人事副業 / 人事の前提知識
年齢制限の禁止と例外|労働施策総合推進法第9条と、省令が定める六つの例外
副業で人事を受けていると、募集要件の相談でこう言われます。「35歳くらいまでで探したい」「若い人を入れて組織を若返らせたい」。求人票に年齢を書けないことは知っているけれど、なぜ書けないのか、どこまでなら書けるのかは、だいたい曖昧なままです。結論を先に書くと、労働施策総合推進法第9条は「事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」と定め、同法施行規則第1条の3第1項は「法第九条の厚生労働省令で定めるときは、次の各号に掲げるとき以外のときとする」として、年齢制限が認められる場合を限定列挙しています。つまり、原則は年齢不問で、省令に書かれた場合だけが例外です。個別の判断はハローワークや都道府県労働局にご確認ください。求人票の書き方は求人情報の的確表示義務に、性別の扱いは性別による募集差別の禁止にまとめています。
条文の組み立て方が変わっている
この条文は、読み方に少しコツがあります。第9条は「年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」とだけ書き、その適用範囲を省令に投げています。そして省令(施行規則第1条の3第1項)は、「次の各号に掲げるとき以外のとき」と書いています。
つまり二重否定です。省令に列挙された場合以外のすべての場面で、年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。列挙されたものが例外で、それ以外は原則どおり年齢不問になります。「うちは特別だから」で例外にはなりません。列挙にあるかないか、の一点です。
対象は「労働者の募集及び採用」です。応募の受付、書類選考、面接、採否の判断まで含みます。求人票に年齢を書かなくても、書類選考で生年月日を見て落としているなら、条文の求めているところからは外れます。
省令が列挙する例外
施行規則第1条の3第1項が挙げているのは、次のとおりです。
一号:定年を下回ることを条件とする場合。「事業主が、その雇用する労働者の定年(以下単に「定年」という。)の定めをしている場合において当該定年の年齢を下回ることを条件として労働者の募集及び採用を行うとき(期間の定めのない労働契約を締結することを目的とする場合に限る。)」。定年60歳の会社が「60歳未満」と書く形です。期間の定めのない労働契約が前提であることに注意します。
二号:法令で就業が禁止・制限されている業務。「労働基準法その他の法令の規定により特定の年齢の範囲に属する労働者の就業等が禁止又は制限されている業務について当該年齢の範囲に属する労働者以外の労働者の募集及び採用を行うとき」。深夜業や危険有害業務の年少者の制限などが該当します。
三号:年齢制限を必要最小限とする観点から合理的な制限である場合。次のイからニまでのいずれかに該当するときに限られます。
- イ 長期間の継続勤務による職務に必要な能力の開発及び向上を図ることを目的として、青少年その他特定の年齢を下回る労働者の募集及び採用を行うとき。ただし、期間の定めのない労働契約を締結することを目的とする場合に限り、かつ、当該労働者が職業に従事した経験があることを求人の条件としない場合であって、学校(幼稚園・小学校等を除く)、専修学校、職業能力開発促進法に定める施設または職業能力開発総合大学校を新たに卒業しようとする者として、又は当該者と同等の処遇で募集及び採用を行うときに限る、とされています
- ロ 当該事業主が雇用する特定の年齢の範囲に属する特定の職種の労働者の数が相当程度少ないものとして厚生労働大臣が定める条件に適合する場合において、当該職種の業務の遂行に必要な技能及びこれに関する知識の継承を図ることを目的として、特定労働者の募集及び採用を行うとき(期間の定めのない労働契約を締結することを目的とする場合に限る)
- ハ 芸術又は芸能の分野における表現の真実性等を確保するために特定の年齢の範囲に属する労働者の募集及び採用を行うとき
- ニ 高年齢者の雇用の促進を目的として、特定の年齢以上の高年齢者(六十歳以上の者に限る)である労働者の募集及び採用を行うとき、又は特定の年齢の範囲に属する労働者の雇用を促進するため当該特定の年齢の範囲に属する労働者の募集及び採用を行うとき(当該特定の年齢の範囲に属する労働者の雇用の促進に係る国の施策を活用しようとする場合に限る)
