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整理解雇の4要素|厚生労働省が挙げる検討事項と、人事が整える材料

公開 2026-09-22

副業で人事を受けていると、依頼先の業績が厳しくなった局面で「人員を減らすしかない」という相談を受けることがあります。整理解雇は、本人に落ち度がないのに雇用を終わらせるもので、判断は厳しく見られます。しかも、手順を踏まずに進めると、後から無効と判断され、会社の状況はさらに悪くなります。この記事は、整理解雇の前提と、副業の人事が整えられる材料を整理したものです。結論を先に書くと、労働契約法第16条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めており、厚生労働省は、整理解雇についてもこの規定により無効となるとしたうえで、これまでの裁判例を参考にすれば、労働組合との協議や労働者への説明を行うとともに、「人員削減を行う必要性」「できる限り解雇を回避するための措置を尽くすこと」「解雇対象者の選定基準が客観的・合理的であること」について慎重に検討を行うことが望まれる、としています。判断は法的なもので、個別の事案は必ず弁護士にご確認ください。懲戒処分は懲戒処分の要件に、退職勧奨は退職勧奨の進め方にまとめています。

条文と、厚生労働省が挙げる検討事項

労働契約法第16条(解雇)。「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」

厚生労働省の整理。パンフレット「適切な労務管理のポイント」では、整理解雇についても、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない場合には、権利の濫用として労働契約法の規定により無効となる、とされています。そのうえで、これまでの裁判例を参考にすれば、労働組合との協議や労働者への説明を行うとともに、次のこと等について慎重に検討を行うことが望まれる、として三つが挙げられています。

検討事項厚生労働省の記載
必要性人員削減を行う必要性
回避の努力できる限り解雇を回避するための措置を尽くすこと
人選解雇対象者の選定基準が客観的・合理的であること
手続労働組合との協議や労働者への説明を行うこと

実務で「整理解雇の4要素」と呼ばれるのは、この必要性・回避の努力・人選・手続の四つに対応します。パンフレットでは、解雇回避のための方法として、配置転換、出向、希望退職募集等を検討することが考えられること、人員削減を避けるために労働時間の短縮(ワークシェアリング)を行うことも一つの方策であること、が注記されています。

裁判例の記載。同パンフレットには、裁判例(大阪地裁平成12年12月1日判決)として、余剰人員となったというだけで解雇が可能なわけではなく、解雇権の行使として社会通念に沿う合理的なものであるかどうかの判断を要し、その判断のためには、人員整理の必要性、人選の合理性、解雇回避努力の履践、説明義務の履践などは考慮要素として重要なものというべきである、という内容が引用されています。

この四つの読み方。四つは、どれか一つを満たせばよいというものではなく、総合的に判断されるものです。また、四つを形式的に揃えれば有効になるというものでもありません。判断は個別の事案に即して行われるので、副業の人事が「四つ揃ったので大丈夫」と言う場所ではありません。

あわせて確かめる、解雇の禁止と手続

解雇が禁止される場合。厚生労働省のパンフレットでは、一定の場合に解雇が禁止されているとして、次が挙げられています。業務上の傷病による休業期間およびその後30日間の解雇、産前産後の休業期間およびその後30日間の解雇(労働基準法第19条)。国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇(労働基準法第3条)。労働組合の組合員であること等を理由とする解雇(労働組合法第7条)。女性(男性)であること、女性の婚姻、妊娠、出産、産前産後休業等を理由とする解雇(男女雇用機会均等法第6条、第9条)。通常の労働者と同視すべきパートタイム・有期雇用労働者について、パートタイム・有期雇用労働者であることを理由とする解雇(パートタイム・有期雇用労働法第9条)。障害者であることを理由とする解雇(障害者雇用促進法第35条)。労働基準監督署等に申告したことを理由とする解雇。育児・介護休業等の申出等をしたこと、取得したこと等を理由とする解雇。ハラスメントに関する相談を行ったこと等を理由とする解雇(育児・介護休業法第25条、男女雇用機会均等法第11条・第11条の3、労働施策総合推進法第30条の2)。紛争解決援助を求めたことや調停の申請をしたことを理由とする解雇。公益通報をしたことを理由とする解雇(公益通報者保護法第3条)。

解雇の手続。同パンフレットでは、労働基準法第20条により、解雇を行う場合には、少なくとも30日前に解雇の予告をすること(予告の日数が30日に満たない場合には、その不足日数分の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要がある)、予告を行わない場合には30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払うこと、が説明されています。

ハローワークへの届出。やむを得ず一定期間内に相当数の離職者が発生する場合や、高年齢者・障害者・外国人を解雇する場合は、ハローワークに届出や通知を行うことが必要だと案内されています。詳しくは都道府県労働局またはハローワークにご確認ください。

有期労働契約の場合。労働契約法第17条第1項により、有期労働契約については、やむを得ない事由がある場合でなければ契約期間が満了するまでの間に解雇することはできないとされ、期間の定めのない労働契約を結んでいる場合の解雇よりも解雇の有効性は厳しく判断される、と説明されています。

エラベルの見解

担当する側から見ると、この局面で副業の人事にできる最も価値のある仕事は、「解雇を回避するための措置を、選択肢として並べる」ことです。厚生労働省のパンフレットは、解雇回避のための方法として配置転換、出向、希望退職募集等を挙げ、労働時間の短縮(ワークシェアリング)も一つの方策だとしています。相談で見ていると、経営が「解雇しかない」と思い込んでいる依頼先でも、選択肢を並べると、順番と組み合わせが見えてきます。採用の停止、残業の抑制、配置転換、出向、賞与や役員報酬の見直し、希望退職の募集、労働時間の短縮。どれをどの順で、いつまでに、どれだけの効果を見込むか。

