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時間外労働の上限規制|45時間・360時間と特別条項、協定があっても超えられない線

公開 2026-09-23

副業で人事を受けていると、勤怠の集計を見せてもらって最初に確かめるのが上限規制です。ところが会社側は「特別条項があるから大丈夫」と説明することがあります。特別条項があっても超えられない線が、条文に別に置かれています。結論を先に書くと、労働基準法第36条第6項は、三六協定で定めるところによって労働させる場合であっても、①坑内労働その他省令で定める健康上特に有害な業務について一日の延長時間が二時間を超えないこと、②一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間が百時間未満であること、③対象期間の初日から一箇月ごとに区分した各期間に直前の一箇月から五箇月の期間を加えたそれぞれの期間における当該時間の一箇月当たりの平均時間が八十時間を超えないこと、を満たすものとしなければならないと定めています。個別の判断は労働基準監督署にご確認ください。協定の作り方は36協定の基本に、労働時間の考え方は労働時間の原則と例外にまとめています。

三つの階層

上限は、三つの層で考えると整理できます。

第一層:限度時間(第36条第3項・第4項)。第3項は、協定で定める延長時間を「当該事業場の業務量、時間外労働の動向その他の事情を考慮して通常予見される時間外労働の範囲内において、限度時間を超えない時間に限る」としています。第4項は「前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間(第三十二条の四第一項第二号の対象期間として三箇月を超える期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあつては、一箇月について四十二時間及び一年について三百二十時間)とする」。

第二層:特別条項(第36条第5項)。「当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に第三項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合において」、次を定めることができます。

あわせて「第二項第二号の対象期間において労働時間を延長して労働させる時間が一箇月について四十五時間(三箇月を超える一年単位の変形労働時間制の場合は四十二時間)を超えることができる月数(一年について六箇月以内に限る)を定めなければならない」とされています。

一箇月と一年で数え方が違います。一箇月の枠は「労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間」で、休日労働を含みます。一年の枠は「労働時間を延長して労働させることができる時間」で、休日労働は含みません。ここを取り違えて集計している会社が少なくありません。

第三層:協定があっても超えられない線(第36条第6項)。冒頭に挙げた三つです。第二号の「一箇月について百時間未満」と第三号の「複数月平均八十時間以下」は、いずれも労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間を対象としています。つまり休日労働を含めて数えます。

第三号の数え方。条文は「対象期間の初日から一箇月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の一箇月、二箇月、三箇月、四箇月及び五箇月の期間を加えたそれぞれの期間における…一箇月当たりの平均時間」としています。つまり、二か月平均・三か月平均・四か月平均・五か月平均・六か月平均のすべてが八十時間以下であることが要ります。ある月だけ見て八十時間以下でも、平均で超えることがあります。

罰則があります。労働基準法第119条第1号は、第32条、第34条、第35条、第36条第6項、第37条、第39条などの規定に違反した者を「六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金」に処するとしています。第6項は罰則の対象です。

適用されない業務。第36条第11項は「第三項から第五項まで及び第六項(第二号及び第三号に係る部分に限る。)の規定は、新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務については適用しない」と定めています。

事業・業務によって扱いが違う

附則に、三六協定の適用を読み替える規定が置かれています。

工作物の建設の事業(附則第139条第1項)。「工作物の建設の事業(災害時における復旧及び復興の事業に限る。)その他これに関連する事業として厚生労働省令で定める事業」について、当分の間、第36条第5項の一箇月の枠から「百時間未満の範囲内に限る」という括弧書きを外し、第6項第二号・第三号を適用しない、とされています。災害時の復旧・復興の事業に限った読替えである点に注意します。

自動車の運転の業務(附則第140条第1項)。一般乗用旅客自動車運送事業の業務、貨物自動車運送事業の業務その他の自動車の運転の業務として厚生労働省令で定める業務について、当分の間、第36条第5項を読み替え、一年について労働時間を延長して労働させることができる時間を「第二項第四号に関して協定した時間を含め九百六十時間を超えない範囲内」とし、一箇月について四十五時間を超えることができる月数を定める規定は適用されず、第6項第二号・第三号も適用しない、とされています。

