人事副業 / 採用要件の整理
採用要件の整理の副業案件|求められる経験と進め方
採用要件の整理は、採用がうまくいっていない会社のほとんどが必要としていて、しかし「頼む仕事」として認識されにくい副業案件です。経営者と現場で欲しい人が食い違っている、「理想の人」から削れず必須が十個ある、社内にその職種を知る人がいない、毎回の採用で要件がずれる。その状態で、スカウトや求人原稿の案件の中に隠れて出てくることが多い。ただ、「理想の人物像を書く仕事」と思って受けると、綺麗な人物像が一枚できて、採用は変わりません。結論を先に書くと、採用要件の整理の副業案件は、「一職種の整理」「食い違いの整理だけ」「全職種の要件シートの型作り」「見直しの伴走」の四つの型に分かれ、求められるのは、その職種を知っていること、経営者と現場の両方から本音を聞けること、「決めない」ができること、選考の結果から要件を見直した経験の四つです。進め方は、「なぜ採るか」と決める人の確認→別々の聞き取り→食い違いの整理→「最初に困ること」を軸に必須と歓迎を分ける→経歴で読める項目と面接で確かめる項目に切り分ける→要件シートと文面に落とす→選考の結果から見直す、の順で、「最初に困ること」と優先を決めるのは会社、基準にしてはいけない項目と他社の要件の持ち込みと正解を教えることに線を引いておきます。要件シートの中身は要件シートの作り方に、課題の絞り方は課題の言語化に、副業全体の始め方は人事の副業の始め方に書いています。ここでは、要件の整理の案件に絞ります。
採用要件の整理の案件の四つの型
募集文に「採用要件の整理」と書かれることは少なく、「採用の立ち上げ支援」「求人票の作成」「スカウトの設計」の中に含まれていることが多い。任される範囲は四つに分かれます。受ける前に、どの型かを確かめます。
| 型 | 任される範囲 | 依頼側が持つこと | 受ける側の稼働の性質 |
|---|---|---|---|
| 一職種の整理 | 一つの職種について、聞き取りから要件シートと文面への落とし込みまで | 「なぜ採るか」、最初に困ること、優先の決定 | 聞き取りの会議が二〜三回。数週間で区切れる |
| 食い違いの整理だけ | 経営者と現場の食い違いを別々に聞いて並べ、決める場に出す | 決める | 短期。決める場に出るかは範囲で決める |
| 全職種の要件シートの型作り | 職種ごとの要件シートの型(項目、書き方、緩める順、更新の担当)を作り、社内で回せるようにする | 各職種の中身の決定、以後の更新 | 期間が決まっている。職種の数に比例 |
| 見直しの伴走 | 選考の結果(面接でのずれ、辞退、入社後)から、月に一度、要件を見直す | 見直しの決定 | 月次。数と面接の記録が要る |
止まりやすいのは、「一職種の整理」で受けたのに、「なぜ採るか」が会社に無くて、聞き取りが進まないときです。「なぜ採るか」(欠員か、増員か、新しい仕事か、採れないと何が困るか)は会社が持つもので、無いなら、整理の前にそこを決めてもらいます。
求められる経験を棚卸しする
依頼側が見ているのは、「人物像をうまく書けるか」ではなく、「経営者と現場の食い違いを整理して、面接でずれない要件にできるか」です。社内で要件に関わった経験を、四つに分けて棚卸しします。
| 経験 | 依頼側にとっての意味 | 棚卸しの書き方 |
|---|---|---|
| その職種を知っている | 「経験〇年」ではなく、担った仕事の中身で必須を書ける | 要件を作った職種と、必須をどう経歴で読める形にしたか |
| 両方から本音を聞ける | 経営者と現場が、社内の人事には言わない本音を、外の人には言う | 別々に聞いて、何が食い違っていたか、どう並べたか |
| 「決めない」ができる | 食い違いを自分で裁定せず、会社に決めさせる | 決めるのを会社に返した場面と、その結果 |
| 結果から見直した経験 | 面接でずれた人、辞退、入社後の定着から、要件のどこを直したか | 何がずれて、要件の何を変えたか |
いちばん差がつくのは三つ目です。要件の整理では、経営者と現場が食い違ったとき、外の人が「現場の言うことが正しい」と裁定したくなります。裁定した要件は、経営者が納得せず、面接で覆ります。食い違いを並べて、「どちらを優先しますか」と会社に決めさせる人は、決まった要件が実行されます。
