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裁量労働制の要件|専門業務型20業務と企画業務型、2024年4月からの本人同意

公開 2026-09-23

副業で人事を受けていると、「うちはエンジニアに裁量労働制を入れています」と言われることがあります。話を聞くと、プログラマーが対象になっていたり、本人の同意を取っていなかったりします。結論を先に書くと、労働基準法第38条の3第1項は、労使協定で定めた場合に「第二号に掲げる時間労働したものとみなす」制度を置き、対象業務を「業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして厚生労働省令で定める業務」に限っています。厚生労働省の解説は、これを省令および告示によって定められた全20業務と説明しています。個別の判断は労働基準監督署にご確認ください。フレックスはフレックスタイム制の要件に、変形労働時間制は変形労働時間制の要件にまとめています。

専門業務型の20業務

厚生労働省の「専門業務型裁量労働制の解説」は、対象業務を次のとおり整理しています(施行規則第24条の2の2第2項および厚生労働大臣の指定する業務)。

  1. 新商品若しくは新技術の研究開発又は人文科学若しくは自然科学に関する研究の業務
  2. 情報処理システムの分析又は設計の業務
  3. 新聞若しくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送番組の制作のための取材若しくは編集の業務
  4. 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
  5. 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
  6. 広告、宣伝等における商品等の内容、特長等に係る文章の案の考案の業務(コピーライター)
  7. 事業運営において情報処理システムを活用するための問題点の把握又はそれを活用するための方法に関する考案若しくは助言の業務(システムコンサルタント)
  8. 建築物内における照明器具、家具等の配置に関する考案、表現又は助言の業務(インテリアコーディネーター)
  9. ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
  10. 有価証券市場における相場等の動向又は有価証券の価値等の分析、評価又はこれに基づく投資に関する助言の業務(証券アナリスト)
  11. 金融工学等の知識を用いて行う金融商品の開発の業務
  12. 大学における教授研究の業務(主として研究に従事するものに限る)
  13. 銀行又は証券会社における顧客の合併及び買収に関する調査又は分析及びこれに基づく考案及び助言の業務(M&Aアドバイザー)
  14. 公認会計士の業務
  15. 弁護士の業務
  16. 建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務
  17. 不動産鑑定士の業務
  18. 弁理士の業務
  19. 税理士の業務
  20. 中小企業診断士の業務

除かれる業務が明記されています。解説は、二号の情報処理システムの分析・設計について「プログラムの設計又は作成を行うプログラマーは含まれません」、七号のシステムコンサルタントについて「アプリケーションの設計又は開発の業務、データベース設計又は構築の業務は含まれない」、九号のゲーム用ソフトウェアの創作について「専ら他人の具体的指示に基づく裁量権のないプログラミング等を行う者…は含まれません」としています。

十二号の「主として研究」。解説は、研究の業務のほかに講義等の授業の業務に従事する場合、その時間が一週の所定労働時間または法定労働時間のうち短いもののおおむね五割に満たない程度であることをいう、としています。

十三号のM&Aアドバイザー。解説は「M&Aに関する『調査又は分析』と『考案及び助言』の両方の業務を行うものが対象となるものであり、いずれか一方のみを行うものである場合には対象業務には該当しません」としています。

「うちのエンジニア」は入りません。アプリケーションの設計・開発やデータベースの構築は、解説が明確に除いています。ここを誤ったまま運用している会社は少なくありません。

協定で定める10項目と、2024年4月からの追加

条文の枠(第38条の3第1項)。労使協定で次を定めます。

省令で追加された事項(施行規則第24条の2の2第3項)。

厚生労働省の解説は、協定事項を10項目に整理しています。対象業務/みなし労働時間/具体的な指示をしないこと/健康・福祉確保措置/苦情処理措置/本人同意/不利益取扱いの禁止/同意の撤回の手続/有効期間(三年以内とすることが望ましい)/記録の保存(有効期間中および満了後三年間)。後半の五つが、令和6年4月1日以降に追加で必要となる項目として示されています。

