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産前産後休業の制度|労基法第65条の請求と義務、解雇制限と母性健康管理

公開 2026-09-23

副業で人事を受けていると、産前産後の相談は「いつから休めるのか」から始まります。ところが、条文を読むと産前と産後で構造が違うことに気づきます。結論を先に書くと、労働基準法第65条第1項は「使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない」と定め、第2項は「使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない」と定めています。産前は本人の請求が要件で、産後は請求の有無にかかわらず就業させてはならないという形です。個別の判断は労働基準監督署や都道府県労働局雇用環境・均等部(室)にご確認ください。短時間勤務との接続は短時間勤務制度に、ハラスメントの側面はマタハラ・ケアハラ対応にまとめています。

産前と産後で構造が違う

産前(第65条第1項)。「六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない」。請求がなければ就業させることができる形です。産前六週間は出産予定日から数えます。

産後(第65条第2項)。「使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない」。

構造の違いを押さえます。産後の八週間は、本人が「働きたい」と言っても原則として就業させられません。例外は、六週間経過後に、本人の請求と医師が支障がないと認めた業務の二つが揃った場合だけです。会社が「本人が希望したので」と早期復帰させる運用は、この二つを確かめていなければ条文から外れます。

軽易業務への転換(第65条第3項)。「使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない」。これは休業ではなく、妊娠中の配置の話です。

妊産婦の請求できること(第66条)。

「妊産婦」は産後一年を含みます。第66条は妊娠中だけでなく産後の期間も対象なので、復帰後も請求があれば適用されます。ここを取り違えている会社が少なくありません。

育児時間(第67条)。「生後満一年に達しない生児を育てる女性は、第三十四条の休憩時間のほか、一日二回各々少なくとも三十分、その生児を育てるための時間を請求することができる」。第2項は「使用者は、前項の育児時間中は、その女性を使用してはならない」。

解雇制限と、不利益取扱いの禁止

労働基準法第19条第1項。「使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない」。ただし書きで、打切補償を支払う場合と、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合を除いています(後段の場合は行政官庁の認定が必要)。

男女雇用機会均等法第9条。第1項は「事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない」。第2項は「女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない」。第3項は「その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」。

第4項が強い規定です。「妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない」。証明する責任が事業主側に置かれている構造です。解雇の枠組み全般は解雇の要件にまとめています。

母性健康管理の措置。均等法第12条は「事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、その雇用する女性労働者が母子保健法の規定による保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間を確保することができるようにしなければならない」、第13条第1項は「事業主は、その雇用する女性労働者が前条の保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするため、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければならない」と定めています。

母健連絡カード。厚生労働省は、母性健康管理の資料として母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)を公開しています。医療機関から受け取った指導内容を確認し、それに応じた就業上の配慮を行うための様式で、日本語版のほか英語・中国語・ポルトガル語・ベトナム語の併記版が用意されています。第13条の措置を講じるときの材料として使えます。

エラベルの見解

担当する側から見ると、この領域で会社が困るのは条文ではなく、「誰が、いつ、何をするのか」が決まっていないことです。本人から妊娠の報告を受けた人(多くは直属の上司)が、次に何をすればよいかを知らない。人事に連絡が来るのが遅れ、産前休業の開始が直前まで決まらず、業務の引き継ぎが間に合わない。

実務で最初に作るのは、報告から復帰までの一本の流れ図です。報告を受けた人が人事に連絡する、人事が面談する、産前休業の開始日を確認する、社会保険の手続を確認する、引き継ぎ計画を作る、休業中の連絡方法を決める、復帰前面談を入れる。日付と担当者を入れた一枚があると、現場が迷いません。

もう一つ、第66条が産後一年まで続くことを現場に伝えておきます。復帰した人に「もう産休は終わったから」と深夜勤務や時間外を割り当てる運用が、悪気なく起きます。請求があれば、時間外も休日労働も深夜業もさせられません。請求の様式を用意しておき、復帰面談で案内する。この一手間で、後のトラブルがかなり減ります。エラベルは依頼側が担当者の経歴を見て選ぶ仕組みなので、この流れを作った経験は、経歴に書いておくと効きます。

給付と、社内で作るもの

出産手当金(健康保険法第102条第1項)。「被保険者が出産したときは、出産の日(出産の日が出産の予定日後であるときは、出産の予定日)以前四十二日(多胎妊娠の場合においては、九十八日)から出産の日後五十六日までの間において労務に服さなかった期間、出産手当金を支給する」。

報酬との調整(第108条第2項)。「出産した場合において報酬の全部又は一部を受けることができる者に対しては、これを受けることができる期間は、出産手当金を支給しない。ただし、その受けることができる報酬の額が、出産手当金の額より少ないときは、その差額を支給する」。産休中に給与を支払う会社では、この調整が入ります。

出産育児一時金(第101条)。「被保険者が出産したときは、出産育児一時金として、政令で定める金額を支給する」。金額は政令で定められているので、実際の額は加入している保険者(協会けんぽ・健康保険組合等)の案内でご確認ください。

