人事副業 / 人事の前提知識
特定技能・技能実習の実務|制度の違いと、育成就労への移行で変わること
副業で人事を受けている人が、製造、建設、介護、飲食などの依頼先に入ると、特定技能や技能実習で働く人がいる現場に関わることがあります。ここは、一般の中途採用とは制度の作りがまったく違い、受入れ機関の基準、支援、届出、監理といった仕組みが上に乗っています。しかも、技能実習制度は育成就労制度への移行が決まっており、制度そのものが変わる途中です。この記事は、副業の人事が関わるときの前提を、出入国在留管理庁と厚生労働省の記載に沿って整理したものです。結論を先に書くと、特定技能は人手不足の分野で受け入れる在留資格で、1号は相当程度の知識または経験を必要とする技能、2号は熟練した技能を要する業務が対象です。技能実習は技能移転による国際貢献を目的とした制度で、令和6年6月21日に公布された改正法により、人材の育成・確保を目的とする育成就労制度へ発展的に解消され、育成就労制度は令和9年4月1日から運用開始とされています。副業の人事が持つのは、社内の採用と人事の運用(要件、受け入れ、定着、評価、日本語の支援の設計)までで、受入れ機関の基準の充足、支援計画、届出、監理に関わる判断は、登録支援機関・監理支援機関・行政書士・社会保険労務士の範囲です。在留資格の確かめ方は外国人雇用と在留資格に、届出の実務は外国人雇用状況の届出にまとめています。
特定技能:1号と2号の違いと、特定産業分野
出入国在留管理庁の在留資格一覧表では、特定技能1号は「特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を要する技能を要する業務従事者」、特定技能2号は「特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務従事者」とされ、在留期間は1号が法務大臣が個々に指定する期間(3年を超えない範囲。通算で原則5年以内)、2号が3年、2年、1年または6月とされています。
特定産業分野として、出入国在留管理庁のページには、介護、ビルクリーニング、リネンサプライ、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、自動車運送業、鉄道、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業が挙げられています。分野ごとに運用の方針や試験が定められているため、依頼先の事業がどの分野に当たるかによって、要件も手続も変わります。
厚生労働省の指針は、特定技能の在留資格の人について、事業主は、出入国管理及び難民認定法の規定に基づく特定技能雇用契約の基準および特定技能所属機関の基準に留意するとともに、一号特定技能外国人支援および必要な届出等を適切に実施すること、としています。一号特定技能外国人支援には、社会保険その他の各種行政手続についての情報提供や相談窓口の案内、必要に応じた相談窓口への同行等の支援、生活のための日本語習得の支援、医療機関に関する情報の提供、苦情・相談への対応、外国人労働者と日本人との交流の促進に係る支援が含まれる、と書かれています。出入国在留管理庁の制度の説明では、受入れ機関が支援計画を作成し、受入れ機関自身または登録支援機関が支援を実施する形とされ、登録支援機関は出入国在留管理庁長官の登録を受ける必要があり、登録の期間は5年で更新できるとされています。
副業の人事が関わるところ。支援そのものや届出は、受入れ機関の基準と登録支援機関の仕組みの中で動くので、副業の人事が引き取る範囲ではありません。関われるのは、採用の要件の整理(どの業務を任せるか)、受け入れの段取り(初日と最初の一か月)、定着の仕組み(相談の相手、日本語の支援の社内での位置づけ)、評価と処遇の設計、日本人の社員への説明です。基準の充足や手続は、登録支援機関や行政書士、社会保険労務士にご確認ください。
エラベルの見解
担当する側から見ると、この領域で副業の人事が役に立つかどうかは、「制度を知っているか」ではなく「制度の外側にある人事の仕事を見つけられるか」で決まります。相談で見ていると、制度の手続は登録支援機関や行政書士が持っているのに、「入った人が現場で何をするか」「誰が教えるか」「日本人の社員にどう説明するか」「評価と昇給をどうするか」が誰の仕事にもなっていない依頼先が多くあります。ここは制度の外側で、依頼先の人事の仕事です。副業の人事が入る価値があるのは、まさにこの部分です。