解説が挙げる実施事項。対象業務の遂行の手段や時間配分の決定等に関し使用者が適用労働者に具体的な指示をしないこと、対象業務の内容等を踏まえて適切な水準のみなし労働時間を設定し、手当の支給や基本給の引上げなどにより相応の処遇を確保すること、健康・福祉確保措置と苦情処理措置の実施、同意をしなかった労働者や同意を撤回した労働者に不利益な取扱いをしないこと、記録の保存が挙げられています。

導入の流れ。解説は、①労使協定を過半数労働組合または過半数代表者と結ぶ、②個別の労働契約や就業規則等の整備と所轄労働基準監督署への協定届の届出、③労働者本人の同意を得る、④制度を実施する、⑤有効期間の満了(継続する場合は①へ)、という順で示しています。協定は作業場への掲示等により労働者に周知しなければならない、ともされています。

エラベルの見解

担当する側から見ると、裁量労働制の案件で最初に確かめるのは対象業務の当てはめです。ここが外れていると、他をいくら整えても土台が崩れます。実務では、対象者一人ずつの実際の業務を書き出して、解説の20業務の記述と突き合わせます。この作業をすると、たいてい何人かが外れます。

次に確かめるのが、三号の「具体的な指示をしないこと」が守られているかです。条文は協定に書くことを求めていますが、書いただけでは足りません。日々の業務で、出社時刻を指定している、タスクの進め方を細かく管理している、会議への出席を義務づけている。こういう運用が残っていると、制度の前提が崩れます。協定書を直す仕事ではなく、マネジメントの仕方を変える仕事だと、最初に伝えておきます。

そして、令和6年4月以降の追加項目です。本人同意、不利益取扱いの禁止、同意の撤回の手続、記録の保存。既存の協定のまま更新している会社は、ここが抜けています。特に同意は、協定に書くだけでなく一人ずつ取る必要があり、様式と説明の資料が要ります。解説も、労使協定の締結・届出のあとに「労働者本人の同意を得る」というステップを独立して置いています。エラベルは依頼側が担当者の経歴を見て選ぶ仕組みなので、この移行を回した経験は、経歴に書いておくと効きます。

企画業務型と、会社に渡すもの

企画業務型(第38条の4第1項)。専門業務型と違い、労使委員会の決議が前提です。「賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表する者を構成員とするものに限る。)が設置された事業場において、当該委員会がその委員の五分の四以上の多数による議決により次に掲げる事項に関する決議をし、かつ、使用者が、…当該決議を行政官庁に届け出た場合において、…みなす」。

対象業務(第38条の4第1項第一号)。「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であつて、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務」。

対象労働者(第二号)。「対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者であつて、当該対象業務に就かせたときは当該決議で定める時間労働したものとみなされることとなるものの範囲」。

本人同意は条文本体にあります(第六号)。「使用者は、…対象業務に就かせたときは第三号に掲げる時間労働したものとみなすことについて当該労働者の同意を得なければならないこと及び当該同意をしなかつた当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこと」。

労使委員会の要件(第38条の4第2項)。委員の半数については、過半数労働組合等により任期を定めて指名されていること。議事録が作成され、保存されるとともに、事業場の労働者に対する周知が図られていること。その他省令で定める要件。

定期報告(第38条の4第4項)。届出をした使用者は、定期的に、健康及び福祉を確保するための措置の実施状況を行政官庁に報告しなければならないとされています。

副業の人事が作るのは、次の形です。個別の適否の判断は労働基準監督署にご確認ください。

作るもの中身
対象者の業務の棚卸し一人ずつの実際の業務を、20業務(または企画業務型の定義)と突き合わせる
指示の実態の確認出社時刻の指定、進め方の細かい管理、会議の義務づけがないか
みなし時間の設定業務の内容等を踏まえた水準。手当や基本給での相応の処遇の確保
健康・福祉確保措置労働時間の状況に応じた具体的内容。実施状況の記録
苦情処理措置窓口と手順。実施状況の記録
同意の様式一人ずつ取る。説明資料とセットで用意
撤回の手続どこに、どう申し出るか。撤回後の取扱い
有効期間三年以内が望ましいとされている。更新の段取り
記録の保存労働時間の状況、健康福祉措置、苦情処理、同意と撤回。有効期間中+満了後三年間
届出専門業務型は協定届、企画業務型は決議の届出。企画業務型は定期報告も
労使委員会(企画型)委員の半数の指名、議事録の作成・保存・周知、五分の四以上の議決
深夜・休日の管理みなしの対象は労働時間。深夜割増と休日労働は別に管理