医業に従事する医師(附則第141条)。第1項は、医療提供体制の確保に必要な者として省令で定める者に限り、当分の間、第36条第2項第四号の読替え、第3項の「限度時間」を「限度時間並びに労働者の健康及び福祉を勘案して厚生労働省令で定める時間」と読み替え、第5項および第6項第二号・第三号を適用しない、としています。第3項は「使用者は、…第三十六条第六項に定める要件並びに労働者の健康及び福祉を勘案して厚生労働省令で定める時間を超えて労働させてはならない」、第5項は「第三項の規定に違反した者は、六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する」と定めています。

「上限がない」ではありません。いずれも読替えであって、別の枠がかかる形です。自社や取引先がこれらに当たる場合は、適用される枠を条文から確かめます。個別の当てはめは労働基準監督署にご確認ください。

エラベルの見解

担当する側から見ると、上限規制の案件で最初に作るのは集計定義の確認表です。勤怠システムが何を「時間外労働」として数えているかを確かめます。法定休日の労働を含めているか、所定休日の労働をどう扱っているか、深夜の時間を二重に数えていないか。第36条第6項の二号・三号は休日労働を含めるので、時間外だけを見て管理しているシステムは、そのままでは使えません。

次に、複数月平均の計算を仕込みます。多くの会社は単月の数字しか見ていません。条文は、二か月から六か月までの各平均を求めています。表計算で六列作って、どれか一つでも八十時間を超えたら色が付く形にすると、現場が自分で気づけます。ここまで作ると、案件の価値が目に見えます。

そして、限度時間を超える月数の管理です。第5項は「一年について六箇月以内」という月数の上限を協定に定めることを求めています。四十五時間を超えた月をカウントして、残りの回数が見える表を作ります。年度の後半で「もう使い切っている」と分かるのが早いほど、業務の配分を変える時間ができます。

指針は「労働時間の延長は原則として限度時間を超えないものとされていることに十分留意し、当該時間を限度時間にできる限り近づけるように努めなければならない」としています。管理の仕組みを作る仕事は、数字を監視するためではなく、超えなくて済む業務設計に戻すためのものだと、会社に伝えておきます。エラベルは依頼側が担当者の経歴を見て選ぶ仕組みなので、この立て直しをやり切った経験は、経歴に書いておくと効きます。

指針が定める留意事項

指針(平成30年厚生労働省告示第323号)は、第36条第7項に基づいて定められています。

労使当事者の責務(第2条)。「労働時間の延長及び休日の労働は必要最小限にとどめられるべきであり、また、労働時間の延長は原則として同条第三項の限度時間を超えないものとされている」ことに十分留意したうえで協定するよう努めなければならない、としています。

使用者の責務(第3条)。第1項は「協定において定めた…時間の範囲内で労働させた場合であっても、労働契約法第五条の規定に基づく安全配慮義務を負うことに留意しなければならない」。第2項は、脳・心臓疾患の労災認定基準に触れ、「一週間当たり四十時間を超えて労働した時間が一箇月においておおむね四十五時間を超えて長くなるほど…関連性が徐々に強まる」こと、「発症前一箇月間におおむね百時間又は発症前二箇月間から六箇月間までにおいて一箇月当たりおおむね八十時間を超える場合には…関連性が強いと評価できる」ことに留意しなければならない、としています。安全配慮義務の枠は安全配慮義務にまとめています。

業務区分の細分化(第4条)。労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる業務の種類について定めるに当たっては、業務の区分を細分化することにより当該業務の範囲を明確にしなければならない。

限度時間を超える場合の定め方(第5条第1項)。「臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合をできる限り具体的に定めなければならず、『業務の都合上必要な場合』、『業務上やむを得ない場合』など恒常的な長時間労働を招くおそれがあるものを定めることは認められない」。

割増賃金の率(第5条第3項)。限度時間を超えて労働させる時間に係る割増賃金の率を、法定の率を超える率とするように努めなければならない。

一箇月に満たない期間の目安(第6条・別表)。有期契約などで一箇月に満たない期間において労働する労働者について、一週間十五時間、二週間二十七時間、四週間四十三時間を超えないようにするよう努めなければならない、とされています。

