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年次有給休暇の付与ルール|6か月8割の要件、比例付与、年5日の時季指定

公開 2026-09-23

副業で人事を受けると、有給休暇の管理が一番よく壊れている場所だと分かります。付与日がばらばら、パートの日数が計算されていない、年5日の時季指定が誰の担当か決まっていない。結論を先に書くと、労働基準法第39条第1項は「使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない」と定め、第7項は、付与日数が十労働日以上である労働者について「五日については、基準日…から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない」と定めています。個別の判断は労働基準監督署にご確認ください。休憩・休日は休憩・休日のルールに、規程の整備は就業規則の作成義務にまとめています。

付与日数と、比例付与

原則(第39条第1項)。要件は二つ。雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務していることと、全労働日の八割以上出勤していること。これを満たすと十労働日が付与されます。

加算(第39条第2項)。一年六箇月以上継続勤務した労働者には、六箇月経過日から起算した継続勤務年数一年ごとに、次の日数を加算します。ただし書きで、各期間の初日の前日の属する期間において出勤した日数が全労働日の八割未満である者には、当該初日以後の一年間は与えることを要しない、とされています。

六箇月経過日から起算した継続勤務年数加算される労働日合計
一年一労働日十一労働日
二年二労働日十二労働日
三年四労働日十四労働日
四年六労働日十六労働日
五年八労働日十八労働日
六年以上十労働日二十労働日

比例付与(第39条第3項、施行規則第24条の3)。一週間の所定労働時間が三十時間未満で、かつ週所定労働日数が四日以下(または一年間の所定労働日数が二百十六日以下)の労働者は、日数が比例して定められます。通常の労働者の週所定労働日数は五・二日とされています。

週所定労働日数一年間の所定労働日数6か月1年6か月2年6か月3年6か月4年6か月5年6か月6年6か月以上
四日百六十九日〜二百十六日七日八日九日十日十二日十三日十五日
三日百二十一日〜百六十八日五日六日六日八日九日十日十一日
二日七十三日〜百二十日三日四日四日五日六日六日七日
一日四十八日〜七十二日一日二日二日二日三日三日三日

週四日でも所定労働時間が三十時間以上なら、比例付与ではありません。第39条第3項は「一週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間以上の者を除く」としており、その時間は三十時間です。週四日勤務でも一日八時間なら三十二時間なので、通常の付与日数になります。日数だけで判断すると誤ります。

出勤率の計算(第39条第10項)。「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業した期間及び育児休業又は介護休業をした期間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業した期間は、第一項及び第二項の規定の適用については、これを出勤したものとみなす」。育休・介護休業・産前産後休業は、八割の計算では出勤扱いです。産前産後の枠組みは産前産後休業の制度にまとめています。

与え方の四つの仕組み

一、労働者の請求する時季(第39条第5項)。「使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」。いわゆる時季変更権です。

二、時間単位(第39条第4項)。過半数労働組合等との書面による協定で、時間単位で与えられる労働者の範囲、時間を単位として与えることができる日数(五日以内に限る)、その他省令事項を定めた場合に、労働者が時間を単位として請求したときに与えることができます。

三、計画的付与(第39条第6項)。過半数労働組合等との書面による協定で有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、五日を超える部分について、その定めにより与えることができます。五日は本人の自由に残す設計です。

四、年五日の時季指定(第39条第7項)。「使用者は、…有給休暇(…使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者に係るものに限る。)の日数のうち五日については、基準日…から一年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならない」。

重複は控除されます(第39条第8項)。第5項(本人の請求)または第6項(計画的付与)により与えた日数(五日を超える場合は五日)の分については、時季を定めて与えることを要しません。本人が自分で五日取っていれば、会社の指定は不要という構造です。

前倒し付与のとき(施行規則第24条の5)。基準日より前に十労働日以上を与えることとしたときは、その日(第一基準日)から一年以内の期間に五日を与えます。第一基準日から一年以内に新たに十労働日以上を与える日(第二基準日)を設けた場合は、履行期間の月数を十二で除した数に五を乗じた日数を、その履行期間中に与える形が認められています。

賃金(第39条第9項)。就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、平均賃金、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金、またはこれらを基準として省令で算定した額を支払います。ただし書きで、労使協定を結んだ場合の標準報酬月額の三十分の一に相当する金額による方法も定められています。どれを使うかを就業規則で決めておく必要があります。

エラベルの見解

担当する側から見ると、有給の案件は台帳を作るところから始まります。多くの会社は給与システムに残日数を持っていますが、付与日と基準日、時季指定の履行状況までは追えていません。第39条第7項は「基準日から一年以内の期間に」と書いているので、人ごとに期限が違うのが原則です。ここを管理できていないと、年度末に慌てて指定することになります。

実務でよく提案するのは、基準日の統一です。入社日基準だと管理が人数分に分かれますが、前倒しして全社一律の基準日にすると、期限が揃います。施行規則第24条の5は、前倒しした場合の扱いを定めているので、条文の上でも想定された形です。ただし、前倒しは従業員にとって有利になる方向でしか組めないので、移行の設計に注意が要ります。就業規則の変更も伴うので、就業規則を変更する手続きの段取りとセットで進めます。

