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高年齢者雇用安定法|65歳までの雇用確保措置と70歳までの就業確保措置

公開 2026-09-22

副業で人事を受けていると、依頼先から「定年後の再雇用をどうするか」「70歳まで雇わないといけないのか」と相談されることがあります。ここは義務と努力義務が混ざっていて、しかも報道では「70歳まで働く時代」といった言い方がされるので、依頼先が誤解していることがよくあります。この記事は、高年齢者雇用安定法に基づく措置を、厚生労働省の記載に沿って整理したものです。結論を先に書くと、65歳までの雇用確保措置は義務で、「定年制の廃止」「65歳までの定年の引き上げ」「希望者全員の65歳までの継続雇用制度の導入」の三つのいずれかを講じます(平成25年4月1日施行)。継続雇用制度の対象者を限定する基準を定められた経過措置は、2025年3月31日をもって終了しました。70歳までの就業確保措置は努力義務で、五つの選択肢が示されています(令和3年4月1日施行)。厚生労働省は、どちらについても「定年年齢の引上げを義務付けるものではない」と明記しています。副業の人事が持つのは、依頼先の制度の現状の確認と、選択肢の整理と運用の設計までで、就業規則の変更の手続や個別の判断は社会保険労務士や弁護士にご確認ください。法改正の追い方は法改正の追い方と情報源にまとめています。

65歳までの雇用確保措置(義務)

厚生労働省の記載では、65歳までの雇用確保措置として、次の三つが示されています。事業主は、このいずれかを講じます。

措置内容
定年制の廃止定年そのものをなくす
65歳までの定年の引き上げ定年年齢を65歳まで引き上げる
希望者全員の65歳までの継続雇用制度の導入希望者全員を65歳まで継続して雇用する制度(再雇用制度・勤務延長制度)を設ける

この改正は平成25年4月1日から施行されています。厚生労働省は、この改正について「定年の65歳への引上げを義務付けるものではありません」と明記しています。つまり、定年を60歳のままにして、希望者全員を65歳まで継続雇用する制度を設ける形でも、義務は満たされます。

経過措置の終了。平成24年度までに労使協定で継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めていた事業主については、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢以上の年齢の者について対象者を限定する基準を定めることが認められていましたが、その経過措置は2025年3月31日をもって終了しました。厚生労働省は、経過措置の終了によって2025年4月1日以降に65歳までの定年の引き上げが義務になるわけではない、とも説明しています。つまり、変わったのは「継続雇用の対象者を基準で絞れるかどうか」であって、定年年齢そのものの義務ではありません。

依頼先で確かめること。依頼先の就業規則に、継続雇用の対象者を限定する基準が残っていないかを確認します。経過措置に基づく基準が残ったままだと、現在の運用と合いません。就業規則の条文の確認と変更の手続は、社会保険労務士にご確認ください。

70歳までの就業確保措置(努力義務)

厚生労働省の記載では、70歳までの就業確保措置として、事業主は次のいずれかの措置を講ずるよう努めることとされています。令和3年4月1日から施行されています。

措置内容
70歳までの定年の引上げ定年年齢を70歳まで引き上げる
定年制の廃止定年そのものをなくす
70歳までの継続雇用制度の導入再雇用制度・勤務延長制度を70歳まで設ける
業務委託契約を締結する制度70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度を導入する
社会貢献事業に従事できる制度70歳まで継続的に、事業主自らが実施する社会貢献事業、または事業主が委託・出資する団体の社会貢献事業に従事できる制度を導入する

厚生労働省は、この措置について「70歳までの定年年齢の引上げを義務付けるものではありません」と明記しています。また、下の二つ(業務委託契約と社会貢献事業)は創業支援等措置と呼ばれ、厚生労働省のページでは「創業支援等措置の実施に関する計画の記載方法について」という資料が案内されています。

義務と努力義務の違い。65歳までは義務、70歳までは努力義務です。依頼先が「70歳まで雇わないといけない」と誤解している場合、この違いを伝えます。ただし、努力義務だから何もしなくてよい、という話ではなく、事業主は措置を講ずるよう努めることとされています。依頼先が何もしていない場合、「何を選ぶか」を経営者が判断する場を作ることが、副業の人事の仕事になります。

エラベルの見解

担当する側から見ると、この領域で難易度が分かれるのは、制度の選択肢を並べることではなく「継続雇用の中身を設計できるか」です。相談で見ていると、多くの依頼先は「希望者全員の継続雇用制度」を選んでいて、義務としてはそれで満たされています。問題はその中身で、定年前と同じ仕事をしているのに処遇だけが大きく下がる、役割が決まらないまま「とりあえず再雇用」になる、本人も周囲も何を期待されているか分からない、という形が残ります。制度としては適法でも、現場では本人のやる気が下がり、若手が「この会社で長く働くとこうなる」と見ます。