休日労働(第7条)。労働させることができる休日の日数をできる限り少なくし、及び休日に労働させる時間をできる限り短くするように努めなければならない。

健康福祉確保措置(第8条)。限度時間を超えて労働させる労働者に対する措置として、次のうちから協定することが望ましい、とされています。

  1. 労働時間が一定時間を超えた労働者に医師による面接指導を実施すること
  2. 深夜に労働させる回数を一箇月について一定回数以内とすること
  3. 終業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保すること
  4. 勤務状況及び健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与すること
  5. 勤務状況及び健康状態に応じて、健康診断を実施すること
  6. 年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めて取得を促進すること
  7. 心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること
  8. 勤務状況及び健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に配置転換をすること
  9. 必要に応じて、産業医等による助言・指導を受け、又は保健指導を受けさせること

記録の保存。施行規則第17条第2項は、健康福祉確保措置の実施状況に関する記録を、協定の有効期間中および満了後五年間(附則第71条により当分の間三年間)保存しなければならないとしています。

エラベルの見解

外に出してよいのは、集計定義の確認、複数月平均の管理表、限度時間超の月数の管理、健康福祉確保措置の設計、記録の保存の仕組みまでで、「この業務がどの読替えの対象に当たるか」「この集計方法で適法か」といった個別の判断は、労働基準監督署や社会保険労務士の範囲です。

担当する側から見ると、この案件で会社に効くのは、指針の第5条第1項をそのまま見せることです。「業務の都合上必要な場合」「業務上やむを得ない場合」といった書き方は認められない、と明記されています。多くの会社の協定書には、まさにこの文言が入っています。条文を持ち出す必要はなく、指針の一文を見せれば通じます。

そして、ここを直そうとすると、なぜ限度時間を超えるのかを言語化する作業になります。決算期、大型案件の納期、季節の繁忙、障害対応。具体的に書き出すと、そのうちいくつかは予測できるものだと分かります。予測できるなら「通常予見することのできない業務量の大幅な増加等」には当たりません。つまり、協定の書き直しが、要員計画の見直しに接続します。

もう一つ、健康福祉確保措置の九項目は、そのまま社内の施策の候補になります。勤務間インターバル、深夜業の回数制限、相談窓口。協定に書くためだけでなく、実際に回す仕組みとして設計できると、案件が「協定を直す仕事」から「働き方を直す仕事」に変わります。エラベルでは、依頼側が担当者を選べるので、この広がりを経験した人は、次の案件で選ばれやすくなります。

まとめ

よくある質問

特別条項があれば、月100時間まで働かせてよいですか

労働基準法第36条第5項は、一箇月について協定できる時間を「第二項第四号に関して協定した時間を含め百時間未満の範囲内」としており、百時間ちょうどは含まれません。さらに第6項第二号は、協定で定めるところによって労働させる場合であっても、一箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間が百時間未満であることを求めています。いずれも休日労働を含めた数字です。加えて第三号の複数月平均八十時間以下も同時に満たす必要があります。個別の判断は労働基準監督署にご確認ください。

複数月平均80時間は、どう計算しますか

労働基準法第36条第6項第三号は「対象期間の初日から一箇月ごとに区分した各期間に当該各期間の直前の一箇月、二箇月、三箇月、四箇月及び五箇月の期間を加えたそれぞれの期間における労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の一箇月当たりの平均時間」が八十時間を超えないこと、と定めています。したがって、二か月平均、三か月平均、四か月平均、五か月平均、六か月平均のすべてを確かめます。実務では、月ごとの時間外と休日労働の合計を並べ、六通りの平均を自動計算する表を作ります。集計方法の個別の判断は、労働基準監督署や社会保険労務士にご確認ください。

協定に「業務の都合上必要な場合」と書いています

指針(平成30年厚生労働省告示第323号)第5条第1項は、限度時間を超えて労働させることができる場合を定めるに当たっては、通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合をできる限り具体的に定めなければならず、「業務の都合上必要な場合」「業務上やむを得ない場合」など恒常的な長時間労働を招くおそれがあるものを定めることは認められない、としています。実務では、実際に限度時間を超えた月とその理由を過去一年分書き出し、具体的な場面に置き換えます。記載の適否は、労働基準監督署にご確認ください。

出典