人事副業 / 人事の前提知識
短時間勤務制度|育介法第23条の6時間措置と、3歳以降の二以上の措置
副業で人事を受けていると、短時間勤務の相談は繰り返し来ます。「時短は何歳まで取れるのか」「時短の人に残業を頼んでよいか」「介護でも時短はあるのか」。制度の全体像が社内で整理されていないまま、個別の相談に人事が都度答えている会社が多い印象です。結論を先に書くと、育児介護休業法第23条第1項は、三歳に満たない子を養育する労働者であって育児休業をしていないものに関して「労働者の申出に基づき所定労働時間を短縮することにより当該労働者が就業しつつその子を養育することを容易にするための措置」を講じなければならないと定め、施行規則は、この措置に「一日の所定労働時間を原則として六時間とする措置を含むものとしなければならない」としています。個別の判断は都道府県労働局雇用環境・均等部(室)にご確認ください。ハラスメントの側面はマタハラ・ケアハラ対応に、育児休業取得率の公表は育児休業取得率の公表義務にまとめています。
三歳未満の所定労働時間の短縮措置
義務の対象(第23条第1項)。「事業主は、その雇用する労働者のうち、その三歳に満たない子を養育する労働者であって育児休業をしていないもの(一日の所定労働時間が短い労働者として厚生労働省令で定めるものを除く。)に関して、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の申出に基づき所定労働時間を短縮することにより当該労働者が就業しつつその子を養育することを容易にするための措置(…「育児のための所定労働時間の短縮措置」という。)を講じなければならない」。
内容は「原則として六時間」。施行規則は、この措置について「一日の所定労働時間を原則として六時間とする措置を含むものとしなければならない」と定めています。他の選択肢を用意すること自体は妨げられませんが、六時間の選択肢を含める必要がある、という構えです。
除外できる労働者(第23条第1項ただし書)。労使協定で定めた場合に限り、次の労働者を対象外にできます。
- 一 当該事業主に引き続き雇用された期間が一年に満たない労働者
- 二 前号のほか、措置を講じないこととすることについて合理的な理由があると認められる労働者として厚生労働省令で定めるもの(施行規則は「一週間の所定労働日数が二日以下の労働者」としています)
- 三 前二号のほか、業務の性質又は業務の実施体制に照らして、育児のための所定労働時間の短縮措置を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者
三号で外すときは、代わりの措置が要ります(第23条第2項)。業務の性質等を理由に短縮措置を講じないこととするときは、その労働者に関して、育児休業に関する制度に準ずる措置または次のいずれかを講じなければならない、とされています。
- 一 在宅勤務等の措置(労働者の申出に基づき、住居その他これに準ずるものとして労働契約又は労働協約、就業規則その他これらに準ずるもので定める場所における勤務をさせる措置)
- 二 始業時刻変更等の措置(労働基準法第32条の3第1項の規定により労働させること〔フレックスタイム制〕その他の厚生労働省令で定める措置)
施行規則は、第二号の措置として、フレックスタイム制の導入、一日の所定労働時間を変更することなく始業又は終業の時刻を繰り上げ又は繰り下げる制度(時差出勤)、三歳に満たない子に係る保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与を挙げています。
不利益取扱いの禁止(第23条の2)。「事業主は、労働者が前条の規定による申出をし、又は同条の規定により当該労働者に措置が講じられたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」。
三歳以降と、残業・深夜業の制限
三歳から小学校就学の始期まで(第23条の3第1項)。「事業主は、その雇用する労働者のうち、その三歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育するものに関して、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の申出に基づく次に掲げる措置のうち二以上の措置を講じなければならない」として、次を挙げています。
- 一 始業時刻変更等の措置であって厚生労働省令で定めるもの
- 二 在宅勤務等の措置
- 三 育児のための所定労働時間の短縮措置
- 四 労働者が就業しつつ当該子を養育することを容易にするための休暇(子の看護等休暇、介護休暇及び年次有給休暇として与えられるものを除く)を与えるための措置
- 五 前各号のほか、厚生労働省令で定める措置
選択肢を二つ以上用意する形です。第4項は「事業主は、第一項の規定による措置を講じようとするときは、あらかじめ、当該事業所に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない」と定めています。
三歳になる前の個別の周知と意向確認(第23条の3第5項)。「事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、三歳に満たない子を養育する労働者に対して、当該労働者が第一項の規定により当該事業主が講じた措置…のいずれを選択するか判断するために適切なものとして厚生労働省令で定める期間内に、対象措置その他の厚生労働省令で定める事項を知らせるとともに、対象措置に係る申出に係る当該労働者の意向を確認するための面談その他の厚生労働省令で定める措置を講じなければならない」。
第7項は不利益取扱いの禁止です。申出をしたこと、措置が講じられたこと、または確認された意向の内容を理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁じています。
