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本業と利益相反になる案件|「競合」だけでなく「候補者の重なり」「情報の流れ」で見分ける
副業の案件が来た。依頼側は、本業の会社と業種が違う。競合ではないから、大丈夫だと思った。受けてみると、依頼側が採ろうとしている候補者は、本業の会社が採ろうとしている層と同じだった。本業の会社の候補者を、副業の依頼側に流すことになりかねない。結論を先に書くと、利益相反は、「依頼側が競合かどうか」だけでは判断できません。事業の競合・候補者の重なり・取引関係・情報の流れの四つの型で見て、どれかに当たるなら、受けないか、範囲を限定して受けてください。迷うなら受けない。本業の立場と副業の信頼の両方を、一つの案件で失うことは避けます。副業の申請は副業許可の申請の出し方に、本名を出すかどうかは本名を出さずに受けられるかにまとめています。競業避止義務や守秘義務の法的な範囲は、この記事では扱わず、専門家にご確認ください。
利益相反の四つの型
利益相反は、四つの型で見ます。
一.事業の競合。 依頼側が、本業の会社と同じ市場で、同じ顧客を取り合っている。最も分かりやすい型で、多くの副業規定で禁止されている。
二.候補者の重なり。 依頼側の事業は競合していないが、採ろうとしている候補者の層が、本業の会社と同じ。同じ職種、同じ経験、同じ媒体。副業で声をかける候補者が、本業の会社の候補者と重なる。人事の副業で、最も見落とされやすい型。
三.取引関係。 依頼側が、本業の会社の取引先、顧客、仕入先、パートナー。事業は競合しないが、本業の会社との関係に影響する。「取引先の採用を手伝っている」と本業の会社に知られたときの、立場。
四.情報の流れ。 本業の会社で知った情報(候補者、要件、条件、制度、採用の計画)が、副業に流れる。あるいは、副業で知った情報が、本業に流れる。意図しなくても、頭の中で混ざる。
一は、依頼側の業種で分かります。二から四は、依頼側の業種だけでは分からず、業務の内容と、自分の本業の立場で見る必要があります。
案件を受ける前の確認
案件を受ける前に、四つの型で確認します。
事業の競合。 依頼側の事業と、本業の会社の事業。同じ市場か、同じ顧客か。本業の会社の副業規定で、競合の定義があれば、それに照らす。
候補者の重なり。 依頼側が採ろうとしている職種・経験・層と、本業の会社が採ろうとしている職種・経験・層。重なるか。使う媒体が同じか。本業の会社で自分が担当している採用の職種と、副業で扱う職種が同じなら、重なる可能性が高い。
取引関係。 依頼側が、本業の会社の取引先・顧客・パートナーか。本業の会社の取引先の一覧を全部知ることはできないが、知っている範囲で。
情報の流れ。 副業の業務で、本業の会社の情報を使わずに済むか。本業で知った候補者、要件、条件を、副業で使わない運用ができるか。逆も。
確認は、依頼側の会社名と業種を聞いた時点で、始めます。面談の前に、四つの型で見て、当たるなら面談を受けない。
判断に迷うときの基準
四つの型で見ても、判断に迷うことがあります。基準です。
本業の会社に説明できるか。 「この副業を受けています」と、本業の上司や人事に説明して、問題無いと言えるか。言えないなら、受けない。
依頼側に本業を説明できるか。 「本業は〇〇業界の人事です」と、依頼側に説明して、依頼側が「それなら」と受け入れるか。依頼側が「それは困る」と言うなら、受けない。
候補者に説明できるか。 副業で声をかける候補者に、「本業は〇〇の人事で、副業で〇〇の採用を手伝っている」と説明して、候補者が不信を持たないか。
業務の範囲を限定して、相反を避けられるか。 候補者の重なりがあるなら、候補者に触れない業務(面接の設計、求人票の作成)だけを受ける。取引関係があるなら、本業の会社の担当と関わらない範囲で。
時期をずらせるか。 本業の会社で、その職種の採用が終わってから、副業で同じ職種を扱う。時期がずれれば、候補者の重なりは減る。
迷うなら、受けない。 四つの型のどれかに当たるかもしれない、説明できるか分からない、限定できるか分からない。迷いが残るなら、受けない。副業の案件は他にもあるが、本業の立場は一つ。
判断の材料は、「三方(本業の会社・依頼側・候補者)に説明できるか」です。
受けない判断の伝え方
利益相反で受けないと決めたら、依頼側に伝えます。
理由を、率直に短く。 「本業の会社との関係で、利益相反の可能性があるため、今回はお受けできません」。詳細(本業の会社名、重なる候補者の層)は言わない。
依頼側を否定しない。 依頼側の案件が悪いのではなく、自分の立場の問題。「御社の案件に問題があるのではなく、私の本業との関係です」。
代案を出す。 業務の範囲を限定すれば受けられるなら、「面接の設計だけなら」と提案。他の人を紹介できるなら、紹介。
時期の可能性を残す。 「本業の状況が変われば、改めて」。関係を切らない。
早く伝える。 面談の前に分かるなら、面談の前に。面談で分かったなら、面談の場か翌日に。契約の直前や後に伝えると、依頼側の計画が崩れる。
受けない判断を率直に伝える人は、依頼側から「筋を通す人」と見られます。次の案件につながることがあります。
エラベルの見解
相談で最も多い失敗は、「業種が違うから競合ではない、と判断して受けた」というものです。本業は〇〇業界の人事、副業の依頼側は〇〇業界。業種は違う。しかし、両方がエンジニアを採ろうとしていて、同じ媒体で、同じ層に声をかける。副業で声をかけた候補者が、本業の会社にも応募していた。本業の会社で「なぜこの候補者に、別の会社から声がかかっているのか」となり、副業が知られ、立場を失った。「候補者の重なり」の型で見ていれば、避けられました。