エラベルの見解
担当する側から見ると、要件の整理の案件は、「決める人が決まっているか」で難易度が変わります。経営者と現場が食い違ったときに、誰が決めるかが決まっている会社では、担当者は食い違いを並べるだけで進みます。決まっていない会社では、担当者が両方の間で板挟みになり、どちらにも良い顔をした要件(必須が十個)ができて、採用は変わりません。エラベルで担当者を選ぶ企業に、私たちがまず聞くのは「経営者と現場で欲しい人が食い違ったとき、誰が決めますか」です。答えが無い会社には、聞き取りの前に決める人を決めてもらいます。受ける側がその場で使える判断としては、受ける前に「食い違ったら誰が決めますか」と聞くこと。「話し合って」という答えなら、決める場に自分が出るのか、並べた食い違いを渡すだけなのかを、範囲として決めます。
進め方の順番
| 順 | やること | ここで決めておくこと |
|---|---|---|
| 一 | 「なぜ採るか」と決める人の確認(欠員か増員か新しい仕事か、採れないと何が困るか、食い違ったら誰が決めるか) | 「なぜ採るか」が無ければ先に決めてもらう |
| 二 | 別々の聞き取り(経営者、現場の責任者、その職種でいまうまくやっている人。「この役割で最初に困ることは何か」を軸に) | 別々に聞く時間。一緒に聞かない |
| 三 | 食い違いの整理(欲しい人、最初に困ること、必須と思っている項目、条件、を並べて、どこが食い違っているかを一覧に) | 一覧を誰に渡すか |
| 四 | 「最初に困ること」を軸に必須と歓迎を分ける(無いと最初に困る=必須、あれば助かる=歓迎、面接で確かめる=要件に書かない) | 会社が優先を決める |
| 五 | 経歴で読める項目と面接で確かめる項目に切り分ける(「担った仕事の中身」は経歴で、「性質」は面接で) | 面接で確かめる項目を面接官に渡す |
| 六 | 要件シートと文面に落とす(要件シートは運用の文書、求人票とスカウトは候補者向け。緩める順を書く) | 更新の担当と履歴 |
| 七 | 選考の結果から見直す(面接でずれた人、辞退、入社後の定着。月に一度か、採用の区切りで) | 見直しの頻度と、記録を出す人 |
止まりやすいのは、二を「経営者と現場を一緒に呼んで聞く」でやるときです。一緒に聞くと、現場は経営者の前で本音を言いません。別々に聞いて、並べます。聞き方はヒアリングの技能に、シートの中身は要件シートの作り方に書いています。
外部の立場で踏み込まない線
要件は、誰を採るかを決める会社の判断の土台です。線を先に引いておきます。
- 「最初に困ること」と優先を決めるのは会社。 食い違いを並べ、切り分けの案は出すが、裁定しない。会社が自分の見立てと違う優先を決めても、書面に残して結果から見直す
- 基準にしてはいけない項目を要件に入れない。 性別、年齢、国籍、本籍、家族の状況、健康など、募集や採用で基準にすることに法令上の決まりがあると整理されている項目は、経営者や現場が口にしても、要件シートと文面に書かない。何が該当するかは会社の決まりと専門家の確認に従い、個別の判断は専門家にご確認ください
- 他社の要件を持ち込まない。 本業や他の依頼側の要件を、この会社の要件の材料にしない。「一般にこの職種ではこう分けることが多い」という構造の話に留める
- 正解を教えない。 「この職種ならこの要件です」と教えると、その会社の「最初に困ること」とずれる。問いと構造で、会社が自分の要件を言葉にするのを支える
- 聞き取りで聞いた組織や個人の事情を、要件以外に使わない。 現場が経営者について話したこと、経営者が現場について話したことは、食い違いの一覧に「構造」として書き、人の評価として書かない