所定外労働の制限(第16条の8)。「事業主は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者であって、…労使協定で請求できないものとして定められた労働者に該当しない労働者が当該子を養育するために請求した場合においては、所定労働時間を超えて労働させてはならない。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない」。労使協定で除外できるのは、引き続き雇用された期間が一年に満たない労働者などです。
時間外労働の制限(第17条)。小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が請求したときは、「制限時間(一月について二十四時間、一年について百五十時間をいう。)を超えて労働時間を延長してはならない。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない」。
深夜業の制限(第19条)。小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が請求した場合においては、「午後十時から午前五時までの間(…「深夜」という。)において労働させてはならない。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りでない」。
三つは別の制度です。所定外労働(残業そのもの)、時間外労働の上限(月24時間・年150時間)、深夜業。会社が「時短の人には残業を頼まない」とだけ決めていても、請求の手続と記録がなければ制度として回りません。
エラベルの見解
担当する側から見ると、この領域で会社がつまずくのは条文の理解ではなく、「誰が使えて、誰が使えないか」を社内で説明できないことです。労使協定で除外している労働者がいるのに、協定の内容を現場が知らない。一週間の所定労働日数が二日以下の人は対象外なのに、線が曖昧になっている。逆に、協定を結んでいないのに「一年未満の人は使えない」と現場が思い込んでいる。
実務で最初に作るのは、一枚の対応表です。縦に制度(短縮措置、在宅勤務等、始業時刻変更等、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、子の看護等休暇)、横に対象となる子の年齢と、労使協定で除外しているかどうか。これを作ると、会社は自分の制度の穴を見ます。
もう一つ、見落とされやすいのが第23条の3第5項の個別の周知と意向確認です。三歳に満たない子を養育する労働者に対して、会社が講じた措置のいずれを選択するか判断できるよう、知らせて意向を確認する面談等が求められています。これは「制度を作って就業規則に書いた」だけでは終わらない義務です。誰が、いつ、どう声をかけるのかを決めておかないと、運用が止まります。エラベルは依頼側が担当者の経歴を見て選ぶ仕組みなので、この運用まで設計した経験は、経歴に書いておくと効きます。
介護と、会社に渡すもの
介護のための所定労働時間の短縮等の措置(第23条第3項)。「事業主は、その雇用する労働者のうち、その要介護状態にある対象家族を介護する労働者であって介護休業をしていないものに関して、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の申出に基づく連続する三年の期間以上の期間における所定労働時間の短縮その他の当該労働者が就業しつつその要介護状態にある対象家族を介護することを容易にするための措置(…「介護のための所定労働時間の短縮等の措置」という。)を講じなければならない」。
起算点(第23条第4項)。「前項本文の期間は、当該労働者が介護のための所定労働時間の短縮等の措置の利用を開始する日として当該労働者が申し出た日から起算する」。
措置の内容(施行規則)。介護のための所定労働時間の短縮等の措置は、二回以上の利用をすることができる措置とし、次のいずれかの方法により講じなければならない、とされています。
- 一 当該勤務に就くことを希望する労働者に適用される所定労働時間の短縮の制度を設けること
- 二 フレックスタイム制または始業・終業時刻の繰上げ・繰下げの制度を設けること
- 三 要介護状態にある対象家族を介護する労働者がその就業中に、当該労働者に代わって当該対象家族を介護するサービスを利用する場合、当該労働者が負担すべき費用を助成する制度その他これに準ずる制度を設けること
ただし書きで、第三号の方法による場合には二回以上の利用ができることを要しない、とされています。介護についても、労使協定で引き続き雇用された期間が一年に満たない労働者等を除外できる旨が置かれています。
努力義務の範囲(第24条)。小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関して、育児に関する目的のために利用することができる休暇を与えるための措置と、子の年齢に応じた制度・措置に準じた必要な措置を講ずるよう努めなければならないとされています。第2項は三歳に満たない子を養育する労働者に対する在宅勤務等の措置に準じた措置、第3項・第4項は介護についての努力義務を定めています。
副業の人事が作るのは、次の形です。個別の適否の判断は都道府県労働局雇用環境・均等部(室)にご確認ください。
| 作るもの | 中身 |
|---|---|
| 制度の対応表 | 制度×対象となる子の年齢/介護。労使協定での除外の有無 |
| 就業規則・規程 | 育児介護休業規程に、短縮措置・在宅勤務等・始業時刻変更等・休暇を書き分ける |
| 労使協定 | 除外する労働者の範囲。協定を結んでいない除外は無効になる |
| 三歳以降の二措置 | 第23条の3第1項の五つから二以上を選ぶ。選定の際の意見聴取の記録 |
| 周知と意向確認 | 三歳に満たない子を養育する労働者への個別の周知と、面談等による意向確認 |
| 申出の様式 | 短縮措置、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限。それぞれ別に |