イの条件がきつく書かれています。「若手を育てたいから35歳まで」という発想でイを使おうとすると、三つの縛りに当たります。期間の定めのない労働契約であること、職務経験を条件にしないこと、新卒またはそれと同等の処遇で募集すること。経験者採用でイは使えません。ここを誤解している会社は多い印象です。
同条第2項は、明示の努力も定めています。「事業主は、法第九条に基づいて行う労働者の募集及び採用に当たつては、事業主が当該募集及び採用に係る職務に適合する労働者を雇い入れ、かつ、労働者がその年齢にかかわりなく、その有する能力を有効に発揮することができる職業を選択することを容易にするため、当該募集及び採用に係る職務の内容、当該職務を遂行するために必要とされる労働者の適性、能力、経験、技能の程度その他の労働者が応募するに当たり求められる事項をできる限り明示するものとする」。年齢で絞れないぶん、職務の中身を具体的に書け、という組み立てです。
エラベルの見解
担当する側から見ると、年齢制限の相談は、たいてい「年齢の話」ではありません。「35歳まで」と言う会社に、なぜ35歳なのかを聞くと、返ってくるのは別のことです。給与レンジに収まる人、既存メンバーが指示を出しやすい人、体力が要る現場に耐える人、長く続けてくれそうな人。年齢は、それらをまとめて表す近似値として使われています。
だから、実務でやるのは年齢を外すことではなく、年齢が代わりに表していたものを言語化することです。給与の話なら、想定年収レンジを書けば済みます。体力の話なら、実際の作業内容を書けば応募者が判断できます。マネジメントされる側に回れるかという話なら、チーム構成と役割を書きます。省令第1条の3第2項が「職務の内容、適性、能力、経験、技能の程度その他の労働者が応募するに当たり求められる事項をできる限り明示するものとする」と定めているのは、まさにこの作業のことです。条文を守る作業と、求人票をよくする作業が、ここでは同じものになります。エラベルは依頼側が担当者の経歴を見て選ぶ仕組みなので、この翻訳ができる人は、募集設計の案件で指名されます。
理由を示す義務と、求人票の点検
例外に当たる場合でも、それで終わりではありません。高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第20条第1項は、こう定めています。
「事業主は、労働者の募集及び採用をする場合において、やむを得ない理由により一定の年齢(六十五歳以下のものに限る。)を下回ることを条件とするときは、求職者に対し、厚生労働省令で定める方法により、当該理由を示さなければならない」。
同条第2項は「厚生労働大臣は、前項に規定する理由の提示の有無又は当該理由の内容に関して必要があると認めるときは、事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる」と定めています。
職業安定法の指針にも接続があります。指針(平成11年労働省告示第141号)は、職業紹介事業者、募集受託者及び労働者供給事業者が、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則に定める書面又は電磁的記録により同法第20条第1項に規定する理由の提示を受けたときは、当該理由を求職者等に対して適切に提示すべきこと、としています。理由は、会社の中で用意して終わりではなく、求職者まで届く形が想定されています。高年齢者雇用安定法の全体像は高年齢者雇用安定法にまとめています。
副業の人事が作るのは、次の形です。個別の適否の判断はハローワークや都道府県労働局にご確認ください。
| 点検するもの | 見るところ |
|---|---|
| 求人票の年齢欄 | 年齢を条件にしているか。しているなら、省令第1条の3第1項のどの号に当たるか |
| 定年を根拠にする場合 | 定年の定めが就業規則にあるか。期間の定めのない労働契約の募集か |
| 新卒枠を根拠にする場合 | 職業に従事した経験を条件にしていないか。新卒と同等の処遇か。無期の募集か |
| 理由の提示 | 一定の年齢(65歳以下)を下回る条件を付けるなら、求職者に示す理由を用意しているか |
| 書類選考の運用 | 求人票に書いていなくても、生年月日で機械的に落としていないか |
| 表現の点検 | 「若手歓迎」「20代が活躍中」といった、年齢を示唆する表現になっていないか |
| 代替の記述 | 年齢の代わりに、職務の内容・求める経験・技能の程度を具体的に書けているか |
| 媒体の設定 | 求人媒体の絞り込み条件に年齢が入っていないか |
| 面接の質問 | 年齢に関する質問が、適性・能力の判断と結びついているか |
