人事副業 / 単価・契約・税務
成果報酬型は受けるべきか|「成果の定義」と「自分で動かせる範囲」が一致していれば受ける
「月額は無しで、面談が一件決まるごとに報酬を」「採用が決まったら報酬を」。人事の副業で、こうした成果報酬型の提案を受けることがあります。決まれば大きいが、決まらなければゼロ。受けるべきか迷います。結論を先に書くと、成果報酬型は、「成果の定義が明確」で「その成果が自分で動かせる範囲で決まる」場合に限って受けてください。成果が依頼側の判断(面接の合否、内定の承諾)に左右されるなら、自分の働きと報酬が結びつかず、受けるべきではありません。この記事では、報酬の金額や相場の数値は扱いません。単価の考え方は人事の副業単価の相場に、最初の案件の価格は最初の1件の価格の決め方にまとめています。契約と法令に関わる部分は、一般的な整理にとどめ、個別の判断は専門家にご確認ください。
成果報酬型の仕組み
成果報酬型は、「何かが起きたら、いくら」という報酬の形です。人事の副業では、次のような成果が置かれます。
返信。 スカウトを送って、返信が来たら。
面談設定。 候補者と依頼側の面談の日程が決まったら。
面談実施。 面談が実際に行われたら。
内定。 依頼側が内定を出したら。
入社。 候補者が入社したら。
成果が後ろ(入社に近い)ほど、一件あたりの報酬は大きく、決まる確率は低く、自分で動かせる範囲は狭くなります。成果が前(返信に近い)ほど、一件あたりは小さく、決まる確率は高く、自分で動かせる範囲は広くなります。
月額固定と組み合わせる形(月額を低くして成果報酬を乗せる)と、成果報酬のみの形があります。
受けてよい条件
成果報酬型を受けてよいのは、次の三つが揃うときです。
一.成果の定義が明確。 「面談設定」なら、日程が確定した時点か、実施された時点か。候補者が直前で辞退したら、成果か。「内定」なら、内定辞退はどうか。定義が書面にあり、解釈の余地が小さいこと。
二.成果が、自分で動かせる範囲で決まる。 返信と面談設定は、対象の選び方・文面・返信対応で、自分の働きが結果に直結します。面談実施以降は、依頼側の面談者の日程、面接の質、条件提示の速さ、合否の判断に左右されます。自分で動かせない要素で決まる成果は、自分の働きと報酬が結びつきません。
三.依頼側の体制が整っている。 面談枠が確保されている、返信への対応が速い、役割の定義がある、決める人がいる。体制が無ければ、自分がどれだけ動いても、成果は出ません。契約の前に、体制を確認します。
三つが揃っていれば、成果報酬型は、自分の働きに応じた報酬になります。
受けてはいけない条件
次のどれかに当たれば、成果報酬型は受けないか、月額との組み合わせに変えてもらいます。
成果が「内定」「入社」だけ。 面接の合否も、条件提示も、承諾も、依頼側の判断です。自分の働きが良くても、依頼側の判断で成果がゼロになります。
成果の定義が曖昧。 「良い候補者が見つかったら」「採用に貢献したら」。解釈が依頼側に委ねられていて、後でもめます。
依頼側の体制が無い。 面談枠が無く、返信対応が遅く、役割が曖昧。成果が出ない原因が依頼側にあっても、報酬はゼロです。
立ち上げの期間が考慮されていない。 対象と文面が整うまでの一か月から二か月は、成果が出にくい期間です。この期間の稼働がゼロ報酬なら、立ち上げの負担を自分が全部負うことになります。
成果の帰属が曖昧。 自分が接触した候補者が、依頼側の別の経路(求人媒体、紹介会社)でも接触していた場合、成果は誰のものか。決まっていないと、成果が出ても報酬にならないことがあります。
「成果報酬なので、稼働は自由に」と言われる。 自由に見えますが、成果が出るまで無報酬で稼働し続けることになります。稼働の上限を決めないと、時間単価は下がり続けます。
受けてはいけない条件が一つでもあれば、月額を入れる交渉をします。交渉できないなら、受けません。
月額との組み合わせ方
成果報酬型を受けるなら、月額との組み合わせで、リスクを分けます。
立ち上げの期間は月額を厚く。 最初の一か月から二か月は、対象と文面を整える期間で、成果は出にくい。この期間は月額を主にし、三か月目から成果報酬の比率を上げる形。
月額で稼働の下限を保証してもらう。 「月額〇〇で、週〇時間の稼働」と、稼働に対する報酬を確保したうえで、成果報酬を乗せる。成果がゼロの月でも、稼働分は報酬になります。
成果の定義を「面談設定」に置く。 内定や入社ではなく、自分で動かせる範囲の成果に置きます。一件あたりは小さくなりますが、自分の働きと結びつきます。
成果報酬のみなら、稼働の上限を決める。 「週〇時間まで」と決め、それを超えて稼働しない。上限が無いと、成果が出るまで無限に稼働することになります。
期間を区切る。 三か月で成果が出なければ、形を見直す。成果報酬のみで半年続けると、無報酬の期間が長くなります。
依頼側から見ると、成果報酬型は「決まらなければ払わなくてよい」形です。受ける側から見ると、「決まるかどうかを依頼側の体制に握られている」形です。月額で下限を作ることが、両者の間の形です。
エラベルの見解
相談で最も多い失敗は、「成果報酬なら気軽に受けられると思って、内定ごとの報酬で契約した」というものです。対象を絞り、文面を整え、面談を組んだ。しかし依頼側の面接が遅く、条件提示に二週間かかり、候補者は他社に決まった。自分の働きは十分だったのに、報酬はゼロ。依頼側は「成果報酬なので」と当然のように払わない。