資格喪失後の継続給付(第104条)。資格喪失日の前日まで引き続き一年以上被保険者であった者が、資格喪失の際に出産手当金の支給を受けている場合の継続給付が定められています。退職と重なる場面で確認が要る条文です。

社会保険料の扱いや被保険者資格は別の論点です。社会保険の適用範囲もあわせてご覧ください。

副業の人事が作るのは、次の形です。個別の適否の判断は労働基準監督署・都道府県労働局雇用環境・均等部(室)・加入している保険者にご確認ください。

作るもの中身
流れ図妊娠の報告から復帰まで。担当者と期日を入れる
報告の受け方誰に報告するか。受けた人が次にすること。周囲への共有範囲の本人確認
休業期間の確認表出産予定日から産前六週間(多胎は十四週間)、産後八週間。六週間経過後の例外の手続
早期復帰の様式産後六週間経過後の本人の請求書と、医師が支障がないと認めた業務の確認
第66条の請求書時間外・休日労働・深夜業・変形労働時間制。産後一年まで対象であることを明記
軽易業務転換請求があった場合の転換先の検討手順
母健連絡カード受け取ったときの扱い。誰が見るか、どう措置に落とすか
育児時間第67条の一日二回各々三十分。請求の受け方と勤務時間への反映
給付の案内出産手当金・出産育児一時金の申請の流れ。保険者の窓口
引き継ぎ計画業務の棚卸し、引き取る人、復帰後の戻し方
復帰前面談時期、話す内容、短時間勤務や所定外労働の制限の案内
就業規則産前産後休業の規定が条文と整合しているか

就業規則との突き合わせを忘れないこと。「産前六週間」とだけ書いてあって多胎の十四週間が抜けている規定、産後の例外の手続が書かれていない規定は、よく見つかります。規程の整備は就業規則の作成義務にまとめています。

エラベルの見解

外に出してよいのは、流れ図、様式、確認表、引き継ぎ計画、面談の設計、就業規則との突き合わせまでで、「この業務が医師の認めた業務に当たるか」「この配置転換が不利益取扱いに当たるか」といった個別の判断は、労働基準監督署・都道府県労働局雇用環境・均等部(室)・弁護士の範囲です。

担当する側から見ると、この案件の価値は引き継ぎの設計に出ます。制度の説明は誰でもできますが、六週間先に一人抜けると分かっている業務を、どう分解して誰に渡すかは、人事の経験がないと組めません。そして、ここがうまくいかないと、本人が休みづらくなり、周囲に不満がたまり、復帰後の関係も悪くなります。

実務では、引き継ぎを「人に渡す」のではなく「業務を整理し直す機会」として扱います。棚卸しをすると、たいてい不要な作業や属人化した作業が出てきます。抜ける人の穴を埋めるのではなく、その機会に業務そのものを減らす。これができると、会社は産休を負担ではなく改善の機会として見るようになります。そうなった会社は、次の人の妊娠報告も受け止め方が違います。

そして、これは採用にも効きます。産休・育休を回せている実績は、求人で語れる材料になります。制度の有無ではなく、直近で何人が取り、どう戻ったか。エラベルでは、依頼側が担当者を選べるので、ここまで設計した経験は、経歴に書いておくと効きます。

まとめ

よくある質問

本人が働きたいと言えば、産後すぐ復帰できますか

労働基準法第65条第2項は「使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない」と定めたうえで、ただし書きで「産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない」としています。したがって、産後六週間は本人の希望にかかわらず就業させられません。六週間経過後は、本人の請求と、医師が支障がないと認めた業務であることの二つが揃った場合に限られます。業務の内容が医師の認めた範囲に当たるかの判断は、労働基準監督署にご確認ください。

復帰した人に残業を頼んでもよいですか

労働基準法第66条は「妊産婦」を対象としており、妊娠中だけでなく産後の期間も含みます。第1項は変形労働時間制の下でも法定労働時間を超えて労働させてはならないこと、第2項は時間外労働をさせてはならず休日に労働させてはならないこと、第3項は深夜業をさせてはならないことを、いずれも請求した場合について定めています。したがって、請求があれば残業を依頼できません。あわせて、育児介護休業法の所定外労働の制限(第16条の8)なども別に請求できます。実務では、請求の様式を用意して復帰面談で案内します。個別の判断は労働基準監督署にご確認ください。

産休中の給与はどうなりますか

労働基準法は産前産後休業中の賃金の支払を義務づけていません。健康保険法第102条第1項は「被保険者が出産したときは、出産の日(出産の日が出産の予定日後であるときは、出産の予定日)以前四十二日(多胎妊娠の場合においては、九十八日)から出産の日後五十六日までの間において労務に服さなかった期間、出産手当金を支給する」と定めています。会社が給与を支払う場合は、同法第108条第2項により、受けることができる報酬の額が出産手当金の額より少ないときにその差額が支給される形になります。実際の金額や申請の手続は、加入している保険者(協会けんぽ・健康保険組合等)にご確認ください。

出典