を講ずること。

四、プライバシーの保護と不利益取扱いの禁止。相談者や行為者等のプライバシーを保護し、相談したことや事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。

五、原因や背景となる要因を解消するための措置。業務体制の整備など、職場における妊娠・出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するために必要な措置を講ずること。

五つ目が要点。他のハラスメントの防止措置と比べて特徴的なのが、五つ目の「原因や背景となる要因を解消するための措置」です。業務体制の整備が例として挙げられているとおり、誰かが休むと周りが立ち行かなくなる体制のままでは、言動だけを注意しても解決しません。ここは人事と現場の仕事で、研修だけでは埋まらない部分です。

指針としては、「事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(平成28年厚生労働省告示第312号)と、「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針」(平成21年厚生労働省告示第509号)が示されています。厚生労働省のページには、令和8年10月1日適用版と現行版の両方が掲載されているので、依頼先に渡す前に適用の時期を確かめます。

エラベルの見解

担当する側から見ると、この領域で結果が分かれるのは、研修をすることではなく「五つ目の措置に踏み込めるか」です。相談で見ていると、依頼先の多くは一から四までは形になっています。方針を出し、窓口を作り、対応の手順を決め、プライバシーの保護を書いている。それでも問題が起きるのは、誰かが産休や育休や介護休業に入ったときに、その仕事が残った人に丸ごと乗る体制のままだからです。乗せられた側が不満を持ち、それが言動として出る。言動を注意しても、体制が変わらなければ繰り返します。

副業の人事が入るなら、休業に入る人が出たときの業務の引き継ぎと再配分を、制度として設計します。誰が引き継ぐか、その人の元の仕事はどうするか、一時的な増員や外注を使うか、評価でどう扱うか。この設計は、まさに人事の仕事です。研修の講師は外部に頼めますが、業務体制の整備は社内の事情を知る人にしかできません。五つ目の措置を「業務体制の整備」として具体化できる人は、この領域で価値が出ます。エラベルでは、依頼側が担当者の経歴を見て選ぶ仕組みなので、休業者が出たときの体制づくりに関わった経験がある人は、そこを経歴に書いておくと選ばれやすくなります。

実務に落とす手順

副業の人事が作るのは、次の形です。

措置作るもの確かめること
方針の明確化と周知方針の文書、管理職向けの説明資料、二つの類型の具体例管理・監督者を含む全員に届いているか
相談体制窓口の案内、受付の様式、担当者の指定相談しやすい相手になっているか、外部窓口の要否
事後の対応事実確認の手順、対処の考え方、再発防止の型迅速かつ正確な確認ができる段取りか
プライバシーと不利益取扱い保護の規定、周知の文書、人事上の扱いの確認の工程相談したことで評価や配置が変わっていないか
原因や背景の解消休業時の引き継ぎと再配分の設計、代替の手当て、評価での扱い残った人に丸ごと乗る形になっていないか

管理職への説明。管理職が迷うのは、「配慮」と「ハラスメント」の境目です。制度の利用を妨げる言動は問題になりますが、業務上の必要に基づく配置や業務量の調整まで否定されるわけではありません。ここは個別の事案によるので、迷う場面を集めて、弁護士や都道府県労働局に確認したうえで、管理職向けの例として整理します。

本人との面談。妊娠や介護の申出があったときに、上司と人事が何を話すかを型にしておきます。制度の説明、業務の引き継ぎ、復帰の見通し、本人の希望。この面談の型があるかどうかで、行き違いが大きく減ります。健康や家庭の事情に関わる情報を扱うので、誰がどこまで知るかも先に決めます。

記録。相談があったときの記録、事実確認の記録、対処の記録を残します。プライバシーの保護と両立させるため、保管の場所とアクセスの範囲を決めておきます。

エラベルの見解

外に出してよいのは、方針の文書の案、管理職向けの説明資料、相談の受付の様式と手順、事実確認の段取りの型、休業時の業務の引き継ぎと再配分の設計、評価での扱いの整理、記録の様式までで、「この言動はハラスメントに当たるか」「この対処で足りるか」「この配置転換は不利益取扱いに当たるか」といった個別の判断は、弁護士や都道府県労働局の範囲です。特に、個別の事案の事実確認や対処に副業の人事が入ることは、プライバシーの観点からも慎重に判断します。

担当する側から見ると、この領域で信頼されるのは、「起きたときの対応」より「起きない体制」を作れることです。相談が来てから動く形だけを整えても、問題の数は減りません。休業に入る人が出ることを前提に、業務の引き継ぎと再配分が制度として回っていれば、そもそも不満が言動として出る場面が減ります。制度の整備と業務体制の設計を同じ人が見られると、五つの措置が形だけでなく機能します。エラベルでは、依頼側が担当者を選べるので、この両方を見られる人は、両立支援の整備で続けて頼まれています。

まとめ

よくある質問

「配慮」のつもりの言動が、ハラスメントになることがありますか

個別の事案によるので一般化はできませんが、本人の意向を確かめずに業務を外す、昇進の対象から外す、といった扱いは、制度の利用や妊娠・出産の状態に関する言動として問題になり得ます。実務としては、配慮の内容を本人と話して決める工程を置き、話した内容を記録に残す形にします。「よかれと思って」が行き違いになるのは、本人に聞いていないときです。迷う場面は集めて、弁護士や都道府県労働局に確認したうえで、管理職向けの例に落とします。

周りの負担が増えて不満が出ています。どうすればよいですか

これが五つ目の措置(原因や背景となる要因を解消するために必要な措置)の中心です。厚生労働省の記載でも、業務体制の整備などが例として挙げられています。休業に入る人が出たときに、誰が引き継ぐか、その人の元の仕事をどうするか、一時的な増員や外注を使うか、引き継いだ人を評価でどう扱うかを、制度として決めます。不満を「言ってはいけないこと」として抑えるだけでは、解決しません。業務体制の設計は人事の仕事なので、副業の人事が最も価値を出せる部分です。

介護は本人が言い出しにくく、把握できません

介護は予告なく始まり、本人が言い出しにくいという特徴があります。制度の案内を、必要になったときではなく平時に全員へ行う形にすると、本人が制度の存在を知ったうえで相談できます。管理職には、介護に関する制度の利用も防止措置の対象になることを伝えます。相談の窓口を人事だけでなく複数用意する(上司以外に相談できる先を作る)ことも有効です。制度の内容と手続は、育児・介護休業法の案内と社会保険労務士にご確認ください。育児休業の公表義務は育児休業取得率の公表義務に整理しています。

出典