副業の人事が入るなら、制度の選択の後に「再雇用後の役割・処遇・評価をどう決めるか」を設計します。具体的には、再雇用後に任せる役割を職務の単位で決める、フルタイム以外の働き方(週の日数、時間)を選べるようにする、処遇の決め方の考え方を本人に説明できる形にする、若手への技能の引き継ぎを役割に入れる、の四つです。ここは法令の話ではなく人事の設計なので、社会保険労務士でも弁護士でもなく、人事の経験がある人の仕事です。エラベルでは、依頼側が担当者の経歴を見て選ぶ仕組みなので、シニアの再雇用の設計に関わった経験がある人は、そこを書いておくと選ばれやすくなります。

依頼先で実際に詰める論点

制度の選択が決まった後、依頼先で詰めることは次のとおりです。副業の人事が持てる範囲を中心に並べます。

論点詰めること誰が持つか
就業規則の条文経過措置に基づく限定の基準が残っていないか。継続雇用の条文が現在の運用と合っているか確認は人事、変更の手続は社会保険労務士
再雇用後の役割定年前と同じか、変えるか。変えるなら何を任せるか依頼先の人事と現場
働き方の選択肢フルタイム、週の日数を減らす、時間を短くする、のどれを用意するか依頼先の人事
処遇の決め方何を基準に決めるか。本人に説明できる形になっているか依頼先の人事と経営。適法性は専門家に
評価再雇用後の評価をどうするか。目標の置き方依頼先の人事
本人との面談いつ、誰が、何を話すか(定年の何か月前か)依頼先の人事と上司
技能の引き継ぎ若手への引き継ぎを役割に入れるか依頼先の現場
70歳までの措置努力義務として何を選ぶか。創業支援等措置を使うか経営が判断。計画の作成は専門家と

要点は、定年の何か月前に本人と話すかを決めることです。制度があっても、本人が「どうなるのか」を知るのが直前だと、決まる前に転職を考え始めます。定年の1年前や半年前に、役割と働き方の選択肢を示して話す場を作ると、本人も会社も準備ができます。この面談の型を作るのは、人事の仕事です。

創業支援等措置(業務委託契約や社会貢献事業)を選ぶ場合は、計画の作成が必要とされ、厚生労働省のページに記載方法の資料が案内されています。業務委託の形は労働者としての保護の範囲が変わるので、設計と契約の中身は社会保険労務士や弁護士にご確認ください。

エラベルの見解

外に出してよいのは、制度の現状の確認、選択肢の整理、再雇用後の役割と働き方と評価の設計、面談の型、就業規則の条文の案、若手への引き継ぎの設計までで、「この継続雇用制度は義務を満たしているか」「この処遇の引き下げは適法か」「創業支援等措置の計画はこれでよいか」といった個別の判断は、社会保険労務士や弁護士の範囲です。特に、再雇用後の処遇の引き下げをめぐる問題は、労働条件の不利益変更や均衡待遇の論点に触れるので、副業の人事が「これなら大丈夫です」と言う場所ではありません。

担当する側から見ると、この案件で信頼されるのは、法令の説明より「若手がどう見るか」を持ち込めることです。再雇用の設計は、シニア本人の問題に見えますが、実際には若手が「この会社で長く働いた先」を見る材料になっています。採用の支援も受けている副業の人事なら、面接で候補者に「長く働いた先はどうなりますか」と聞かれたときに答えられる形になっているか、という視点で設計を見られます。制度の担当と採用の担当が分かれている依頼先では、この視点が抜けがちです。エラベルでは、依頼側が担当者を選べるので、制度と採用の両方を見られる人は、この領域で選ばれています。

まとめ

よくある質問

依頼先が「70歳まで雇う義務がある」と思い込んでいます

70歳までの就業確保措置は努力義務で、厚生労働省も「70歳までの定年年齢の引上げを義務付けるものではありません」と明記しています。義務なのは65歳までの雇用確保措置のほうです。ただし、努力義務だから何もしなくてよいという意味ではなく、措置を講ずるよう努めることとされています。依頼先には、義務と努力義務の違いを伝えたうえで、「70歳まで何を用意するか」を経営が判断する場を作ることを提案します。個別の判断は社会保険労務士にご確認ください。

継続雇用の対象者を、勤務成績で絞ることはできますか

平成24年度までに労使協定で対象者を限定する基準を定めていた事業主に認められていた経過措置は、2025年3月31日で終了しました。現在の制度で対象者を絞れるかどうかは、依頼先の制度の設計と個別の事情によるので、社会保険労務士か弁護士にご確認ください。副業の人事としては、まず就業規則に経過措置に基づく限定の基準が残っていないかを確認し、残っている場合は専門家に相談する材料を作ります。法令の確かめ方は法改正の追い方と情報源に整理しています。

再雇用後の処遇を下げることについて、どこまで答えてよいですか

処遇の引き下げが適法かどうかは、労働条件の変更や均衡待遇の論点に関わる個別の判断なので、社会保険労務士や弁護士に確認してもらいます。副業の人事が持てるのは、「処遇の決め方を本人に説明できる形にする」ことです。定年前と役割が変わるなら何がどう変わるのか、働き方の選択肢は何か、評価はどうするのか、を紙にして、定年の半年から1年前の面談で本人に示す型を作ります。説明できる形になっていれば、本人の納得も、若手から見たときの見え方も変わります。制度の整備の進め方はテレワークの労務管理の考え方が参考になります。

出典