線の詳細は副業で法令違反をしないためにと本業と利益相反になる案件に書いています。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、依頼側の「要件は現場が一番分かっているから、現場の言うとおりに作ればよい」と、受ける側の「要件はその職種の専門家が作るべき」の両方です。実際には、現場が言う要件は「いま一緒に働いていて困らない人」で、経営者が言う要件は「この先の事業に要る人」で、どちらも半分です。同じ料金で同じ職種を任されても、結果が分かれるのは、担当者が食い違いを「並べる」か「裁定する」かです。現場の要件をそのまま書いた担当者は、面接で経営者に覆され、要件が無いのと同じになります。「現場は〇〇を必須と言い、経営者は〇〇を必須と言っています。最初に困ることを軸にすると、現場の〇〇は必須、経営者の〇〇は歓迎に見えますが、優先を決めるのは御社です」と並べて渡す担当者は、決まった要件が面接で使われます。受ける側がその場で使える判断としては、食い違いの一覧を作るとき、「誰が言ったか」の欄と「最初に困ることとの関係」の欄を分けること。人の意見の対立ではなく、軸との距離の問題に置き換えれば、会社は決めやすくなります。
向く人と向かない人
| 向く | 向かない |
|---|---|
| 経営者と現場の両方から、別々に本音を聞くのが苦にならない | どちらかの味方になって話を進めたい |
| 食い違いを並べて、決めるのを会社に返せる | 自分で裁定して正解を出したい |
| 「経験〇年」「〇〇卒」を、担った仕事の中身の言葉に置き換えられる | 年数と学歴で要件を作る癖がある |
| 「性質」の言葉(主体性、コミュニケーション能力)を要件から外して面接に回せる | 性質の言葉を要件に書きたい |
| 面接でずれた人が出たら、要件のどこが足りなかったかを見直せる | 面接官の見る目のせいにする |
「自分で裁定して正解を出したい」人は、要件の整理より、その職種の業務の代行のほうが向いています。
まとめ
- 要件の整理の案件は一職種の整理・食い違いの整理だけ・全職種の要件シートの型作り・見直しの伴走の四つの型。受ける前に型と、「なぜ採るか」と決める人があるかを確かめる
- 求められるのはその職種を知っている・両方から本音を聞ける・「決めない」ができる・結果から見直した経験の四つ
- 進め方は「なぜ採るか」と決める人→別々の聞き取り→食い違いの整理→最初に困ることを軸に必須と歓迎→経歴と面接に切り分け→シートと文面→結果から見直す。一緒に聞かない
- 線は優先を決めるのは会社・基準にしてはいけない項目を入れない・他社の要件を持ち込まない・正解を教えない・聞いた事情を人の評価にしない
- 食い違いの一覧は「誰が言ったか」と「最初に困ることとの関係」を分ける。人の対立を、軸との距離の問題に置き換える
- 必須は「無いと最初に困るか」で決まる。性質の言葉は要件に書かず、面接で確かめる項目に
よくある質問
現場が「経験十年以上、〇〇の資格、〇〇業界出身」と譲りません
「その条件が無いと、最初に何が困りますか」と、一つずつ聞きます。「経験十年」の中身が「一人で案件を回せること」なら、それは経歴の「一人で担当した範囲」で読めて、年数は歓迎になります。資格が無いと法令上できない仕事なら必須、無くても入ってから取れるなら歓迎です。譲らない条件を否定せず、「困ること」に置き換えて並べ、最後は会社が決めます。並べても譲らないなら、「必須をこのまま置くと、出てくる人の数はこの構造になります」と、市場の構造を添えて会社に決めてもらいます。
「主体性」「コミュニケーション能力」を要件に入れたいと言われます
要件シートには「面接で確かめる項目」の欄を作り、そこに入れます。経歴では読めないので、必須と歓迎の欄には入れません。そのうえで、「主体性とは、この役割ではどういう行動のことですか」と聞き、「決まりの無いことを自分で決めて進めた経験」のように、面接で聞ける形に置き換えて渡します。性質の言葉を要件の欄に書くと、書類選考で読めず、面接官ごとに解釈が変わります。
要件を整理したのに、面接で経営者が違う人を通します
要件の優先を、経営者が決めていないことが多い。整理の段階で「優先を決めるのは御社です」と経営者本人に決めてもらい、書面に経営者の名前で残します。それでも覆るなら、覆った人の経歴と要件を並べて、「要件のこの項目が、実際には歓迎だったのではないですか」と見直しの材料にします。経営者が覆すのは、要件が間違っているか、経営者が決めた覚えが無いかのどちらかで、両方とも見直しで直せます。見直しの型は採用要件の整理の副業の実務に書いています。