深夜と休日は別です。裁量労働制は、労働時間の算定についてのみなしの仕組みです。深夜の割増賃金(第37条第4項)や、休日労働の扱いは別に管理します。詳しくは休憩・休日のルールにまとめています。

年次有給休暇も通常どおりです。裁量労働制の適用者にも第39条は適用されます。年次有給休暇の付与ルールを参照してください。

エラベルの見解

外に出してよいのは、業務の棚卸し、協定・決議の項目立て、同意と撤回の様式、健康・福祉確保措置の設計、記録の保存の仕組み、届出と定期報告の段取りまでで、「この業務が対象業務に当たるか」「この運用で有効な裁量労働制といえるか」といった個別の判断は、労働基準監督署や弁護士の範囲です。

担当する側から見ると、この案件で会社に伝えるべきことは一つです。裁量労働制は、残業代を払わなくてよくなる制度ではありません。みなし労働時間を実態より低く設定すれば、それは未払いの問題になります。解説も「対象業務の内容等を踏まえて適切な水準のみなし労働時間を設定し、手当の支給や基本給の引上げなどにより相応の処遇を確保すること」を挙げています。処遇の確保がセットで書かれていることを、そのまま見せます。

実務でよくあるのは、導入の検討を進めるうちに「だったら入れなくてよい」となる展開です。対象業務が限られ、本人同意が要り、撤回もでき、記録の保存と(企画業務型なら)定期報告まである。手間に対して、得られるものが見合わないと分かる。この結論に至るのも、正しい仕事です。

そして、本当に裁量が必要な職種なら、フレックスタイム制のほうが現実的な場合があります。清算期間が三箇月以内まで認められ、対象業務の限定もありません。制度の選択肢を並べて、目的から逆算して選べるかどうかが、この領域の価値です。エラベルでは、依頼側が担当者を選べるので、この比較を示せる人は、制度まわりの案件で指名されます。

まとめ

よくある質問

エンジニアに専門業務型を適用できますか

厚生労働省の「専門業務型裁量労働制の解説」は、対象業務の二号(情報処理システムの分析又は設計の業務)について「プログラムの設計又は作成を行うプログラマーは含まれません」としています。また七号(システムコンサルタントの業務)について「アプリケーションの設計又は開発の業務、データベース設計又は構築の業務は含まれない」としており、これらは二号の業務に含まれると説明されています。したがって、職種名ではなく実際の業務の内容で当てはめる必要があります。個別の該当性の判断は、労働基準監督署にご確認ください。

すでに導入していますが、2024年4月以降も同じ協定でよいですか

労働基準法施行規則第24条の2の2第3項は、協定で定める事項として、制度の適用について本人の同意を得なければならないことおよび同意をしなかった労働者への不利益取扱いの禁止、同意の撤回に関する手続、協定の有効期間の定め、労働者ごとの記録の保存を挙げています。厚生労働省の解説は、これらを令和6年4月1日以降に追加で必要となる項目として示しています。したがって、協定の見直しと、労働者一人ずつの同意の取得が必要になります。自社の協定が要件を満たしているかの確認は、労働基準監督署にご確認ください。

裁量労働制なら残業代は不要ですか

裁量労働制は、労働時間の算定について協定または決議で定めた時間労働したものとみなす制度です。みなし労働時間が法定労働時間を超える設定であれば、その超過分について割増賃金が必要になります。また、深夜の割増賃金(労働基準法第37条第4項)や休日労働の扱いは、みなしの対象外として別に管理します。厚生労働省の解説も、対象業務の内容等を踏まえて適切な水準のみなし労働時間を設定し、手当の支給や基本給の引上げなどにより相応の処遇を確保することを挙げています。個別の計算や設定の判断は、労働基準監督署や社会保険労務士にご確認ください。

出典