もう一つ、パート・有期の比例付与の誤りが多い。週の日数だけを見て比例付与にしている会社が本当に多く、所定労働時間が三十時間以上かどうかの確認が抜けています。契約書の所定労働時間を一人ずつ確かめると、たいてい何人か出てきます。過去分の扱いは会社と弁護士・社会保険労務士の判断になりますが、見つけて示すところまでは、こちらの仕事です。エラベルは依頼側が担当者の経歴を見て選ぶ仕組みなので、この棚卸しをやり切った経験は、経歴に書いておくと効きます。

管理簿と、会社に渡すもの

年次有給休暇管理簿(施行規則第24条の7)。「使用者は、法第三十九条第五項から第七項までの規定により有給休暇を与えたときは、時季、日数及び基準日(第一基準日及び第二基準日を含む。)を労働者ごとに明らかにした書類(…「年次有給休暇管理簿」という。)を作成し、当該有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後五年間保存しなければならない」。

保存年数には経過措置があります。施行規則の附則第71条は、第24条の7などの規定の適用について「当分の間、これらの規定中『五年間』とあるのは、『三年間』とする」と定めています。実務では三年間が当面の下限になりますが、五年に戻る前提で設計しておくほうが安全です。

副業の人事が作るのは、次の形です。個別の適否の判断は労働基準監督署にご確認ください。

作るもの中身
付与台帳人ごとの入社日、基準日、付与日数、残日数、繰越分
比例付与の判定所定労働時間が週三十時間以上かを先に見る。そのうえで週所定労働日数
出勤率の計算全労働日と出勤日。育休・介護休業・産前産後休業・業務上の傷病は出勤扱い
時季指定の管理表人ごとの期限(基準日から一年)、既に取得した日数、残りの指定すべき日数
指定の手順誰が、いつ、どう聞くか。本人の意見を聴く段取りと記録
労使協定時間単位(五日以内)、計画的付与(五日を超える部分)を使うなら
賃金の定め平均賃金/通常の賃金/標準報酬日額のどれか。就業規則に明記
管理簿時季・日数・基準日。保存期間(当分の間三年間)
申請の様式請求の受け方、時季変更権を行使する場合の手順と記録
現場への説明「事業の正常な運営を妨げる場合」を現場の裁量で広げない

時季変更権は狭く運用します。第39条第5項ただし書は「事業の正常な運営を妨げる場合」に限っています。忙しいから、人が足りないから、という理由を現場が自由に使える状態にしておくと、制度が形骸化します。誰が判断するか、どう記録するかを決めておきます。

時季指定は「押し付け」にしない。施行規則は、時季指定に当たって労働者の意見を聴き、聴取した意見を尊重するよう努めなければならないとしています。会社が一方的に日を決める運用は、この趣旨から外れます。実務では、期限の三か月前に希望を聞き、それでも残っている人に対して指定する、という二段構えにすると回ります。

エラベルの見解

外に出してよいのは、台帳、比例付与の判定表、時季指定の管理表と手順、労使協定の項目立て、就業規則の記載案、管理簿の様式までで、「過去分の付与不足をどう扱うか」「この時季変更が認められるか」といった個別の判断は、労働基準監督署や社会保険労務士、弁護士の範囲です。

担当する側から見ると、有給の案件で会社の空気を変えるのは、数字を見せることです。部署別・人別の取得日数を一覧にすると、たいてい偏りが出ます。同じ職場で二十日取る人と三日の人がいる。管理職だけ取れていない。特定の職種だけ極端に低い。ここを見せると、会社は「制度の問題ではなく運用の問題だ」と気づきます。

そして、取れていない人の理由はだいたい共通です。代わりがいない、引き継ぎができない、休むと仕事が溜まる。つまり、有給の問題は業務の属人化の問題です。ここまで話を持っていけると、案件は労務管理から業務設計に広がります。年五日の時季指定義務への対応として始まった仕事が、結果的に離職率の改善につながることがあるのは、そのためです。エラベルでは、依頼側が担当者を選べるので、この広がりを経験した人は、次の案件で選ばれやすくなります。

まとめ

よくある質問

週4日勤務のパートは、比例付与でよいですか

労働基準法第39条第3項は、比例付与の対象から「一週間の所定労働時間が厚生労働省令で定める時間以上の者」を除いており、施行規則第24条の3第1項はその時間を三十時間としています。したがって、週四日でも一日の所定労働時間が長く、週の所定労働時間が三十時間以上になる場合は、比例付与ではなく通常の日数になります。実務では、契約書の所定労働時間から一人ずつ確認します。個別の判断は労働基準監督署にご確認ください。

年5日の時季指定は、全員に必要ですか

労働基準法第39条第7項は、対象を「使用者が与えなければならない有給休暇の日数が十労働日以上である労働者」に限っています。したがって、比例付与で十労働日未満の人は対象外です。また第8項により、第5項(本人の請求)または第6項(計画的付与)で与えた日数の分(五日を超える場合は五日)については、時季を定めて与えることを要しません。実務では、人ごとの基準日と取得日数を管理表で追い、期限前に残りがある人だけ指定します。個別の判断は労働基準監督署にご確認ください。

忙しい時期の申請を断ってもよいですか

労働基準法第39条第5項は「使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない」としたうえで、ただし書きで「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」と定めています。認められているのは、拒否ではなく他の時季に与えることです。したがって、代わりの時季を示す必要があります。「事業の正常な運営を妨げる場合」に当たるかの判断は、現場の裁量に委ねず社内で判断者を決めておくのが実務です。個別の判断は労働基準監督署にご確認ください。

出典