見ていて差がつくのは、受ける側が「成果の定義を面談設定にしてください」「立ち上げの二か月は月額で」と、契約の前に言えるかどうかです。提案された形をそのまま受ける人と、自分で動かせる範囲に成果を置き直す人がいます。後者は、働きに応じた報酬を得ます。
受ける側にできるのは、成果報酬型を「気軽な形」ではなく「リスクを自分が負う形」と理解し、負えるリスクの範囲に成果の定義を置き直すことです。置き直せない案件は、受けません。
契約で確認すること
成果報酬型を受けるなら、契約で次を確認します。
- 成果の定義(何をもって成果とするか、辞退や取り消しの扱い)
- 成果一件あたりの報酬と、支払いの時期(成果の確定後、何日以内か)
- 月額の有無と、月額が保証する稼働の範囲
- 稼働の上限(週に何時間まで)
- 期間と、期間中に成果が出なかった場合の扱い
- 成果の帰属(他の経路と重なった場合、誰の成果か)
- 立ち上げの期間の扱い
- 依頼側の体制(面談枠、返信対応、役割の定義、決める人)についての確認事項
- 契約の終了時に、進行中の候補者の成果がどう扱われるか(終了後に決まった場合)
最後の項目は見落とされがちです。契約が終わった後に、自分が接触した候補者の内定が決まった場合、成果として扱われるか。決めていないと、成果が出ても報酬になりません。
契約の個別の条項については、専門家にご確認ください。
法令で気をつける点
人事の副業で成果報酬を受けるとき、業務の内容によっては、法令上の扱いに注意が要ります。この記事は一般的な整理にとどめ、個別の判断は専門家にご確認ください。
一般に、求人者と求職者の間に立って雇用関係の成立をあっせんする業務(職業紹介)は、法令上の許可が必要とされています。副業として受ける業務が、スカウトの文面作成や送信の代行、応募者への連絡の代行など、依頼側の採用業務の一部を担う形であれば、依頼側の指示のもとで行う業務委託として整理されることが多いとされていますが、業務の内容や報酬の形によっては、この線引きに関わることがあります。
特に、「採用が決まったら報酬」という形で、自分が候補者を見つけて依頼側に引き合わせる業務は、職業紹介に当たる可能性が指摘されることがあります。受ける業務の内容と報酬の形が、この線引きのどちら側にあるかは、弁護士や社会保険労務士などの専門家にご確認ください。
運用の側で気をつけるのは、次の点です。
- 自分の業務が「依頼側の採用業務の一部を、依頼側の指示のもとで担う」形になっているか
- 候補者との間で、依頼側の代理として連絡しているか(自分が仲介者として立っていないか)
- 成果の定義が「入社」に置かれている場合、業務の内容と合わせて、専門家に確認しているか
この点は、成果報酬型に限らず、人事の副業全般に関わりますが、成果報酬型で「入社」に成果が置かれるときに、特に確認が要ります。
エラベルの見解
担当する側から見ると、成果報酬型で最も困るのは「成果が出ない原因が依頼側にあるのに、報酬がゼロになる」ことです。面談を組んでも面談者の日程が取れず、候補者が離れる。それでも「成果報酬なので」と、稼働は無報酬になる。依頼側に体制を求めても、「副業の人にそこまで言われる筋合いは無い」と返される。
成果報酬型は、依頼側の体制が整っていて初めて、受ける側の働きが成果につながります。体制が無い依頼側との成果報酬型は、受ける側がリスクを全部負う形です。
受ける側にできるのは、契約の前に依頼側の体制を確認し、整っていなければ月額を入れるか、受けないことです。「成果報酬でよいので、まず受けてみる」は、体制の無い依頼側にとって、最も都合の良い形です。
まとめ
- 成果報酬型は成果の位置(返信〜入社)で、一件あたりの大きさ・決まる確率・自分で動かせる範囲が変わる
- 受けてよいのは成果の定義が明確・自分で動かせる範囲で決まる・依頼側の体制が整っているの三つが揃うとき
- 受けてはいけないのは内定や入社だけ・定義が曖昧・体制が無い・立ち上げが考慮されていない・帰属が曖昧・稼働の上限が無いとき
- 月額と組み合わせて立ち上げは月額を厚く・稼働の下限を保証・成果を面談設定に・上限を決め・期間を区切る
- 契約では定義・報酬と支払い時期・月額・稼働の上限・期間・帰属・立ち上げ・体制・終了後の扱いを確認する
- 業務の内容と報酬の形が職業紹介の線引きに関わることがある。専門家に確認
- 成果報酬型は「気軽な形」ではなく「リスクを自分が負う形」
よくある質問
成果報酬のみで、月額が無い案件を提案されました
成果の定義が「面談設定」で、依頼側の体制(面談枠、返信対応、役割の定義)が整っていて、稼働の上限を決められるなら、検討の余地があります。成果が「内定」「入社」なら、依頼側の判断で成果がゼロになるので、月額を入れる交渉をしてください。交渉できないなら、受けないほうが安全です。
立ち上げの期間は、どう扱ってもらえばよいですか
最初の一か月から二か月は、対象と文面を整える期間で、成果は出にくい。この期間は月額を主にし、三か月目から成果報酬の比率を上げる形を提案してください。立ち上げの負担を、受ける側が全部負う形は避けます。
採用が決まったら報酬、という形は法令上問題がありますか
業務の内容と報酬の形によっては、職業紹介の許可に関わる線引きが指摘されることがあります。自分の業務が依頼側の採用業務の一部を依頼側の指示のもとで担う形か、自分が仲介者として立つ形かで、扱いが変わるとされています。この記事では一般的な整理にとどめており、個別の判断は弁護士や社会保険労務士などの専門家にご確認ください。