具体的には、受け入れの初日と最初の一か月の一枚、現場の誰が教えるかの割り当て、作業手順の言葉をやさしくする作業、相談の相手を社内に一人決めること、日本人の社員に「なぜ受け入れるか」を説明する場、評価と昇給の基準を日本人と同じ物差しにすること。これらは制度の手続ではないので、登録支援機関も行政書士もやりません。エラベルでは、依頼側が担当者の経歴を見て選ぶ仕組みなので、製造や介護や飲食の現場で受け入れに関わった経験がある人は、その経験を書いておくと、この領域の依頼先から選ばれやすくなります。
技能実習と、育成就労制度への移行
技能実習の位置づけ。在留資格一覧表では、技能実習1号・2号・3号が就労が認められる在留資格として挙げられ、在留期間は1号が1年を超えない範囲、2号と3号が2年を超えない範囲で法務大臣が個々に指定するとされています。厚生労働省の指針は、技能実習生も外国人労働者に含まれるとし、事業主は、技能実習の適正な実施および技能実習生の保護に関する基本方針に規定する事項等の内容に留意し、技能実習生に対し実効ある技能等の修得が図られるように取り組むこと、としています。制度の運用には外国人技能実習機構(OTIT)が関わります。
育成就労制度への移行。出入国在留管理庁の資料によれば、令和6年6月21日に「出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律」が公布され、技能移転による国際貢献を目的とする技能実習制度を発展的に解消し、日本の人手不足分野における人材の育成・確保を目的とする育成就労制度が創設されました。育成就労制度は令和9年4月1日から運用開始とされています(改正法は一部の規定を除き令和9年4月1日施行)。
育成就労制度の要点。出入国在留管理庁の「育成就労制度の概要」には、次の内容が示されています。目的は、育成就労産業分野において、日本での3年間の就労を通じて特定技能1号水準の技能を有する人材を育成するとともに、当該分野における人材を確保すること。育成就労産業分野は、特定産業分野のうち就労を通じて技能を修得させることが相当なものとされ、受入れ対象分野は特定技能と原則一致させるが、国内での育成になじまない分野は対象外とされています。基本方針と分野別運用方針を策定し、分野別運用方針で受入れ見込数を設定して受入れの上限数として運用すること。監理支援機関を許可制とし、許可基準は厳格化され、技能実習制度の監理団体も監理支援機関の許可を受けなければ監理支援事業を行えないこと。育成就労外国人ごとに作成する「育成就労計画」を認定制とし、期間(3年以内)、目標(技能、日本語能力)、内容等を記載して外国人育成就労機構の認定を受けること。送出国との二国間取決めや送出機関に支払う費用が不当に高額にならない仕組みの導入。本人の意向による転籍を一定の要件の下で認めること。地域協議会を組織することなどによる受入環境整備。
副業の人事が関わるところ。制度の移行そのものは、受入れ機関と監理団体・監理支援機関の側で進むものです。副業の人事が依頼先に伝えるべきは、「いつから変わるか」「今いる技能実習生はどう扱われるか(経過措置があるか)」「自社の分野は育成就労の対象になるか」を、一次情報で確かめて整理し、依頼先が監理団体や行政書士に確認する材料を作ることです。経過措置については、出入国在留管理庁のページに経過措置に関する政令・省令が掲載されているので、個別の扱いはそちらと専門家にご確認ください。
副業の人事が、この領域で持つ仕事
制度の手続と、依頼先の人事の仕事を分けると、次のようになります。
| 領域 | 誰が持つか | 副業の人事が関われること |
|---|---|---|
| 受入れ機関の基準の充足、雇用契約の基準 | 受入れ機関と行政書士等 | 基準に関わる社内の条件(賃金、労働時間)の整理 |
| 一号特定技能外国人支援、支援計画 | 受入れ機関または登録支援機関 | 支援の内容と社内の受け入れの段取りの接続 |
| 届出、在留の手続 | 受入れ機関、行政書士、社会保険労務士 | 期限の一覧と、社内の担当の割り当て |
| 監理、育成就労計画の認定 | 監理団体・監理支援機関、外国人育成就労機構 | 依頼先が確認すべき点の整理 |
| 受け入れと定着(初日、教える人、相談の相手) | 依頼先の人事と現場 | 設計と運用の実装 |
| 評価、処遇、昇給 | 依頼先の人事 | 日本人と同じ物差しで設計 |
| 日本語と作業手順の分かりやすさ | 依頼先の人事と現場 | 手順書の言葉の見直し、教え方の型 |