見ていて差がつくのは、受ける側が「業種」だけでなく「候補者の層」で見ているかどうかです。人事の副業は、候補者を扱う仕事です。事業が競合しなくても、候補者が重なれば、利益相反になります。
受ける側にできるのは、案件を受ける前に、「本業で自分が採っている職種と、副業で扱う職種が同じか」を確認することです。同じなら、候補者に触れない業務に限定するか、受けない。
受けた後に気づいたときの対応
受けてから、利益相反に気づくことがあります。対応です。
すぐに、状況を整理する。 四つの型のどれに当たるか。どの程度か。すでに本業の情報を使っていないか、候補者が重なっていないか。
業務の範囲を限定できるなら、限定する。 候補者に触れる業務を止め、面接の設計や求人票などに移る。依頼側に、「本業との関係で、この業務は続けられません。この範囲なら続けられます」と伝える。
限定できないなら、契約を終える。 引き継ぎの期間を取り、記録を渡し、丁寧に終える。理由は「本業との関係で、利益相反の可能性が分かったため」。
本業の会社への報告を検討する。 副業の申請をしている場合、申請の内容と違う状況になっていれば、報告。報告の要否は、規定と状況で判断。専門家に確認。
本業の情報を使っていたなら、使用を止め、影響を確認する。 意図せず使っていた場合も、止める。影響が大きいなら、専門家に相談。
記録を残す。 いつ気づき、何をしたか。後で説明が要るときの根拠。
気づいたときに、放置しないことです。放置すると、相反が深まり、後で説明できなくなります。
利益相反を避ける運用
利益相反を、日常の運用で避ける形です。
本業と副業の情報を、物理的に分ける。 別の端末、別のアカウント、別のフォルダ。混ざる余地を作らない。
本業の候補者のリストを、副業で見ない。 頭の中で参照することも避ける。副業の候補者は、副業の依頼側の媒体で、一から探す。
副業で扱う職種を、本業と変える。 本業でエンジニアを採っているなら、副業では営業や管理部門を扱う。重なりを構造的に無くす。
依頼側の業種と取引関係を、契約時に確認する。 「本業の会社と取引がありますか」と、依頼側に直接聞く。
副業の申請の内容を、守る。 申請で「競合しない」「情報を持ち込まない」と書いたなら、その運用を続ける。
定期的に見直す。 本業の会社の事業や採用計画が変わる、副業の依頼側の事業が変わる。四半期に一度、四つの型で見直す。
本業の会社の副業規定の変更を、確認する。 規定が変われば、認められていた副業が認められなくなることもある。
運用で避けていれば、利益相反は起きにくく、起きても早く気づけます。
エラベルの見解
担当する側から見ると、利益相反で最も困るのは「受ける側が、本業の情報を無意識に使っている」ことです。本業で見た候補者の条件感、本業の要件の絞り方、本業の媒体での反応。受ける側は「一般的な知識」のつもりで、副業に持ち込む。依頼側は、それが本業の情報だとは知らない。本業の会社が知ったとき、受ける側は「情報を漏らした」ことになる。
本業の情報と一般的な知識の線は、自分では引きにくい。「本業で知った」と思い当たるものは、副業で使わない。それが、線の引き方です。
受ける側にできるのは、「本業で知ったか、一般的な知識か」を、副業で何かを使うたびに自分に問うことです。問うて迷うなら、使わない。
まとめ
- 利益相反は事業の競合・候補者の重なり・取引関係・情報の流れの四つの型。業種だけでは判断できない
- 受ける前に四つの型で確認。依頼側の会社名と業種を聞いた時点で、面談の前に
- 迷うときの基準は本業の会社・依頼側・候補者の三方に説明できるか。範囲の限定や時期のずらしで避けられるか。迷うなら受けない
- 受けないときは率直に短く・依頼側を否定せず・代案を出し・時期の可能性を残し・早く
- 受けた後に気づいたら整理し・限定し・限定できなければ終え・本業への報告を検討し・情報の使用を止め・記録を残す
- 運用で情報を物理的に分け・本業の候補者を見ず・職種を変え・取引関係を聞き・申請を守り・定期的に見直し・規定の変更を確認
- 法的な範囲は専門家に確認
よくある質問
依頼側の業種が、本業と全く違います。利益相反はありませんか
事業の競合は無いかもしれませんが、候補者の重なり(同じ職種・同じ層・同じ媒体)、取引関係(依頼側が本業の取引先)、情報の流れ(本業の情報を使わずに済むか)の三つを確認してください。人事の副業では、候補者の重なりが最も見落とされやすい。本業で自分が採っている職種と、副業で扱う職種が同じなら、注意が要ります。
本業の会社の取引先から、採用を手伝ってほしいと言われました
取引関係の型です。事業は競合しなくても、「取引先の採用を手伝っている」と本業の会社に知られたときの立場を考えてください。本業の会社に説明して問題無いと言えるか。言えないなら、受けない。受けるなら、本業の会社の担当と関わらない範囲に限定し、副業の申請の内容にも含めます。判断に迷うなら、専門家に。
受けてから、候補者が本業の会社と重なっていると分かりました
すぐに、候補者に触れる業務を止め、依頼側に「本業との関係で、この業務は続けられません」と伝えてください。面接の設計や求人票など、候補者に触れない業務に限定できるなら限定し、できなければ契約を終えます。本業の会社への報告の要否は、副業の申請の内容と規定で判断し、迷うなら専門家に。放置しないことが最も重要です。