この整理は、人事の実務を知る人にしかできません。そして、この整理自体が「できる限り解雇を回避するための措置を尽くすこと」という検討事項に直接つながります。弁護士に相談するときも、「この順番で検討し、ここまで実施した」という記録があるかどうかで、話が変わります。副業の人事は、判断ではなく材料を作る側に立ち、その材料の質で価値を出します。エラベルでは、依頼側が担当者の経歴を見て選ぶ仕組みなので、雇用調整の局面に関わった経験がある人は、そこを経歴に書いておくと、この相談で選ばれます。

弁護士に渡す前に、整える材料

副業の人事が作るのは、次の材料です。判断は弁護士が行います。

検討事項整える材料
人員削減の必要性業績の推移、資金の見通し、事業計画との関係、削減が必要な人数の根拠
解雇回避の措置検討した選択肢の一覧、実施した措置と時期、効果、実施しなかった選択肢とその理由
人選の基準基準の案と、その基準を選んだ理由、基準を当てはめた結果(個人名は弁護士に渡す段階で)
説明と協議誰に、いつ、何を説明するかの計画、説明の記録、労働組合がある場合の協議の記録
法令の確認解雇が禁止される場合に当たらないか、予告の手続、届出の要否
時系列いつ何を検討し、何を実施したかの一覧

記録が要る理由。四つの検討事項は、いずれも「実際に何をしたか」で見られます。検討したつもりでも、記録がなければ説明できません。時系列の一覧は、後から作ると精度が落ちるので、検討を始めた時点から残します。

人選の基準。基準を先に決めて、その基準を全員に当てはめる順番にします。特定の人を対象にしたい意図が先にあって、そこから基準を逆算する形は、客観性が疑われます。基準の妥当性の判断は弁護士に渡します。

説明の設計。厚生労働省の記載では、労働組合との協議や労働者への説明を行うこととされています。誰に、いつ、何を、どの順番で説明するかを計画にし、説明した内容と質疑を記録します。対象になる人への説明だけでなく、残る人への説明も設計します。

専門家に渡すタイミング。検討を始めた段階で弁護士に相談する形が、結果として早く済みます。材料が揃ってから相談すると、「その進め方では材料が足りない」と最初からやり直しになることがあります。

エラベルの見解

外に出してよいのは、業績と人員の整理、解雇回避の選択肢の一覧と実施の記録、人選の基準の案、説明の計画と記録、法令の確認の点検表、時系列の整理までで、「この整理解雇は有効か」「この人選基準でよいか」「この時期に実施してよいか」といった判断は、弁護士の範囲です。副業の人事が「四つの要素を満たしているので大丈夫です」と言うことは、してはいけません。四つは形式的に揃えれば有効になるものではなく、個別の事案に即して判断されるものです。

担当する側から見ると、この局面で依頼先が最も必要としているのは、冷静に選択肢を並べてくれる人です。経営は追い詰められていて、視野が狭くなっています。そこで「解雇しかない」に同調するのでも、「解雇はできません」と止めるのでもなく、選択肢と、それぞれの効果と時間と、必要な手続を並べる。そのうえで、判断は経営がし、法的な確認は弁護士がする。この役割に徹することが、結果として依頼先の役に立ちます。対象になる人にとっても、手続が尽くされたかどうかは、その後の生活に直結します。エラベルでは、依頼側が担当者を選べるので、この局面で冷静に材料を作れる人は、強く求められています。

まとめ

よくある質問

経営から「4要素を満たしているか見てほしい」と言われました

満たしているかの判断は弁護士の領域です。副業の人事ができるのは、四つそれぞれについて「何を検討し、何を実施し、どう記録したか」を整理して、弁護士に渡せる形にすることです。整理する過程で、検討が足りていない箇所(回避の措置を実施していない、人選の基準を決めていない、説明の計画がない)が見えるので、その箇所を埋める作業を提案します。厚生労働省の記載も「慎重に検討を行うことが望まれる」という書き方で、形式的に揃えれば有効になるという趣旨ではありません。

希望退職の募集を先にやるべきですか

厚生労働省のパンフレットでは、解雇回避のための方法として、配置転換、出向、希望退職募集等を検討することが考えられる、とされています。どの措置を、どの順番で、どこまで行うかは、依頼先の状況によって変わり、法的な評価も伴うので、弁護士に相談しながら決めます。副業の人事ができるのは、それぞれの選択肢について、対象になる人数、見込まれる効果、必要な期間、実施に伴う手続を整理し、経営が判断できる材料にすることです。希望退職の条件設計そのものも、専門家に確認しながら進めます。

対象にならない人への説明も要りますか

厚生労働省の記載では、労働組合との協議や労働者への説明を行うこととされています。実務としては、対象になる人への説明だけでなく、残る人への説明も設計します。残る人は「次は自分か」と考え、そこから離職が続くことがあります。何が起きているのか、これからどうするのかを説明する場を、計画に入れておきます。説明の内容のうち、法的に注意が要る部分は弁護士に確認します。退職を促す形での働きかけは別の問題を生むので、退職勧奨の進め方とあわせて確かめてください。

出典