| 日本人の社員への説明 | 依頼先の経営と人事 | 説明の場と資料 |
厚生労働省の指針は、国籍にかかわらず労働関係法令と社会保険関係法令が適用されることを明記し、外国人労働者を常時10人以上雇用するときは人事課長等を雇用労務責任者として選任することも定めています。依頼先が「制度の手続は監理団体がやってくれているから、人事は何もしなくてよい」と考えている場合、この表を見せて、人事の側に残る仕事を示します。
エラベルの見解
外に出してよいのは、受け入れと定着の設計、評価と処遇の設計、手順書の言葉の見直し、教え方の型、日本人の社員への説明、期限の一覧と社内の担当の割り当て、制度の変更点の整理までで、「受入れ機関の基準を満たしているか」「支援計画の内容はこれでよいか」「この人は特定技能に移行できるか」「経過措置がどう当てはまるか」といった判断は、登録支援機関、監理支援機関、行政書士、社会保険労務士の範囲です。制度の手続に関わる判断を副業の人事が引き取ると、責任の所在が曖昧になり、依頼先にとっても危険です。
担当する側から見ると、この領域で最も価値が出るのは、制度の言葉を「依頼先の現場の言葉」に翻訳することです。監理団体や登録支援機関から来る説明は制度の言葉で書かれていて、現場の管理職には伝わりません。何を、いつまでに、誰が、どうするのか、を現場の言葉に直して一枚にし、現場の管理職が読める形にする。これは制度の外側の仕事で、人事の経験がある人にしかできません。エラベルでは、依頼側が担当者を選べるので、「制度は専門家、現場への翻訳と運用は私」と線を示せる人は、この領域の依頼先から続けて頼まれています。
まとめ
- 特定技能は、1号が相当程度の知識または経験を要する技能、2号が熟練した技能を要する業務。1号の在留期間は3年を超えない範囲で指定され通算で原則5年以内、2号は3年・2年・1年・6月
- 特定産業分野は介護、ビルクリーニング、建設、農業、外食業など。分野ごとに運用が異なるので、依頼先の分野を先に確かめる
- 一号特定技能外国人支援は、受入れ機関または登録支援機関が実施する。支援の内容には日本語習得の支援や相談窓口の案内等が含まれる
- 技能実習制度は、令和6年6月21日公布の改正法により育成就労制度へ発展的に解消され、令和9年4月1日から運用開始とされている
- 育成就労は、3年間の就労を通じて特定技能1号水準の人材を育成し人材を確保する制度。育成就労計画の認定制、監理支援機関の許可制、本人の意向による転籍を一定の要件の下で認めることなどが示されている
- 副業の人事が持つのは受け入れ・定着・評価・翻訳と運用まで。基準、支援計画、届出、監理、経過措置の判断は専門機関と専門家にご確認ください
よくある質問
依頼先が「特定技能で採りたい」と言っています。何から確かめますか
まず、依頼先の事業がどの特定産業分野に当たるか、任せたい業務がその分野で認められる業務に入るかを、出入国在留管理庁の分野ごとの資料で確かめます。次に、受入れ機関としての基準と支援の実施体制(自社で支援するか、登録支援機関に委託するか)を誰が判断するかを決めます。副業の人事は、任せる業務の整理と、受け入れ後の運用(教える人、評価、日本語の支援の位置づけ)を設計する側に回り、基準の充足と手続は行政書士や登録支援機関に確認してもらいます。在留資格の確かめ方は外国人雇用と在留資格に整理しています。
今いる技能実習生は、育成就労が始まったらどうなりますか
改正法の施行(令和9年4月1日)に向けて、経過措置に関する政令・省令が定められており、出入国在留管理庁のページに掲載されています。個別の扱いは、依頼先の監理団体と行政書士に確認してもらってください。副業の人事が持つのは、「いつから変わるか」「自社の分野は対象か」「今いる人にどう影響しうるか」を一次情報で整理し、依頼先が確認するための材料を作るところまでです。確定していないことを「こうなります」と伝えないようにします。法改正の追い方は法改正の追い方と情報源に整理しています。
受け入れた人の評価や昇給は、日本人と分けてよいですか
厚生労働省の指針は、国籍にかかわらず労働関係法令が適用されるとし、適正な労働条件の確保や人事管理の運用の透明性・公正性の確保を求めています。評価や処遇の物差しを国籍で分ける設計は、この考え方と整合しません。設計するなら、日本人と同じ物差しにしたうえで、日本語や作業の習熟の段階を評価の中でどう扱うかを決める形にします。個別の賃金や処遇の適法性の判断は、社会保険労務士や弁護士にご確認ください。届出や手続の運用は外国人雇用状況の届出に整理しています。