| 請求の記録 | 誰が、いつから、いつまで。現場と共有する範囲 |
| 賃金の取扱い | 短縮した時間分の賃金をどうするか。規程に明記する |
| 評価の取扱い | 短縮勤務中の評価の扱い。不利益取扱いにならない設計 |
| 現場への説明 | 「事業の正常な運営を妨げる場合」の判断を現場任せにしない |
賃金と評価が、実務の火種です。条文は所定労働時間の短縮を定めていますが、賃金をどう扱うかは書かれていません。就業規則・規程で明記していない会社が多く、運用で揉めます。あわせて、第23条の2と第23条の3第7項が不利益取扱いを禁じているので、評価や昇給の扱いを設計段階で決めておきます。
「事業の正常な運営を妨げる場合」の扱い。所定外労働・時間外労働・深夜業の制限には、いずれもこのただし書きが付いています。ただ、現場の管理職が自分で判断してよいものとして扱うと、制度が形骸化します。誰が判断するか、どういう材料で判断するかを決めておきます。個別の判断は都道府県労働局雇用環境・均等部(室)にご確認ください。
エラベルの見解
外に出してよいのは、制度の対応表、規程の条文案、労使協定の項目立て、申出と請求の様式、周知と意向確認の段取り、賃金と評価の取扱いの設計までで、「この労働者が対象に当たるか」「この場合が事業の正常な運営を妨げる場合に当たるか」といった個別の判断は、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)や弁護士の範囲です。
担当する側から見ると、この案件で会社に一番効くのは、制度を「使わせる側」の設計をすることです。条文の義務は制度を用意することですが、現場で起きているのは、制度があるのに使いにくい、という問題です。時短で帰ると仕事が滞る、周りに迷惑をかける、評価が下がる気がする。この空気が残っていると、制度は使われません。
実務でやるのは、業務の棚卸しと引き継ぎの型を作ることです。短縮勤務に入る人の業務を分解し、誰が引き取るかを決める。そして、引き取った側の負荷を評価に反映する仕組みを作る。ここまでやって初めて、制度が動きます。条文を規程に写すだけの対応で終わらせると、半年後に「制度はあるが誰も使っていない」という状態になります。
そして、この設計は採用にも効きます。両立支援が実際に機能している会社は、求人でそれを語れます。制度の有無ではなく、直近で何人が使い、どう回したかを書ける。エラベルでは、依頼側が担当者を選べるので、制度を作るだけでなく回るところまで持っていった経験は、経歴に書いておくと効きます。
まとめ
- 第23条第1項は、三歳に満たない子を養育する労働者への育児のための所定労働時間の短縮措置を義務づけ、施行規則は一日の所定労働時間を原則として六時間とする措置を含むことを求めている
- 労使協定で除外できるのは、引き続き雇用された期間が一年に満たない労働者、一週間の所定労働日数が二日以下の労働者、業務の性質等により困難と認められる業務に従事する労働者
- 業務の性質等で除外するときは、育児休業に準ずる措置・在宅勤務等の措置・始業時刻変更等の措置のいずれかが必要(第23条第2項)
- 第23条の3は、三歳から小学校就学の始期までの子を養育する労働者について、五つの措置のうち二以上を講ずることを義務づけ、過半数代表者等の意見聴取と、三歳前の個別の周知・意向確認を定めている
- 所定外労働の制限(第16条の8)、時間外労働の制限(月24時間・年150時間。第17条)、深夜業の制限(午後10時から午前5時。第19条)は、それぞれ別の請求
- 介護は、連続する三年の期間以上の所定労働時間の短縮等の措置。二回以上の利用ができる形が原則。個別の判断は都道府県労働局雇用環境・均等部(室)にご確認ください
よくある質問
時短勤務は6時間に決めなければいけませんか
育児介護休業法施行規則は、育児のための所定労働時間の短縮措置について「一日の所定労働時間を原則として六時間とする措置を含むものとしなければならない」と定めています。六時間の選択肢を含めることが求められている形で、それ以外の選択肢(たとえば七時間や五時間)を併せて用意することが妨げられるものではありません。労働者が六時間を選べる状態にしておくのが条文の読み方です。自社の制度設計については、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)にご確認ください。
短時間勤務の人に残業を頼んでもよいですか
短時間勤務であること自体と、所定外労働の制限は別の制度です。育児介護休業法第16条の8は、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者が請求した場合には所定労働時間を超えて労働させてはならないと定め、ただし書きで事業の正常な運営を妨げる場合を除いています。したがって、請求がある場合は原則として所定外労働をさせられません。実務では、請求の有無を記録で管理し、現場と共有します。「事業の正常な運営を妨げる場合」に当たるかの判断は、現場任せにせず社内の判断者を決めておきます。個別の判断は都道府県労働局雇用環境・均等部(室)にご確認ください。
介護でも短時間勤務はありますか
育児介護休業法第23条第3項は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者であって介護休業をしていないものに関して、労働者の申出に基づく連続する三年の期間以上の期間における所定労働時間の短縮その他の措置を講じなければならないと定めています。第4項は、この期間を労働者が申し出た利用開始日から起算するとしています。施行規則は、この措置を二回以上の利用ができる措置とし、所定労働時間の短縮の制度、フレックスタイム制または始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ、介護サービスの費用助成のいずれかの方法によることを求めています(費用助成による場合は二回以上の利用を要しません)。個別の判断は都道府県労働局雇用環境・均等部(室)にご確認ください。