「若手歓迎」の扱い。求人票の年齢欄を空にしても、本文に「20代が中心の職場です」「若手が活躍しています」と書けば、応募者は年齢のメッセージとして読みます。職場の雰囲気を伝えたいのであれば、平均年齢や構成を事実として書くのか、書かずに仕事の中身で伝えるのかを、会社として決めます。表現の適否はハローワークや都道府県労働局にご確認ください。
媒体の設定が抜けます。求人票の文面は直しても、媒体側のスカウト送信条件や配信ターゲットの設定に年齢が残っていることがあります。媒体の管理画面まで見に行くと、たいてい見つかります。
エラベルの見解
外に出してよいのは、求人票と媒体設定の点検表、例外に当たるかを確かめる質問のリスト、理由を示す文の型、年齢に代わる記述への書き換え、書類選考の運用の見直しまでで、「この募集が省令の例外に当たるか」「この理由で足りるか」といった個別の判断は、ハローワークや都道府県労働局の範囲です。
担当する側から見ると、この領域で会社の信頼を得るのは、年齢制限を外した後のフォローができるかどうかです。年齢を外すと、当然ながら応募が増えて、選考の負荷が上がります。ここで会社が「やっぱり絞りたい」と言い出す。実務の勝負どころはここで、書類選考の基準を、年齢の代わりになる具体的な項目に置き換えておく準備が要ります。求める経験の年数ではなく、担当してきた業務の範囲。年齢ではなく、報酬の希望レンジ。これを先に作っておくと、応募が増えても回ります。条文の説明だけして去ると、半年後に元に戻っています。エラベルでは、依頼側が担当者を選べるので、外した後まで設計した経験は、経歴に書いておくと効きます。
まとめ
- 労働施策総合推進法第9条は、省令で定めるときは「その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」と定めている
- 施行規則第1条の3第1項は「次の各号に掲げるとき以外のとき」と書く二重否定の形。列挙された場合だけが例外
- 例外は、定年を下回る条件(無期に限る)/法令で就業が禁止・制限されている業務/長期勤続によるキャリア形成(新卒等・無期・経験不問)/技能継承/芸術芸能/高年齢者等の雇用促進
- 長期勤続によるキャリア形成の例外は、期間の定めのない労働契約・職業経験を条件にしない・新卒またはそれと同等の処遇の三つが揃う場合に限られる
- 一定の年齢(65歳以下)を下回る条件を付けるときは、高年齢者雇用安定法第20条第1項により求職者に理由を示さなければならない
- 省令第1条の3第2項は、職務の内容・適性・能力・経験・技能の程度等をできる限り明示することを定めている。個別の判断はハローワークや労働局にご確認ください
よくある質問
「若手を育てたいので35歳まで」は例外に当たりますか
施行規則第1条の3第1項第3号イは、長期間の継続勤務による職務に必要な能力の開発及び向上を図ることを目的として特定の年齢を下回る労働者の募集及び採用を行うときを挙げていますが、期間の定めのない労働契約を締結することを目的とする場合に限り、かつ、当該労働者が職業に従事した経験があることを求人の条件としない場合であって、学校等を新たに卒業しようとする者として又は当該者と同等の処遇で募集及び採用を行うときに限る、という条件が付いています。経験者を対象にした募集は、この条件から外れます。自社の募集が当たるかどうかは、ハローワークや都道府県労働局にご確認ください。
定年が60歳なので「60歳未満」と書いてよいですか
施行規則第1条の3第1項第1号は、定年の定めをしている場合において当該定年の年齢を下回ることを条件として募集及び採用を行うときを挙げており、期間の定めのない労働契約を締結することを目的とする場合に限る、とされています。したがって、定年の定めが実際にあることと、無期の募集であることが前提になります。あわせて、高年齢者雇用安定法第20条第1項は、一定の年齢(65歳以下)を下回ることを条件とするときは求職者に理由を示さなければならないと定めているので、理由の準備も要ります。個別の判断はハローワークや都道府県労働局にご確認ください。
求人票に年齢を書かずに、書類選考で調整しています
労働施策総合推進法第9条が対象としているのは「労働者の募集及び採用」です。募集の表示だけでなく、応募の受付から採否の判断までが含まれます。求人票に書かずに選考で落とす運用は、条文が求めているところからは外れます。実務では、年齢が代わりに表していたもの(想定年収、求める経験の種類、チーム内での役割など)を書類選考の基準に置き換える作業を先に行います。運用の適否については、ハローワークや都道府県労働局にご確認ください。